恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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ISという存在が否定されそうな感じですね……。


第百三話 これがウチの代表です

 まったくもって最悪の極みって奴だ。

あのストーカー、よりにもよって一番やっちゃいけねぇことをしでかしやがった。別に奴さんに害意がなかったことは認めるよ。奴さんはイチカの野郎に夢中でこっちには全然気付かなかったからなぁ。だからわざとじゃねぇ。

正直、運が悪かった。

そう偶々運が悪かったとしか言いようがねぇことだ。

ベースボールで打ち上げられたボールがそいつの頭に激突するくらい、あまりにも低い確率の出来事だ。

だから奴さんは悪くはねぇ。

だが………なっちまったもんはどうしようも無い。

理由はどうあれ、もう導火線に火は着いちまった。なら、ダイナマイトは湿気ってねぇ限り、絶対に爆発する。

だからよ………巻き込まれたくねぇオレはイチカを捕まえると急ぎ足で更衣室から飛び出したってわけだ。

 

「レオス、何でこんな所に!? いや、その前に何で邪魔するんだよ。あの巻紙って女の人、テロリストなんだぞ! だったら今どうにかしなきゃ、みんなが危なく」

「イチカ、お前さんの言うことはもっともだ。ヒーローならこの場で悪役を倒すのが鉄則だが、そいつは承諾できねぇ。簡潔に説明するぞ。さっきまでお前さんと絡んでたストーカーはワザとじゃねぇとは言え、気付かねぇ内に導火線に火を着けやがった。花火を持ってきたのは確かにオレ等だが、まさかこっちに飛び火してくるなんて思わねぇだろ。まぁ、要は……すぐに逃げなきゃオレ等のケツはローストされるどころじゃすまねぇってことだ!」

 

疑問符を浮かべてるイチカを引っ張りながら説明してると、走ってる先でお嬢様達とクロードを見つけた。

 

「あ、会長にセシリア! 後、誰だ、あの人?」

 

間の抜けた声を上げて反応するイチカ。

そんなイチカを無視してオレはクロードに話しかける。

 

「よぉ、お嬢様と会長は無事みてぇだな」

「えぇ、まったく……災難としか言いようがないですね」

「まったくだ」

 

互いに苦笑するしかねぇ。

それ以上にどうしろって言うんだ? ああなったちったら、いくらクロードやオレが束になっても止められねぇよ。

そんな風に笑い合ってると、流石に我慢出来なくなったのか会長が噛み付いてきた。

 

「ねぇ、一体どういうことよ? 何で急いであの場から逃げ出さなければならなかったの? それにあなたのお連れが取り残されてるじゃない! ISが暴れ回ってるんだから、あの人が危ないわ! 急いで戻らないと!」

「そうだよ! レオス、急いで戻らないと! 今アイツを止められる奴がいないんだ。どんなことをしでかすのか分からない!」

「そうですわ、レオスさん! 早く戻らないと、ブリュッケンさんが……。いくら凄く強い人でもISには適わないですわ!」

 

会長に続いてイチカやお嬢様も必死な面でオレ等を説得に掛かる。

それが普通の反応なんだろうなぁ。

だが、今回に限ってはそうじゃねぇ。今すぐにでもあの部屋から飛び出してなきゃ、オレ等が巻き添えを食らうことになっちまうからなぁ。

そんなオレの気持ちを代弁してか、クロードが会長達を宥めるように説明し始めた。

 

「突然連れ出してしまったことは申し訳ありません。ですが、あの場にいては間違いなく私達は巻き込まれて被害を受けるところでした。最悪、死人が出ても可笑しくない状況でしたから」

 

「「死人!?」」

 

クロードの言葉に反応するお嬢様とイチカ。

そう驚くようなもんでもねぇだろ。さっきまでIS何ていう物騒なモンを振り回してる奴を相手にしてたんだからなぁ。

そんな反応を示す二人と違い、会長はオレとクロードの顔をまじまじと見ながら聞いて来た。

 

「ねぇ、それってどういうこと? 確かに命を危険晒していることは否定しないわ。でも、此方もISを持ってるのだから、安全なはずよ? 寧ろ、ISを持ってない人を置き去りにするなんて、正気の沙汰とは思えないわ」

 

