それを信じ、また押し付けぬことだ
クックックックッ…
ゴブリン退治を終えて、鉱山へやってきた一党がいた。
彼等は若い戦士を頭目に、半森人の野伏と鉱人の戦士、そして知識神を信仰する僧侶で構成されていた。
鉱山へ向かう途中で一晩休んだ一行は、次は鉱山探索に挑むところだった。
そして彼等が今まさに鉱山へ挑もうとしたときに入口の近くにいる人物に気がついた。
頭目である戦士がその人物に声をかける。
「ん?貴様等…ここへ何しに来た?」
「俺達はここの探索を依頼されてきたんだ。そう言うあんたは何してるんだ?」
「何、ただの依頼帰りのしがない冒険者さ。」
男はフッと不敵に笑って見せる。その男は腕を組んで壁に寄りかかっていて、目元を隠すように被っているシルクハットに膝の下あたりまで布地のある黒いコート。焦げ茶色の革手袋とブーツを身に付け、首には襟巻きを巻いている。そして何とも目を引きつけたのは
「へぇ!じゃあさ、この先に何があったのか知っているのか?」
「ちょ、ちょっと、いきなりそんな初対面の人に…」
半森人の野伏が遠慮がちに言うが、頭目の戦士は、まぁまぁいいじゃんか。と気楽に言う。
その問に冒険者を名乗った男は、先と変わらぬ調子で答える。
「うん?すまんがそこまでは知らんな。別に中に入ったわけではないからなぁ…」
クックックッと笑いながら揶揄うように答える男に一党は少なからず、怪しいという印象を抱いた。それと同時にあまり関わっても良い事はなさそうだ、とも。
頭目の戦士は顔には出さないように努めて、返す。
「そうか…これから中に挑む上で何か情報を得られればと思ったんだけど…」
「お主、本当になんも知らんのか?」
「先ほど言ったろう?すまんが、何も知らぬものでなぁ…」
鉱人の戦士が、帽子の男に問いただすが彼はのらりくらりと返すばかりで、これ以上の情報は期待できそうにない。
「…そろそろ行きましょう。あまり立ち往生している事もないでしょうし」
僧侶がこれ以上の会話は意味がないと判断したのか、頭目の戦士に先を促し、一行は帽子の男に別れを告げ、鉱山へと入っていく。男は彼等の背中に目線を向けずに呟いた。
「じゃあな。…また会えるのを楽しみにしているよ…」
不気味な笑い声が、男の口から小さく漏れる。
そして帽子の男の姿が突如として消えた事に気づいた者は、この場にはいなかった。
~~~
村で一晩明かし、ギルドに戻った俺は青年と共に受付へと向かう。何やら周囲から奇異の視線が向けられている気がしたが、全て無視した。随分昔に、疾うに慣れた視線だ。
そんな俺達二人を三つ編みの受付嬢が笑顔で迎えてくれた。
「お帰りなさい!依頼の方はいかがでしたか?」
「ゴブリンが出た」
青年は相変わらず淡々とした口調で答える。一応俺はついていった側なので報告は彼の仕事だ。
「………」
「………」
「ええと…」
しばらく無言が続き受付嬢が困った表情でこちらをみる。やれやれ…
「…貴公、それだけではないだろう。それだけでは依頼の報告にはならんぞ」
「むぅ…」
青年は顎に手を当てて小さく唸った。俺が代わりにしてもいいのだがそこまでやってしまうと彼の為にもならない。青年が何を言おうか考えてるうちに三つ編みの受付嬢が口を開いた。
「えっと…数は何匹でしたか?」
その問が発されると青年は顎から手を離して、元の姿勢に戻りすぐに答えた。
「六匹だ。内三匹は武器は持っていなかった。もう三匹は武器を持っていた」
「ええと…三匹が武装なしで、もう三匹が武装あり、と…」
受付嬢がさらさらと報告を書類へと書き上げていく。その間も青年はじーっと彼女の方を向いたまま微動だにしなかった。
俺は青年に、自分の依頼を受けに行く趣旨を伝える。彼から「そうか」と短い言葉を受け取って、そのまま隣の受付へと移った。
「あら、放浪さん。お帰りなさい。…といっても今回は新人さんの付き添いだったんですよね。おつかれさまです」
「大したものではないさ。ゴブリン退治で巣穴からはぐれた『渡り』の連中では相手にもならんよ。場所も広い屋外だったしな」
五年前から変わらず対応してくれる黒髪の受付嬢に俺は兜の下で苦笑いしながら果たした仕事の内容を簡潔に報告する。些細なことでも報連相は大事だ。
