《リュウジョー平原》
「グォオオォォォ………」
「やっ…たぁ………」
咆哮を上げ光を放ち消えてゆく『地を這うドラゴン』を目にし、そっと勝利したことを悟る…。
その瞬間、身体中から力と緊張が抜け、意識は闇に落ちたのだった…。
「召喚士殿!」
「ゴードン殿、ご無事で。」
「ああ、それよりあの巨人は…?」
「分かりません…」
「…ですが、あれが現れる直前、周囲のソウルがあの者を中心に集まるのを感じました。恐らく彼が…」
そう話すと少し離れた場所で俯せになる青年に目をやる。傍らには子供達が歩み寄り様子を確認している。
「彼が…私たちを…」
「父ちゃーん、おっさん気ぃ失ってる!」
「いかん!クルス、荷車まで運ぶぞ。手伝ってくれ。」
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「……………ん?」
「あっ、起きた!」
「よかった~お兄さん大丈夫?」
「父ちゃ~ん、おっさん起きたよ~!」
気が付いたら毛皮の様な敷物に仰向けに寝かされていた。いったい何時間経ったのだろうか…空も周囲もすっかり夕焼け色に染まり、焚き火の心地よい音がパチパチと鳴っている。
「………ここは?」
「お目覚めになりましたかな?
ここは私たちの野営ですよ。調子はどうです?」
「ええ、もう大丈…イテテテッ!?」
身体を起こそうとした途端、全身に痛みが走る。
「おっと、まだ寝ていた方が良い。あれだけの事があった後です。体が休まるまで安静にしていて下され。」
「お気遣いどうも。」
「あんなのに襲われましたが、皆さんに会えてよかった…あのままひとりで草原を彷徨っていたらと思うと今は救われた気分です。」
「それより、おっさんこんな所で何やってたんだ?ここからだとどっちに進むにも最寄りの町には1日以上は掛かるぞ?」
「こらっ!」
自分にふと思った事を問いかけたのであろう、恩人を『おっさん』と呼ぶ様を父親は小さく叱った。
「失礼、そういえば自己紹介がまだでしたね。私はグッジ・ゴードン。ここ『地の国』で行商人をしてます。」
「あと、この子が兄のクルス、そっちのが妹のクーです。」
「子供達を守っていただき感謝します。(_ _)」
「ありがと…。」
「お世話になりました。」
兄妹は揃って行儀よく挨拶した。
「ご丁寧にどうも、自分は菊地 遊介、周りからは“ユースケ”って呼ばれてます。」
ごくごく普通に礼儀よく名乗り返した。ただそれだけだったつもりなのだが…
「アハハハwww」
「クスクス…w」
「こらっ!!(# ゜Д゜)」
兄妹は急に笑いだし、すかさず父親が叱りつけた。
「重々子供達が失礼を…ただ何の抵抗もなく名乗れるのを見るに、どうやらユースケ殿は私たちよりずっと遠くから来られたようですな…ここへはどんなご用で?」
どういう事だろう?こっちだとそんな変な名なのだろうか…?あと、この親父さん鋭い!流石行商人と言ったところか…
しかし、どうしよう…「多分、異世界から来ました」なんて言い出せないよな~…。折角知り合えた人間関係を崩さぬためだ、ここは世界観を合わせつつ尤もらしい嘘をつこう…。
「すぐ隣の国で冒険者をやってます。今日はここまで怪物退治に………」
「………(゜д゜)」
「………(・◇・)」
「………(゜.゜)」
三人からキョトンとした表情をされ思わず台詞が詰まる…。
「ボウ…ケン…シャ?」
「何だそりゃ?」
「お父さんお腹すいたー」
「え?(;・ω・)」
「えーと…冒険者知りません?勇者とかハンターも??」
「勇者…ですか? 数百年前の大戦時代には英雄と呼ばれる方々は居ましたが…」
「“はんたー”って…?何だおっさ…お兄さん?」
「もしかして…探検家ってことでしょうか?測量もやり尽くされたこのご時世に珍しいですね…」
「あと、『隣の国』って…、『炎の国』は今ぼーどー?が起きてて近付けないらしいし、『闇の国』の国境はそもそもお偉いさんしか通れないぞ?ユースケどうやってここまで来たんだ??」
なんてこった…!
この世界には冒険者居ないのか!?しかもその場しのぎの嘘が何もかも裏目に出てしまった…
まずいな…どうしようか…
「あの…」
「ん?どうした、クー?」
「もしかして………」
「ユースケさん『聖都』から来たんじゃ…」
「あぁ、そうか!ここからかなり遠いが確かに聖都とも繋がってるな~!」
「なんだ~!じゃあユースケってどっかの貴族様なんか?どおりで名前も格好も変だと思った。」
「こらっ!クルス!!(# ゜Д゜)」
「ごめんなさい!……それで実のところどうなの?ユースケ?」
残念だがクルスくん、実のところ全然違うゾ!
