恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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少しばかり下品な言葉が出ますよ。


第百四話 追撃をかけろ

 まったく……あのクソオヤジが暴れ回った所為で色々なもんが台無しになっちまった。

せっかく来客として呼ばれたんだからお上品に大人しくしてりゃぁいいものを、あの砂糖中毒者は少しでもテメェのモンが台無しにされた途端にぶち切れるんだからよぉ。いい歳した大人が随分と大人げねぇもんだ。そんな奴の部下をやってるこっちの身になってもらいてぇもんだよ。恥ずかしくてオレは今すぐにでもソンドン洞窟に飛び込みたくなるね。

そんな恥ずかしい限りの我等がクソ上司様は現在も暴れんばかりに意気揚々としてるわけだが、そこはウチ一番の美形にして一番おっかない副長様が何とかしてくれんだろ。いくらあの馬鹿でも、あの副長様には頭が上がらねぇからなぁ。まぁ、ウチじゃアイツに頭が上がる奴なんて一人もいねぇけどよ。

さて、そんなわけであの暴れ回ってる馬鹿はクロードに任せてオレは爺さんに電話だ。

流石に結構ぶっ壊したからなぁ、あのオヤジが。

事態の半分近くはもう終わったことについての報告と、急いであのストーカーを回収しねぇとミンチになってお話どころじゃねぇってことを言わねぇと。それと修理代はクソオヤジに請求するよう伝えねぇとこっちに飛び火しちまう。

その事を簡潔に伝え終わってクロード達を見ると、オヤジは多少は落ち着き始めたらしい。

まだ鼻息は荒いが取りあえずは暴れることは止めたようだ。

 

「まったく、菓子ひとつで大人げねぇなぁ。そんなんで本当に社会人かよ。嘆かわしいねぇ、ウチの大将がこんな癇癪持ちの老害ってのは」

「ふん、テメェみてぇなこだわりのねぇガキにはわからねぇだろうよ。こだわりがねぇ奴の人生ってのはまるっきり深みってもんがねぇ。そんな薄い奴が説教しようなんざぁ一万年速んだよ、この役立たず」

 

訂正するぜ。

どうやらこのクソオヤジは第二ラウンドをご所望のようだ。

オレはそのままオヤジの面を睨み付ける。向こうも同じように睨んできた。

さっきまで荒んでた分、殺気立ってるねぇ。そうでねぇとなぁ。

 

「なんだい、この場でそこのストーカー女みてぇにおねんねしてぇのか? だったら直ぐにでも快適な睡眠って奴を約束してやるぜ」

「何抜かしてやがる。まだ暴れたりねぇし不完全燃焼も良いところだったんだ。テメェのむかつく面をぶん殴れば多少はマシになるってもんかもなぁ、あぁ!」

 

そしてどちらも拳を握りしめ、相手のいけすかねぇ面に叩き着けようとするわけだが………。

 

「ストップです。何を勝手に暴れているんですか、二人は」

 

我等が副長に止められちまった。

こうなっちまったら拳をさげるしかねぇなぁ。でなけりゃ再び心が痛み付けられるお説教をされちまう。あれを喰らうのとむかつくオヤジの面をぶん殴るの、どちらを我慢するかなんて目に見えて分かる話だ。癪だが、あれだけは勘弁だよ。

オレ等を止めたクロードは呆れ返ったって面でオレ等を見てきた。

そんな目で見るなよ、悪いのはあのオヤジなんだからよ。

 

「まったく、貴方達は直ぐにそうやって張り合うのですから。いい加減もう少し我が社の社員としての誇りをもって動いて下さい。そんなのですから、影で我が社は無法者の集まりなどと罵られるんですよ」

「そいつは事実なんだから否定のしようがねぇだろうよ。そんな気にすることでもねぇだろうに」

「クソガキに一票だ。今更だぜ、そんなことは」

「その所為で我が社のイメージが悪化すること考えて下さい。最悪、殆ど仕事がこなくなることも考えられるのですから」

 

そんな会話をしているが、このやり取りも何回したんやら。

もう毎回過ぎてそこまで覚えてねぇなぁ。

そんな話をしていたら、それまでポカンと放心状態だったお嬢様達が復活したようだ。

オレに向かって殺到して来やがった。

 

「れ、レオスさん、さっきのは一体何なんですの!?」

「そうだ、レオス! ひ、人が生身でISをあんな風にするなんて……」

「ねぇ、貴方の所ってみんなあんな感じの化け物ばかりだったりするわけ!? どう考えたって可笑しいでしょ、さっきの!!」

 

お嬢様達にはショックだったらしい。

だからあまり見せたくはなかったんだがねぇ。オレやクロードは腐るほど見てるから今更だが、初見はやっぱり目を剝くそうだ。

 

「そう一遍に聞くなよ、お三方。流石にこいつはオレだって何も言えねぇんだからよぉ」

 

そう答えるが、それでもまだ収まらねぇ。

仕方ねぇんで説明するかねぇ。

 

