しばらくすると、上空にスザクが乗る航空艦、アヴァロンが到着したので、全員アヴァロンに乗り込んだ。
「凄いわねぇ。傷口が殆ど塞がってるわぁ」
今ルルーシュは医務室で追手に撃たれた肩をラクシャータに診てもらっており、その室内にはルルーシュとラクシャータの他に、C.C.とスザクがいた。
ルルーシュは撃たれた事を黙っていたが、C.C.によってバラされて、強制的に医務室へ運ばれたのである。
撃たれた事をバラされた際、カレンがまた暴走していたが…。
「だろうな。だから見る必要は無いと言ったのに」
「喧しい。不死身だから問題ないといって、撃たれた事をずっと隠そうとしてたお前が悪い」
そう言って不機嫌そうな顔をしているC.C.に、周りにいる者達は苦笑いを浮かべた。
「あなた…変わったわねぇ。ゼロの頃とは雰囲気が大違い」
「そうか?」
「えぇ。…ごめんなさいね、あなたに全てを押し付けてしまって」
「俺は気にしてないから別にいいんだがな。というより、お前は第四格納庫に居なかったから関係ないんじゃないのか?」
「それでもよ。…ありがとう」
そう言うルルーシュに、ラクシャータは周りには聞こえない程の小さな声で感謝の言葉を口にした。
「それにしても、俺達がまたアヴァロンに乗る日が来るなんてな」
「懐かしいでしょ?一応新造された艦だけど、外見や内装はアヴァロンそのものだからね。なんならまたあの椅子に座る?今は艦長席としてだけど、ちゃんと君が座っていた椅子を再現してあるよ」
「たとえ今は艦長席であろうとも、俺があの席に座るわけないだろ。…ところで、状況はどうなっているんだ?」
ルルーシュに今の状況を聞かれたスザクは、浮かべていた表情を苦笑いから真剣なものに変える。
「オレンジ農園に襲撃をした者達と藤堂さんは黒の騎士団から除名すると同時に、神楽耶に言って扇さんを含めて全員国際手配をするつもりだ。それと、襲撃を指示したと思われる扇さんを確保しに団員を東京政庁へ向かわせたんだけど、そこに扇さんの姿はなかった。おそらく僕達の動きに気付いて逃亡したと思われる」
「逃亡先の目星はついてるのか?」
「ああ。扇さんが向かったのはカンボジアだ」
扇達の逃亡先がカンボジアだと告げられ、カンボジアに逃亡する理由が思いつかないルルーシュは首を傾げた。
「どうしてそんな所に?」
「その国でギアスの研究施設が見つかったんだ」
「…なんだと?」
「僕達はカンボジアにギアスの研究施設があるのと、そこに藤堂さんがいるという情報を掴んだから団員を派遣しようとしてたんだけど…」
「…その時にオレンジ農園が襲撃されたのか」
「うん。…君達が無事で本当に良かったよ」
「ジェレミアとアーニャ、そしてカレンのおかげだよ。まぁ、C.C.がブチギレて相手を蹴散らしてたけどな」
そう言ってルルーシュは苦笑いを浮かべたが、すぐに真剣な表情になった。
「だがそうなると、扇は人工ギアスの情報を手に入れた可能性があるのか」
「いや、その可能性は限りなくゼロに近いと思う」
扇が人工ギアスの情報を手に入れた可能性は殆どないと言うスザク。
「何故だ?」
「カンボジアにはトロモ機関があっただろ?そこにはシュナイゼル殿下がいたからね。その研究施設を知っているか?と聞いたら、シュナイゼル殿下は知っていたんだ。だから詳しく聞いたんだけど…」
そこでスザクは、手元に持っていた紙をルルーシュに渡す。
「「そこでギアスの研究をしていたという話は聞いた事がありませんが、C.C.が持つコードについての研究をしていたという話なら聞いた事があります」って言ってたよ。そして扇さん達が向かった研究施設で行なっていた研究内容はその紙に書いてある通りだ」
ルルーシュは、スザクの話を聞きながら渡された紙の内容を確認する。
「難病の治療に役立てる為、か。なるほど。あくまでも治療の役に立つかどうかを調べてただけで、人工ギアスとは全く関係ないのか」
「シュナイゼル殿下が言っていた事を簡単に纏めただけだから、実際に行われていた研究がそれで全部なのかは分からないけどね」
こうして、ルルーシュとスザクの2人が扇達についての話し合いを進めているが、その中でC.C.は、
―…カンボジアか。
1人考え事をしていた。
―あの国に嚮団がアジトを構えたという話を聞いた事がないから、ギアスの情報もそんなに残ってない筈だ。あくまでギアスを知っていた者が建てたちょっとした研究所だろうな。
嚮団と関わりがあった頃やシャルル達の同士だった頃に、C.C.はカンボジアで研究をしているという話を聞いた事がなかったので、その研究施設に残っているギアスのデータはたいしたものではないと結論づける。
だが…、
―カンボジアからだいぶと離れているが、その先にある中東辺りにはアラムの門と呼ばれる装置があり、その門がある神殿は嚮団の分派…ファルラフが拠点としているんだったな。…今は神殿ではなく大監獄だったか?
