恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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スランプの極致で可笑しくなりそうですね。就職してから一気に筆が進まないです。


百十一話 やっぱりオレと奴が一緒なら何か起こる

 お嬢様のドレスアップも終えたことで、改めてオレはお嬢様をエスコートする。

 

「ではお嬢様、お席へどうぞ」

「はい!」

 

お嬢様が座れるように席を引いて招くと、お嬢様は微笑みながらその席に付いた。

そんな動作も実にお美しいことで、見惚れちまうねぇ。特にあの尻の辺りのラインの艶っぽさには痺れちまったよ。

着席したお嬢様は新しく加わってた楊の奴を見て誰なのか聞きたそうな感じだったんで、楊が進んでお嬢様に自己紹介をした。

それを聞いたお嬢様は普通に部下だと思ったらしい。

この辺り、まだお嬢様は甘いねぇ。楊の奴の雰囲気はどう見たって普通の社会人って感じじゃねぇだろうに。まぁ、その辺りが可愛い所なんだがね。

 

「では、客人も揃ったことだし乾杯といこうか」

 

若頭がそう言って各自にグラスを回していく。

そして楊が例の老酒を持ってきて注ぐわけだが、そこでオレは一声かける。

 

「あぁ、そうだ。お嬢様はまだお子様なんでね。悪いがジュースでも頼むよ」

 

前に少し飲ませただけで噴き出したくらいだからなぁ。せっかくの老酒がもったいねぇだろ。

するとお嬢様はオレを睨みながら頬を膨らませてきた。

 

「むぅ、レオスさん、子供扱いしないで下さいな!」

 

むくれるお嬢様だが、そうでもしなきゃ無理にでも飲むだろ。

年頃の娘ってのは気むずかしいねぇ。

その様子を見た若頭は楊に何かを命じると、オレの方にニヤリとからかうような笑みを向けて来た。それと同時に楊は席を離れると厨房の方に向かって行く。

 

「レオス、いくら未成年に飲酒は良くないと言うためとはいえそれはよくない言い方だろう。年頃の女性に失礼ではないか」

 

あぁ~、やだねぇ。若頭ったらオレをからかうネタが手に入ったって実に喜んでるようで。

別にそんな殊勝なことじゃねぇのによぉ。

だが、目の前で玩具を手に入れた若頭は止まらねぇ。

 

「オルコットさん、こいつはこのような物言いだが、君のことを心配してそう言っている。だからそこまで怒らないでくれ。こいつなりに君のことを大切に思ってのことなのだから」

 

実にワザとらしい言い方をするもんだ。聞いてるこっちの歯が浮きそうになっちまう。

そう言われた途端に顔がボンッと真っ赤になるお嬢様。そのまま下を向いてモジモジし始める。

 

「そ、そんな、わたくしのことを想ってくれているだなんて………(あ、改めてそういわれると、やっぱり……嬉しいですわぁ……)」

 

全くもって悪い大人だよ、若頭は。

純情な少女をからかって遊ぶなんてのは趣味が悪いってもんだぜ。

クロードとは違った弄りをしてくれた若頭にジト目を返すと、若頭は実に愉快そうな笑みを浮かべながら中国語で返して来た。

 

『貴様が直に呼ぶくらいだからもしやと思ったが……成る程、貴様がなぁ。歳を取れば色を知るといったところか』

『まったく、この少女も随分と可哀想なことだ。このような極悪人に恋慕の情を抱くというのだから』

 

いつの間に戻ってきたのか、楊の奴も若頭に乗っかって言って来やがった。

その意見に対し、オレは呆れた面で若頭に返す。

 

『まったく、そこまで行ってねぇっつの。気に入ってるのは事実だがね。それにしても若頭、純情な少女を弄んで楽しむなんて悪趣味だぜ。まだ若いんだから、そんな遊びを覚えると醜い人間になるもんだよ』

『この業界の殆どがそんな人間ばかりだろうよ。その点、貴様も人のことは言えまい』

 

ありゃ、どうやらオレがお嬢様を弄って楽しんでることもバレたらしい。

だが、そう言われても仕方ねぇだろ。お嬢様ほど反応が面白ぇ奴もいねぇんだからよ。

そう思いながらお嬢様に目を向けると、まだ顔が真っ赤なままだった。

そんなお嬢様に楊の奴は琥珀色をした液体が入ったグラスをお嬢様に差し出すと、お嬢様は少し驚いたようだ。

 

「あの、これは……何だか甘い香りがしますわ……」

 

初めて見る代物にお嬢様は興味深そうにそいつを見つめる。

オレは香りだけでそいつが何か分かったが……成る程ねぇ、そうきたか。

不思議そうにしてるお嬢様に若頭が説明を淹れ始めた。

 

「それは杏露酒と呼ばれる中国の杏の酒です。甘いので女性の方も抵抗なく飲めると思いますが、あなたはまだ未成年。量は少量にしておきますね」

「あ、ありがとうございます」

 

