実は、少し難儀しているのだ。
あれから村の跡地を離れ、道を探して歩き続けた。
小鬼共の襲撃もあって忘れていたが村から出る時に日が出るまで待てば村から出る時の道くらいはあったろう。
だがあの
もう使命のために心を捨てた「
今でもこの世界に俺がいる理由など分からない。神々の気まぐれかもしれないし、神々ですら理解出来ていないかもしれない。どちらにしてもここに俺がいる以上何かしらの意味はあるんだろう。
ならばせめて俺は自分に出来ることを為すとしよう。元より
まずは血塗れのこの姿をどうにかせねば。あの世界では誰も気に止めなかったがここもそうとは限らない。まずは水辺探しだ。
~~~
「さすがに臭いまでは落ちんか・・・」
途中で水辺を見つけ装備の血を洗い流したが臭いまではどうにもならなかった。
さすがに臭い消しなどというものはあの世界には無かったしそもそも必要ですら無かった。
ある世界では「
まだ少々血の臭いが落ちていないがこれが今できる限界だろう。さすがに人前を血塗れで歩くのは不味いし先程までの姿を見られていたらどう見ても殺人鬼に見えていただろう。
武器に付いた血も払って、僅かだが付着していた肉片も落とした。兜をかぶり直し俺は腰を上げた。
~~~
当ても無く歩き続け丁度時間は昼下がりだろうか、ようやく道を見つける事ができた。見た限りこれは荷車や馬車が通ったものだろうか。人が歩いた跡もある。つまりここを通って何処かへ行けば人のいる場所まで辿り着けるのだろうが・・・
「違う方向へ行って遠ざかっていました、では笑えん・・・せめて道が分かる物があれば・・・」
看板でもないものかと思ったがそもそも自分はこの世界の文字が読めないだろう。一番は人に聞く事なのだが、その肝心の人がいないのでは・・・
その時だった。どうしたものかと考える自分に後ろから声が掛けられる。
「そこのあんた、どうかしたのかい?」
「む?」
後ろには馬車に乗った初老の男性がいた。これから何処かへ行くのだろうか?だとしたら都合がいい。
「困っているように見えたから声を掛けたんだが・・・いらんお節介でなければね」
「ああ、それが先ほどこの辺りに来たはいいのだが何分遠い異国の地から来たのでな、道が分からずに困っていたんだ。さっきまで森の中を彷徨ってここに出たはいいもの街の類がどこかにないものか、とな」
「ふむ・・・見たところ冒険者になりに来たのか?ギルドのある辺境の街まで」
「すまない。人と接するのはもう随分久しぶりでな。その・・・冒険者?ギルド?というのは?」
「おっと知らなかったか。冒険者っていうのは・・・」
この男性から聞いた話では、その街では冒険者ギルドという組織があり、そこで人々の依頼を受け報酬を貰って生計を立てている者達のことを冒険者というらしい。
ギルドが依頼人の依頼を貼り出し、冒険者が依頼を熟し報酬を受け取る。誰でもなれるらしく、家を継げない三男坊やら、事情のある人間などは冒険者になる事が多いようだ。
・・・つまり、ここは
「宜しければ、街まで乗っていくかい?私も街へ配達の途中でね」
「・・・いいのか?「私」は見ず知らずの、賊かどうかも分からない人間だぞ?」
俺の言葉に男性は一瞬目を丸くすると、
「はっはっは。自分でそう言うって事はあんたは悪い人ではないだろう。少なくとも私にはそうは見えないがね」
「・・・路銀は持っていない。代わりに渡せる物も・・・」
「構わないさ。金もいらんよ。ここで知り得たのも何かの縁だろう、荷台の中で狭いかもしれないがそれでも良ければ乗っていくといい。」
「すまない、感謝する。・・・腕には自信がある。賊や魔物の類が出たら言ってくれ」
「はは、そりゃ頼もしい。ほら早く乗ると良い」
男性に後ろに乗るよう促され馬車に乗り込む。・・・思わぬ所で人と出会ったものだ。そういえばあの陽気な騎士と出会ったのも突然だったような・・・
物思いに耽り、嘗ての旅を思い出す。僅かだが脳裏に苦難を共にした騎士の姿を思いだす。変わった形をした鎧を着込んでいたがその実力は本物だった。
共に
そこまで思い出そうとして頭を振り、現実に戻る。
(・・・もう過ぎたことだ。あいつは良き友だった・・・それ以上でも以下でもない・・・)
名前は思い出せなかったが、それでも彼の勇姿を少しは思い出せた。俺も彼のように前向きに生きることが出来れば少しは変われるのだろうか?
