放浪騎士   作:赤い月の魔物

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…ああ、そうだ。もしあんたが物好きなら、注意することだね

ここから、ずっと下に、大きな暗い、木のうろがある。

…あのうろから、今でもたまに、聞こえてくるのさ

あれは、■■■■の声さね

病に侵され、それでも人を呪っている。そんな化物の声さね。


第7話 遺跡に潜むモノ

夜が明け朝になる。鳥達の囀りが森に響き渡る、雲一つない清々しい朝だ。

 

俺は一番最初に起きて武具の手入れをしていると、森人野伏が起きてきた。

 

「ふあぁ…おはよう~貴方随分早いわね。いつから起きてたの?」

 

「少し前だ。やることもなかったから武具の手入れをな」

 

「いいじゃない。感心感心。私は朝食の準備をしないとね」

 

そう言って食事の準備に取り掛かる森人野伏を尻目に俺は武具の手入れと何を使うかを思案する。

 

今回は何がいるのか、何があるのかも分からない場所だ。

普段の取り回しの良い武器よりも、大型の武器を取り出す必要も出てくるかもしれない。

 

デーモンの類がいるならば黒騎士の武器を。

いないと思うが深淵に連なるような奴等がいるなら狼騎士の大剣を。そうでなくてもあの大剣は俺もよく使っていた物だ。

以前別の依頼でも使ったし、そろそろまた手に馴染ませておく必要があるかもしれない。

 

しばらく思案していると男僧侶も起きてくる。

 

「おはようございます、二人共早いですなぁ」

 

「ああ、おはよう」

 

「あら、おはよう。そろそろ朝食もできるわよ」

 

挨拶を交わし各々食事の準備に入る…が頭目の男戦士がまだ起きていない。

彼は未だに眠っている。簡単に言うと爆睡である。

 

「はぁ…全く…これじゃ未来の奥さんも苦労するわね」

 

「ですなぁ、しかしこれから命をかけに行くのならばこのくらい自然体でいられるのが良いのでしょう」

 

取り敢えず朝食も出来てしまったので、全員で起こす。未だ気だるげな表情をしながらも戦士は起き上がり伸びをした。

 

「ん~あ゛ぁー!よく寝たぜ、んあ?俺が一番最後か 悪い悪い」

 

そう言いながら頭を掻きつつも笑う男戦士。全員が揃った所で朝食を取る。森人野伏が野菜と豆のスープを作ってくれた。それに持ってきていた肉を焼いて朝食にする。

 

食事を終えて各々が装備を身に付ける。

 

男戦士はやはり前衛を務めることが多いのか、胸当てを中心にその下には鎖帷子を着込んでいる。手には手甲をはめて足も金属の足甲で重要な部分をしっかりと守っている。

 

僧侶も法衣の下に鎖帷子を着ているのだろう。動いた時にジャラリと鎖の音がした。

縦に長い僧侶らしい帽子をかぶり頭には鉢金を巻いている。

腕には手甲をはめ、身体の各部は関節の動きを阻害しないような軽装の防具だ。前衛を務めるには不安が残るが、棒術を使えるといった彼にとってはこのくらい身軽な方がいいのだろう。

 

森人野伏は俺の知ってる森人とは大分変わった装備をしていた。

森人と言えばその多くが身軽さを重視したような軽装で、所々肌が出ていたりするような見た目が多いのだが、彼女の場合は違った。

焦げたような色をした茶色の革のコート。肩の周りには短めの血避けのマントがついている。

頭にはツバを折り曲げて、枯れ羽のような印象を持った帽子をかぶっている。

野伏の見た目らしい見た目だが、森人の着る装備としてはかなり変わっている。

あくまで自分の主観なので、一口に変わっているかどうかは分からないのだが。

 

「あら?なあに?見つめても何もでないわよ♪」

 

こちらの視線に気づいたのか、人懐っこい笑みを浮かべながら揶揄うようにこちらに振り向く森人野伏。一体何が出るのというか。

 

「いや、森人にしては珍しい装備だなと。私の知る森人の装備とはかなり違っていたものだからな。」

 

「昔は周りと同じような感じだったんたけどね。以前依頼で肌が出たところに傷を受けて痛い目にあったからそれ以来少しでもこうして

全体を守れるようにしたのよ」

 

