恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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すっかり書けなくなってきてしまい、困りましたね。


第百九話 これがオレの『友人』だよ。

 お嬢様を誘ってから直ぐに時間は経ち、あっという間に約束の土曜日になった。

それまでの間、お嬢様と来たらそりゃあもう凄いもんだった。

何が凄いって? そりゃぁ………。

 

その表情がなぁ。

 

常に上機嫌で笑ってるんだが、何かを考えては顔を真っ赤にしてキャーキャーと愉快に騒ぎ始める。

見るからに楽しそうな様子は見ていて飽きねぇもんさ。

そいつはいいんだが、授業中もそんなモンだからチフユからご自慢の出席簿をお見舞いされたんだよ。

それで見事に良い音が鳴ってお嬢様は思いっきり悶えながら頭を押さえるんだが、それでも頭を上げた先には再び自分の世界にトリップしてるってわけだ。

そりゃぁもう、クラス中が驚いたもんさ。あのチフユの一撃を受けてもまったくへこたれねぇところによ。

何せチフユ自身も驚いて呆れ返るくらいなんだからなぁ。

挙げ句はオレがチフユに睨まれる始末だが、そこでどう答えたってオレがシバかれる理由にはならねぇ。正直に答えたらすげぇ疲れた様な溜息を吐かれたよ。

さて、そんなお嬢様に当然クラスの連中は気になって仕方ねぇようで、休み時間になったら何があったかお嬢様に群がって聞きに来たよ。

それにお嬢様ったら、なんとまぁ幸せそうに答えること答えること。

御蔭でオレを見る周りの奴等の目が変な意味で変わったよ。

 

「そんな普通に女の子を高級ディナーに誘うなんて……」

「やっぱり色んな意味で大人ね。これからはさん付けで呼んだ方がいいかな」

「レオレオは大人だね~」

「もしかしてそのままオルコットさん、スィートの一室でいただかれちゃったり……キャーーーーーーー!」

 

と、こんな感じだよ。

騒ぐ周りにお嬢様は更に頭の中の風呂敷を広げては同じように騒ぐ。

挙げ句は良く連んでる専用機持ちの連中に色々と相談し始めたよ。

着ていくドレスや下着とかの相談とかなぁ。まぁ、そういった

御陰様、イチカによく連んでる連中からは何とも言えねぇ目で見られた。

羨ましいような、何かイケナイモンを見るような、そんな視線だ。

イチカの野郎はそんなホウキ達を見て首を捻ってる。

ここで首を捻ってるようじゃぁまだまだこいつを振り向かせるのは難しいぜ、お前さん等。

そんな感じでお嬢様はこの数日間を実に楽しそうにしていたわけだ。

 

 

 

「れ、レオスさん、このドレス、どうでしょうか………」

 

土曜日になって早速若頭の店に向かうためにお嬢様と校門前のゲートで待ち合わせをしていたわけだが、遅れてやってきたお嬢様はこれまた凄い恰好で来たモンだ。

淡い青をベースとした華麗なスレンダービスチェに、薄紫の小さなポシェット、それに白いハイヒール。

顔は年相応ながらも見事に化粧されてるもんで、お嬢様がいつもの倍以上お美しく見えたもんだ。

正直見惚れちまったね。

そのまま見ていたくなるところだが、不安そうな様子のお嬢様をのままにして放置するほどオレは鬼畜ではないんでね。

感想を述べるかねぇ。

 

「お嬢様、最高に似合ってるじゃねぇか。そいつなら社交界で男共が引っ切りなしだろうよ。正直見惚れちまったぜ」

「そ、そうですの! よ、良かったですわ~」

 

お嬢様は褒められて嬉しいようで、顔を真っ赤にして笑う。

その笑顔についついグッときちまったよ。元が美人なだけに、本格的にするとここまで凄いとはねぇ。将来が更に楽しみになっちまったよ。

すると今度はお嬢様はオレを熱い眼差しで見つめながら話しかけてきた。

 

「その……レオスさんのスーツ姿も、その……格好いいですわ……(やっぱり格好いいですわぁ、レオスさん! スーツを見事に着こなして、まさに紳士のようですわ。そんなレオスさんにこれからエスコートされるなんて……キャー、キャー!!)」

「そいつはどうも。あんまし堅ッ苦しい恰好は苦手なんだがね。お嬢様にそう褒めて貰えるんだったら悪くはねぇな」

 

こいつもクロードの教育の賜物って奴かねぇ。

仕事柄、公の場に立つことも念頭に置いてクロードはオレを仕込んだ。だからこういう時にはそれ相応の服装ってもんを着るのが常識ってわけだ。人間、TPOはよく考えろって事だな。あのクソオヤジはそう言うのに無頓着だからオレがこんな風に着せ替え人形にならなくちゃならねぇんだよ。

