恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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少し更新が遅れてしまって申し訳無いです。他の作品に集中していたものですから。


百二十一話 キャノンボール・ファスト開始。だが、それに乗じて何か企む馬鹿は湧いて出る。

 さぁ、待ちに待ったキャノンボール・ファストだ。

何、前回の学園祭でも同じような事を言わなかったかって? こいつは所謂様式美って奴だよ。一々何か始まる度にいうもんじゃねぇだろ、普通。こっちだって言いたくはねぇが、これも偏に親切心って奴だ。

まぁ、そんなわけで本日は学園行事『キャノンボール・ファスト』当日。

この行事は今までと違って学外にある市民アリーナを使用して行われるわけだが、このお祭りに浮き立ってるウチの生徒達はまったくもって能天気で羨ましい限りだ。

この行事は町を挙げてのイベントらしくて、アリーナ席は満席に近ぇんだが、当然全部が善良な市民ってわけじゃねぇんだよなぁ。

企業は勿論、各国のお偉いさんも来てる訳でそれなりに警備は敷かれてるんだが、それでも『悪い』奴ってのはいるもんさ。

しかもそいつが何処の国絡みと来れば、面倒臭さも倍増しだ。

 

「んで、お前さんはこの後どうされたい?」

「な、何を!?」

 

本来なら控え室でコンディションを整えたり機体の調子を見たりしてるはずの時間、オレは呆れた面で縛り上げた三人組の一人に話しかける。

今居る場所はアリーナの裏側って奴で、そういうところに限って汚ねぇネズミってのは侵入してくるもんだ。

何でオレがこんなことをしなきゃならねぇんだろうねぇ。それもこれも、あの腹黒い爺さんがわざと手を抜いているからなわけだ。

あのジジイ、オレに最初からネズミ狩りをやらせるためにわざと学園側の警備を手薄くしやがった。

その御蔭で選手は勿論、教員もキャノンボール・ファストに集中出来るってわけだ。

そいつは結構だが、それに一人の生徒が犠牲になってることを忘れないで貰いたいもんだよ。

愚痴はいくら吐いても留まることなんて無く、湯水の様に湧いて出る。金が湯水のように湧いて出る魔法のようなもんなら歓迎だが、そんなクソの役にもたたねぇもんが湧き出されても困るだけだ。

そのストレスを感じつつ、オレは一応念の為にふん縛ったアホなネズミに問いかけたわけだ。

 

「どうせお前さんの事を『御国』に問い合わせたところでそんな人は居ませんって言われて終わりなのは目に見えてる。オレとしても面倒なのは御免だ。だから希望がないのか聞いてるんじゃねぇか。ちなみに無事に何事もなく安全に帰るって選択肢は最初からねぇことを言っておくぜ。こっちとしてはそれでもいいんだが、上がそいつを許さねぇんでなぁ」

 

こいつが何処かの国のネズミだってことは分かりきってる。

何せコイツのお仲間以外にもあっちこっち居るネズミを狩りまくってからなぁ。御蔭でオレは休めてねぇよ。

今頃そいつ等の御国は手前のとこのネズミが捕まったことで、そいつ等との関係をもみ消す算段でもつけてんだろうさ。ご苦労なことで。

だからコイツは謂わば、オレの優しさって奴だよ。

このまま大人しくするってんなら丁重に扱って爺さんに任せる。あの爺さんなら手荒くは扱わねぇだろ。

もしまだ諦めずに一生懸命頑張るってんなら、その時はそいつの健気な闘志に免じてこっちの流儀でご丁寧に御国に返してやるさ。

まぁ、そん時にどんな状態で帰ってるのかはお楽しみだ。当人がぐっすりと二度と起きねぇことだけは確約するがね。

え、随分と刺激的だって? そりゃぁお嬢様がいねぇんなら隠す必要もねぇからなぁ。それにこっちは爺さんにただ働きさせられてるんだ。これぐらいの腹いせはさせてもらわねぇとなぁ。甘く見られるわけにもいかねぇからよぉ。

