恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

101 / 180
何とか頑張って書いていますよ~。


第百一話 学園祭開始 お嬢様のお客さん

 イチカの野郎をケチャップマンにすること約一週間、やっと本番の日が来た。

いやぁ、今から思い出しても中々に笑える日々だったぜぇ。

会長の指示を受けてはより速く動こうとするが、失敗しては壁に人型の穴を作ってめり込んだり、俺とじゃれ合えば10分くらいでブルーマンならぬレッドマンに早変わり。お嬢様からは滅多撃ちにされは地面で干上がりそうになった魚ヨロシクにぶっ倒れてた。

その様子はへたくそなコメディアンのくだらねぇ芸よりも、断然オレのツボを突きまくる。

ある意味じゃぁ本当に退屈はしなかったって言ってもいいね。

その御蔭か、今じゃ野郎も少しはマシになった。

マシと言っても毛が生えた程度だが、それでも毛無しよかマシだろうよ。男ってのは毛がねぇと恥を掻く生き物なんでなぁ。

奴さんは会長が教えた事は出来る様になったし、オレとのじゃれ合いにも多少はメリハリってモンが出てきた。まだまだ甘いが、お遊びで10分以上もケチャップまみれにならないだけ成長したってことかねぇ。お嬢様との訓練でも、少しは避けるようになって時間が長くなってた。

本番までにこの程度なら、まぁ自分の身くらいなら守れんだろ。

 そんなわけで、今日という本番を迎えたわけだ。

 

 

 

 

「「「「「いらっしゃいませ~~~~~~~~~~~~!!」」」」」」

 

盛大に客を歓迎する声が教室内に響き渡る。

そして客を迎え入れるのは、メイド服に身を包んだ少女達。大人への成長途中の姿はアンバランスさを感じさせ、それ故に男達は魅了されるかの如く、このクラスへと訪れていく。

と、まぁこんな感じに堅ッ苦しく言ってみたが、何てことはねぇ。

イロモノのメイド喫茶に釣られてくる奴等が多いって話さ。盛況のようで何よりだよ。

ウチのクラスは結構キレイ所が多いんで、少し着飾るだけで充分人様の前に出せるようになる。だからか、ここには鼻の下を伸ばしまくった奴等が多く来る。それ以外にもイチカの野郎目当てで来る奴も多いけどよ。

アイツは今の教室内を執事の服装でかけずり回ってはプライレスの笑顔を振り撒きまくってる。

当然アイツの取り巻きのホウキとデュノア、あと子ウサギも一緒だ。皆如何にも野郎が好きそうなメイド服を着飾ってイチカ同様に働いてるよ。

お嬢様も働いているわけだが、実に楽しそうだ。嬉しさが全面に出てる笑顔で接客しては野郎共のハートを鷲掴みにしていってるよ。

イチカの野郎程じゃないが、お嬢様も少し気をつけねぇとなぁ。

ウチのクラスの美男美女の御蔭で客は大漁、御蔭でキッチンの方もフル稼働だ。

さて、そんな忙しい教室なわけだが、唯一何もしてねぇ奴がいる。

誰かって? 勿論決まってるだろ……オレだよ。

基本嫌われてるからねぇ。キッチンに入ると周りの奴等が緊張しちまうってんで入るなってよ。接客なんて御法度だ。

普通の客ならいいんだが、この教室に来る企業や政府の人間は決まって最初にあることを聞くんだよ。

 

『レオス・ハーケンはどこだ』ってなぁ。

 

奴さん達、オレに用があって来るのが殆どなんだよなぁ。

まだ営業とか押し売りなら気にもしねぇんだが、勧誘とか報復とかは勘弁だ。面倒臭ぇことこの上ねぇんでなぁ。

イチカにもそういった話は来るんだが、オレの所に来るのとは毛色が違うんでね。周りの連中で対処して済むんだが、オレの所に来る客はどうにも物騒な連中ばかりだ。そんな連中と会えば、必ず厄介事が起こるのは目に見えてるってもんさ。

だから居留守。

御蔭で一人、実に退屈な学園祭を満喫してるってわけだ。まぁ、オレに接客が務まるとは思えねぇけどなぁ。

イチャもん付けてくる奴が出たら、間違いなく懐のモンをそいつの口の中に叩き込んでスマートにお帰り願える自信がある。

そんな奴が接客なんて出来るわけ無いのは、小学校に通う前の坊やでも分かる話さ。

そんなわけで、何もすることが無いオレは教室の隅、周りから見えないキッチンの奥辺りで一人、爺さんから貰った不味ぃ電子タバコを吹かしてる。

外を眺めればワンサカと来た奴等が祭りで浮かれた声でハシャいでる。まぁ、若いウチはそう言うモンに興じるのも悪くはねぇんだろうよ。

残念なことにオレはその雰囲気ってモンを楽しめねぇんだけどな。

 そこからしばらくして、お嬢様が笑顔でこっちにやってきた。

その様子はまるでご褒美を待ってた子犬みてぇな感じだ。メイド服なのに犬の尻尾が見えそうな感じだった。

 

「レオスさん、休憩をいただきましたので……私と一緒に学園祭を回って頂けませんか?」

 

顔を赤くしながらそう言ってきたお嬢様はメイド服ってこともあってか、いつもよりも新鮮味があってイイ感じだ。

そろそろ退屈凌ぎに爺さんの所にいって酒を拝借しようかと思ってた所だったが、せっかくのお誘いだ。断る理由もねぇ。

何より、美女からの誘いを断るってのは男として失格ってもんさ。

 

