リアルのほうが忙しくて(主に宝石集め)執筆が滞ってました!m(_ _;)m
なんとか執筆の時間が出来てきたので、スローペースですが投稿していきます。
《ポカポク 温泉街 大浴場》
「ギュオォォ………」
まるで打上げ花火のような空中戦は、飛竜の撃破により終結し、夜空には僅かな燻りと風のソウルの粒子だけが残っていた。
(バサッバサッバサッ…)
(シュタッ…)
使命を果たし、ユースケ達二人のもとに鷲獣と守護者が舞い降りてきた。双方共、大掛かりな技を放って消耗したのだろう、身体の端が既に粒子化し消え出していた。
「お疲れさま、ゆっくり休んでくれ。」
「ごめんね…もう盗まれたりなんてしないから、ありがとう…。」
労いの言葉を受けると召喚獣は光の粒子に包まれ、各々の依り代に戻ったのだった。
(ドタドタドタ………)
(「ここか?よし…」)
(バタンッ)
「!?」
風呂場の戸が開き、皮鎧姿の男達が入ってきた。飛竜との戦闘が終わり一息つく間もなく緊張が走る。すると先頭に居た大柄の男が二人に語りかけた…
「召喚士が二人…」
「もしや竜と交戦してた霊獣の主様か!?」
「は…はい。」
「失礼、我々はポカポクの自警団、住民の退避が済んだので加勢すべく集結したのだが…」
「竜はどこに!?」
「俺たちが倒しました。光になって消えたんであれも召喚獣だったと思います。」
「なんと…!?」
「皆の衆、道を開けてくれんかねぇ~?」
「あ、さっきのお婆さん!?」
「母さ…いや、村長!?どうしてここに?」
「竜と闘ってる霊獣がいると聞いてもしやと思ってねぇ…やはりあなた方でしたか~。」
「村長、この方々は…?」
「うちの宿のお客人さ、ついさっき霊石様の前で会ってねぇ~。」
「こんな所ではなんだ、ブロキス、この方々を宿までお連れしな!」
「他の者は被害の確認と住民の誘導を、『竜は倒された』と皆に伝えるんだよ!」
「ハッ、直ちに!」
「召喚士のお二方、こちらへ…」
二人は『ブロキス』と呼ばれていた自警団員に連れられ『泉湯郷』へ戻ることに…
その様子を何時から見ていたのか、首もとに玉石を付けたコウモリがずっと静観していた。
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《地の国 旧街道 峠道の外れ》
(パチ………パチ………)
徐々に弱まる焚き火の灯りのもとで黒い外套を被った男は玉石とイラスト部分が空白になった二枚のカードを凝視する…
(キラキラ…スゥ…)
「ほぅ…」
漂うように飛んできたソウルの鱗片がカードに溶け込むとカードに再びイラストが浮かび上がった。
「なるほど、召喚獣と勝手は同じか。」
「地の
男は水晶玉に映るユースケ達を見つつ小さく一言つくとゆっくり立ち上がり…。
「さて…雑魚の相手はもう飽きたろう、先を行こうか!」
男が繁みに向け呼び掛けると、草木の暗がりの奥で紅い眼を光らせ巨大な何かが蠢きだす…。
「グルルルル…」
辺りには黒焦げた獣の亡骸が散らかり、生き物の焼けた嫌な臭いと燻りが静かに立ち登っていた。
「おいおい…“追い払え”と言ったはずだったが…」
(ザクッ…ザクッ…)
巨体が男のもとへ進む度、禍々しい爪を持つ足が殆んど炭化した“それ”を次々と踏み潰していく。
「先回りしよう、ポカポクを越えどこか見晴らしの良い場所へ。」
「グルルルル…」
「…どうした?」
「グォルルルル…」
「ふっ…まぁ待て、そのうちまた存分に暴れさせてやるさ。」
「さぁ…」
男を腕に乗せると、巨大な翼を広げ木々を丸ごと薙ぎ倒す程の羽ばたきで飛び立つ。夜空に浮かぶ大きな月に映し出されたその影は、まるで竜のようであった…。
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《ポカポク 温泉街 泉湯郷 》
「こちらへ。」
「あの…俺たちの部屋はあっちですよ?」
(ガラッ)
「えっ!?」
「うわっ!?」
「本日は、此方の『賢人の間』をお使いください」
