pixivにも投稿しています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8349249
「蘭子、烏滸がましいことだとは思うが一つ言いたいことがある。…いやなに、大したことではないのだけれど。」
「む?」
「最近、君はどうも浮ついていると言うか、隙が多いと言うか、何かに心が囚われているように見えてね。」
「!」
「そうだな…俗に言う『恋』というー」
「わあああああ! えっと、えっと、わ、我が魂に帰還せよと告げる声があるため、今宵はここまでとしよう!さらばだ我が片翼飛鳥よ!!」パタパタパタ…
「ああ、蘭子! …行ってしまったか…」
「…尚早、だったか…」
(まあ、ボクも人のことなど言えないのだけれど。さて、どうしたものかー)
君に、と前置いたが、これは自問だったのだろう。
僕は『恋』をしている。そう、彼女、神崎蘭子に。自分でもまさかとは思った。いや、、今でも思っている。
かつてのボクは『恋』などと言う感情を嘲笑っただろう。馴れ合いしか産まない不必要なモノだと。だが、現在はどうだ、まさに盲目、なにも視えちゃいない。…いや、『彼女』しか視ようとしてないのだろう。可笑しな話だと言われるだろう。かつてのボクも含めた大衆は、恋は異性とするものだと認識しているのだから。そしてこの眼は、彼女も同じものに囚われていることをありありと映し出した。彼女もボクと同じく『異端』であるならー いや、そんな上手い話があるわけがないな。
ともかく、少数派を日陰に追いやるこの世界で、ボクが報われることを望んでいるのはあまりに馬鹿げているということだけは忘れてはいけない。無様に溺れるような真似はしたくない。
〜事務所〜
「どうしたものかな…。」
「今日のごはんはどうしたものか…。」
「ッ!? …なんだ、君か、フレデリカ。」
「はいはーい♪フレちゃんだよー♪」
「…すまないが今は放っておいてくれないかい?君の相手をできるほどに無駄な体力と気力は持ち合わせていなくてね。」
「まーまーそう言わないで!愛の国フランスからやって来たフレちゃんが恋に悩めるノスタルジー少女飛鳥の悩みをズバっと解決しようではないかー!」
「だから君に付き合う気は無いと…いや待て、今なんと言った?」
「んー?金髪美少女なフレちゃんのお悩み相談教室の開催だよーって♪」
「そんなこと言ってないだろう!そうじゃなくてだな…。」
「おやおやー?なんだか煮えきりませんな二宮氏ー?」
「おちょくるんじゃない!なんだって君はいつも…」
「だって飛鳥ちゃんの反応が面白いんだもーん♪」
「だからと言って会うたびこんなやり取りをしていたんじゃー」
「それで飛鳥ちゃんは愛しのカノジョとどうなりたいのかなー?」
「…なぜ君は関係のない話をしてたと思ったら急に核心を突いてくるんだい?それに「彼女」だって?その言い方だとボクの想いの対象までも理解ってるような口振りじゃないか!」
「蘭子ちゃんでしょ?」
「……君には心を読む能力でも有るのかい?なんとも度し難いな。」
「そだよー フレちゃんはサイキッカーだからねー♪ムムムーン!」
「茶化さず話してくれれば超能力者でも幾らか信用に足るものだが。」
「だって飛鳥ちゃん分かりやすいんだもーん♪」
「…隠すだけ無駄ということかい?そうさ、ボクは片翼たる蘭子に、俗に言う『恋』をしてしまったようでね。ただ、この世界では同性どうしというのは少数派だろう?彼女も万に一つ同じ少数派だなんてそうあることではないだろうしね。だからこそ少数と呼ばれるんだ。」
「ふむふむ…それじゃ聞いちゃえばいいんじゃなーい?」
「…は?」
「分からなかったら聞いてみないと分からないんだからー、聞いちゃえばいいんだよ!」
「君は馬鹿か!?冗談にしたってもっと内容を選ぶべきだ!そんなことを本人に直接聞けだなんて、そんなことをしたら…」
「したらー?」
「…どうなってもいい覚悟が必要ということかい?」
「さあねー♪でもアタシは応援してるよ!フレフレフレちゃんだよ!それじゃあアタシこれからレッスンだからそろそろ行くねー♪チャオ!」
「…本当に、君という人間には翻弄されてばかりだよ。」
(この世界の多数派へのレシスト…抵抗か…かつてのボクなら決心できたものだろうか。)
〜一方、女子寮〜
(ううううううう…どうしよう…嘘ついて帰って来ちゃったけど、変だと思われてないかなぁ…?でもなんで急に恋の話なんて…そんなに私分かりやすいのかなぁ…?)