「あぁ、いいぜ。暇で仕方なかったんでなぁ。助かったよ、お嬢様」

「そうでしたか……丁度良かったです。それでは、直ぐに着替えてきますので少々お待ち下さい」

 

お嬢様は真っ赤な顔のままそう言うと、少し慌てた感じで急ぎ足で動き始めた。

何というか……可愛いねぇ。

そしてお嬢様が着替え終わるのを待つこと数分。

お色直しを済ましたお嬢様がオレのところへと戻って来た。

 

「では、行きましょうか!」

「あいよ、お嬢様」

 

嬉しそうに笑うお嬢様に連れられて、オレは教室から出て、祭りを回ることになった。

 

 

 

 学園祭をお嬢様と二人で回ることになったわけだが、何処に行こうかねぇ。

出しモンなんて色々とあるからなぁ。

色々なところに出向く仕事柄だが、生憎こんなモンに参加した事なんてなかったんでな。どう動いていいのか正直わからねぇ。

それが伝わったのか、お嬢様は無邪気に笑ってオレの手を掴んで来た。

 

「レオスさん、顔に出てますよ。何となく分かってましたから。、レオスさんはこういうのに参加したことがないというのは。でも、それはわたくしも同じです。ですから、素人同士、一緒に考えて、何となくで良いので巡ってみましょう」

 

そう言うお嬢様を見て、ある意味驚かされる。

本当に成長したもんだなぁ、お嬢様は。まさかオレの面を見て直ぐに言い当てるととは………成長が喜ばしい反面、あの鬼畜上司に似てきたことが不安を感じちまう。頼むからあんなのにはならないで欲しいもんだ。

オレは自分で考えていたことに苦笑しつつ、お嬢様に手を引かれながら近くの教室へと入る。

取りあえず、お嬢様の好きなようにさせるとするかねぇ。何せお嬢様の休憩時間だ。なら、その時間はお嬢様が満喫しなきゃなぁ。

そこから色々な所を廻ったよ。

美術部にいったら部員お手製の時限爆弾の解体をやらされたり、料理部の料理の試食をしたりなぁ。

時限爆弾の解体は本職じゃねぇが、簡単な代物だっただけに苦労はしなかった。

 

「まぁ、学生じゃこんなもんだろ。子供だましにゃあ丁度良さそうだ」

「凄いです、レオスさん! わたくしでももっと時間が掛かるのに、こうも簡単に………」

 

お嬢様は成功させたオレを見て喜んでたが、あんな玩具を弄くり回しただけのことに一々ハシャぐようなもんかねぇ。

料理部で試食した料理は、何でも日本の有名なモンらしい。確か肉ジャガだったか。オレも話では聞いたことはあるが、これがあの……ねぇ。戦争時に日本海軍のお偉いさんが考案したって話は有名だよ。

 

「これが日本の有名なお料理なんですの?」

「えぇ、日本では古くから、『肉じゃがが美味い女性と結婚しろ』なんて格言があるくらいですから」

 

部員の説明を受けて、お嬢様は差し出された皿を受け取ると中の具を一つ摘まんで口の中に入れる。

そして目を見開くと、頬を紅潮させた。

 

「ん~~~~、美味しいですわぁ。確かにその格言も納得出来る美味しさです。わ、わたくしもこれを作れるようになれば、レオスさんに………うふふふふふ」

 

何やら悦に入ってるお嬢様。

何考えてるのかまではわからねぇが、満足してるのなら問題ねぇな。

そんな感じに回った後、お嬢様と一緒にオレは学園の入り口ゲートへと向かうことになった。

理由を聞いたら、お嬢様が呼んだ客人が来るんでお出迎えだとさ。

それにオレがついて行くのはどうかと思うんだが、寧ろ来て欲しいんだと。

嬉しそうに笑うお嬢様にゃぁ悪いが、何やら嫌な予感がしてきた。

こういうときの予感ってのは、結構当たるもんだ。

出来れば当たって欲しくはねぇなぁ。

そう思いながらお嬢様に引っ張られてゲートで待つこと数分。お嬢様が呼んだ奴を見つけたらしく、嬉しそうに手を振り始めた。

 

「あ、こっちですわ~~~~~!」

 

お嬢様の視線の先、それを見た俺の顔は固まっちまった。

何でかって? そりゃああんなもん見れば誰だって驚くだろうよ。

お嬢様が手を振っているのは、二人組の男だ。

一人は色白い肌に濁り無き綺麗な金髪、端正な顔立ちにメガネをかけた知性溢れるスーツをキレイに着こなした男。その気品溢れる姿は何処ぞの貴族か、美しすぎる姿はハリウッド俳優か。

もう一人は周りの大人が子供に見えるくらい巨大な男。

ジーンズにジャケットを羽織っているが、それでも分かる巌の如き筋肉が目に付き、明らかにこの場に違和感しか感じさせない。

そんな真逆な二人組、オレは今までで一組しか知らねぇよ。

そしてその二人組はお嬢様とオレの前に来ると、片方は爽やかな笑みを、もう片方は獰猛な笑みを浮かべて挨拶してきた。

 

「此度はご招待いただきありがとうございます、オルコットさん。元気なようで何よりです」

「よぉ、クソガキ! 何だ、その制服? これほど制服が似合わねぇガキ、始めて見たぜ! がっはっはっはっは!!」

 

驚くなって方が無理だろう。

何せ、お嬢様が呼んだ客ってのは………。

 

オレの上司様なんだからよぉ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。