色気も何もあったものじゃないけどね。と自嘲するように笑う森人野伏。

先ほどの明るい笑みとは裏腹にその表情は暗かった。森人は只人より遥かに長寿だ。

長い時を生きる中で色んなことがあるのだろう。それが何かは分からないが。

 

「そんなことはないだろう。身を守る為に防具を着込むのは悪いことではないし、それで君の魅力が無くなる訳ではあるまい」

 

森人野伏は一瞬キョトンとした表情になってから「そ…そう…」と言って顔を逸らしてしまった。

いかん、何か地雷を踏んだか?なまじ過去に最低限しか喋ることをしなかったせいか、こういう時にどういう言葉をかければ良かったのか分からない。

思った通りの言葉を言ったのだが、あまり余計な事は言わない方がいいかもしれん。

 

「…お前さんよく「たらし」とか言われねぇか?」

 

「どういう意味だ?」

 

言葉通りの意味ならば誘惑したり騙したりという意味だが。

生憎そんなことはしていないはずだ。むしろ過去に散々嵌められたことの方が多い気がする。

…坊主頭の追い剥ぎの男が脳裏に浮かぶ。奴に嵌められたのは二回だった。二度までは許した。

だが三度目はない。絶対だ。

 

「無自覚か…こりゃお前さんと関わる奴は苦労するなぁ…」

 

「良きことですぞ。仲良きことは美しきかな」

 

「もう!二人とも!」

 

怒る森人野伏を尻目に、俺は自身の支度を進める。

…まぁ俺と関わると苦労するのは間違いないだろう。一日にいくつもの依頼を受けていたのだ。

この世界の人々では途中で倒れるだろうことは想像に難くない。

 

そうして全員の準備が整ったところで、戦士が声をあげた。

 

「全員準備は出来たな?ここからは徒歩で行くことになる。遺跡の入り口まではそこまで遠くはねぇが油断はするなよ」

 

そうして各々立ち上がり彼についていく。俺も装備をつけて彼等の後に続いた。

 

遺跡の入り口までは何事も無かった。

入り口の外観だが、入り口の広さは人が一人通れるくらいで結構狭い。

入り口でこれで、中まで狭かったらまた武器をショートソードに変える必要がある。

振り回さないというなら槍もありかもしれない、振り回そうものなら即引っかかるだろうが。

 

「よし、これから行くのは何があるのか、何が潜んでいるのかわからねぇ未知の遺跡だ。慎重に進んで危険そうだと判断したら即座に撤退するぞ。いいな?」

 

真剣な表情で戦士が全員を見渡しながら大まかな方針を伝える。

正直あまり細々とした内容だと俺も理解できなかっただろうから、このくらいざっくりとした説明の方が分かりやすい。

 

「ええ」

 

「承知した」

 

「わかった」

 

皆、真剣な表情で返事を返す。いよいよ調査開始だ。

初めてでは無いものの一党全体に緊張が走る。返事を聞いた男戦士が入ろうとしてこちらを振り向いた。

 

「ああ、そうだ。お前さんは野伏と一緒に前を任せたい。行けるか?」

 

ふむ?何故だろう?前衛を考えるなら彼が…いやそういうことか。

 

「わかった。斥候をしつつ前衛。場合によっては野伏の護衛だな?」

 

「そうだ。最後尾で俺が背後からの奇襲を警戒する。勿論状況しだいじゃ即隊列を変える。お前さんが一番柔軟に動けそうだからその場合は俺と前衛を張る必要も出てくるからな?」

 

成る程。俺のやれることを確かめるついでに上手く立ち位置を振り分けている。

軽そうな性格のようだったがこういうところに頭目としての顔が出ている。いい頭目だと思う。

 

「ふふっよろしくね?頼りにしてるから♪」

 

「随分な大役を任された気がするが…やれるだけのことはやるさ」

 

若干前屈みになり片目を閉じて笑う森人野伏に苦笑いしつつ返す。

 

そうして役割が決まったところで、野伏 俺 僧侶 戦士の順で入って行く。

さぁ、調査開始だ。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

松明を持ち、警戒しつつ遺跡の中を進んで行く。

入り口こそ狭かったが、中に入るなり徐々に広くなっていった。既に横幅は4人並んでも隙間が空くくらいには広い。天井も松明を掲げなければ見えないくらいには高めだ。

今のところ敵に遭遇してはいないものの罠の類はどこにあるか分からない。壁には壁画のような模様が刻まれ床はタイル状になっている。タイル状の床…火矢が飛んでくる地下墓を思い出すな…

