作者の作品では初なだけに凄く嬉しいです。
やっと来たか……今回のメインディッシュであるお客がよぉ。
爺さんの予想は的中、ここまで行けば予言と変わらねぇ。あの腹黒い爺様が予言者……笑えねぇなぁ、冗談にしてもよぉ。
奴さんは予測通り、前回の学園祭でウチのクソオヤジにしこたまシバかれたあの女を取り返すための囮として来たんだろうよ。
本命は別。何でそんな事が分かるんだって? おいおい、少し考えりゃわかる話だろ。この程度の話、推理小説よりも簡単だぜ。
人質がIS学園にいると仮定して、その戦力たる教員や代表候補生が出払っている今の状況は好機。だが、直接行けば直ぐにオレ等が駆けつけて包囲されちまう。ここからIS学園まで、ISを使えばそこまで遠くはねぇ。
そこで直接ではなく間接的に、表立って暴れてオレ等の目を惹く囮と内密にIS学園に侵入し奪還することを目的とする救出班に分かれることで目的を達成するって算段だろうさ。
表立って暴れることでオレ等を押さえ、戦力が不足している本丸に侵入する。
実にシンプルで基本的な考えだ。だが、そんな『当たり前』なことがあのジジイに通用するわけがねぇ。それが通るんだったら、世の中はもっと平和だからよぉ。
オレは『デルフィング』を構えつつ爺さんに連絡を入れる。
「よぉ、爺さん。早速お客様がおいで下さったぜ。そっちの宝物の方はどうだい?」
『きっと向こうは今もIS学園にいると思っているんでしょうね。ですが……残念なことにもうIS学園にはいませんよ。とっくに移送しましたよ』
まぁ、爺さんが普通に送るとは思えねぇなぁ。きっと爺さんのことだ。かなり愉快な方法で送っただろうよ。少し興味があるんで聞いてみるか。
「ちなみに爺さん、奴さんをどんな風にエスコートしてるんだい。まさか明らかに何か在りますって感じな護送車に乗せてるわけねぇだろ?」
『えぇ、彼女には眠って貰い君を真似て大型の発砲ケースに詰めさせて貰いました。それで学園の食堂の食糧輸送用の大型トラックに一緒に詰みましたよ。一応友人の一人に食堂のバイトという形で着いていって貰ってます。あのトラック自体、普通に送る先の病院にも食糧を運んでいますから、違和感はありませんしね』
「そいつは随分と愉快な運び方だ。当然奴さんの名目はナマモノだよな」
『もちろんですよ。ちゃんと分別しないと業者が困ってしまいますからね』
随分とまぁ、面白いことをしてるじゃねぇか、爺さん。
まさか向こうさんも助けるべきお姫様が飯の材料と一緒に病院に送られてるとは思わねぇだろうさ。気をつけねぇとあの姉ちゃんの丸焼きが病院の食卓に出されそうだ。そいつは大層不味そうな上に色気もなさそうだ。
爺さんの愉快な運び方に気付かねぇ哀れな連中は、今頃学園内を焦った面で漁ってる頃だろうよ。後少ししたら爺さん曰く『お友達』に皆吊し上げられるってところだ。
あっちはこれで決まったとして、こっちは目の前の客をどうにかしねぇとなぁ。
見覚えがある奴だと思ったら、前に学園祭に来たタクシーだったよ。
「よぉ、久しぶり。誰が来るかと思ったら、前に来たお嬢ちゃんじゃねぇか。お前さんのお仲間はもう捕まったってよ。ここで暴れてももう無駄なんだし、ここいらで降参ってのはどうだい。ウチの依頼人は紳士ねんでね。女子供にゃぁ甘いんだ。暴れなきゃそれこそ、孫を可愛がるジジイみてぇに大事に扱って貰えるぜ」
勿論まだ捕まってなんかいねぇが、そいつは時間の問題だ。なら、これ以上は無駄な抵抗は止めろっていうのが、所謂お決まりってもんだろ。
まずは紳士らしく、丁重に勧めて見ることにする。爺さんからも、
『あなたの上司のようにやり過ぎないで下さいね』
って言われたしな。
さて、答えはっと………。
奴さんはオレの話を聞いて口元でニヤリと笑うと、手に持ったレーザーライフルをこっちにぶっ放してきた。
「答えはNOだ。貴様如き取るに足らない雑魚に用は無い」
「そいつは残念だ。せっかく紳士らしく振る舞ってみようと努力してみたのによ」
向かって来たレーザーをスラスターを噴かせて身を軽くよじることで回避すると、やれやれといった感じに呆れ返ったジェスチャーをしてみる。
勿論コイツもわざとで相手を煽ってるわけだが、案外冷静らしい。こっちの奴には引っかからねぇ。あの姉ちゃんなら喜んで引っかかってたところだろうよ。
「なら、遠慮はいらねぇなぁ。せっかく来たんだ、オレと踊らないか」
「雑魚の相手をしている暇はない、落ちろ!」
奴さんはそう言うなり背中にあるユニットから小型のビットみてぇなモンを飛ばしてきた。そいつはそのままオレに目がけてレーザーを放ちながら接近してくる。
「おっと、相変わらずイイ腕してやがんな」
