恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回は短めですよ。


百十九話 お嬢様のレッスン

 本当、会社員ってのは辛いもんだ。

仕事と言えば大抵の無理難題なことすら通るんだからよぉ。御陰様、オレは出向先から大層な玩具のテスターをすることになったわけだ。

その玩具ときたら大層な厄介モンで、使う度にグロッキーな気分を味わうハメに遭う。まったくもって人に優しくないもんばかり作るよ、あの変態は。

そのじゃじゃ馬加減ときたら、酷すぎて馬なんてもんじゃすまねぇもんだ。

ありゃ人が乗っていいもんなのかオレにはまったくわからねぇよ。目の前は常に廻ってロクに見えねぇ。ISですらしねぇような空中でのバク転や前転、側転やら弾かれるような空中での軌道変更。そいつを常に高速でするもんだから、確かに空中戦では脅威的な強さを発揮するだろうよ。機動性ならホウキがタバネから貰ったっていう第四世代のISに引けをとらねぇ。いや、アクティブでフレキシブルな機動を操縦者の負担なんてまったく考えねぇでやらせる分、こっちの方が余程性質が悪いもんだ。

あの馬鹿なド変態ももうちょっとはタバネの優しさってもんを学んで貰いたいもんだぜ。

え、タバネは人に優しくないって?

そんなことはねぇだろ。ISは絶対防御で操縦者の肉体を完全に守り、しかも操縦者に不快感を与えないって優れた代物だ。そんな乗り手のことを考えてる奴は優しいとオレは思うね。

寧ろそいつを改悪して操縦者のことなんてまるっきり考えずに肉体をおシャカにしようとする巫山戯たモンを作る馬鹿の方が余程優しくねぇだろ。行き着く先は死ぬか廃人、良くても後遺症持ちでその後の人生真っ暗なのは確約されちまう。

まだ人に感心がねぇって噂のタバネの方が優しいだろ。あっちはそれどころか機械にしか発情しねぇって変態だ。

そしてそんな玩具の遊ぶよう強いられるオレはきっと不運としか言いようがねぇ。

まぁ、御蔭でお嬢様との訓練には付き合えることになったよ。

 

 

 

 放課後のアリーナにて、お嬢様とオレはキャノンボールファストの練習をすべく集まっていた。

そして早速オレはお嬢様にあの変態に押しつけられたドレスを着た姿を見せる。

 

「コイツがスカイウォーカーの専用パッケージ『ウラノス・ドレス』だ。全くもってロクでもねぇ代物だよ」

 

呆れた感じにそう言うと、お嬢様はオレの姿をマジマジと見て感想を口にする。

 

「これがレオスさんのパッケージ………何だか普通のISに戻ったような感じがしますわね。空中に立っているのではなく浮かんでいますし」

「正解だ、お嬢様。こいつは今まであった特殊な性質を取りやめ、本来のISの姿に戻してあるんだとさ。御蔭であまりよろしくねぇなぁ。座りが悪い」

「レオスさんは普通のISにはあまり乗ってこなかったみたいだから仕方ないですわね。それが普通のISの感覚なのですわ」

 

どうやらお嬢様はオレの不慣れな様子が面白かったらしい。

妙に楽しそうに笑ってくれたよ。おいおい、初心者を笑うのはよろしくねぇなぁ。

取りあえずそこからお嬢様もISを展開する。

その姿はいつもと少し違って、より鋭角な印象を受けたよ。如何にもな高機動仕様って奴だな。確か臨海学校の時でも使ってたか。

お嬢様はまるで着飾ったドレスを見せるかのようにオレにそいつのことを教えてくれたよ。

 

「これが私のブルーティアーズの強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』ですわ」

 

何でもブルーティアーズの特性であるビットを使用出来なくする代わりにその全てをスラスターとして使用することで高機動性を実現してるとか。

何かを得るかわりに何かを失うのはよくある話らしい。オレもこんな『優しい』代物にして貰いたかったよ。オレのISに失われてるのは特殊性よりも『人への思いやり』だろうからなぁ。