「頼もしいですね。…新人さん達が皆あなたのような心構えなら私たちも助かるんですけど…」
はぁ…と小さく溜息を吐きながらも笑顔を崩さない彼女は随分と見違えたな。以前は露骨に顔に出ていたのだが…時がすぎるのは早い物だ。
「…誰もが私のようでは、別の意味で苦労することになると思うが…。今とはまた違う方向で忙しくなるだろうな」
「そうですけどね…それでも、依頼を斡旋した冒険者が帰ってこなくて胃が痛む事は無くなりますよ」
「そうか。では尚更、私も死ぬわけにはいかんな」
「そうですよ?でも慣れたこととは言え、貴方はもう少し依頼を受ける数を減らしてもいいと思うんです」
「努力はしよう。ほ…」
「保証もしてください。冒険に絶対がないのも分かっていますけどそこは嘘でも保証をするべきです!」
「む…」
むすっとした表情でペン先をぴっと向けて、注意をする受付嬢から視線を逸らす。
その先では三つ編みの受付嬢が得意げに胸を張って人差し指を立てながら、責任だとか信頼だとかと言って隣の同僚から何言ってるんだかというような目で見られていた。
そして報告をしたのもつかの間に俺が元の位置へ視線を戻そうとした瞬間に、俺は即座に視線をまた隣へ移すことになった。
「で、ゴブリンの依頼はあるか」
「……え?」
「ゴブリンだ」
彼の発言に周囲が騒めく。…周りの人間はこいつは何を言っているんだという視線を向けているが俺もこの時ばかりは同じ目を一瞬向けてしまっていた。一瞬しか向けなかったのはその姿が、五年前の俺と被ったからだ。だが、俺はあくまで
三つ編みの受付嬢はふぅと息を吐くと、口を開いた。
「ありますよ。何件か…ただもう少し身体を大事にした方がいいと思いますよ」
「む」
「分かっていると思いますが、体調管理が出来ないと冒険もできないんですから」
ね?と柔らかく微笑みながら彼女は書類へとペンを走らせる。
俺も依頼を…と思ったが先ほど俺も似たような事を言われてしまったばっかりだ。たまには休息を取るとしようか。
―近々、寄らねばならん場所もあるしな。
受付嬢に今日は依頼はいいと言ってギルドから立ち去る。そんな彼の姿を見て、黒髪の受付嬢は目を丸くしていた。
~~~
燃え残った木々の後が残る草原に風が吹く。森を抜けた先にある場所にその場所はあった。
久方ぶりに訪れたはずだが、彼…『放浪の騎士』はその道をしっかりと覚えていた。
燃え尽きた木々、割れ砕けた敷石の残骸、茂みの薄い道があったであろう場所。
そこは嘗て「村」があったであろう場所であり、その端っこにある場所に彼はしゃがみこんでいた。
「………」
軽量化の為削られた兜で顔はすっぽりと覆い隠され、その表情は見えないが、彼は瞳を閉じて祈りを捧げていた。
そよ風が吹く中何程そうしていたのか…その時ガサりと草木が揺れる音が聞こえた。
彼が音のする方へ振り向くとそこには未だ幼さの残る顔立ちの、赤毛の長い髪をした少女がいた。
「あ…っと…その…」
少女…牛飼娘は目の前にいる人物から視線だけは逸らさずになんとか喋ろうと試みる。が、暫くの間彼女がまともに会話をした相手は五年前に故郷の村を失ったときに引き取ってくれた叔父くらいのもので、それ以外となると最近になって再開できた幼馴染の『彼』くらいだ。
「君は?何故このような場所へ来た?」
何を言おうかあたふたと迷っているうちに黒い外套の騎士が口を開いた。未だ若さを残しながらもどこか老成したような男の声だった。
「えと…ここ、私の故郷、だったんです。ギルドでお願いして、連れてきてもらって…」
その言葉に騎士の男は、ほう…と小さく呟いた。その呟きはそよ風の音にかき消され、牛飼娘の耳には入らなかったが。
「冒険者の人…ですよね?貴方は、どうしてここに?」
おずおずと騎士の男に尋ねる牛飼娘。本来なら自分と幼馴染の彼くらいしか知らないはずの忘れられたこの場所に何故知らぬ人がいるのか気になったのだ。騎士の男は暫しの沈黙の後に視線を落とし、口を開いた。
「…もう五年も前の話だ。私がこの地に流れ着いて、最初に訪れた場所がここだったんだ。旅をしていて長らく人との関わりがなかった私は明かりを見てすぐに向かったよ。…その時には手遅れだったがな」