お嬢様は改めて礼を言いつつグラスを覗く。

それで中の杏露酒の香りを嗅いで頬を緩めていた。

それで全員に酒入りのグラスがまわった所で、若頭が乾杯の音頭を取る。

 

「では、こんどこそ………乾杯」

 

「「「乾杯!」」」

 

そして打ち合わされるグラスの音。

そのままオレと若頭、多少遅れて楊がグラスに口を付けた。

口の中に入れた途端に広がる独特的な風味と味は流石の一言に尽きる。

他の酒では味わえねぇ独特的なのが実にイイ感じだ。

グラスから口を離すと、オレはさっそく若頭に声をかけた。

 

「流石だねぇ。こりゃあ特上物って奴だな」

「当たり前だ。本国でも数少ない代物なのだからな」

「流石です、大哥。これ程美味い老酒は初めて飲みました」

 

上機嫌に答える若頭に賛美の声を送る楊。

そしてお嬢様からも声が上がった。

 

「少しアルコールが強いですけど、とっても甘くて美味しいですわぁ!」

 

多少興奮気味に杏露酒の味に喜ぶお嬢様。

少し飲んだだけだってのに、その顔色はうっすらとした桜色って奴になっていて妙な艶気を出し始めている。

おいおい、酔うのが早いぜ、お嬢様。

その点で言やぁ若頭の提案は流石の一言に尽きるってもんだ。

お嬢様には丁度いい量しか出さなかったんだからなぁ。

喜ぶお嬢様を見て若頭はそれはよかったと微笑む。その面は実に大人の魅力に溢れたもんで、本性を知ってるオレからしてみれば少しばかり笑いたくなったもんだ。

あんたはそんなキャラじゃねぇだろってなぁ。

食前酒の次は前菜から始まり色々な料理が出始める。

皮蛋やら佛跳牆やらフカヒレやら北京ダック、餃子や焼売、麻婆豆腐や四川風魚の煮物、それにデザートに杏仁豆腐やツバメの巣のココナッツミルクなど。

まさに中華のオンパレードってやつで、味もまさに本格的な物ばかり。

それでいてちゃんと他の国の奴等でも食えるよう癖を押さえてあるってんだから、この店は真面目に営業する気なんだろうよ。

美味いもんを食ってんのもいいもんだが、それ以上に面白いのは、お嬢様の反応だ。

美味けりゃ目を輝かせ、辛けりゃ少し涙目になりつつも喜ぶ。

酢豚を食ったとき何て特にウケたもんだ。ファンのとは全然違うって驚いてたよ。

 

「どうでしょうか、本日の料理は?」

 

若頭がオレ達にそう聞くと、お嬢様は少し興奮気味に答えた。

 

「はい、とても美味しいですわ! まさに中国四千年の歴史の重みが伝わってくるような……」

「そう言ってもらえると嬉しいものだね。作った甲斐があったという物だ」

「え………?」

 

若頭の返答にお嬢様が固まる。

どうやらここの料理の殆どは若頭のお手製らしい。

その事実にお嬢様は驚きのあまりに固まったようだ。

そんなお嬢様を笑いつつ、オレは若頭にからかいを入れる。

 

『おいおい、いつからあんたは料理人になったんだ? これだけやれりゃあ本物の料理人だって顔負けだろうよ。いっそこのまま転職したらどうだ? きっと繁盛するぜ』

 

そのからかいに対し、若頭は笑いながら答えた。

 

『こんなものは趣味に過ぎん。人間、黒い事ばかりやっているとストレスばかりが溜まる。たまには趣味でストレスを解消しないとやっていけないものだ。その点、貴様のような人間は化け物としか言いようがないのだがな』

『そいつは言い過ぎってもんだろ。オレだってストレスは常に溜め込んで大変なんだ。ただ、趣味と仕事が同じってだけだよ』

『まったく、野蛮の一言にしか尽きない奴だ』

『そう言うなよ、楊。それを言ったらマフィアなんてやってるお前さん等も似たようなもんだろ』

 

からかいついでにそんな物騒な話をするオレ達。

お嬢様は気を取り直すと若頭が凄ぇと褒め称えるわけだが、若頭はそれをやんわりと大人らしく余裕で受け止め笑う。

しっかし……どうにも奇妙な感じだねぇ。

いつも……そう、大体若頭と連めばほぼ何かしらの騒動に巻き込まれてきた。

いくらここが世界でも有数の平和ボケな国だからって、そんなつまんねぇことがあるのかねぇ。

だからこそ、上機嫌で杏仁豆腐に舌鼓を打っているお嬢様を眺めつつ考える。

このまま平穏にいくのかってなぁ。

そんなことが顔に出てたのか、お嬢様が少し気にした様子で話しかけてきた。

 

