新たに加わった仲間に出発は明日と待ち合わせ場所を伝え、ニースと一緒に帰路を歩いていた。
「隊長いいんすか?内密で、しかも最重要事項ですよ。失敗は許されない。」
「勿論、その通りだ。何としてもカユラ様を救い出さなければならない。」
ニースは傭兵に大役を任せて良いのかと疑問視していた。
「大丈夫だ。勿論誓約書はサインを貰うし、何かあれば私が責任を負うし、私の方が彼らを気に入ったのだ、仕方ないさ。」
「しかし…。」
「だいいち、隊から精鋭を引き抜いたら、国自体を守れる者も居なくなってしまう。国が無くなったら帰る所も無くなるがどうする?」
「そうですね…。」
とニースが考え込む。確かに他の部隊も控えているとはいえ、自国を疎かにするわけにもいかない。
「彼らは私に憧れて傭兵になったそうだ。」
「えっそうなんですか?」
「そうらしい。ならば私もそれに応えねばと思っている。」
それならばと、ようやくニースも納得した。
「了解です。そういうことでしたら、一緒に行きましょう。助けになってくれる事でしょうし。」
「そうだな、危険な旅路になると思うがよろしく頼むよ。」
「はい、ではここで。明日、待ち合わせ場所にて。」
「うむ、ではな。」とT字路で、2人は別の道を行く。
レザリアは自宅へ向かいながら(カユラ様…必ず、お助けに参ります。どうか、無理をされませぬように…。)と改めて気を引き締めるのだった…。
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レザリアと別れた傭兵3人はまだ酒場で飲んで談義していた。急にドタバタと騒ぎになり、しかも憧れの人がいて、なんと一緒に旅をする事になろうとは全く想定外の事だった。
「なぁ、本当に俺らでいいのかなぁ。」
黒髪のショートヘアの男は一緒に飲んでいる女性2人に話しかけていた。
「うん、なんかビックリだね。」
黄緑色のショートヘアの女性もあれよあれよと話が進んでしまったので、納得しきれずにいる。
「そうだね、なんで私達だったんだろ?」
茶髪のポニーテールの女性も疑問形な感じだった。しかしそんな会話が聞こえたのか、助け船を出してきた人物がいた。
「あら~。お三方嬉しくないんですか~?」
「あぁ、マスター。いや、嬉しい事なんだけどあたしらで良いのか自信が無くて。」
とジョッキのビールをゆらゆら回しながら答える。
「大丈夫ですよ~。あの方の目は節穴ではありませんし、あの方がお三方を気に入ってしまったようです。珍しい事なんですよ~。」
「そ、そうなんですか?」
「そうですよ~。あなた方傭兵の事も良く分かってらっしゃいます~。あのお方も傭兵上がりなので~。」
と意味深発言をする。
「えっ、傭兵上がりって…。」黄緑色のショートヘアのアルダが驚く。
「マジか!」
「初耳だわ。私達が知った頃には部隊で活躍している姿だったから。」
黒髪のショートヘアのザッシュ、茶髪のポニーテールのテルーシャもアルダに続いて驚きを隠せなかった。
「あのお方も大変苦労されたようですよ~。他の部隊からは傭兵上がりと良く思われてませんし~。唯一ナユラ様、カユラ様と幼馴染なので除籍にならずに済んでいますが~。」
「そ、そんな事が。」
「同じ傭兵だったなんて。」
「ナユラ様達と幼馴染と言うのも驚きだが…。」
3人はレザリアが隊長になる以前の話を聞いて更に驚く。
「なので、あなた方の事も良くお分かりなんです~。自信を持って一緒に行く事をお勧めしますよ~。」
と近づいてきてテーブルに料理とジョッキを並べる。
「えっ、これは…?」と3人はマスターの方を見る。
「はい~。私からのお祝いです~。あのお方自ら人を雇う事はまずないですし~。私もあの方が大好きですのであの方が選んだ方たちなら信用できますし~。」
マスターは微笑んでカウンターへと戻って行った。すぐに他の客の応対をしていた。
3人とも、しばらく黙ってしまう。だが、口火を切ったのはファンだと最初に言ったアルダだった。
「ね、2人とも。こうなったらレザリアさんをサポートしようよ。期待してくれてるって事だよね。頼られることって中々無いしさ。」
「そうだな、一緒に敵を蹴散らすのも悪くない。」
「そうね。全力であの人をサポートしましょ。」
と3人はジョッキを手に取り高らかに上にあげてジョッキを当てる。
「「「乾杯!!」」」
グッと飲み干した3人はマスター驕りの料理をほうばりつつ、明日の準備の確認をしあうのだった。
それをカウンター越しに見ていたマスターもニッコリとほほ笑んでいた…。
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次の日の早朝、早々と準備を終えたレザリアが待ち合わせの場所である、西側の門の横へと来ていた。銀色の髪をポニーテールに束ね、銀色の甲冑を身に纏い、愛刀となっている龍の飾りが施されている剣を背中に装備し、片手に書類を携えていた。
「小隊長!!」
金髪のショートヘアの男が声を掛けてきた。この男性も銀色の甲冑を装備し、剣は片手剣ほどの長さの剣を2本背中に装備していて盾は無かった。
「ニース、よく来てくれたね。よろしく頼むよ。」
「はっこちらこそ、お願いします。」と会釈する。顔を上げてレザリアの方を見たニースはある物に見入ってしまった。
「そ、その剣は…。」
「あぁ、新調したばかりだが、一目で気に入ってしまった。武具屋の主人には感謝だよ。やっと自身の愛刀を手にすることが出来た。」
と背中の剣に目をやりつつ、自慢げに話す。
「凄いっすね。」
ニースも剣に見とれながらレザリアに問いかけてきた。
「あの3人は来てくれますかね?」
「うむ、大丈夫。必ず来てくれる。」
酒場でマスターに説得されていたことを知らないレザリアは信じ切っていた。
しかし、約束の時間を少し過ぎていた。レザリアはじっと待っていた。だがニースの方はソワソワしだしていた。
「マジか…。」それぞれに不安が募る。
しかし、その不安を打ち砕いた者がいた。門の外壁よりも上空から一本の矢がレザリアの足元に突き刺さる!