ぽつり、ぽつりと、まるで懺悔をするかのように語る騎士の男。
彼の言葉を聞いて牛飼娘は目を見開いた。自分の村に冒険者が来ていたことに。それと同時に、悔しさや悲しさが溢れてくる。
目の前の彼が来るのがもう少し早かったら?あるいは滞在してくれていたら?自分も、家族も、幼馴染の彼も、故郷を失わず、幸せな毎日を過ごせていたかもしれない。五年前のあの日、牛飼娘は今も面倒を見てくれる叔父を除いて全て失った。幼馴染の彼は、文字通り全てを失い変わってしまった。
そんなもしもの事を考えていると目の前の騎士が後ろを向いて、しゃがみこみ口を開いた。
「…君の言いたい事は分かる。何故もっと早く来てくれなかったのか。…だろう?」
「あっ…そ、そんなことは…!」
自分の考えていたことを見抜かれあたふたと取り繕うが、彼はフッと兜の下で笑い、立ち上がり振り向いた。
「隠さずともいい。そう思うのは至極当たり前の事だ。村にたどり着いた私はゴブリン共を殺したが…遅すぎた。誰も、救えなかったのだから」
「それは…」
構わずに騎士の男は続ける。
「この祈りに意味などない。ここで私が祈ったところで、死んでいった者達の命が帰って来るわけではないし、魂が安らぐこともない。ただの気休めさ」
再び墓石の前にしゃがんで、そこに騎士の男は何かを置いた。
「あの時私がもっと早くついていれば?もっと前から滞在していたら?結果は少なからず違う物になっただろう。…だからこそ、私は忘れてはならないんだ。救えなかった人達の事を。当たり前の日常を、未来を奪われてしまった人達の事を」
そんな今も尚ここの人達の命を背負っている騎士に向かって牛飼娘は声をかけた。
「…でも、来てくれてたんですね」
「………」
騎士の男は答えない。だが、彼の背は静かに肯定しているように見えた。
「仕方が、ないですよ。もしもがあったかもしれないけど…でもその時は、きっと仕方なかったんです。…貴方のせいじゃないですよ」
その言葉に、彼が何を思ったのかは分からない。彼は立ち上がると、牛飼娘の方を見て、静かに。
「そうか…そうならばいいな」
先ほどとは少しだけ、明るい声音で牛飼娘に感謝を述べた。
「そういえば君はここには一人で来たのか?」
「えっ…と、冒険者さんにお願いして連れてきて貰ったんです。叔父さんの牧場の手伝いでギルドに行った時に…」
「む…?ということは君が…、牧場の主人は元気か?」
「えっ…?は、はい。叔父さんの事知ってるんですか?」
「昔な、村を出て街へ向かう時に世話になったのさ。ギルドに食材を届けているのは知っていたが、久しく会っていないからな。私がよろしくと言っていたと伝えてくれると助かる」
「そうなんですか…ちゃんと伝えておきますね!」
「ああ。…そろそろ私は行こう。あまり余所者が長居するべきではないからな」
ではな。と言って牛飼娘の横を通り立ち去る騎士の男。その時一際強い風が一瞬吹いて、牛飼娘は目を閉じてしまう。
目を開けた時には、騎士の男の姿は忽然と消えていた。まるで最初からいなかったように。だが、牛飼娘が墓石の根元にある物を見て、それは間違いだと気づく。
小さな石から放たれる七色の光が草原にひっそりと輝いていた。
〜〜〜
街へと帰還して、その足でそのまま酒場へと入った。
時間もちょうど昼時な為か、それなりに賑わっているようだ。
(しかし思わぬ遭遇もあったものだ…)
まさか牧場の主人の姪に会うとは思わなかった。しかも彼女があの村の生き残りだったとは…
恨み言の一つや二つは吐かれてもおかしくないと思っていたが杞憂だったようだ。
どこに座ろうかと酒場を見渡すと見慣れた顔を見かけた。その人物に声をかけるべく歩き出す。
その人物は俺の応対をしてくれている黒髪の受付嬢だった。
「君が酒場にいるのは珍しいな。仕事はいいのか?」
「あっ放浪さん。私は今お昼の休憩中です。たまにはこういう賑やかな場所でお食事しようと思いまして」
そうは言うものの彼女の周りには人がいない。…同僚の一人や二人はいないのだろうか。
「…その割には周りに人がいないように見えるが」
「うっ…まぁそうなんですけど…えっと…ここなら、その…」