戸を開けるとそこには広々とした部屋が用意されていた。室内には床の間や生け花など旅館を思わせるような飾りつけと…
「すごい…畳だ!」
輝くような緑色の風情溢れる畳が一面に張られていた。
「ええ、風の国から取り寄せた『晴嵐草』で編んだ最高級の畳になります。仄かに発する風のソウルがお身体の疲れを癒すのだとか…。」
「いいんですか?」
「あなた方の活躍あってこの村は守られたのです、どうか我々の感謝としてお受け取りください。」
「………」
会話とは裏腹に心境は複雑だった…
やつらの目的は不明だが、飛竜と毛玉の狙いは明らかに自分達だった。そして自分達が居たせいでこの温泉街を巻き込んでしまった。
「ご遠慮なさらず、どうぞ。」
にもかかわらず…こうやって感謝されてしまっている。
(コツン)
「痛っ!?」
「ちょっとユースケ、何ぼさっとしてんの?」
「ありがとうございます。相方も疲れてこんななんで遠慮なく休ませてもらいますね」
「では、御食事までごゆっくりと。」
(ガラッ)
「………」
「………」
「………納得出来ない感じ?」
「え?」
「そういう顔してる」
「アミア…俺は…感謝なんてされるべきじゃ…」
「わかってる、あいつらの狙いは私達だったかもしれない。そのせいで村が襲われたのかもも、けどね…」
「あんたが村を守るために頑張ったのも事実よ、誇りなさい、自分の働きを。」
その言葉の、その表情の温かさで気持ちが少しずつ楽になっていくのを感じた。
「ふーっ…そうだな、ありがとうアミ…」
(ぐらっ…)
アミアの方へ向き直そうとした瞬間、天井がぐるっとひっくり返ったような感覚になった。視線の先のアミアも驚いたような顔をしている。そして…
(バタッ)
「ちょっと!?ユースケ!!?」
「誰かー!!宿の人──!!」
遠のく意識の中、アミアの慌てる声をが聞こえたのを最後に意識は真っ暗な闇の中に墜ちていったのだった。
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「う………」
(ざわざわ)
(「おぉ、気が付いたぞ!」)
まだ視界がボヤける中、周りからざわめきが聞こえてくる。気を失なってる間にかなりのギャラリーが押し寄せたのだろう、正常に戻りつつある視界にはぐるっと一周顔で囲われていた。
「ユースケ…よかった、効いたみたいね。」
「アミア…?うぇ…にげぇ!?」
アミアに気付いた瞬間、口の中一杯に鉄臭い苦味を感じた。それは朦朧としていた意識を一気に正気に引っ張り上げるようなほど強烈だった。
「召喚士でしか作れない『ソウル切れ』の特効薬よ、我慢して飲み込みなさい!」
(ごくん…)
「うっぷ…ソウル切れって?」
「うーん…召喚獣の力って召喚士自身の力でもあるの…」
「だから召喚獣に強力な技を使わせると召喚士も同じくらいソウルを持ってかれて…訓練してないとあんたみたいにソウルが空になって倒れたりするのよ。」
「なるほどね…大体分かった。」
「何が“大体分かった”よ!」
「酷いと命まで落とすこともあるんだから感謝しなさい!」
「ごめんごめん、助かったよアミア。」
「いやぁ~、倒れたと聞いてびっくらこきましたがぁ~大事にならずで一安心でしたねぇ~。」
「ん?」
声の主はあのお婆さんだった。外で会ったときとは違い着物のような服を着ていて、別人かと思うほどの雰囲気をしていた。
「お婆さ…じゃなくて村長さんでしたっけ…?」
「ええ、けれどここ『泉湯郷』の大女将も務めてますんでねぇ~“女将さん”と呼んで頂ければ幸いですぅ~。」
「どうも、女将さんご心配お掛けしました。もう大丈夫です」
「いえいえ、大事にならず幸いでしたぁ~。」
「しかしまぁ…師弟愛ってもんですか、まさかあんな方法で薬を調合するなんてねぇ~。」
「え?どゆこと???」
「あー、いーのいーの、そんなこと。」
「それより女将さん、ユースケも元気になったし御食事でもしながらお話ししませんか?」
(俺は何飲まされたんだろう…?)
