遊戯王オリジナルストーリー   作:鈴木颯手

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お久しぶりです。今回は短いです。


第二十二話「目覚め」

「……ここは?うぅ」

 

近藤遊大は体中に走る激痛を感じて瞳を開く。途端に視界いっぱいに光が広がり直ぐに目を閉じる。しかしそれも少しづつ光に慣れ始め周囲の様子が見えるようになった。どうやら病院の様で遊大はベッドに寝かされていた。途端に鼻には病院特有の匂いが広がり自分の状況を嫌でも認識させた。

 

「あれから……どのくらい、いや瑠奈は!?っ!!」

 

瑠奈の事を思いだし飛び起きるが体中に走った激痛がそれを阻害する。遊大は痛みで蹲りながらも周囲を見回す。どうやら四人部屋のようだが遊大以外に患者の姿はなく貸し切り状態であった。

次に腕へと視線を落とせばそこには意識を失う前と大して変わらない腕があった。少なくとも年単位で意識を失っていた訳ではないようだ。

遊大は隣にあるナースコールを押し看護師を呼ぶ。直ぐに駆け付けた看護師によって医者が呼ばれ簡単な検査を受ける。医者からは体に異常がない事、遅くとも一週間後には退院できるだろう事と、瑠奈の事を聞かされた。

性的暴力を受けた事による自我の崩壊。体の傷は回復傾向にあるが精神面での回復は絶望的という事。遊大は医者が去った後に一人泣いた。ずっと一緒にいた幼馴染とも思い出が浮かんでいき最後にガーゼットによってボロボロにされた瑠奈を思いだす。

瑠奈を守ってあげられなかった、助けられなかった。そんな事が頭に浮かび遊大の心を締め付けた。

 

「……瑠奈、ごめん」

 

遊大は誰に言う訳でもなくそう呟いた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆

〈やっほー、リッチー。元気にしてるー?〉

「デュークシェードか。何の用だ?」

〈いやいや、同じ四天王のお仲間がいたから声をかけただけだよー?〉

 

魔王城のとある通路にて四天王の一人リッチーロードは同じ四天王のデュークシェードに声をかけられていた。しかし、リッチーロードは不満げに顔を歪めデュークシェードは何が面白いのか笑みを浮かべていた。

 

〈知ってるー?東部管区で負け犬ちゃんの心棒者が反乱を起こしたんだってー〉

「その事か。既に鎮圧部隊を向かわせてある。明日には鎮圧官僚の報告が届くだろう」

〈相変わらずの地獄耳ですなー〉

「この位四天王として当然の事だ」

 

デュークシェードの言葉にリッチーロードはめんどくさそうに答える。魔王軍の指揮権を持つリッチーロードは毎日の様に発生する反乱の鎮圧のために忙しかった。なので四天王の中で最も仕事をしないデュークシェードとの会話は疲れと苛立ちを発生させていた。

 

「貴様もたまには四天王として相応しい働きをするんだな」

〈えー?ちゃんとしてるよ?さっきだって負け犬ちゃんの心棒者を天へと送ってきたんだし〉

「……何?」

〈それにしても魔王軍の質も落ちたよねー?こんな世界の中心地にまで沸くんだから。やんなっちゃうよねー?〉

「……そうだな」

 

リッチーロードは苦々しげに答える。魔王城にまで負け犬の心棒者が潜り込んでいた。この事実は軍を預かるリッチーロードからしてみれば許せることではなかった。特にデュークシェードに言われると馬鹿にされているような気がして苛立ちを募らせていた。

 

「……今一度城内の洗い出しをする。ご苦労だったな」

〈いやいや、四天王として当然の事だよー?〉

「……」

 

リッチーロードは返事もせずに奥へと歩いていく。その後ろ姿を見送るデュークシェードは笑みを深めて呟いた。

 

〈ほんと、良質な負の感情を生み出してくれるなー。ま、精々頑張ってねー〉

 


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