言葉につまりキョロキョロと挙動不審に視線を動かす受付嬢。今の彼女からは五年感の成長の跡は見る影もない。まるで五年前に出会った時のようだ。
「何かあるのか?目が泳いでいるぞ」
「な、何でもありません!貴方が気にするような事は何もないですから!」
両手をブンブンと振って何でもないと繰り返す受付嬢。どう見ても何かある態度だが、本人が何もないというなら突っ込むのは野暮というものか。
「…そうか。だが何か悩みでもあるなら言ってくれ。俺が力になれるかはわからんが」
「あっ…はい。ありがとうございます…はぁ…やっちゃった…」
彼女は感謝の言葉と共に何故か溜息を吐いて、何かを呟いていた。その言葉は酒場の喧騒のせいで良く聞こえなかったが。
注文をしようと女給の姿を探すと離れた位置に見たことのある冒険者の姿があった。しかし何やら様子がおかしい。
彼は以前に渡りのゴブリン共を退治した時にいた白磁の一党の若い戦士だったのだが、周囲に一党の姿がない。机には彼以外誰もおらず、酒の瓶やジョッキが散乱している。当の本人も机に突っ伏して、以前の明るさはどこへやらすっかりと意気消沈しているようだった。…俺の予想が間違っていなければ…
「彼は…」
「はい?」
若い戦士の方を見ながら俺は受付嬢に疑問を投げかけた。
「あそこにいる若い戦士の事だ。何があった?」
「ああ…あの人は…」
暗い表情になり、憐れむような目をする受付嬢を見て予想は確信へと変わる。…やはり…
「…鉱山の依頼で
「もういい。…そこまで分かれば後は言わなくても分かる」
つまり彼らは運悪く
「…ああいった手合いは多いが…彼には悪いがまだマシな方だ」
「え…?」
受付嬢が目を丸くして俺の方へ顔を上げる。彼女の方へと顔を向けて続ける。
「多くの新人が村を出るなり家から飛び出してくるなりでギルドへとやってくる。そしてその多くが夢を見て希望を膨らませ、冒険者になる。英雄譚に憧れる。実際の冒険者から話を聞いて自分もそうなろうと志す。切っ掛けは様々だ」
彼もそうだろうし、実際大体の新人はそうだろう。実際俺は戦う事しか脳がなかったのだから俺は下手したら彼ら以下かもしれない。
「だが現実は甘くない。最初こそ順調に行ってもどこかで必ず壁にぶち当たり何かしら失敗をするだろう。危険な目に合いながらも生還する者もいれば、気づいた時には死んでいる事だってある」
何度も、何度も、数え切れぬ程死んだ俺と、彼らで違うのは彼らは『死んだら終わり』なのだ。彼らは死んで経験を積むことは出来ない。彼らの命は一つだけなのだ。
「そうして失敗にぶち当たり…惨めに生きて帰ってきた新人達はその多くが大抵同じ事を言う。『こんなはずじゃなかった』と」
俺の言葉に心当たりがあるのか受付嬢の表情が暗くなる。実際彼女は俺以上に見てきたはずだ。送り出した冒険者が全員帰ってこなかった事など。帰ってきたとしても心折れ、故郷へと帰っていく冒険者達を。
「だが、そんな中でも心折れず立ち上がる奴もいる」
俺が見てきた中で新人達が失敗をした時は大まかに分けて三つの道を辿る。
一つは現実を知って心が折れたり、何らかの理由で続けられなくなって故郷へと帰るなどでやめる者。
もう一つは窮地に陥り、そのまま死んで行く者。帰ってこない新人の殆どがこれだ。
最後は失敗をしながらも生きて戻り、それを糧に成長していく者だ。失敗の内容は人によって様々だ。後々になって笑い話に出来るような失敗もあれば、あと少しで命を落としそうになる物だってあるだろう。一党を組んだ仲間が死ぬなどと言った取り返しの付かない物だってあるし、中には
「…現実を知って、心が折れかけながらも、尚諦めずに立ち上がった冒険者は…」
そこまで言ってガタッと誰かが立ち上がる音が聞こえた。見れば件の若い戦士が立ち上がって酒場から出て行くところだった。違うのはその目が澱んで光を失った死んだ者の目ではなく、覚悟を決めた目をしていたことか。
「強くなるだろう。自らの経験を元に新人達を導いて行けるような、冒険者になるだろうな」
「…そうですね」
受付嬢の言葉を皮切れに席を立つ。予定変更だ。
「さて…私も依頼を受けに行く。…やはりじっとしているのは性に合わないらしい」
「あっ、でしたら私も行きます。そろそろ休憩時間も終わりですから」