 

「止まって」

 

「どうした?罠か?」

 

後ろから戦士が訪ねる。森人野伏がその場にしゃがみ込みそのまま手を地面に這わせていく。そして彼女の手が僅かに出っ張ったタイルにあたる。俺は付近の壁に目を向けて注意深く見つめる。すると絵のような模様の中に、上手く隠された穴が空いていた。

恐らくこのタイルが感圧板になっていて、踏めば脇腹に矢が刺さるようになっているのだろう。

火矢でも恐ろしいが仕掛けた奴次第では毒が塗ってあるかもしれない。

しかしこの罠はかなり分かりにくく作られている。目が良くなければ乱雑に敷かれたタイルの床の罠など見分けることは出来ないだろう。彼女が優れた野伏であることがよくわかる。

 

「踏めば脇腹に矢が刺さる罠といったところか」

 

「ええ、皆踏まないように気をつけて」

 

感圧板を踏まないように避けて進む。今のところは罠があっただけの廃遺跡だ。罠がある以上は何者かが潜んでいてもおかしくはないと思うが…

 

その時耳に何かが聞こえる。声だ。ただ人の声ではない。この耳障りな声には覚えがある。

 

「貴方も聞こえた?」

 

「ああ、いるな」

 

二人で確認したのち後続の二人にも声が聞こえたことを伝える。

 

「ようやくお出ましだぜ…さて鬼が出るか蛇が出るか…」

 

「皆、油断なさらぬよう。何が潜んでいるか分からない場所故」

 

不敵な笑みを浮かべながらも、斧を肩に担ぎ直す戦士に、注意を促す僧侶。

俺は指輪を付け替えて隠密に備える。遠方からの視認も不可になり音一つ出さなくなった俺は刀を抜き、先頭に立つ。開けた小部屋のようにも見える場所にいたのは…

 

 

「GORB…」「GORB!GORB!」

 

 

()()()()だった。

 

「ゴブリン?」

 

「ゴブリンね」

 

「ゴブリンですな」

 

「ゴブリンだな」

 

何故こんな所にゴブリンが…考えるのは後だ。数は10。うち1匹デカイのがいる、ホブだ。恐らくあいつに率いられて、ここを巣穴でもしようとしているのだろう。何かを探しているのかあたりをキョロキョロと見渡している。

 

「仕掛けるわ。遅れないでね」

 

森人野伏が物陰に隠れながら弓を構える。俺は戦士と僧侶と共に武器を抜いて息を潜め、彼女が仕掛けるのを待つ。

少しして矢が飛来しゴブリンの脳天に刺さった。

怯んだゴブリンに第二射が刺さり射られたゴブリンは倒れた。

 

「GORB!?GORrrrB!!」

 

突然の襲撃に怒り、喚き散らすゴブリン。だが視界に森人野伏が入った瞬間にやる気に満ちた顔でそちらに向かっていく。大方一人で来るなど馬鹿な奴、孕み袋にでもしてやると思っているのだろう。だが今は4人だ。俺達は物陰から飛び出すと各々ゴブリンに向かって駆けていく。

 

「お前らは小さいのを頼む!ホブは任せろ!」

 

「承知!」

 

「了解した」

 

戦士がホブに向かっていき斧を振りかぶって斬りかかる。

 

俺はそれを阻止しようとするゴブリンを阻むように立ち、低い姿勢になって横薙ぎに刀を振るう。肉を切る軽い感触が手に伝わり、目の前のゴブリンから鮮血が舞った。痛みに悶えている間に傷口を踏み付け、新たに取り出したクラブで頭を潰し、トドメを刺す。

僧侶の方も杖の先端についた穂先で切る、突くといった動きを使い分け3匹を相手に巧みに立ち回っている。

 

残る4匹はまず邪魔な奴を倒そうと考えたのかこちらに向かって来る。

だが死角から攻撃する敵に人員を割かなかったのは悪手だ。真っ直ぐに突っ込んで来るゴブリンに向かって火の玉を投げる。ゴブリン達も横に避けるものの、1匹避けそこねたゴブリンはたちまち火達磨になって死んだ。仲間の無様をケタケタ笑うゴブリン達。

何故こいつらはここまで余裕なのだろうか?