オレ等を人でなしを見るような目で見てくる会長。

そんな目で見つめないでくれよ。

でもよぉ……仕方なかったんだ。誰だって巻き添えは喰らいたくねぇからなぁ。

それに対し、クロードは苦笑を浮かべながらオレ等が何でクソオヤジを置いて逃げ出したのか説明をし始めた。

 

「いえ、それは逆なんですよ。寧ろ、彼の近くにいる方が危なかったんです」

「え、それってどういう………」

 

お嬢様が不思議に思いながらクロードに問おうとすると、その途端………。

 

オレ等の後ろにある壁が一気に吹き飛んだ。

 

それを見て驚くお嬢様達。

オレとクロードは互いに溜息を吐いた。

まさかここまで速いとはねぇ。いくらハイテクなIS学園でも、更衣室までは頑丈には出来てねぇらしい。

 

「クロード……もう少し離れるかい?」

「いえ、多分大丈夫だとは思いますが、やっぱりただの建物ではあまり持ちませんでしたね。軍用の建物並みに頑丈じゃないとここまで持たないとは思いませんでした」

 

二人してやっちまったとばかりに吹き飛んだ壁を見る。

そしてクロードはこれから始まるであろう事に、お嬢様達に説明することにした。

 

「あまり驚かないで下さいね。多分、この後皆さんは信じられないような物を見てしまうと思うので。気をしっかりと持って下さい」

「今までの常識が殆ど吹っ飛ぶぜぇ。何せ今の世の中を真っ向から否定するようなもんだからなぁ。これを見たら、流石の女尊男卑思考の奴も黙るってもんだ」

 

オレ等の言葉に戸惑う三人。それと反比例するかのように近づいてくるかのように大きくなっていく破壊音。

その音に怯えってモンが見え隠れし始めた三人に向かって、オレはとあることをニヤリと笑いながら口にした。

 

「今からお前さん達にオレが厄介なだと思うモンを3つ教えてやる。一つは大国の真っ白なお家でふんぞり返ってるおっさん、もう一つは頭の悪い教えを広めて馬鹿を量産していくイカれた宗教家、そして最後が…………菓子を台無しにされたクソオヤジだ」

 

その言葉と共に、少し後ろで更に大きな壁が吹き飛んだ。

そしてその途端に全員の鼓膜を叩く獣のような雄叫び。

あまりの大音量にオレとクロードは顔を顰め、一夏達は身体を竦ませた。

そして壁を突き破って出てきたのは………。

 

「な、何なんだよ、あのオヤジッ!? 何でこんな!」

 

顔を真っ青にしたストーカーだった。

身に纏ってるISはかなり壊れてるみてぇで、あの特徴的な八本の足が四本ほどなくなってやがる。

そして咆吼を上げながら更に壁を粉砕して出てきたのは、我等が大将だ。

 

「テメェエェエェエエエェエエエエエェエエェエェエエエエエエエエッッッッッッッッッッ!! 俺のクレープ、どう落とし前を付けるつもりだ、あぁ!!」

 

予想通りというか何というか、やっぱりクソオヤジが爆発してやがった。

顔は怒りでテールランプよりも真っ赤だ。しかもぶちキレてるせいで、真っ赤な顔にすげぇ青筋が立ってる。

その姿たるや、巨人つぅよりも鬼だろうよ。

会長達はオヤジの姿を見て、驚きのあまり固まってる。まぁ、あんな奴が暴れてたら誰だって驚くよなぁ。

しかもそれでけで終わらないのが、ウチ一番の団長様だ。

 

「ふざけんな! 私は亡国機業のオータムだぞ! なんでこんなオヤジになんか!」

「そんなモンでイキがってんじゃねぇぞ、この小娘がぁ!!」

 

残った腕から銃弾を乱射するストーカー。

だが、それをオヤジは信じられないような速さで躱す。

あのデケェ図体のどこにそんな機敏さがあるのか、オレは不思議で仕方ねぇよ。

そして一気にストーカーまで間合いを詰めると、その四本の腕の内の一本を掴み、そして一気にへし折りもぎ取った。

 

「五本目もらったぜぇッ!! だが、こんなもんで静まるほど、俺の魂は軽くねぇ!!」

 