「おやまぁ…御食事の用意は整ってますがぁ…起きたばかりで本当によろしいですかぁ~?」
「俺ならこの通り…」
「もう大丈夫です。ご飯のほうよろしくお願い出来ますか?」
「かしこまりましたぁ~!」
(パンパン)
女将さんが手を叩くと大きな魚の姿焼きや鮮やかな赤い野菜?が盛られた豪勢な食事が運ばれてきた。
「ポカポク特産の『熱泉鯛』と『七宝草』を使った御膳になります。」
「廃れた街道の奥地故、こんな物しかご用意出来ませんが~どうか~お召し上がりください~。」
「豪勢なご馳走じゃないですか!?僕らには勿体ないくらいですよ。いただきます!」
「よろしければお身体休まるまで何泊でもしていってくだされ、私供は大歓迎ですょ~?」
「あぁ…それなんですが…」
「実は私たち急ぎで聖都まで向かってる最中で、明日には次の町『ルートルビア』に向かって出発しないとならないんです。」
切迫した口調でアミアが話し出す。まぁ当然だろう、何せ召喚士資格剥奪が掛かってるのだから…。
「次は『ルートルビア』に向かうのですか~。でしたら…」
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《東京某所 イベント会場前》
「そうですか…調べ物ありがとうございます。」
(ピッ)
「左京さ~ん、ドンピシャです。大会参加者の名簿に天光龍姫さんの名前がありました!」
「やはり大会とはこの事だったようですね。」
「さっきの電話、麦澤さんからっすか?」
「ええ、龍姫さんの元親を調べてもらってたのですが…どうやら両親共、3年前に火災で亡くなったそうです。」
「ってなると、元親の誘拐って線は…」
「消えましたね。」
「あ、あと左京さん!実はっすね名簿の中に気になる名前が…」
「おや…?」
兎谷が持ってきたCS参加者リストには失踪中の“菊地遊介”“風間隼人”“門音静香”の名前が載っていた。
「共通点の無いように思われてましたがこんな所で繋がってたとは…しかし…3名だけですか?」
「え?」
「カードゲーム繋がりの可能性は高いようですが、失踪者全員の名前が揃ってない点からして、事件への関与は断言出来ないということです。」
「ひとまず、我々は龍姫さんの動向を辿りましょう。」
「えぇ…ちょっと待ってください左京さ~ん!」
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《東京某所 駅前公園》
公園に建つ大きな電波塔、失踪間際に天光龍姫の送ったであろうメールを受信した電波塔だ。松上と兎谷は彼女の動向を掴むべく塔のある公園まで来たのだが…
「皐月さん宛にメールが送られたのが、この電波塔の管轄内の約半径5㎞、となるとこの公園を中心としたビル群、あとは駅構内もでしょうか?」
「一応、サイバー課に会場を出てからの龍姫さんを追跡するよう依頼したんすが…あいつら応答無いっすね。」
「まぁサイバー課も例の失踪事件で忙しいのでしょう。ここは気長に…おや?」
松上の視線の先、公園の外縁に設けられたベンチの近くでスーツ姿の見慣れた顔が妙な動きを繰り返していた。
「これは捜査一課の芦沢さん、奇遇ですねどうしました?」
「うおっと!!特令係さん!?」
「どうも。」
「うっす。」
「僕ら例の失踪事件の捜査をしてて…先輩待ってる間、失踪者の間近に居たっいう友人の証言を見ながらこうやって…事件当時をイメージしてるんですよ。」
「その左手の紙が証言でしょうか?」
「あっハイ、良かったらどうぞ。」
「どれどれ…」
「これはこれは警部殿、それと兎野郎…」
背後から番犬が吼えるような重みのある声で一人の刑事が語りかけてきた。
「二人揃って今度は不思議の国の入口でもお探しですか?」
「何だとこの野郎!」
「これは伊原さん、聞きましたよ?例の失踪事件の捜査だとか…。」
「警部殿もこの
「いえ、我々もそちらとは別件で捜査中なのでご安心を、それより…」
「捜査一課が失踪事件の捜査とはまた珍しいようですが?」
「何せ首都監視システムを電磁波で狂わせてまでの犯行ですからねぇ、誘拐テロの可能性もあると上が判断したんですよ。」
「ほぅ、誘拐テロ…それと電磁波ですか…。」
「チッ喋り過ぎたか…行くぞ芦沢!」
「あぁちょっと、先輩!?」
「あ…何か分かったら僕までよろしくお願いしますね。」
「ほんと好かねぇ野郎っすね。」
「ええ………おや?兎谷くんこれを…」
芦沢から受け取った紙束、そこには諏訪部順一による菊地遊介失踪直前の目撃証言が記されていた。松上はその中の一行に指を当てる。
「店を出て彼の元へ戻ると彼の姿は無かった。5時58分」