お互いに紹介も終わった所で早速練習といくことになったわけだ。

今居る第7アリーナはキャノンボールファストの練習が可能な場所で、かなり広く学園のタワーを経由してUターンで戻ってくるって寸法らしい。

 

「では最初は慣らしと行きましょう。レオスさんは私の後を付いてきて下さい。そこまで速くはしないので、ゆっくりでも良いですから」

 

お嬢様はそう言って先に飛び上がる。

その様子は妙に嬉しそうで、どうやらオレに教えられるってことが新鮮なようだ。

普段はお嬢様は教えられる事が多かったからなぁ。逆の立場なのが楽しいんだろうよ。なら、是非ご教授願おうかねぇ。

お嬢様が飛び上がってからオレも続いて飛び上がる。

この浮かび上がる感覚はどうにも慣れねぇなぁ。まぁ、このスラスターを噴かして身体にGが掛かる感覚は嫌いじゃないがね。

そこ、素人みたいだとかいうなよ。今回の操縦に関しては大真面目に素人なんだからよ。

そしてゆっくりと出力を上げようとしたんだが、さっそくそこでオレはやらかしちまった。

どうもこいつの操作は今までとまったく違って勝手が利かねぇ。

御蔭で操作を見誤ったオレはお嬢様の隣をすげぇ勢いで追い抜いて、天井のバリアに思いっきり激突するはめにあった。

 

「うぉっ!? 痛ぇ~な……」

「だ、大丈夫ですの、レオスさん!?」

 

上空から落ちてきたオレにお嬢様は慌てて近づいてきた。

その心使いが身に染みるねぇ。

オレは近づいてきたお嬢様に大丈夫だって伝える。

 

「大丈夫だ、お嬢様。ただ単にミスってスロットルを限界まで踏み込んじまった、御蔭でこの様だよ」

「お気御付けて下さい。いくらレオスさんが凄くても、不慣れな状態であまり無茶は出来ませんからね」

「肝に銘じるよ、『先生』」

 

大丈夫だと伝えると共にお嬢様にからかいをかけてみるが、それを聞いたお嬢様はえっへんって感じで寧ろご立派な胸を張る。

 

「そう言われるとくすぐったいですけど、私は今日はレオスさんを教える立場ですわ。ですから、そう言われるのも悪い気はしませんわね」

「そうかい、そいつは結構だ。なら、先生には良く教えてもらわねぇとなぁ」

「一生懸命教えますわね」

 

だとさ。

お嬢様はやる気満々だ。

なら、是非ともおそわらねぇとなぁ。

そしてお嬢様による高速機動のレッスンが始まった。お嬢様は終始笑顔で実に楽しそうだ。それでいてこっちに教えることも的確なんでわかりやすい。御蔭でオレは普通のISって奴の動かし方を大体理解出来てきたよ。

だが、いくら上機嫌でもお嬢様が軽いジョークを言うとは思わなかったぜ。

 

「レオスさんったら、私のお尻を追いかけるのに夢中ですわね」

 

勿論本人も本気でそんなことを言ってるわけじゃねぇんだろうが、いやはや、まさかお嬢様がそんなことをいうとはねぇ。

そこで意識を向けりゃぁ、確かにたわわに実ったご立派な尻が目に映る。

そんな尻を眺めてるのは、何だかんだと言って役得ってやつだよなぁ。

 

 

 

 そう思いながらこの日はずっとお嬢様の後を追いかけてた。

まぁ、こんな風に誰かに教わるのも悪くはねぇな。

あっちじゃこんな風に『優しく』教える奴なんていなかったんでなぁ。

お嬢様のレッスンが終わった後、顔を真っ赤にしてさっき自分で口にしたジョークを恥ずかしがってるところは結構面白かったよ。

 

たまにはこんなもの、悪くねぇなぁ。

 

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