ルルーシュに伝えてはいないが、カンボジアからだいぶと離れている中東地域にルルーシュが壊滅させたギアス嚮団の分派…ファルラフが存在し、その場所に門がある事をC.C.は知っていた。
―まぁ、ルルーシュ達にアラムの門やファルラフの事を言う必要はないな。扇達がアラムの門やファルラフの存在に気付いたわけではなさそうだし、そもそもアラムの門はジルクスタン王国にあるんだ。アイツ等が辿り着くのは不可能に近い。
ジルクスタン王国とは、かつてブリタニアによる侵略を跳ね除け、世間からは戦士の国と呼ばれる国で、超合集国に加盟していない数少ない国の1つである。
そしてアラムの門とは、ラグナレクの接続の時に場所がジルクスタン王国にあるという理由から、シャルルが唯一手を出さなかった門だ。
―ジルクスタンについても一緒だな。どうせあの国は長く続かない。超合集国に加盟しない限り、資源に乏しいジルクスタンはそのうち消える。だから大丈夫だろう。
そこまで考えていたC.C.だったが、これ以上考える事に集中しているとルルーシュに気付かれて心配されると思い、意識をルルーシュとスザクの話し合いの方に戻す。
「それで?どうするんだ?」
「当初の予定では斑鳩をカンボジアに派遣して星刻に指揮してもらうつもりだったけど、黒の騎士団の幹部と団員の半数をカンボジアに派遣することにしようと思う。残りは合集国からの依頼があった場合に動けるよう待機かな。星刻は待機組に回ってもらうことにする」
「そうか。あと、これから俺達はこのアヴァロンで過ごせばいいんだろ?」
「そうだね。C.C.の居場所がバレた今、オレンジ農園に戻るのは流石に危険だから解決するまではここで過ごしてね。少し退屈かもしれないけど」
「分かっている。…すまないな、迷惑かけて」
「これぐらい大丈夫だよ」
ルルーシュからの謝罪をスザクは苦笑いで受け止めて、夜も遅いというのもあり解散する事となり、ルルーシュとC.C.は皇帝時代に使っていた私室も再現されている事から、その部屋で過ごす事となった。
ルルーシュ達が医務室で話し合いをしているのとは別に、格納庫ではカレンが紅蓮の機体チェックをしていた。
「久しぶりの戦闘だったけど異常は出てないわね。流石ラクシャータさん。整備が完璧だわ」
カレンが紅蓮の機体チェックをしている横では、ジェレミアも同じように戦闘を行ったサザーランド・ジークの機体チェックをしており、アーニャはそれを手伝っていた。
そして、ある程度の機体チェックが終わったカレンは紅蓮を優しく撫でた。
「紅蓮、改修に入る筈だったあなたを急に引っ張り出してごめんね。でも、どうしてもあなたの力が必要だったの」
ダモクレスの戦いで傷付いた紅蓮は聖天八極式として修復されたが、その紅蓮を強化するという話が修復後に出たので紅蓮を
だが紅蓮を預けた後に扇達が不審な動きを見せたので、カレンが慌てて紅蓮を引き取った(5話と6話の間に)という経緯がある。
「だがら私に力を貸してね。今度こそ、あの2人を守り抜く為に」
―そして、もう二度と
紅蓮を撫でながら、カレンは決意するのであった。
「ルルーシュ、起きているか?」
解散後、皇帝時代に使っていた部屋にやってきたルルーシュとC.C.は、同じベッドで横になっていた。
「起きてるぞ。どうした?」
「肩はまだ痛むか?」
「もう痛みはない。だから大丈夫だ」
「そうか…。すまなかった。私が追われていなければ、お前が撃たれる事はなかったのに」
「お前が謝る事ではないだろ。悪いのはお前を狙ってる扇や藤堂達なんだし、そもそも撃たれたのは俺の体力の無さが原因だ。それに俺はコードの力によって不死身なんだから問題ないじゃないだろ?」
何とも思ってないようにルルーシュは言うが、ルルーシュが別に身体が傷付いても直ぐに治るから問題ないと考えていることをC.C.は理解して、表情を少し歪ませてしまう。
「…なぁルルーシュ。私が言うのもアレだが、その考えはやめてくれないか?私達は不死身だからと言って傷付かない訳じゃないんだ」
自分の表情が歪んでいると分かっているC.C.は、今の表情を見られないように、ルルーシュの胸に顔を埋める。
「私はお前に何かあったら嫌なんだ。お前がこの世界からいなくなったら、私は生きていく事が出来ない。…もう、1人で時の中を漂い続ける事は出来ないんだ」
「C.C.…」
「だから、その考えは本当にやめてくれ…」
ルルーシュの胸に顔を埋めながら身体を震わすC.C.を、ルルーシュは優しく抱きしめた。
「…分かった。こんな考えはもうしないと誓う。安心しろ。俺はお前を置いて消えたりしない。生きる時は2人一緒に生きて、死ぬ時は2人一緒に死のう」
「……ずっと私の傍にいるんだぞ?生きる時も、死ぬ時も…。絶対に私を置いていくなよ…?」
「ああ。指輪を渡した時も約束したが、今も約束する。絶対にお前を置いていかない。生きる時も死ぬ時も一緒だ」
ルルーシュとC.C.は、互いの温もりを感じるように抱き合って、その体制のまま眠りについた。
なお翌日、抱き合ったまま寝るという事はお互いの片方の腕は相手の身体の下敷きになるというわけで…
「「う、腕がぁぁぁ…!!」」
下敷きになっていた方の腕を押さえながら、痺れに襲われて悶絶しているルルーシュとC.C.の姿をカレンとスザクが目撃していた。
「2人とも、腕を押さえてどうしたの?もしかして、厨二病に目覚めちゃった?」
「…いや、それは絶対違うでしょ…」
…色々と台無しである。