恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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書くのに無駄に時間が掛かってしまいました。


百二十七話 専用機持ちタッグマッチトーナメント開催決定。だがオレは参加禁止だとよ

 前回のレースはやれやれだ。

別に奴さんに逃げられたことはどうでも良いんだ。オレとお嬢様から逃げられたってのは、それだけ奴さんがデキるってことだからなぁ。デキる奴が逃げ切ることなんざぁ良くあることさ。最初から奴さんをグリルチキンにしろっていうんだったら話は別だが、今回はあくまでも爺さんが警戒しろって言ってきただけなんでね。予想通りって言うとつまらねぇもんだが、物の見事に遊びに来た奴さんを相手したのは、IS学園の生徒っていう正義の味方としての役割を全うしたってだけさ。

ギャラもでねぇし依頼もされてねぇんだ。そんなもんでいいだろ。

んじゃ何が不満かだって?

そいつはよぉ……あのジジイが実に面白くない事をしてくれたってことだ。

確かに市街地での戦闘の件は状況判断的に仕方ねぇって事でお目こぼししてもらった。ちゃんと人が死なねぇようにイチカ達に避難させたから人的被害はゼロだしなぁ。だから学園側から文句は出てねぇ。チフユからは文句は言いたそうな面をされたけどな。

だがだ。あのジジイ………よりにもよってその件をクロードにチクりやがった。

御蔭でオレは大目玉。会社経由で被害報告書と始末書のオンパレードだ。

被害額を全額オレの給料から天引きになりかけたが、そいつは流石にジジイの提案で学園と半々ってところになったのは救いだがね。だったら最初からチクるなって話だ。

御陰様、今月は実に金欠でジリ貧になっちまったよ。こんなんじゃ酒のつまみ一つ買えやしねぇ。まぁ、カイル達から巻き上げたへそくりが別口座に入ってるんで今月を凌ぐくらいはなんとかなんだろ。

 て感じで災難だったわけだ。

唯一マシなことがあったんだったら、そいつはお嬢様の可愛い所を見られたってところかねぇ。お嬢様ったら顔を真っ赤にしてなぁ。少しイタズラしたら顔をとろけさせて気絶しちまった。いやはや、こういう反応ってのは癒されるもんだ。

そんなわけで、散々な目にあったわけだがこの後も予定ってもんが詰まってるのが学校ってもんだ。

今度は何が来るのかねぇ。始末書だけは勘弁願いたいもんだ。

 

 

 

 レースも終わってスッカリ寒さを感じるようになった10月。

日本ってのは四季のある国だから、こう直ぐに気温が上がったり下がったりするのはどうにも面倒だ。そいつが風流だって抜かす奴がいるらしいが、そんなもんはただの鈍い奴だけだろうさ。こっちからしたら服を用意するだけでも面倒なんでね。

そんなことを思いつつ、本日の理事長室でオレは毎度の如く酒を呷ってる。

本日の酒はロシア三大ヴォトカの一つ『スタリーチナヤ』だ。寒いときはヴォトカを飲むのが奴さん達の常識だって世間じゃ思われてるらしいが、実はそんなことはねぇ。寧ろ向こうの連中はそこまで酒を飲む奴はいねぇんだと。だが、そんな嘘でも、オレは寧ろ気に入ってる。確かに寒いときにヴォトカをヤると、寒気なんか吹っ飛ぶからなぁ。

まぁ、室内にゃぁそんな風に暖を取ってるオレに寒々しい目を向ける会長とお嬢様の姿があるわけだが。

そんな冷え冷えとした視線を浴びながらもう一杯呷ると、オレは会長に改めて話しかける。

 

「んで、今回の議題はなんだい、会長? 勇気を出して大人の冒険をするためにコイツをヤるのに付き合うってんなら喜んでだが、そうじゃねぇんだろ」

 

ほろ酔い気分で上機嫌にからかうと、会長さんは白い目でオレを睨んできた。

 

「そんなわけないじゃない。真っ昼間からお酒なんて、駄目人間じゃ在るまいし」

「おいおい、オレは元々そういう人種だぜ。突っ込むだけ野暮ってもんだろ」

「それでも、レオスさんはお酒を控えて下さい! 織斑先生にバレたら大変なのですから」

 