目の前で戦力を減らされて呑気にわらっていられるとは…

そうこうしているうちに笑っている2匹が野伏の矢で射抜かれた。当たり前だ。

最初に襲撃を受けたときに矢を撃たれて、それが遠方の死角から撃たれていたというのに、何故それを排除するまえに隙を晒すのか。つくづくこいつらの知能の低さに呆れる。こういったところを見ると、下手したら何も考えず殺しにくる亡者達の方がよっぽど恐ろしいかもしれないと思う。

残りが自分だけになってようやく不利を察したのか、ホブの方に逃げようとする・・・が、背を向けた瞬間足に矢が刺さった。ちょうど足の腱の部分に刺さり、転んで歩けなくなっている。…見事な腕前としか言えない。暗い遺跡の中で、ゴブリンとはいえ、走り出した足の部位を的確に狙撃して逃走をさせないという手際は森人の技術の賜物だろう。俺は逃げられなくなったゴブリンに近づくと、首根っこを掴み浄火を放った。

 

「GOR…!?GORB!GORBaaaaa!!」

 

ジタバタ暴れるものの、内側に火が育った以上もう終わりだ。ゴブリンは逃げようとしたものの足を負傷しており、どうすることもできずに物言わぬ灰になった。

 

「おぉらぁ!」

 

見れば戦士のほうも体勢を崩したホブの脳天に斧を振り下ろしていた。力の乗った斧の一撃はホブの頭蓋を叩き割り、そのまま地に伏せた。

 

「これで…終いですかな!」

 

僧侶も左手の掌底の一撃を受けて、フラついたゴブリンを杖の穂先で突き上げてトドメを刺している。見れば周りにも頭が潰れた物、胴をバッサリ切られたような物が転がっている。どれも異なる手段ではあるものの、この僧侶が単独で仕留めていたことは明らかだった。

 

ゴブリンどもは弱い。それは事実だろう。だが囲まれればそれは脅威になるし、熟練の冒険者も囲まれれば疲弊し、最後には倒れてしまうだろう。新米ならば言うまでもない。2匹の時点で危険だし、3匹になればもう勝ち目は無いと言ってもいい。

そう思うと彼等はとても優秀なのだろう。僧侶という本来前に出て戦うような役割でなくとも3匹相手に油断も、慢心もせずに立ち回り、仕留めていた。

戦士も襲撃したのちに即座に簡潔に指示を出し、危険な大物を引きつけた。

射線を変えて、敵の死角から弓を撃ち続ける森人野伏もそうだ。

 

そうしてゴブリンの全滅を確認すると、スッと物陰から森人野伏が出てくる。

身軽さを感じさせる軽やかな足取りだ。

戦士も斧を担ぎ直して息を吐く。ベテランの風格ある堂々とした立ち姿をしている。

僧侶も地に屈み、祈りを捧げた後にこちらに歩いてきた。

 

「これで全部かしら?相変わらずこいつらはどこにでも出るわねー」

 

「増える前で良かったな。もう少し遅かったらここが奴らの巣窟になっていたかもしれん」

 

「皆、お怪我はありませんかな?その様子だと心配無用かもしれませぬが」

 

「ああ、奴ら如きに遅れはとらん」

 

刀の血を払い鞘に収める。しかし何故ゴブリンが?本当にこいつらは外から来たのか?

我々が早朝に入ったことを考えると、

奴らは俺達が野営している間に入ったか、予めここにいたかだ。だが予めいたならもっと増えていただろうし、何よりあんなふうに何か探すような素振りはしないだろう。今の時間は奴らにとっての夜になる。寝ぐらを探していたなら、奴らにとってはどこでもいいはず…

…そこまで考えたが駄目だ。俺が考えても憶測にしかならない。

そも考えることが苦手な自分が考察をしたところで答えはでないだろう。

 

「どうした?なんかあったのか?」

 

俺の様子を見かねたのか戦士が声をかける。疑念を振り払い返事を返した。

 

「いや何もない。ただ複数人いるだけでこうも違うものかとな」

 

「そりゃそうさ。仲間はいればいるだけ警戒の目も増える。それだけで奇襲を受ける確率は減るし出来ることも増える。誰かと組むってのも悪かぁねぇだろ?」

 

白い歯を見せてニッと笑う戦士。

 

優しい向日葵のような笑顔の森人。

 

うんうんと頷きつつも口元に笑みを浮かばせている僧侶。

 

俺はいい一党と出会えたのだろう。だが…

 