ちなみにそれまでの哀れなネズミ共は全員素直に下ったよ。皆根性がねぇなぁ。

御蔭でせっかく用意した大型トランクとC4が活躍出来ねぇんだ。もうちょっと張り合いが欲しいもんだ。

問いかけたそいつは最初こそオレを睨み付けてたんだが、手慰めに軽くちらつかせたオルトロスを見るや意気消沈して下ったよ。

 

「こ、降参だ、君達に下ろう。人質として当然の権利は約束してもらえるだろうか」

 

だとよ。

オレはその返答に少し残念ながら爺さんに連絡を取る。

このやり取りをもう何度したことかねぇ。ゲンナリするくらいしたのは確かだろうよ。

 

「もしもし爺さん。これで何匹目かまったくわからねぇくらいだよ。いい加減サボってねぇで仕事して貰いたいもんだ」

『ご苦労様です。まぁ、そう言わずに。君の御蔭で学園側も安心して競技に専念できるんですから』

「オレは一応その競技の選手のはずなんだがねぇ」

『まだ競技までには時間が空いているんですから、ボランティアも悪く無いでしょう』

 

その発言に更にオレはゲンナリしちまうよ。

このジジイ、オレが真面目に競技に参加する気がねぇことを分かった上でそんなことをほざいてきやがる。

依頼人様はこっちのことをちゃんと理解してくれているようで、雇われた側としては感動のあまりに涙が止まらねぇよ。

 

「それで、連中の巣穴の方は何て言ってきてるんだよ」

『生憎そんな者達はいないという一点張りですね。此方で丁重に扱い、必要なお話さえ聞ければ後は御国に返してあげますから』

「そうかい。まぁ、予想通りだな」

『えぇ、まったく。どこの国も隠し事が多くて困ります。この行事を狙って専用機の情報を盗み出そうと躍起になるんですから』

「それだけ連中も一生懸命なんだろ。そういうのは嫌いじゃねぇよ、オレは」

『でも潰すんですよね?』

「それも当然だ。一生懸命な奴には真面目に応えてやるのが大人の責務ってもんだろ。それが真面目な相手への誠意だよ、爺さん。その結果がダルマになろうが一生流動食のお世話になるような身体になろうとなぁ」

『される側は堪ったモノではないですけどね』

「そいつは運がなかったと思って貰うしかねぇだろ。嫌なら嫌なりに頑張って逃げるなり何なりすればいいさ。オレに殺られるのか御国に消されるかの違いだけなんだから、結果は変わらんよ」

『まぁ、それもそうですね』

「そういうわけなんで、この間抜けなドブネズミも頼んだよ。そろそろ支度しねぇとお嬢様に怒られちまう」

 

そう、そろそろ準備しねぇとお嬢様に怒られちまうんでね。何処に行ってたのか聞かれると色々と面倒なんでなぁ。

 

『そうですね。では、後は競技の方も頑張って下さい。残りは此方で行いますので』

「そいつはドーモ。でも、アンタが言いたいのは競技その物じゃなくて、それに遊びに来るお客さんの相手だろ? オレに競技のことを言う必要はねぇんじゃねぇかい?」

『両方、ですよ。学生としての本分も、お仕事も頑張って熟してこその良識ある社会人ですから』

「けっ、面倒だねぇ、社会人は。そう言われたら文句は言ってもやらざるえねぇじゃねぇか。分かったよ、爺さん。どっちも『適当』に頑張るよ」

『えぇ、良い返事です。頑張って下さいね』

 

それで通話を切ると、オレは面倒臭いことに苛立ちつつも縄で縛り付けられて身動き一つ取れないネズミに笑いかける。

 

「どうやら上はお前さん等とお話がしたいらしい。賢く立ち回れば上手く行くかも知れないぜえ。よ~くそのお脳を回転させて考えろよ。そういうわけで、そこで大人しく待ってろよ。そうすりゃ少なくてもお前さんの言う権利は守られる。いいか、そこから何かしら動けば……その権利の保障は紙切れみてぇに吹き飛ぶ。そいつを肝に命じておきな」

