指揮官とG3がお送りするドルフロ銃解説   作:スツーカ

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銃の歴史その5 〜機関銃の登場〜

指揮官

「指揮官と」

 

G3

「G3がお送りする」

 

「「ドルフロ銃解説~」」

 

指揮官

「今回は世界大戦で大量の戦死者を出した要因となった機関銃について解説しよう」

 

G3

「機関銃が登場する前にも弾を大量に撃てる銃は存在しました。リボルバーのような構造のパックルガン、銃身を何本も束ねて斉射するミトラィユーズ、そして多数の銃身を回転させ次々と射撃するガトリングガンなど、幾多のアイデアと試作、正式採用されたものがありました」

 

指揮官

「だがどれも欠点があった。一つ目は大きく重たいこと、二つ目は多数の銃身が必要なこと、三つ目は斉射すると装填に時間がかかることだ。ガトリングガンもミトラィユーズも当時の大砲と何ら変わりない大きさで、運用には多くの人員が必要だ。さらにミトラィユーズはライフルを何丁か束ねて斉射しているだけだから、持続して撃てず装填も大変なんだ」

 

G3

「しかし、1884年にハイラム・マキシムが世界を変えた画期的な銃を開発します。連続して撃ち弾幕を張ることができる銃、世界初の機関銃"マキシム機関銃"の登場です」

 

指揮官

「構造は下の画像を見てくれ。マキシム機関銃は撃った時の反動を利用して次々と弾を装填、発射、排莢を行うんだ。発射の反動で銃身と遊底が少し後退すると、銃身と遊底の閉鎖が解除され遊底だけ後退する。そして遊底は排莢を行い、弾薬ベルトから弾を引き抜き、バネの力で戻ってくるときに次の弾を装填する。この反動を利用する方式を反動利用式、あるいはショートリコイル式と呼ぶ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

G3

「このようにして連続した射撃を可能にした要因として、前回触れた無煙火薬があります」

 

指揮官

「無煙火薬は黒色火薬より煙や煤が出ず、発射時に出るガスが多く反動が強い特徴がある。煙や煤が少なければ連続した射撃でも敵が見えなくなることは無く、煤で銃が汚れて故障する頻度は低くなる。さらに強い反動で自動装填できる機構が動かせるようになった。だが連続射撃すると、発生した高温の燃焼ガスが銃身を熱してしまう。銃身が熱くなりすぎると銃身が摩耗し、やがて熱で柔らかくなって曲がったり折れたりしてしまう。それを防ぐため、マキシム機関銃は銃身の周りを水で満たす水冷式銃身を採用した」

 

G3

「一方、1897年にフランス軍はマキシム機関銃と対照的な機関銃を採用しました。オチキス社が開発した"Hotchkiss Mle1897機関銃"です。Hotchkissのフランス語読みはオチキスですので注意してくださいね。仕組みは以下の画像をご覧ください」

 

 

【挿絵表示】

 

 

指揮官

「このオチキス機関銃は発射時に出るガスを利用した。発射時に出た燃焼ガスの一部をガスポートに取り込む。取り込んだガスでオペレーションロッドを押すと、連動して遊底が薬莢を掴み排莢する。遊底が下り切るとバネがオペレーションロッドを押し返して元に戻り、そのときに弾薬ベルトから次の弾を装填する。このようにガスを利用する方式をガス圧作動式、またはガスオペレーション式と呼ぶ」

 

G3

「オチキス機関銃はマキシム機関銃と違い、水ではなく空気で銃身を冷やす空冷式銃身を採用しました。表面積が増えると銃身から空気中に伝わる熱の量が増えるので、銃身に突起をたくさん付けることで銃身を冷やしました」

 

指揮官

「マキシム機関銃はアメリカ、イギリス、ドイツ、ロシアで、オチキス機関銃はフランス、日本でそれぞれ使用され、各国でそれぞれの機関銃を元に発達させていった。日露戦争でロシアがマキシム機関銃を、日本がオチキス機関銃を使用し、第一次世界大戦でイギリスはヴィッカース機関銃、ドイツはMG08、ロシアはPM1910としてマキシム機関銃を改良し、フランスはオチキス機関銃を改良したオチキスMle1914を使用し、塹壕戦において幾多の死体を積み上げていった」