・・・やめよう。これからのことはこれから考えればいい。今は休もう。せっかくこの主人が馬車に乗せてくれたのだ。少しばかりの休息を取ろう。不死でも疲れは貯まるのだ。
俺は僅かにこれから目にするであろう人の営みを、そして「冒険者」というものに対する期待を抱きながら兜の下でその瞼を閉じた。
~~~
―夢を見ている―
それは圧倒的な暴力だった。巨木の如き巨人の図体から放たれる大鉈の一撃はそのどれもが致命傷になるだろう。
手にした
術の類も全て効果が無くお構い無しに暴風の如き攻撃が放たれる。
だがダメージが通っていない訳ではない。極僅かではあるが傷は付いている。かつてない持久戦になるだろうが、集中力を切らさなければ勝つことは出来る。
勝算は極めて低いがやるしかないだろう。そう思い再び武器を構えた、その時だった。
玉葱のような鎧を着込んだ騎士の持つ剣から凄まじい剣撃が放たれたのだ。
玉葱騎士の持っていた武器を見る。まるで朽ちた石の杭のようにも見える剣だった。いかにも脆く今にも砕け散りそうなものだったが、先の嵐の剣撃を放った剣であることに間違いはなかった。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
玉葱騎士は叫びながら杭のような剣を構え再び振り上げようとする。しかし巨人の
こちらも注意をそらそうとするが巨人は意にも介さない。これでは彼の身が危険だ!
(どうする・・・!どうすれば奴の注意を引ける・・・!?)
焦りが思考を鈍らせる。考える、考える、考える。武器も刃は殆ど通らず、術の類もその殆どが効果を示さない。
あの巨人に敵と認識されるには、先ほどのような巨木を薙ぎ倒すような一撃を放つ必要がある。しかし玉葱騎士が持っている剣が2本も存在するはずは・・・
その時ふと周囲を見渡したその瞬間視界の端に何かが目に入る。巨人が先ほどまで座っていた玉座のすぐ足元だ。そこにまるで担い手を待つかのように刺さっていたそれは紛れもなく―
「俺」は手にした特大剣を放り捨て、走り出した。あれが、あの剣が彼の持つ1本だけならず
巨人が走り出した俺に気づいたのかこちらに向かってくる。だが注意が僅かにこちら逸れたその隙を玉葱騎士が見逃すはずもなく、再び暴風が巻き起こる。
巨人がその衝撃に耐え切れず膝を付く。その隙は玉座の元にある剣を引き抜き構えるまでの時間としては十分すぎた。
見よう見まねで彼のように剣を構える。そして剣に風が嵐が纏われていく。剣に嵐が完全に纏われたのを見て剣を掲げ一気に振り下ろす。
振り下ろした剣から先ほども見た凄まじい剣撃が放たれ再び巨人がよろけ膝を付く。確かに感じた手応え。これならばあの巨人を地に伏させることもできるだろう。
しかし巨人の方もやられっぱなしという訳では無い。大鉈を正面に構え火を纏わせる。
大鉈を振るう度に爆発が炎が辺りに撒き散らされる。炎が兜の横を掠める。風を纏わせる為に剣を構える。それをさせまいとする巨木の如き巨人。
何度も、何度も、嵐の剣撃を叩きつける。凄まじい力を持った巨人との攻防は長い時間を掛けた。そして玉葱騎士の剣撃が放たれたその時、ついに巨人が地に伏した。
「ハァ・・・ハァ・・・」
(終わった・・・倒せたのか・・・あの巨人達の王を・・・)
「貴公には、助けられっぱなしだな。だが・・・ありがとう。貴公のおかげで、約束を守れた、さぁ最後の祝杯だ」
俺は樽のジョッキにはいった酒を受け取り、彼の前に座る。
「貴公の勇気と使命、そして古い友■■■に・・・太陽あれ!ガッハッハッハッハ!」
豪快に笑う彼とジョッキをぶつける。僅かに溢れたこともお構いなく酒を煽る。
「さて、私は少し眠っていこう。祝杯の後はそうと相場決まっているからな。・・・貴公、我が友よ、無事に使命を果たしたまえよ」
そうして彼は大きな嚊をかいて眠りだした。眠った彼をその場に置いて果たすべき使命の為に歩き出す。ただ胸に引っかかったこの感覚は、
彼と会えるのはこれが最後になる。そんな気がして止まなかった。
「・・・ありがとう我が友よ。貴方は何度も助けられたと言ってくれていたが・・・」
「俺も貴方には、何度も救われた。折れそうになった俺の心を陽気な笑いで癒してくれた・・・」
「ありがとう。そして・・・さらばだ・・・■■■■■■」
俺は振り返ることなく篝火に手をかざし、その場を立ち去る。彼に会えなくなるであろう名残惜しさと、果たすべき使命への決意をその身に宿しながら。
・・・あれ?おかしいな。私はいつからダクソの小説を書いていたのだろう・・・
時系列で古い時代から書こうとして中々原作の内容に入れないもどかしさ。
細かな設定はあまり気にしないでいただけると幸いです。あまり深くは考えていないので。
1/14男性の口調を修正しました。こんな紳士的な口調ではなかったですね()