2人は驚いたが、一歩下がって剣を抜くために身構える。西門は正門と違い、商人等が通ったり、兵士や一般人が通るのでそこそこの大きさしかない。一本道で両側は草木が生えていて、自然を醸し出していた。普段ならば良い観賞用だが、今はその茂みの方から殺気が漏れている。
レザリアは剣を抜いて、仁王立ちに身構えた。ニースがレザリアを庇う様に前に出ようとする。が、手でそれを止めていた。
「隊長!?」
「大丈夫だ、任せろ。」
その言葉には少しだが余裕が感じられた。ニースは怪訝に思ったが、レザリアに任せることにした。
レザリアは両手で剣を構えると持ち方を反対にし、刃と刀身を逆にして構える。そして一気にレザリアの殺気を開放し、相手を圧倒する!
その威圧感に耐えきれず、茂みから大剣を振りかざしてレザリアに襲いかかってきた!
「おぉォォォォ!!」
青基調の甲冑を装備し黒髪のショートヘアの男性剣士は長さ二メートルはあろう炎の紋様が入った大剣を軽々と持ち上げ、思い切り垂直に降り下ろす!
レザリアはギリギリの所を右に避け、その剣士の手首を狙って剣を振り下ろす!
「ぐっ!!くそっ!手が!!」
手甲をしていたにも関わらず、痺れと痛みで大剣を地面に落としてしまう。その痛みを堪えるのに必死だった。
が、そのうずくまっている剣士を注視している隙をついて、剣士の後ろからジャンピングで盾で防御しつつ、剣を振り上げて襲い掛かって来る剣士が。
「もらったー!!」
盾を前面に出しつつ、剣を振り下ろすがレザリアもすぐさま剣を下から真上に払い、相手の剣を受け止める。
「チッ!!」
剣を止められた事に舌打ちをするが着地したと同時に地面を蹴って反動をつけ、前面に打って出る!黄緑色の髪の女性剣士は白基調の甲冑を装備し、魔道石を埋め込まれた、片手剣と盾を持っていた。
しかし、その攻撃もやはりギリギリの所を躱され、しかも身体をしならせ回転すると同時に剣を真横に女性剣士の背中に打ち込む!
「がっ!!」
先ほどの男性剣士と同じ様に甲冑の上からだが、痛みは充分だった。そのまま四つん這いにうずくまる。
二人が押さえられて、3人目が離れた場所から矢を放ってきた。レザリアも剣で払い除ける。その弓使いも矢をかわされたのを見ると、なんと3本同時に放ってきた!さすがにレザリアも驚いて、剣で受け止めるのでいっぱいだった。が、それをも防がれて、弓使いの方が焦り、次の矢をつがえようとする。
その女性弓使いは茶髪のポニーテールで黒基調の軽装備、獅子の形が施された弓を持ち、背中には矢筒を装備して、何種類かの矢が入っていた。
そして矢をつがえて構えようとレザリアの方に向いた瞬間!レザリアの姿がゆらっと陽炎の様に揺らめいて姿が消える!驚いた瞬間に喉元にヒヤリとするものが…。弓使いも弓から矢を外し、弓を下ろした。右手に剣を持ち横に真っ直ぐに伸ばした状態で、弓使いの横に並ぶように、方向と刃先は逆向きだが、仁王立ちしていた。
さすがに観念したのか、弓使いもゆっくりと目を閉じる…。
するとレザリアは剣を背中の鞘に収める。目を開けた弓使いは驚いていた。
「ふっ、クスクスクスクス。」
突然レザリアが笑い出す。その場にいる全員が驚く。
「どうだろうか?私は合格かな?駄目ならば、ここでお別れだが。」
笑いながら3人に話しかける。
「とんでもありません!我等3人は貴方についていく所存です。無礼をお許しください!」
と女性剣士が慌てて方膝をつき、頭を垂れる。続いて二人も膝をつき頭を垂れた。
「良かった、私は合格の様だね。実は昨日酒場のマスターから連絡が来てたんだ。あんまり苛めないようにってね。クスクス。」
3人は何故レザリアが笑っているのか、そこでやっと理解した。
(あのマスター、中々の曲者だ。)と3人が同時に思ったことは内密に♪
そして、頭を垂れる3人に握手を求めてきた。
「よろしく頼みたいがいいだろうか?OKならば、この誓約書にサインをしてほしい。」
と3人に誓約書を渡す。3人は目を通すと驚いてレザリアに質問していた。