「龍姫さんがメールを送った直前です。」
「この近辺でそれもほぼ同時刻に二人も失踪者が出た事になりますねぇ。」
(プルルルル…)
「お!サイバー課からだ…」
『もしもし…サイバー課の赤木です。まったくこっちは例の失踪事件の調べ事で大忙しだってのに…』
「あぁゴメンゴメン、今度飯でも連れてくから。それでお願いしてた女の子の追跡どうだった?」
『髪色が特徴的だったので自動追尾し易かったですよ。ちょっと待ってください…』
『まず1時40分に大会会場を出たあと、徒歩で移動しながら屋台でホットドッグを買い、近くのカード屋に入って…そこで2時間近く滞在してます。』
『その後店を出て、5時40分には駅前のマクドナルドに入っていきました。依頼にあった6時3分は多分店内じゃないでしょうか?』
「サンキュー、それで…そのあと彼女は?」
『それがですね…店を出る姿が写ってないんですよ。』
「写ってない?」
『もっとも、その一帯は5時47分から6時30分まで監視カメラが応答不能になりましたから、その隙に店を出たと思うんですがね…』
『おかしな事に、それ以降彼女の姿が首都監視システムの自動追尾にヒットしなくなったんです。』
『まぁ監視システムは23区内しかリンクしてませんから、すぐそこの駅で都内を出れば監視外になりますね。』
「ありがとう、じゃ失踪事件頑張ってな!」
『あっ!ちょっt…』
(ピッ)
「サイバー課からはどうでした?」
「5時40分にそこのマクドナルドに入ってから追跡が途絶えたそうっす。」
「では、調べてみましょうか。調度この証言にもそこの事が書かれてたので興味があります。」
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《駅前マクドナルド 店内》
「いらっしゃいませ。」
「すみません、警視庁の松上という者ですが…」
「あの…刑事さんならさっき調べに来たばっかりですよ?」
「すみません、彼らとはまた管轄が違いまして…お手数ですがこちらの店舗の防犯カメラを確認させて頂けませんか?」
「あ…はい、こちらへどうぞ。」
カウンター奥のモニター室へ通されると店長から1枚のディスクを手渡された。
「これが一昨日の録画になります。確認が必要でしたらそっちの小さいモニターで再生してください。」
「ご丁寧にどうも。」
二人は小さなモニター前に屈み、ディスクを再生する…
5時40分、サイバー課の報告通り天光龍姫が入店してくる…
5時50分、今度は諏訪部順一が証言通り店内へ、そして…
「左京さん、これ…!」
映像内の時間が進むにつれ、二人は瞬きすら忘れる程に釘付けとなった。そこに写っていた不可解な現象と謎の人物に…
そして6時18分…
(ザ────)
映像は途絶え、二人は苦悶の表情のまま屈みきりだった姿勢を元に戻した。
「左京さん…これって一体?」
「わかりません、ですが、この時何が起きてたかは恐らく“彼”が教えてくれるでしょう。それと…」
「あとあの男っすね…何者でしょうか…?」
「龍姫さんがメールを送ったタイミングといい…この男性が龍姫さんの失踪に関与してると見て間違いないでしょう。」
「手掛かりを掴みましたね…これでなんとかこの事件も峠を越えたってとこでしょうか。」
「ええ…最初の…。」
「え?」
「分かりませんか?長くなると思いますよ。この
これから進む険しい
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《ポカポク 温泉街 泉湯郷》
「登山道?」
「ええ~、ここポカポクは古くからタカーオ山脈の最高峰アタゴンに向かう登山客の足掛かりでしてねぇ~。」
「その登山道って今でも通れるんですか?」
「登山流行りも遠退いて久しくなりますんでねぇ~…」
「道は荒れてるでしょうが~、山脈に沿って回る旧街道よりず~~~っと近道ですよぉ~。」
「どうする…アミア?( ̄~ ̄;)」
「行くっきゃない!( `・ω・´)」
「ですよね~。( ̄▽ ̄;)」
「ではぁ~、今夜は旅の安全を祈り宴といたしましょうかぁ~どうぞどうぞぉ~。(*´∀`)つ」
(「えーいどーにでもなれー!(;´д`)」)
これから進む険しい
ご精読ありがとうございました。
お気付きかとは思いますが、現世組の警察キャラ達はまんま相○をイメージして書きました。
作者として自分で一から想像したユースケ達も大好きですが、彼らも同じく大好きなので、双方ともどうか応援してやってください。(* ̄∇ ̄)ノ
その者達の名は太陽の霊鳥…神の導き手…
次回、『ヤタガラス』