そうして受付嬢と共にギルドへと向かう。もうすっかり見慣れた建物へと入るがギルドの中はガランとしていて人は殆どいなかった。
「…今日はまた一段と人がいないな。何かあったか?」
「さっきの
…成る程。昔は如何なる相手でも大体は自分一人で対峙しなければならなかった為に出くわすたびに俺は殆どの怪物共を討伐していたが、
そんな事を思いながらカウンターへたどり着くと三つ編みの受付嬢が溜息を吐いて机に突っ伏している所だった。
「こら。だらしないわよ。気疲れするのも分かるけどしっかりしなさい。ちゃんと出来たの?」
「あ、先輩…私が担当して良かったんでしょうか?こんな大規模な依頼を…」
「何事も経験よ。いつまでも簡単な依頼を斡旋するわけにも行かないでしょう?貴方も将来は誰かに教える事にもなるんだから」
「そうなんですけど…」
どうにも三つ編みの彼女の歯切れが悪い。…そういえば最近の新人達への依頼の斡旋は彼女がしていたな。…ふむ
「…自分が斡旋した依頼で、誰か死んだりでもしたか」
「!!…っ」
「放浪さん?…あっ…」
三つ編みの受付嬢は目を見開いたあとに図星を突かれたかの如く顔を伏せた。…当たりか。
「気にするな…と言っても難しいか。だがここに勤めるものなら誰もが通る道だ。慣れておけ」
「………」
三つ編みの受付嬢は答えない。分かってはいるが割り切れない、そんな顔をしていた。黒髪の受付嬢はそんな彼女を見て優しげに微笑んだ。
「ふふっ…」
「せ、先輩?何が可笑しいんです?」
「私も、貴方と同じように冒険者さんを送り出して帰ってこなかったときに貴方と同じ顔してたんだろうなって思って。でもね、慣れると言っても人の死に無関心になっちゃダメよ。そうなったら心から笑えなくなっちゃうもの」
「先輩にもあったんですか?想像、つきませんけど…」
「あったわ。…当時の周りの同僚からはちゃんと笑ってる?って何度も心配されたわ。でもね、ちゃんと帰ってきてくれる冒険者さんがいるのもまた事実なの。私はそんな人達をちゃんと迎えてあげたいのよ」
チラりと視線をこちらに向けながらそんな事を言う彼女を見て成長したなと思う。…変わらない俺とは大違いだ。
「帰ってきてくれる人…」
ポツりと呆気に取られた顔で呟く三つ編みの受付嬢。そんな彼女に黒髪の受付嬢は肩に手を置いて優しく言葉をかけた。
「ホントはいけないんだけどね…貴方も見つかるわ。支えて上げたいって思う人が。…もしかしてもう見つけた?」
「ぅえ!?あ、いや…そのぉ…」
顔を近づけて何かを言われたのか急に狼狽しだした三つ編みの受付嬢。何を言われたのだろうか。
「っとといつまでも話こんでちゃいけないわね。…んんっ。放浪さん依頼はどうしますか?貴方も鉱山の方へと行きます?」
こちらに向き直って軽く咳払いをして、言葉遣いをなおす黒髪の受付嬢。…彼女も俺と同じように使い分けているようだ。
「いや、鉱山の方はいい。大規模な徒党が組まれたのであれば私が一人出向いたところで変わるまいよ。…あるのだろう?」
「…ええ、ありますよ。一件だけですが悪魔の討伐依頼が。農村の方からの目撃情報からギルドの調査の結果、牛の頭をした悪魔が目撃されたそうです」
「なら、それだな。他にも道すがら討伐した者はまとめて報告する」
「分かりました。お気をつけて。…何度も言いますけど、無理は禁物ですからね?」
「ふっ、努力はしよう」
受理された依頼書を手にギルドを後にする。あの若い戦士然り、俺が助言をした青年然り、面白くなりそうだ。
『黒衣の冒険者』
黒ずくめの服装にロングハットを被った男。
常にニヤついた顔が特徴敵な男で、斥候兼野伏として活躍しているようだ。
だが、どこかの一党に入ったということは聞かず単独で動いているらしい…
得物はかなり大きなクロスボウで狙撃に適した改造が施されている。
かつてこの男を知る乳母は「とても人間らしい人」と言ったそうな。
遅くなってしまった。途中思いっきり筆が進んで書いてる途中で停電してデータ飛んで構成見直して書き直してを繰り返してあーでもないこーでもないとやっていたらこんなだよ!
原作入って投稿ペース上がると言った奴は誰だ!
私です。ごめんなさい。あっやめて糞団子投げないで!