 

そう告げると、オレはお嬢様達がいる控え室へと歩き始めた。

さぁ、今度は学園行事だ。

まったく、学生ってのは忙しいねぇ。こういうのを苦学生って言うんだろうねぇ。

 まったく、オレのキャラには合わねぇもんだよ。

 

 

 

「もう、レオスさん、何処に行ってたんですの! もう時間まであまりないですわよ」

 

案の定、控え室に戻ってみたらお嬢様がプリプリと怒ってた。

それだけ心配をかけてたってことなんだろうよ。悪いねぇ、生憎何処ぞの爺さんのわざとな怠慢の尻ぬぐいをやらされてたとは言えねぇんでなぁ。

 

「すまねぇなぁ、お嬢様。ちょっとそこでモク吸ってたら遅れちまったよ。つっても、電子タバコだけどなぁ」

「もう~、もっと緊張感を持って下さい! これからレースが始まるのですから」

 

お嬢様からのお叱りを受けて軽く謝りつつ、オレ等は二人で会場へと歩いて行った。

 そして会長の挨拶とともに始めるレース。

オレ等の番は直ぐに来るらしい。この会場にいる奴等は皆専用機持ちのレースを楽しみにしてるんだとさ。

イチカの野郎が出たときなんて、会場から歓声が湧き上がったモンさ。その様子はさながらスーパースターってやつだよ。

それを聞いた奴さんはあまりの歓声に驚いてたようだがね。

それに対しオレが出たときは寧ろ沈黙した。

アイツは誰なんだってなぁ。オレの情報は基本的にはそこまで外に報じられてねぇからなぁ。まぁ、知ってる奴もいるようで、イチカと比較してる声は良く聞こえるよ。

だから何だった話だよ。比較しようが何か変わる訳でもねぇ。

 

「レオス、負けないからな!」

 

奴さんはこの行事にやる気満々らしい。

オレは少しばかり疲れたんでそこまでやる気なんてでねぇよ。こんな何の報酬もでねぇレースはよ。

ただ、奴さんのせいで周りの奴等もオレに向かって闘志を燃え上がらせてきた。

おいおい、こっちはレース初心者なんだぜ。もっと温かい目で見守って欲しいもんだよ。

そんな奴等に適当に返してるわけだが、お嬢様も闘志を燃やしてるのには困ったもんだ。付き合いがこの中で一番長いこともあって、適当な事を言うとばれそうだ。

 

「レオスさん、一緒に頑張りましょう! 勿論、負ける気はありませんわよ」

「そいつは結構だ。やる気があるのはいいことだぜ、お嬢様」

 

素直にそう言うと、お嬢様は少し迷った後に急に顔を赤くし始めた。一体何なんだ?

 

「そ、それで、その……このレースで一位を取ったら、その……またご褒美が欲しいのですけど……」

 

恥ずかしそうに真っ赤な顔でそう言うお嬢様。どうやら前回ので相当味を占めたらしい。まぁ、欲求に素直なのはいいことだ。お嬢様みてぇな真面目な奴は我慢し過ぎるきらいがあるからなぁ。

そんなお嬢様に向かってオレは笑いかけながら頭に手を置いて軽く撫でてやる。

 

「いいぜ。寧ろそんなご褒美はこっちからお願いしたいくらいだ。お嬢様が頑張ったらまたやってやるよ、一位とは言わずにな」

「っ!? ほ、本当に! や、約束ですわよ! それこそ、破ったら針千本と言わずに万本飲ませますからね!」

 

一体何処で覚えたのか、そんな風に必死に言ってきたお嬢様。全くもって微笑ましい限りだ。

そんなお嬢様に約束して、オレはISを展開した。

 さぁ、今度は学業に専念しようか、学生らしくなぁ。

ただし………例のお客が来なきゃ……だがね。

 

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