「何でももクソも見た通りだよ。あの大人げねぇ老害オヤジがウチの団長様だ。オヤジについてはオレも深くは知らねぇ。会った時からあんな感じだったからなぁ。分かってることは、アレはもう人じゃねぇってことくらいさ。戦場で一切の武器も持たず、素手で人から兵器から戦車、果ては施設まで壊しまくる。ただの化けモンだろ。あんな奴がいるから世の中ってもんは退屈しねぇわけだが、むかつくことばかり言いやがるからなぁ。図体は馬鹿デケェが、お脳はおこちゃまの残念なオヤジだよ」

「聞こえてんぞ、クソガキ! テメェこそ未だに童貞捨てられないチェリーじゃねぇか。女の味も知らねぇガキが生言ってんじゃねぇぞ!」

 

クロード並みでないにしても、野性の獣並みの耳だけあって聞こえてやがったか。まぁ、気にすることなんてねぇけどよ。

オレは呆れた様子でお嬢様達に話しかける。

お嬢様方が何を想像してんのかわかっちゃぁいるが、流石に顔を真っ赤にしすぎだぜ。

 

「いやはや、御下劣な奴は下品で駄目だねぇ。ここに淑女がいるってのによぉ」

「ん、何の事だ?」

 

イチカの野郎は何の事か理解出来てねぇらしい。こりゃ純真ってよりも異常だな。どうやらチフユは情操教育ってのをしなかったらしいなぁ。駄目だぜ、ちゃんと教えないと。将来何処に入れるのかもわからないままってのは、男の恥だ。

ともあれクソオヤジは少しばかり観念が古臭いんでなぁ。

 

「テメェこそちったあボキャブラリーを増やしとけ、毎回同じようなことを上げやがって。直ぐに捨てたがる馬鹿なガキと一緒にすんなっての。別に知ろう知らなかろうが、生きてくのにそこまで差はねぇよ。そんな物差しでしか測れねぇ自分の器量の狭さを寧ろ反省しろよ、クソオヤジ。それに聞いたぜ、確かテメェ、売春窟で出入り禁止になってたよなぁ。何人病院送りにしたって話だよ」

「それは仕方ねぇだろ、サイズが合わなかったんだからよぉ。だが、ちゃんと悦ばしたんだから問題ねぇ。そのやり方も知らねぇ奴に文句を言われる筋合いはねぇよ」

 

そして再び睨み合うオヤジとオレ。

そのまま殴り合いに再び発展しようってところだが、やはりというべきかクロードが間に入ってきた。

 

「二人とも、下品ですよ。ここには年頃の少年少女がいるのですから」

 

クロードの言葉で互いにやり合う気が削がれる。

軽く舌打ちをしつつオレはお嬢様の方を見ると、お嬢様と会長は顔がトマトみてぇに真っ赤になてった。どうやらまだこういった話は早いらしい。

イチカの野郎はかわらずにわからねぇようだがね。

そんな空気を感じてか、クロードが軽く咳払いをして場を仕切り直す。

 

「兎も角、あれがウチのトップです。世界は広いですから、ああいうのも稀にいるということで。それは良いとして……レオス」

「なんだい、クロード」

「分かっていますね」

「当たり前だろ」

 

その言葉にオレはニヤリと笑みを浮かべ、それを見たクロードは微笑み返した。

その掛け合いに何の意味があるのか分からないお嬢様とイチカは首を傾げる。それを見てか、クロードは教師よろしくに説明を始める。

 

「今回、織斑君を襲撃しにきたのは彼女一人。目的は多分織斑君のISだと推察されます。ですが、当然内密に事を進めることは出来ず、必ず騒ぎは起こります。そんな中、一人で脱出が出来るとは通常思えません。なら、必ず彼女を回収する部隊なり人員が来るはずです。その者を捕らえるなりしなければ、この事態の収拾は付きませんよ」

 

それを聞いて納得する二人。

そう、このストーカーが一人で帰るとは誰だって思えねぇよ。ストーカーのお仲間がタクシーを呼ぶはずだからよぉ。

そいつをどうにかしねぇと、こいつはどうにかならねぇ。

 

「ってことで、行くぜ、お嬢様、イチカ」

「は、はいですわ!」

「え、俺もかよ!」

 

お嬢様は意気込みも顕わに頷き、イチカは自分も行くのかって驚いてる。

 

「当たり前だろ。せっかくのお前さんの出番があのクソオヤジも所為でオジャンになったんだ。だったら、ここはリベンジマッチといこうじゃねぇか」

「そ、そんなものか?」

「そんなもんだ。んじゃ、イチカの再お披露目としゃれこもうか。なぁ、お嬢様」

 

お嬢様に笑いかけながらそう聞くと、お嬢様は戦意を昂揚させた不敵な笑みで返して来た。

 

「えぇ、行きましょう」

 

 

 

 さぁ、今度はイチカのリベンジマッチだ。どういくのか……楽しませて貰うとするかねぇ。

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