「あの、どうかなさいましたの?」

「いや、何でも。ただお嬢様があんまりにも美味そうに喰ってるもんだから見入ってただけだよ」

「っ!? そ、そうですの……(そんな、ジッと見られていただなんて……恥ずかしいですわぁああああぁああああああああ!!)」

 

お嬢様は顔を真っ赤にして恥じらい始める。

そいつをニタニタと笑いながら見ていたわけだが、案の定というべきなのかねぇ。喰っている最中に気付くべきだったのかもしれねぇことだった。

 

何でサーブを楊の奴が全部してるのかってことによ。

 

本来ならそいつは従業員がやるべきことだろ。

だってのに、周りからいつの間にか人の気配が無くなってやがる。

それらが叩き出す答えってのは…………。

それに行き当たったと共に、高層ビルだってのに窓が一気に割れてナニカが飛び込んできた。

 

『『『『『死ねぇええぇえぇええええええええええええええ、王 史龍ッ!!』』』』』

 

あぁ、やっぱりって言うべきなのかねぇ。

実に愉快なサプライズイベントが舞い込んで来やがった。

飛び込んできたのは清掃業者の制服を着た男が五人。

面を見る限りだと、黄色人種。叫んでる登場台詞から考えればどう考えたって若頭のお客さんだ。見事に中国語なんだからなぁ。

持ってきたであろう銃を引き抜いて若頭に向けると若頭は可笑しかったのか実に愉快そうに笑いだした。

 

『まったく、貴様等はもう少しまともな台詞は吐けんのか。あまりの愚かさに笑いがこみ上げてきたぞ』

『仕方ありません、大哥。あの者達は所詮学もプライドも無い野犬。そのような愚か者が吠えられることなど限られているのですから』

 

楊がそう若頭に返事を返すなり、料理が載っていた大きなテーブルをひっくり返す。

相当重い代物のはずだが、楊の野郎はまるで小石を拾うかのように持ち上げやがった。

それと共に床に落ちてぶちまけられる料理と割れまくる皿。

同時に来客からの祝砲が鳴りまくり始めたよ。

お嬢様は咄嗟のことに驚いてたようなんで、オレは咄嗟に抱きかかえて若頭の方に飛び込んだ。

 

「おい、どう見たってありゃあお前さんの客だろ。どういうことなのか説明を求めたいことなんだが?」

「どうもなにも見た通りだ。まぁ、強いていうのなら、この土地が元々は別の組織が牛耳っていたところだったと言うべきか。それを我等の李大人が実力行使で手に入れたんだ」

 

道理で可笑しいと思ったんだよなぁ。

こんな一等地を易々と他国の人間が手に入れるなんてよ。

やっぱと言うべきか、厄介事ってのは起こってたらしい。

オレはジト目で若頭を睨みつつ突っ込む。

 

「さては今日奴さん達が来るって知ってて誘いやがったな」

「私は仕事を早く済ませたいだけだ。こんな愚か者に長々と付き合っていては仕事が溜まる一方でな。この街に我等の市場を開くためにも根回しもしなければならないのだから」

 

一応言っておくが、今回オレは一切悪くねぇ。

この若頭が犯人だってのは一連の話を聞けば分かる。

この野郎、人を巻き込んでとっととこのサプライズイベントを終わらせようとしやがった。

オレはお嬢様の安全を確保するために胸の内に抱きかかえつつも若頭に突っ込む。

 

「だったら最初から依頼でもすりゃいいだろうに。面倒臭い真似しやがって」

「正規の依頼では費用が掛かり過ぎるのでな。これならもっと安上がりだ」

 

確信犯ってやつだ。嫌だねぇ、汚ねぇ大人って奴は。少しでも楽しようと周りもモンを利用しようとするんだからなぁ。

もう巻き込まれちまった以上、今更奴さん達に無関係だから帰してくれと言った所ですんなりとは帰してくれねぇだろうよ。

なら、どうするか? 決まってる。

 

「小遣いははずんでもらうぜ。それにお嬢様に何かあって見ろ。いくらアンタでも月の裏側までぶっ飛んでもらうからなぁ」

「惚気は結構だ。小遣いなら高めでくれてやる。だからこの場は……」

 

そう言うなり、オレは懐から相棒の『オルトロス』を引き抜き、若頭は上着の袖から三角錐の何かを出して来た。そして同時に楊が腰の銃を引き抜きいた。

そして盾代わりの机の影からオレ等と同時に腕だけを出してぶっ放す。

 

「「来客を歓迎だ!!」」

 

 

 

 やっぱりオレと若頭には絶対に疫病神が付いてるに違いねぇ。

こういうのは嫌いじゃねぇからいいんだがね。

ちなみにお嬢様はというと、オレの胸の中で借りてきた猫みたいに大人しくなってたよ。

 

(あ、あぅ~~~~~、レオスさんの心音が直に聞こえて……ドキドキが止まりませんわ……き、聞こえちゃうかもしれませんけど、押さえられませんわぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

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