コンコンコン
「ひゅいっ!?だ…誰…?」
「あ…ご、ごめんね…?そんなに驚かせる気は無かったんだけど…」
「こ…小梅…ちゃん…」
「えっとね…なんだかすごい慌ててたみたいで…何かあったのかなって気になっちゃって…迷惑だった…?」
「いや…えと…わ、我が胸中に宿りし疑念が…」
「何か…悩み事…? 私でよかったら、お話、聞くよ…?」
「う…うん…。」
「それで…どうしたの…?」
「えっと…だ、誰にも言わない…?」
「大丈夫…秘密にするよ…。」
「じ、実は私…あ…あ…飛鳥ちゃんが…す…すす…すき…なの…」
「飛鳥ちゃんが…?」
「へ…変だよね…?女の子が女の子を好きになるって…。」
「ううん…そんなことないよ…?」
「ほんとに…?」
「うん…。それで…何かあったの…?」
「えっとね…さっきまでお話してたんだけど…飛鳥ちゃんに…私が今好きな人がいるかって聞かれて…びっくりして…恥ずかしくなって逃げて来ちゃって…どうしよう…。」
「そうなんだ…。」
「次に会うときどんな顔で会えばいいんだろうって…普通にお話できるのかなって…すごく不安で…。」
「うーん…でも…きっと大丈夫だと思うよ…。」
「え…?」
「だって…誰かを好きになるのは普通のことだと思うし…それに皆優しいから…きっと変だなんて思わないと思うよ…?」
「そ…そう…かな…?」
「うん…あと…好きって思ってくれるのは…誰でも嬉しいんじゃないかな…それを言葉にしてもらえたらもっと…。」
「言葉に…。」
「もちろん…勇気がすごくいることだけど…。」
「じゃあ…私はそろそろ戻るね…。」
「あ…その…あ…ありがとう!!」
(でも…言葉にするのは…恥ずかしいよぉ…)
〜翌日 事務所〜
「…」
(早く来すぎてしまったな…プロデューサーも見当たらないし…もし今彼女が来てしまったらー)
ガチャッ
「煩わしい太陽…ね…」
(ー流石に手厳しくはないかい、こんな偶然は。)
「…あ、飛鳥…ちゃん。」
「…やあ、蘭子 今日はずいぶんと早いね。」
「え…あ…」
(どうしよう…言葉に…ダメ。やっぱり…恥ずかしい!!)
「あ…そ、そうだ!寮に忘れ物を…」
「待ってくれ蘭子!」
「ひゃいっ!?」
(しまった、つい呼び止めてしまった……いや、ここで退いてどうするんだ。決断はそんなに甘いものじゃないはずだ。)
「…君に話があるんだ、少しいいかい?蘭子。」
(ーああ、やってやろうじゃないか!)
「う…うん…。」
(話!?話って何の…?)
「……まず、昨日は困らせたようですまなかった。」
「あ…えと…わ、私も急に飛び出しちゃってごめんなさい…。」
「いや、いいんだ。謝らないでくれ。……それで、その時ボクは君に浮ついてるんじゃないかと言ったね?」
「うん…。」
「あれはボク自身への言葉でもあったのさ。気づいたのは少し後だったがね。」
「!!」
「それで…一つ聞きたいんだ。」
「え…?」
「もしよかったら、君の想う人を教えてくれないかと思ってね。もちろん、この問いはボクのエゴから来るものだ。だから君が嫌だと言うなら答えを言う必要は全く無いよ。」
「想い人なんて…そんな…。」
(あなたにそれを伝えることはつまり…)
「…君がこういった話題が苦手なのは承知の上さ。でもどうも知っておきたいと思うんだ。許しておくれ。」
(蘭子が誰に想いを寄せているのか、確かにそれが気になっているのは事実だ。…だが聞いた上でボクはどうしようというんだ?覚悟をしたのはそんなことか?)
(どうしてそんなに私の想う人を知りたいのか、私にはわからないけど…もしも飛鳥ちゃんが私を想ってくれているとすれば…いや、私以外の人を想っていたら…。)
「…いや、違うな、すまない。ボク自身、何をすべきか纏まっていなかったものでね。ボクがすべきなのはー」
「待って!!」
「…蘭子?」
(あなたの言葉を聞いたら、きっと私は何も言えなくなるからー)
「すーー…ふぅーー…」
(そんなのは…絶対に嫌だから!)
「すーー…」
(あなたに伝えたい、私達をー)
「よく聞くがよい!我が片翼、飛鳥よ!」
(私達の「
「貴殿の問いに答えよう!我が心を突き動かし、シヴァの炎が如く燃え滾らせた者の名を!! かの者は、我が言霊を理解し、共鳴せし闇の者…そして、「殻」の中の弱い私も受け止めてくれる人。私は焦がれていったわ。…しかし、その薔薇を手に取り、荊で傷つくことを恐れ、壊れることの無きよう、友として眺めることしかできなかった…世の理から外れた「異端」たる思考は、伸ばそうとした手に絡み、その動きを縛ったわ。しかし、そのしがらみを断つ力を、私は得た。」
(異端?まさか…いや、まさか、な…)
「二宮飛鳥。この名こそが、貴殿の問いへの答えよ。」
「…なっ…!?」
「…その驚愕せし顔は、予想だにしなかった答えへの、受け止め難きことへ向けたものであろう?我も傷つく覚悟はできている。汝に問おう!同じ問いを!」
「……やはり君は強いな、蘭子。覚悟をしたつもりが、逃げていたのはボクだった。狡い奴さ、君の想った者は。」
「…え?」
「その問いに答えよう。神崎蘭子、君こそが答えだ。」
「嘘…。」
「どうやら、運命は奇妙にもボクらに味方していたみたいだ、蘭子。」
「…本当に…?」
「ああ、本当だ。」
「…本当に私が…?」
「ああ。好きだ。」
「本当の本当にー」
「…この行為が意味を持つほどには、ね。」
「…き…す…」
「何の断りも無く君の唇を奪ったことは謝るよ。ただ、ボクもこういうことには不慣れだし、知識もない。」
「…飛鳥ちゃん」ポロ…ポロ…
「…蘭子?」
「んっ…」
「…私も、言葉の意味を少し知っているだけ。」
「状況としては前途多難といったところか。」
「でも、今し方、漆黒の片翼と白銀の片翼は、1対の翼となった。」
「そうだ。ボクらはまだ飛び方も、行く先も知らない。」
「けれど、あなたと一緒なら。」
「ああ。何処へだって行ける。」
「共に往きましょう、飛鳥。」
「勿論だ、蘭子。」