コードギアス −魔王と魔女の旅路−   作:アンサラ

30 / 34
お待たせしました。


第28話

「まだか?ルルーシュ」

「あと少しだから待っていろ」

 

いつもの様に自分達の部屋で過ごしているルルーシュとC.C.だったが、ルルーシュはひたすら何かを縫っており、C.C.はそれを待っていた。

 

「早くしろ。私はもう待てないぞ」

「なら自分でこの黄色の物体を縫え。お前も裁縫が出来ると俺は知っているぞ」

「黄色の物体じゃない。チーズ君だ。お前の方が上手いんだからいいじゃないか」

 

ルルーシュが縫っているものは、昔C.C.がピザのポイントで手に入れたぬいぐるみのチーズ君で、現在は少しボロボロになって汚れが目立つようになってきていた。

 

「それに誠意を持ってお願いしただろ?」

「お前は一度、誠意という言葉を辞書で調べた方がいい」

 

C.C.に「ルルーシュ、チーズ君を治してくれ」と言われ、これといって断る理由がないルルーシュが了承しようとした瞬間、「あぁ、別に嫌なら断ってくれてもいいんだぞ?他の人に頼むだけだから。その場合、もしかしたら頼む相手がナナリーで、その時にうっかりお前が生きている事を話してしまうかもな」という誠意のかけらも無い頼まれ方(完全に脅し)をされていたりする。

 

…その際、ルルーシュは思わず顔を引き攣ってしまっていたが。

 

「というより、なんであんな頼み方をしたんだ?昔と違うのだから、余程なことじゃない限り、お前の頼みを断ったりはしない」

「ん?ただお前の慌てる姿が見たかったからだな。結局、私が期待していた反応ではなかったが」

「……」

「ま、待て!?私が悪かった!だからチーズ君を高く振り上げるな!!その先にはゴミ箱しかないぞ!!」

 

無言でゴミ箱に向かってチーズ君を投げようとするルルーシュを、C.C.はしがみ付きながら止め、チーズ君を奪い取る。

 

「…ったく。修復はもう終わったから、そのまま持っていけ」

「よーし、チーズ君、綺麗になって良かったなー。チーズ君を捨てようとする鬼の手から解放されたぞー」

「誰が鬼だ、誰が」

「間違ってはないだろ?確か、藤色の目をした鬼だったか?」

「……何故お前が知っている?」

「黒の騎士団にいた頃に神楽耶から聞いた。幼い頃に鬼と会ったと。これはお前の事だろ?色々と聞かされたよ」

「…確かに俺と神楽耶は幼い頃に会っているし、神楽耶が俺の事を覚えているのは知っていたが」

「まぁ、私は興味ないがな」

 

そう言いながら、フンッと鼻を鳴らし、何故か不機嫌そうにするC.C.。

 

「何故不機嫌になるんだ?」

「色々と聞かされた事を思い出したら、段々腹が立ってきた。…この女誑し」

「いきなりなんだ?それに女誑し?俺がか?」

「さてチーズ君、今日は一緒に寝ようなー」

「おい、無視するな」

 

他人からの好意に鈍いルルーシュを無視しながら、C.C.はチーズ君に頬ズリをする。

 

そして無視られたルルーシュは、いったい自分の何が悪かったのか、ひたすら1人で考え続けるのでした。

 

 

 

 

 

 

–斑鳩–

 

「スザク、あの子達の専用機が完成したから運んできたわよ」

 

スザクとラクシャータはアヴァロンの格納庫におり、2人の目の前には黒をベースとした少し大きめのナイトメアフレームが存在していた。

 

「そうですか」

「黒の騎士団の開発機関の作業員とパール・パーティーの子達に感謝しなさいよ?ここんところずっと、殆ど休み無しで作業していたのだから」

「分かっています。作業員には長期休暇と特別手当を用意しておきまし、パールパーティーの皆にも色々と用意しましたから。…これが、新しい蜃気楼ですか」

 

目の前にあるナイトメアフレームの名前は蜃気楼。

 

ルルーシュの専用機であったナイトメアフレームである。

 

ダモクレスの戦いの時に大破したのだが、スザクがもしもの為にとラクシャータに依頼、ルルーシュとC.C.が乗る事を前提に2人乗り用として一から製造し、最新鋭の機体として生まれ変わったのだ。

 

「スペックの説明は?」

「お願いします」

「分かったわ。まず、この機体にエナジーウイングを取り付けたわ。機体性能も紅蓮程じゃないけど底上げしてある。武装面に関してはハドロンショットはオミットしたわよ。これは、開発中である貴方のもう一つの機体、真母衣波をベースに所為ね。代わりに、真母衣波に合わせて造ったスーパーヴァリスを二丁持たせたけど」

 

真母衣波とは、ランスロットは悪逆皇帝ルルーシュの暴虐の象徴である為、民衆はいい思いをしないだろうと考えたスザクが、代わりの機体としてパール・パーティーに制作を依頼したゼロ専用機のことである。

 

「拡散構造相転移砲や絶対守護領域、ドルイドシステムも無論搭載。あとは、周囲にブレイズルミナスを展開出来るようにし、ハッキング等が出来るよう、両座席に電子端末を設置したわ」

「後衛よりの第9世代として造られたという事ですか?」

「ええ。ただ、機体サイズはガウェインよりはコンパクトに出来たけど、2人乗りというのと新たに電子端末を設置した事によって、通常のナイトメアよりは大きくなってしまったわ」