「…ああ、そうだな」

 

だが俺が返した返事はけっして明るいものではなかった。

過去に共にいた者達はみんないなくなっていったのだから。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

ゴブリンが出てきて以降は、敵という敵は出てこなかった。いくつかの罠はあったがそれも全て回避するか解除した。優秀な野伏がいれば罠に引っかかることはそうそうないのも当然か。

…だが何故だろうか。さっきから自分の中の警報が常になり続けている。引き返せと。これ以上進んでは行けないと。だが確証も無く言った所で、信じては貰えないだろう。

 

「しっかしゴブリンがいた以外は本当なんもねぇなぁ。罠ばっかで宝箱の類もねぇし…」

 

「文句言わないの。私達の目的はここの調査なんだから。何も無ければそれに越したことはないでしょう?」

 

「まぁそうなんだけどよ。しっかし拍子抜けだぜ。これじゃ直に悪魔退治の案件を持ってきた方が良かったかもな」

 

「お二人とも、まだ未知の領域故気を抜いてはいけませんぞ。放浪殿の実力は先のゴブリンでもある程度わかっているでしょう」

 

三人が何か言っているが耳に入ってこない。なんだ。何が俺をここまで警戒させるんだ?

やけに周りが静かな気がする。兜の中で冷や汗が止まらない。

深呼吸で落ち着かせても、すぐにまた鼓動が速くなる。

…駄目だ。過去に「何か」と相対した時にこんな状態だった気がするが心当たりが多すぎて絞れない。

 

そうこうしているうちに、また開けた場所に出た。

先ほどのゴブリンのいた場所と違いかなり広い。ここまでくると空洞の領域だ。ここが遺跡の最深部だろうか?

天井に生えている鉱石や壁に生えた苔が光を放ち暗いはずの地下空洞を明るく彩っている。

幻想的な光を放つ空洞の中は別世界のようだった。

 

 

だが、俺にとってそんなことはどうでもよかった。俺の視界の先には見覚えのある奴がいた。

いや、だがあれは…!?

「こりゃたまげたな…」

 

「綺麗…」

 

「地下にこんなところがあるとは…ご先祖様にも見せたかったですなぁ」

 

皆思い思いの感想を抱き述べる中、俺は終始黙っていた。いや、黙らざるを得なかった。

 

「おい、さっきからどうしたんだ?ずっと黙りこくっちまって…」

 

戦士が近づいて来るが、俺は「それ」から目を離さずに言った。

 

「…すぐにここから出よう。手遅れになる」

 

「…どうしたんだ急に?一体なにが・・・」

 

そこまで戦士がいったところで、奥でうずくまっていた「それ」は産声をあげた。

全員が声のした方向に武器を構える。

 

そこには「悪魔(デーモン)」がいた。

 

白く細長くも力強さを感じさせる手足に巨大な身体。

 

背中から生えた一対の大きな翼。そして全身にくすぶっている炎。

 

頭部には長い耳が両側から角のように生え、鋭い瞳が憎悪を滾らせてこちらを見据えている。

 

こいつには苦戦し何度も敗北したからこそ覚えている。だが、何故、此奴がここに・・・!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デーモンの…王子…!」

 

 

 

 

 

 

放たれた熱線が、視界を白く染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか日刊のランキングに載ってました。こんな処女作が41位て…
沢山の評価と感想ありがとうございます
当初は対して評価とかこんじゃろハハッとか思ってたんですがお気に入りと評価数が日に日に増えていくのを見てあれ?ってなってました
これを機に感想を返信していこうと思います。ここまで感想もらって評価してもらって後書きだけで返事返すのは失礼だと思うので。
え?遅いって?ごめんなさい!何でも(ry
あと誤字報告ありがとうございます。いつも投稿前に2 3回チェックするんですが自分だと気づかないもんですね…

最深部に登場する敵はダイスで決めました。
というか所々行動をダイスで決めている部分があります。
ちなみにダイス内容は
1D6→3

1→百足のデーモン(無印ダクソ)

2→眠り竜シン(ダクソ2DLC1)

3→デーモンの王子(ダクソ3DLC2)

4→マンイーター(デモンズソウル)

5→再誕者(ブラッドボーン)

6→何もいない。
でした。

フラグが折れるのか回収されるのかそれは神のみぞ知るってね。
建てる者もいれば壊すものもいるんだぜ・・・?

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