まぁ、あのオヤジの場合、サイズが違い過ぎて会場に入れねぇけどな(笑)。

そんなわけで着ているスーツを褒められて割かし悪くねぇ気分だ。

後はゲートを出てモノレールに乗って本土へ。そこからはタクシーを使って移動って感じになるんだが、その前にしとかなきゃならねぇことがある。

別に何もなきゃ問題ねぇんだが、念の為って奴だな。

若頭と連むと大体何かしらに巻き込まれることが多いんでね。この国は比較的安全だが、同時に平和ボケもしてるからなぁ。

オレはそう思いながらお嬢様にある物を手渡した。

 

「お嬢様、こいつを念の為持っときな」

「え、これはっ!? 何で……」

 

笑顔だったお嬢様の面も渡されたもんを見た途端に凍り付いた。

まぁ、当たり前だよなぁ。これから飯食いに行こうって時に渡されたのが拳銃ってんだから。

驚いた顔のままお嬢様はオレの顔を見る。そんなお嬢様をオレは笑いながら答える。

 

「あくまで護身用だよ。こいつはコルトの25オート。小せぇからお嬢様のバックにもすんなり入るだろ。中に入ってんのは特殊なゴム弾だから撃ったって相手は死にやしねぇよ。使わねぇんだったらそれに越したことはねぇんだが、どうにも厄介事ってのは常に纏わり付いているようなんでな。念の為って奴だよ。オレだって出来ればお嬢様には使って欲しくはねぇしな。まぁ、お嬢様がそいつを使う前にオレが全部何とかするから心配する必要なんざないがね」

「そ、そうですの……。では、一応受け取っておきますわ(レオスさん、さっき『わたくしに何か危険が及ぶ前にオレが守ってやるって……えへへへへへ)」

 

お嬢様は少し神妙な顔をしつつコルトを受け取った。何でか顔が真っ赤になってたけどな。

ただ飯を食いに行くのに随分と仰々しいもんだが、それでもだよ。もしも、なんて事がアイツと連むと起こりやすいんでな。

使わなけりゃ本当に良いけどよ。

さて、渡すもんも渡したし、今度こそオレはお嬢様に差し出すべき手を差し出す。

最近じゃ結構やってるようだが、これも紳士のたしなみって奴だ。

 

「では、エスコートしますよ、お嬢様」

 

畏まった様子で一礼して手を差し出すと、お嬢様は真っ赤な顔を喜びで綻ばせながらオレの手に自分の手を軽く合わせた。

 

「はい、よろしくお願いしますわ!」

 

んじゃ、さっそく大人らしくムード溢れるディナーに向かうとしようかねぇ。

 

 

 

 

 モノレールで揺られ、本土に着いてからはタクシーで若頭に言われた住所まで移動すること約40分。

オレとお嬢様は日本で一番騒々しい街、通称『夜の無い街』、『不夜城』の異名を取る歌舞伎町へと到着した。

初めて見るお嬢様は最初こそ物珍しそうに見ていたが、周りの店を見て段々と顔を真っ赤にして下を俯いちまった。

まぁ、風俗やらなんやらと、お嬢様には刺激が強すぎたらしい。

これでタクシーでなけりゃぁ今頃キャッチにでも捕まって面倒臭ぇ事になってただろうよ。

そう思いながらタクシーは目的地の店へと到着した。

 

「こ、これは………」

「へぇ~、中々じゃねぇか」

 

店を見上げてお嬢様とオレはそのでかさに感心する。

歌舞伎町の一等地でこれだけデケェ店を構えられるってだから、如何に力が入ってるのか分からせられるってもんだ。

そう思いながらオレはお嬢様の手を軽く繋いでエスコートしつつ店に入る。

受付で声をかければ何かしら案内されんだろ。

そう思ってたんだが…………そんな必要はねぇらしい。

 

「よぉ、直に会うのは久々だな、若頭」

「相変わらず生意気そうな餓鬼だな貴様は。まぁ、壮健そうでなによりだ」

 

オレはそいつを見てニヤリと笑いながら声をかけると、向こうも同じようにニタリと笑い返して来た。

黒く長い髪を一つに纏め、鷹のように鋭い目をした二十代半ばの長身な男。これがオレの『お友達』だよ。

そいつはオレの隣にいるお嬢様を見て、礼儀正しそうに如何にもな挨拶をしてきた。

 

「ようこそおいで下さいました、凜華廊へ。私は当店の総支配人を務めます王 史龍(ワン シロン)と申します。以後、お見知りおきを」

 

 だそうだ。

随分とまぁ……真面目なことだねぇ。

と、この支配人がオレの『お友達』、中国屈指の大マフィア『李家』の若頭を務める王 史龍だよ。

 

 

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