けど、好都合だ。このままお忍び貴族に成りきろう。
「まぁ…大体そんなところです。余り騒がれても困るので身分については内密に…。(;´∀`)」
「隠し事なんてすると悪い子になっちゃうよ~(ニヤニヤ」
クーのかわいい追い討ちにギクリとしながらも会話はさらに和やかに進む。気が付けば辺りは日が落ち暗くなっていた。そんな最中に…
「私からもひとつ質問よろしいかな?」
ローブ姿の若者…召喚士が荷車の影から焚き火の灯りの下へ現れた。
「召喚士殿か、索敵術の敷術お疲れさま。」
「申し遅れました…私はアミア・カルヴァン。」
「此度の軍への物資輸送にあたりゴードン殿に護衛として雇われた召喚士です。」
そう名乗り、召喚士は頭をすっぽり隠していたフードを上げ素顔を晒す。
赤みを帯びた暗色のセミショート、切れ長な目をした綺麗な女性だった。ただ、表情が冷たく固いのと暗がりなためこっちの目には少し怖く映った…
「えーと…どうも、アミアさん。」
「それで質問って…?」
「昼間、あなたが私たちの目の前で召喚したあの巨人…あれは何なのでしょうか…?」
周囲の笑い声が止んだ…。皆、息を飲むようにこの話題に集中しだしていた。
「実は俺自身もよく分からない。」
「ただ…」
(ガサゴソ…)
「このカードを俺は10年以上遊びで使い続けている。何の変哲もない紙で出来たカードのはずなのに、あの時は光っていて“闘え”って念じたら本当にこの『バスター・ブレイダー』を召喚出来たんだ…。」
「バスター・ブレイダー…あの巨人の名か…」
「お答えいただき感謝する。」
召喚士はそう言うとまた深々とフードを被り焚き火の傍に座り込んだ。
子供達は自分が手に持つ『バスター・ブレイダー』のカードを食い入るように見つめ、かっこいいとか綺麗とか口にしている。二人共、元の世界の子だったら立派な
「さて、皆揃ったことだしそろそろ夕食にしよう。昨日町で買った肉があったな…あれでご馳走にしようか。」
「ほんと!?やったー!!ヽ(・∀・)ノ」
「わーい!ヽ(´▽`)/」
『夕ご飯はお肉』という発表に兄妹揃ってはしゃぎだした。その後皆で豪快な夕食を取り、グッジさんに火の番をお願いして眠りについたのだった…。
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《深夜》
(パチパチ…パチパチ…)
「ゴードン殿…」
「眠れないのですかな?」
「あの者、自分の出処については嘘をついてましたね…。」
「そなたも気付いていましたか…三級召喚士ともなると流石に芸が多才ですな。」
「やはり怪しいです。このまま同行させるのはどうかと…」
「召喚士殿、ただ、ユースケ殿はそなたの質問には何も隠さず答えたように見えたが…それでも信用出来ないですかな?」
「…読まれていると覚ってした演技かもしれません。」
「………」
「………」
「今日はもう遅い、この話しはまた明日にしよう。それまでくれぐれも早まる事の無いように。」
「…承知しました。」
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《翌朝》
「ふぁぁ~~父ちゃんおはよう~。」
「おはようございます、グッジさん。」
「おはよう、クルス、ユースケ殿お身体は大丈夫そうですな?」
「ええ、おかげさまで。」
「ふぁぁ~…、流石に寝ずの番だと朝が辛いな…。クルス、父さんちょっと仮眠取るから見張り交代出来るか?」
「いいよ~、おやすみ~。」
「じゃあ、頼んだぞ~。」
まだ眠たそうなクルスと交代して徹夜だったグッジさんは仮眠のため荷車までフラフラ歩いていく。そこへ…
「ゴードン殿、ちょっとよろしいですか?」
「昨夜の件ですかな?それは少し後で…」
「いえ…、積み荷に見慣れない物が紛れていたので確認をと思いまして…」
「見慣れない物…?わかりました。確認しましょう。」
「こちらへ…」
布張りの荷車に二人は入ると、召喚士は積み荷の武具の横に転がる小さな何かを指差した。薄暗い中、グッジはそれを拾い確認する…。
「これは…召喚士殿、そなたの魔道具ではな…」
(ドゴッ)
グッジは後ろの召喚士に振り返ろうとした瞬間、背後から剣の鞘で頭を打たれ、そのまま気を失い倒れた。
「ゴードン殿…
そう呟くと、召喚士は杖を取りユースケのもとへ進む。周囲のソウルを火の粉よのうに紅く散らせながら…。
「お兄ちゃん達おはよ~。」
「おはよー。」
眠そうなクーも焚き火の前にやってきた。先に起きてたユースケは焚き火に枝を足し暖を取り、その横でクルスは昨日の肉についてた骨を焚き火に放り込んでいた。
「え~クルスお前何してんだよ?(;´д`)」
「知らねぇのか~?こうやって焼いた骨の中身が旨いんだよ~。」
(ボウッ!!)
「何だ!?急に火が!??」
パチパチと小さく燻っていた焚き火が急にゴウゴウと身の丈まで燃え上がった。
「………火のソウルが強まってる?」
「お兄ちゃん…あれ。」
「召喚士…さん?」
火のソウルを逆巻かせた召喚士がこちらへ歩いてくる。草むらを進むたび草の先は焦げ、所々で発火する…。
「二人とも、その者からお離れ下さい。」
「いきなりユースケから離れろって何でだよ!?何のつもりだ召喚士さん!?」
「その者は八界を脅かす反逆組織『ヤタガラス』の構成員の疑いがあります…!」
次回‐