「機体性能に問題なければ大丈夫です」

「そこは安心しなさい。さっきも言ったけど、全体的に性能を底上げしてあるし、防御力に関しては他の機体を寄せ付けない性能をしているから。言うなれば、この機体は2人の盾という事になるわね」

「盾、か」

 

スザクは紅蓮とアルビオンに続く、3機目の第9世代となった蜃気楼を見続けていたが、

 

「あっ、いた。スザク、少し良いかしら?」

 

そこに、カレンがスザクを訪ねて格納庫へやって来た。

 

「カレン?どうかしたの?」

「確認したい事があってね。ルルーシュ達の用事が終わり次第、私は中華連邦に行く事になっているけど、本当にいいの?」

 

今から2日後にルルーシュ達は神根島に向かう事になっており、その後、カレンはルルーシュ達の元を離れて中華連邦にいる星刻率いる黒の騎士団に合流する手筈になっていた。

 

カレンが中華連邦に向かうという事は、アヴァロンの守りの戦力が少なくなるという事であり、それをカレンは心配しているのだ。

 

「ああ。確かにカレンがいない事で、ここの守りは少し薄くなってしまう。だが、もうすぐ中華連邦で作戦があるんだ。黒の騎士団の最高戦力である君を向かわせない訳にもいかないだろ?」

 

スザク言う作戦とは、逃走を続けている扇達が中華連邦にいると分かってたので、その扇達を1人も逃さずに捕まえる作戦の事である。

 

「本当なら、ゼロである僕も行くべきなんだろうけど、流石に僕達2人が向かうと此処の守りが薄くなるし、もしもの場合に対処ができないからね」

「…なるほど」

「此方側で何か問題が起きれば、君にかなりの負担をかけてしまうけど、直ぐに此方に向かってもらうつもりだ」

「それはいいけど、大丈夫なの?」

「時間稼ぎぐらいはしてみせるさ。…さて、星刻が事前に話しているとは思うけど、僕からも一応報告しておかないといけないから、天子様と電話会談をしてくるよ」

 

そして、スザクは天子と電話会談をする為に、自身の部屋へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ブリタニアでは…

 

「ルルーシュにギアスを与えた魔女が、ゼロに匿われているのか…」

 

その者…コーネリア・リ・ブリタニアは、扇から送られてきた情報で、ギアスを与える事が出来る魔女、C.C.がゼロに匿われていると知らされていた。

 

「という事は、今までずっと調べて確実な情報が手に入らなかったが、ゼロの正体はおそらく…」

「姫様、お言葉ですが、この情報を信じるのは如何なものかと」

 

扇から送られてきた情報を信じようとするコーネリアに、騎士であるギルフォードが待ったをかける。

 

もし、扇が日本の首相のままであったのなら大丈夫かもしれないが、今は国際手配され、犯罪者となっているのだ。

 

その者からの情報など信じるわけがないし、扇に対する評価は底辺なので、信じる気はギルフォードには元々なかったりする。

 

「信じても大丈夫だ」

「相手は国際手配され、犯罪者となった扇です。信じられるわけありません。それよりも、ルルーシュ様(・・・・・・)が世界にもたらした平和と明日への希望を守る為に動くべきです」

「…まるで、あのルルーシュが世界に平和をもたらしたみたいな言い方だな」

「ルルーシュ様が亡くなってから、国同士の武力による争いは一度も起きていません。各国の復興も日本を除いてスムーズに進んでおります。まるで、事前に計画されていたかのように」

「お前は、全てルルーシュが計画したと言いたいのか?」

「無論、今の平和は黒の騎士団や世界の人々の努力の結果というのもあります。ですが、急に変わった世界がいきなり安定するなんて事、普通はありえない。それは姫様もお分かりのはずです」

 

ギルフォードはゼロレクイエムの事はもちろん、ゼロの正体がスザクという事は知らないが、ルルーシュが死んだ後の世界を見て、ルルーシュが本当に望んだ世界は何だったのか、ある程度は察していた。

 

「くだらんな。ユフィを手にかけ、世界を恐怖に陥れたルルーシュが本当は平和を望んでいた?実にくだらない話だ」

「…たとえそうじゃなくても、姫様のやろうとしてる事は、今の世界に新たな争いを生む可能性があり、ナナリー陛下の意思に背く行動です」

「だからなんだ?私の行動で新たに争いが生まれるのであれば、私自身がそれを潰せばいいだけだ。それにナナリーなら分かってくれるさ。ギアスをこの世から消せて、ユフィの仇をとれるのだからな」

「姫様…」

 

嗤うコーネリアを見て、ギルフォードは何も言えなくなってしまう。

 

「話はここまでだ。ギルフォード、今すぐ私の部隊を全て集め、ゼロの居場所を特定させろ」

「……イエス、ユア、ハイネス」

 

ギルフォードは何かを堪える表情を浮かべながら、コーネリアの部隊に連絡をしに行った。

 

 

 

「ギアスの源である魔女。そしてユフィを裏切り、ルルーシュの下僕となったナイトオブゼロ、枢木スザクよ。これで全てを終わらしてやろう…!」

 

 

 

ギアスに囚われ、そして過去に囚われた者、コーネリア・リ・ブリタニアが今、本格的に動き出そうとしていた。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。