レーザーを避けながら聞いてみるが、奴さんからの返答はねぇ。せっかく褒めてやったんだから、少しは喜んで欲しいもんだ。
「っ!? 『サイレント・ゼフィルス』!! あの時のっ!」
駆けつけたお嬢様が奴さんを見るなり顔が変わった。
奴さんとは因縁があったっけなぁ。確か向こうがイギリスの間抜けから盗んだ二号機で、お嬢様のISとは姉妹機だったか。つまりコイツは盗人から盗まれたモンを取り返すチャンスってわけだ。お嬢様は気合いが入るわけだよ。
お嬢様は奴さんに投降を呼びかけるが、もうそいつはした後なんでね。答えはビットとライフルのレーザーの嵐で返ってきた。
「くっ!?」
「まぁ、そうなるだろうよ。それで素直に投降するんだったら盗みなんてしねぇだろうよ」
お嬢様は顔を歪めつつバレルロールしながらレーザーを避け、オレはオレで普通に避ける。
確かに多方向からの攻撃ってのは厄介に見えがちだが、そんなもんは多対一をしまくってる身としては慣れてるもんだ。お嬢様と比べてビットが二つほど多いが、それで苦戦する程柔でもねぇ。
それは一緒に訓練したお嬢様だって同じだ。
「こっちだって負けませんわ!」
お嬢様は奴さんにそう叫ぶと、ご自慢のブルーティアーズを射出して奴さんへと仕掛ける。
ブルーティアーズは一つ一つは全く別の動きをし、一つは撹乱するために小刻みに動いては牽制射撃を行い、一つは決定的な一撃を放つべく距離を離して狙撃する。もう一つは相手の死角に周り射撃を行い、最後の一つが奴さんに向かって突撃をかけながら射撃していく。
それにお嬢様の狙撃も加われば、大層やりづらい布陣の完成だ。
奴さんはそれに対し、冷静な様子で対処していく。ビットにはビットで対応し、お嬢様には自分が持ってるライフルで撃ち合う。
姉妹機なだけに戦い方も似てるらしい。
「おっと、おにいさんも忘れてもらっちゃ困るぜ」
お嬢様と奴さんの違いはビットの数だ。奴さんの方が二基多い分、お嬢様はその二基に対し、回避せざる得ない。
だからオレはお嬢様が困ってる残り二基に対し、デルフィングのサブマシンガンで牽制をかける。お嬢様は因縁あるらしいし、ここはお嬢様に主役を譲るのが紳士って奴だろ。
奴さんは所謂プロらしい。学園にいる奴等と違って狙いも的確だし、何よりも殺し合いってのを理解してるみてぇだ。
だからこっちの攻撃も中々にあたらねぇ。牽制も避けられちまったよ。
そのまま二体一にもつれ込む。
数の優位はこっちだが、奴さんはその分立ち回りが上手ぇ。御蔭でまったく押し切れねぇよ。
「おい、これはどうなっているっ!」
「あのIS、一体なんなのよ!」
「大丈夫、二人とも!」
「まさか襲撃者か!」
「何でまたアイツが来てるんだよ!」
どうやらイチカ達も来たらしい。
これならこっちは有利……なんだが、それじゃぁ面白くねぇだろ。
奴さんは出来れば捕まえてぇんでなぁ。そう思うと悪いがイチカ達は邪魔になる。
だから連中にはお願い事をして貰うことにした。
「見ての通りだが、奴さん相手に全員は流石にやりすぎだって怒られちまう。イチカ、ヒーローがイジメなんてしたら恰好悪いだろ。悪いがお前さん達はお留守番だ。その代わりと言っちゃあなんだが、ここいらの住宅街の連中の逃がしてやってくれ。ちょっと『使いたい』んでなぁ。壊しても爺さんが払うだろうから、思いっきりやっても問題ねぇ」
「はぁ? 一体どういうことだよ!」
まだオレの意図に気付かねぇイチカは何言ってんだって面をしてきた。
そいつはホウキも同じらしい。
だが、あの子ウサギやデュノア、ファンはしたいことがわかったようだ。流石は代表候補生ってか。勿論お嬢様も分かってる。
「了解した。癪に障るが、その方が確実性は上がる」
「わかったよ。でも、あまり派手にはやらないでね」
「まったく、どうしてそんな絡めてばかり使うのよ、アンタは」
そう言いながら各自住宅街のに向かって飛び、避難するよう大きな声で言い始めた。
イチカとホウキも住宅街の連中を逃がそうと動き出す。流石はヒーロー、皆を守るべく行動するのが早いことだ。
連中が動いている所でオレ等は奴さんを住宅街から話すべく銃撃戦を寄り繰り広げる。
そしてお嬢様が焦り気味なのが気にはなるが、オレはお嬢様に笑いながら話しかけた。
「お嬢様、悪いが奴さんのダンスの相手をしばらくしてやってくれ。オレは新しいダンスの会場を作りに行くからよ。終わったら連絡する」
「分かりましたわ! でも、必要無いかも知れませんわ! 私一人でも倒して見せます!」
「…………わかった。なら、期待して待ってるよ」
妙に焦ってる感じから嫌な予感がするが、オレはお嬢様から離れて住宅街へと入っていった。
そう、これからここが奴さんのダンス会場になるよう、精一杯の『おもてなし』を用意してなぁ。