「こんなに待遇が良くていいのですか?報酬がこんなに貰えて、しかも専属なんて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫、上司からはお許しを貰っているし、そうでなかったとしても、私個人で雇いたいと思っていた。」
「そ、そうなんですか?」と眼に涙を浮かべている女性剣士のアルダがいた。
「だが、私の専属ということは、死と隣り合わせも多いと思ってほしい。その覚悟があるならば、サインをお願いしたい。」
とニコッと3人に話しかける。躊躇しても仕方がない事だと思っていたが、その思いは徒労に終わった。3人は即サインをしてレザリアに誓約書を渡してきた。レザリアはそれを受け取り、礼を言う。
「ありがとう………。」
その後方で、成り行きを見ていた、ニースが嬉し涙を浮かべていた。
「一体何があったのですか?」
突然の声に、全員その方向を向く。すると3人のメイドさんが立っていた。レザリアは真ん中の人物を見て、慌てて方膝をついて頭を垂れる。他の四人は誰なのかが分からなかった。
「ナユラ様、かのような場所に来られては、危険ですよ。ましてメイド服でとは…。」
「へっ!?ナユラ様って…。」
「「「「王女様!?」」」」
四人は驚いて、慌ててレザリアの後ろで方膝をついて頭を垂れる。
「し~~~~~~!!声が大きい。」と逆にナユラの方が、慌てて声を制した。四人は慌てて口を塞ぐ。
「クスクス、ナユラ様がそのようなお姿なので、皆、ビックリなのですよ。途中で襲われたらどうするおつもりですか?」
ついてきたメイド二人も、困り果てていた。
「お願いします。レザリア様からも言ってあげてくださいまし。」
「いいのです!!私のワガママを聞いてくれた人を見送らずにはいられません!」と頬っぺたを膨らませて、ぷいっと横を向いてしまう。
「王女自らお見送り恐縮です。光栄の至り…。ですがナユラ様まで失っては生きる気力を失ってしまいます。ですからどうかご無理をなさらぬよう…。」
とナユラの両手を優しく握る。王女もレザリアの顔を見て微笑んだ。
「分かっていますよ。矛盾していると思われるでしょうが、あなたも無理をせぬように。」
「ありがとうございます。」
「そちらの方たちは、一緒に行かれるのですか?」
後ろに控えている4人を見てレザリアに問いかける。4人は片膝をついて頭を垂れたまま、顔を上げることはしなかった。レザリアもナユラの方を向き、微笑んで応える。
「はい、私の大事な部下たちです。1人も欠けることの無いよう、そしてカユラ様を連れて全員で生きて帰って来ます。」
「皆さん顔を上げてください。」
「「「「はっ。」」」」4人は王女に促されて顔を上げる。その表情を見てナユラは微笑んだ。
「皆さん良い顔をされていますね。きっとレザリアはあなた方を守るでしょう。ですから、皆さんはレザリアの事を守ってあげてください。よろしく頼みますね。」と優しく語り掛けた。4人が4人とも王女と話すのは初めての事だったので、内心何を言われるのかとドキドキしていた。しかし、気さくで優しさ溢れる人物と分かると、4人は同時に応えていた。
「「「「勿論です!」」」」
そう、言い切られて傍にいたレザリアが顔を赤くする。
「初めてレザリアの照れた顔を見ました。フフフフフ。」とレザリアの違う顔を見れたことにナユラは楽しそうに笑っているのだった。
「そ、そろそろ出発しようか。」半分ごまかしのような格好で、4人に準備を促す。
「「「「了解!」」」」
4人もニコニコとしながらも準備をする。皆、それぞれの持ち物を確認しあった。
「では、行ってまいります。」と軍用の敬礼をする。
「よろしく頼みますね。」
「はっ。」
5人は西門の横の小さな扉を開け、王女の顔を確認しながら出発した。一路ガザトール国を目指して旅をする事になる。
「生きて…、必ず帰ってきてくださいね…。」ナユラは扉の向こうのレザリア達に深く祈りを込めるのだった…。
読んで頂きましてありがとうございます。
レザリア達は出発したばかりですが、この後のストーリーもどうぞお付き合いくださいまし。亀更新で大変申し訳ありませぬ。ではまた次号にて。