「瑠奈!試験結果が届いたぞ!合格だ!」
入学試験から一月後、遊大の家に試験結果が届いた。恐る恐る封筒の中身を空ければ合格の二文字があり遊大は近所迷惑になるレベルで喜びを露にして隣の瑠奈の家に突撃していた。
「すごい!流石は遊大だね!」
「当たり前だろ!何せジャニュアリーカップ優勝者だぜ?この位当然さ!」
瑠奈の誉め言葉に遊大は気をよくしたようで大きく胸を張りながら答える。そんな様子の遊大を楽しそうに瑠奈は見ていた。
「でも嬉しいからってあまり騒いじゃ駄目だよ?こっちにまで声が聞こえてきたから何かあったんじゃないかって心配したんだよ?」
「悪い悪い。つい嬉しくてな」
遊大はそう言って瑠奈の頭を撫でる。瑠奈は最初はくすぐったそうに身をよじったが直ぐに遊大に身を預け始めた。
「でもこれでまた遊大とは離れ離れになっちゃうね」
「いや、デュエルモンスターズ・ハイスクールは寮はあるけど基本此処から通学するつもりだぜ?それなりに近いからな」
「それもそうだけど学校でも一緒にいられなくなるっていう事だよ」
「あ~、そういや瑠奈って一年だったな」
遊大と瑠奈は二つ年が離れている。現在中学三年生の遊大に対して瑠奈は中学一年生である。その為瑠奈が遊大の後を追いかけてデュエルモンスターズ・ハイスクールに入学するのであれば後二年待たねばならなかった。
「しかし、今思うと瑠奈って結構すごいよな。今は何処をやっているんだ?」
「今は高校一年後期当たりかな」
瑠奈は遊大のためにと中学だけではなく高校までの勉強を行っていた。その為一から遊大の勉学を見てくれるように頼まれていた。本人は頼まれなくても行うつもりであったが。
「さて、そろそろ帰るか」
「あ…」
十分ほど瑠奈の頭を撫でていたが遊大も合格した事でいろいろと準備する物が出てきたためそろそろ戻ろうとして瑠奈の頭から手を放した。瑠奈はそれに一瞬声を上げ不満そうな顔をして来る。
「む~っ」
「ははは、そんなに膨れるなよ。またやってやるからさ」
「やっ!あと三十分!」
「いや、それはちょっと…」
瑠奈は抗議の声を上げ、遊大は苦笑した。瑠奈は遊大と二人だけの時は大抵このように甘えてきた。昔は一目があろうと甘えてきていたため大人しくはなっていたがその分二人きりの時には昔以上となっていた。
こうなると中々離れてくれないのを毎日の様に経験している遊大はため息をつくと瑠奈に提案した。
「分かった。ならデュエルで決めよう。俺が勝てば俺は家に帰る。瑠奈が勝てば三十分だろうと一時間だろうとなでなでしてやるよ」
「本当!?なら三時間なでなでの為に頑張る!」
瑠奈の言葉に遊大は「三時間…。腕もつかな…?」と若干負けた時の未来を創造したが勝てばいいと考えを改めた。
「なら早速ここで…」
「いいえ、これを使う」
そう言うと瑠奈はクローゼットの中から二つのデュエルディスクを取り出した。周りを青で塗られた物とピンクに近い赤で塗られた二つのディスクだ。
「これって最新版のデュエルディスクじゃないか!?かなり高くて発売した日に売り切れたっていう…!ていうかそれを二つも!?どうやって!?」
「いつも頑張っているからってお父さんが並んで買ってきてくれたの。あの時はとっても嬉しかったわ。ただ、一週間お父さんを見なかったから心配していたわ」
「おじさん一週間も並んでいたのかよ…」
瑠奈の父親は昔から瑠奈を溺愛しておりよく瑠奈の母親に〆られていた。最新バージョンのデュエルディスクを手に入れるために一週間並ぶのは娘への愛があるからこそだろう。因みに遊大と瑠奈の父親の関係は悪くはない。遊大を実の子の様に愛しており瑠奈に好かれている件も「他人に瑠奈を取られるならよく知っている遊大君に娘を貰ってくれた方がいい」と遊大に話したことがある。その時、知らない男に寄り添う瑠奈の想像でもしたのか持っていた缶を握り潰し目から血涙を出していた。
「これを使って裏庭でやりましょう。そしてそのままセxt「それ以上は言ってはいけない!まだ瑠奈には早い次元だ!」そう?」
瑠奈の爆弾発言に遊大は慌てて止めに入る。当の本人は何がいけなかったのかと首をかしげているが直ぐにデュエルディスクを遊大に渡して裏庭へと歩き始めた。
遊大もホッとため息をつき瑠奈の後を追って裏庭へと向かって行った。