 

G3

「第一次世界大戦は別名"機関銃の戦争"と呼ばれるほど機関銃が猛威を振るいました。ドイツ軍の編制を例に見てみると、戦争が始まった1914年8月の編制では連隊(2000~3000人程度の部隊)にMG08機関銃が6丁だけ配備されているにすぎませんでした。ところが、戦争末期の1918年10月には同じ連隊でも機関銃は36丁にまで増やされています。このことから、機関銃はがいかに猛威を振るい、そして重宝されたがわかります」

 

指揮官

「ここでマキシム機関銃とオチキス機関銃の比較をしてみよう。マキシム機関銃は反動利用式で水冷式銃身、対してオチキス機関銃はガス圧作動式で空冷式銃身だ。反動利用式は撃った反動を利用するから内部の機構が複雑で重くなりやすいが、ガスを利用しない分汚れにくく故障しにくい。ガス圧作動式は反動利用式に比べ内部は簡単で軽く作れる。だがガスを内部に入れる分汚れやすく分解整備を多く必要とする」

 

G3

「銃身の話になりますと、水冷式銃身は水で冷やすので連続射撃しても熱で銃身がダメになるまでの時間が長くなります。ですが水がある分重くなり、消耗した銃身の交換がしにくくなります。空冷式銃身は水が無いので格段に軽くなり、また銃身の交換も容易に行えます。ですが水冷に比べ冷やす効率は劣るため、持続した射撃をするとすぐに熱で銃身がダメになってしまいます」

 

指揮官

「区切りが良いからマキシム機関銃とオチキス機関銃の比較で今回は終わりにしよう。次回は第一次世界大戦で登場したもう一つの機関銃について解説だ。それではまとめだ」

 

・1884年に世界初の機関銃、マキシム機関銃が登場した

・マキシム機関銃は反動を利用して装填、射撃、排莢を行い、銃身を水で冷やす

・1897年に世界初のガス圧作動式の機関銃、オチキス機関銃が登場した

・オチキス機関銃は発射時に出たガスを利用して装填、射撃、排莢を行い、銃身を空気で冷やす

・反動利用式は汚れにくいが重く複雑になりやすい。ガス圧作動式は軽く単純に作れるが汚れやすい

・水冷式銃身は効率よく冷やせるが水の調達が必要で重く、銃身交換がしづらい。空冷式銃身は軽く銃身交換が容易だが、冷却効率は水冷式より低い

 

G3

「いかがだったでしょうか? それでは皆様」

 

「「次回もお楽しみに」」

 

 

 

トンプソン

「戻ったぞ、人質の取引も成功した!」

 

指揮官

「お帰りー……ん? 冗談だよな?」

 

トンプソン

「街で立て籠もりがあったから解決してきたのさ!」

 

指揮官

「そうかそうか、それで後方支援の交通統制は? ……うん、その表情だと忘れてたみたいだな。始末書書いてこい」

 

トンプソン

「なっ!? 事件解決してきたんだから頼むよボス!」

 

G3

(命令違反で営倉入りじゃないだけマシだと思いますよトンプソンさん)

 

 




作者
「マキシム機関銃とオチキス機関銃の仕組みについては以下の動画が大変参考になったので、ぜひ見てみてください。この解説より遥かに理解できます」

参考文献
Maxim Transitional Machine Gun 1885 2019年1月15日閲覧
https://www.youtube.com/watch?v=D1CpLaVfnq8

Hotchkiss 1914 2019年1月15日閲覧
https://www.youtube.com/watch?v=4gJB7vE81G4&t=78s

マキシム機関銃 - Wikipedia 2019年1月15日閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/マキシム機関銃

ホッチキス Mle1914重機関銃 - Wikipedia 2019年1月15日閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/ホッチキス_Mle1914重機関銃

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