そこからさらにオヤジは動き、空いた左手で残った腕を二本ほど纏めて掴むと、ストーカーを一気に反対側の壁へと振り回して叩き着けた。

その途端に口から血を吐くストーカー。

いくらISの絶対防御が優秀だろうが、衝撃までは抑えられないって言ういい例だよ。

壁をハンマーよろしくにぶっ壊したオヤジ。

ストーカーは自分の状態とオヤジの面を見て完璧に怯えてやがる。

だが、そんな怯えた奴相手でも、このオヤジは躊躇するなんて可愛げのあることはしねぇ。

掴んでいた二本の腕を握り潰して放すと、腕は粉々になってオヤジの手からこぼれ落ちる。そして残った一本を掴むと、オヤジは思いっきり自分に向かって引き込んだ。

 

「もっと反省しろ、ガキがぁああぁあぁああああっぁあぁぁああああああああ!!」

 

引っ張り込まれたストーカーに待っていたのは、オヤジのフルスイングのパンチ。

そいつが見事にジャストミートした瞬間、まるで大砲が着弾したみてぇな轟音が辺りに轟き、ストーカーをピンポン球よろしくに吹っ飛ばした。

まさに暴れまくりのオヤジに、その暴れっぷりを見ていた会長達は空いた口が塞がらなくなる。

その様子を見て、クロードが優しい声で説明を入れた。

 

「あれが我々『巨人の大剣』の団長、アンドルフ・ブリュッケンです。我が社の名にもある通り、巨人というのは彼の忌み名ですよ。そのあまりにも大胆にして豪快な戦い方は、文字通り巨人。武器を一切使わず、素手で人は勿論、戦車まで破壊する化け物です。それはISとて例外ではありません。過去に仕事の時に襲撃を仕掛けてきたIS二機を大破、操縦者の入院期間無期へと追い込みました」

 

その説明を受けて、会長達は目を見開く。

確かに目の前で行われてる事を見れば分かっちまうだろうよ。

史上最強と謳われてるIS。それを一対一で、しかも武装無しの素手で圧倒的にぶっ壊す生身のおっさん。

もう悪夢にしか見えねぇよなぁ。

 

「しかもあの野郎は大の砂糖中毒者だ。デケェ図体のくせに大の甘党で、砂糖を愛して愛して愛しまくってるド変態だ。ことスィーツの事になると目の色を変えやがる。それでテメェの至福を邪魔する奴にはあんな感じに襲い掛かるってわけだ。御蔭でウチの社のルールには、『オヤジが菓子喰ってるときはちょっかいをかけるな』なんて規約が記載されるくらいだ」

 

俺の言葉を聞いて、何も言えなくなる会長。

きっと今までの常識ってもんが片っ端から壊れてるってところなんだろうよ。それはイチカも同じで、チフユより厄介なモンを見たって面だ。

最後のお嬢様も流石にこいつには驚いたのか、見入っちまってる。

さっきまでの話で会長とお嬢様は理解しただろうなぁ。

こんなに周りのモンをぶっ壊しまくって暴れまくってる大の大人が、たかがクレープ一枚でぶちキレてるってことがよ。

さて、そんなことを説明してる間にストーカーが大変な事になっちまってる。

ISはもう殆ど原型を残してねぇで大破以上。絶対防御を発動させてるんだろうが衝撃だけで腕や足があらぬ方向にまがって変なオブジェみてぇになり始めてる。顔色なんてまだら模様だ。赤と青と紫でなぁ。

流石にこれ以上やらせると、本当にお嬢様達の目の前で挽肉製造ショーが始まっちまう。そいつは少しばかり、お子様には刺激が強すぎだ。

 

「クロード、そろそろ少しは収まり始めてる頃だろ。そっちを頼む。こっちはこっちで連絡してそこで不細工なオブジェのなりかけを回収してもらうからよ」

「わかりました」

 

そしてクロードはゆっくりと暴れ回ってるクソオヤジに近づいて行く。

まぁ、そろそろクロードに任せておけば大丈夫だろ。まったく、短気な大人ってのは単なる老害にしかならねぇっての。

そして俺はクロードに任せた通り、自分は電話をかける。

誰にかけるかだって? 気まってんだろ。

 

「あぁ、もしもし、爺さん。例のストーカーだけど捕まえたんで速く取りに来てくれ。でねぇと、直ぐにでもウチの馬鹿な大将がミンチにしちまいそうなんでなぁ」

 

そう言って電話を切る。

そして周りの光景を見て、改めて思った。

あのクソオヤジはやっぱりクソ厄介だってなぁ。

 

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