おっと、会長をからかおうとしたらお嬢様に怒られちまった。

まぁ、優等生らしい返答は実にお嬢様らしいがね。

それで今度はお嬢様をからかうことにする。

 

「そう言うなよ、お嬢様。これも一つの勉強だぜ。こうして色々やって大人になっていくモンなのさ。お嬢様ももう少しは勉強したらどうだ。あんときは実に可愛らしい顔でイッちまってたが、あまりそんな早いと本番で苦労するぜ」

「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~、もう、レオスさん!!」

 

お嬢様は言われた途端にオレ以上に顔を真っ赤にしてオレの胸を可愛らしく叩いてきた。

その様子に会長は予想通りのことでも考えてたんだろうさ。お嬢様に負けず劣らずに顔を真っ赤にして湯気出してた。

こうも初心な奴等が居ると、からかいがいがあっていいもんだ。

そんなオレに爺さんはいつもとかわらねぇ笑顔で話しかけてきた。

 

「あまり可憐な女性をからかうのは感心しませんよ」

「そう言うなよ。爺さんがチクったせいでこっちはお説教と減俸と始末書のオンパレードだったんだ。少しでもガス抜きしねぇともたねぇのさ。そう言うんだったら、爺さんこそ学生を苦しめるような真似は止めて貰いたいねぇ。御蔭でオレは金欠だよ」

 

オレは腕を軽く上げて態とらしく大仰にそう言うと、爺さんはまったく反省すく気はねぇらしく、だったら壊しすぎるなって釘を刺して来やがった。

まったく、こうやって上の人間が下の人間をいじめるから世の中ってのは歪むんだよ。

こんな話をしてる事態でもう大体わかってんだろ。

今回も例によって例の如く、あの話し合いだ。ただし、今回の呼び出しは爺さんじゃねぇ。今回呼び出しをかけたのは会長さんだよ。

爺さんじゃねぇんなら付き合う義理はねぇと思うんだが、サボって一服しようとしたらお嬢様に捕まって引っ張られたって訳だ。

どうにもお嬢様に甘いと思うんだが、クロードから仕込まれた女性には紳士的にってのが身に染みちまってるらしい。まぁ、お嬢様なら悪い気はしねぇがね。

そんなわけで、今回の話を持ってきたのは会長さんってわけだ。

会長はまだ赤い顔をしたままだが、咳払いをして何とか真面目な面をしようとしてる。それでも一応は裏の人間なんだから、表情くらい何とかしねぇとなぁ。おぼこなのが丸わかりだ。

 

「こ、こほん……それで、今回なんだけど、近いうちに専用機持ちによるタッグトーナメント戦をやろうと思ってるの」

「トーナメント戦ですの? ですが何故……」

 

会長の案にさっそくお嬢様が首を傾げる。そういう反応ってのは良いもんだ。相手側も理由を吐きやすいからな。

会長はお嬢様に促され、何とか顔を真面目な物に変えると理由を話し始めた。

 

「今年は去年に比べて圧倒的にトラブルが多いのよ。男の操縦者というイレギュラー二人に無人機の襲撃、一年生の臨海学校では軍用ISの暴走に学園祭では亡国機業の侵入、そして前回のキャノンボール・ファストでは亡国機業の襲撃。その殆どに専用機持ちが駆り出され戦うはめにあっているわ。とてもじゃないけど、このままでいるのはあまりにも危険なの。だからこそ、より自分達の身を守るためにも、ツーマンセルの行動を心がけ、同時に連携を強めるようにして各々の能力を高めようというわけ。そのためのタッグマッチトーナメントというわけよ」

 

それを聞いてお嬢様は何やら頷いてるようだ。

どうも身に覚えがあるらしい。オレからしたら、毎度爺さんに扱き使い回されてたことしか記憶にねぇよ。

まぁ、会長さんが言いたいことも大体分かった。

確かに専用機持ちは自分の身を守るためにも能力のアップは必要だ。言っちまえば専用機持ちが持ってる代物は機密の塊だからなぁ。奪われるわけにもいかねぇし、毎回トラブルの度に駆り出されるんだから強くねぇと被害が広がる一方だしな。そのために専用機持ちを鍛えようってわけだ。

その話に爺さんも感心したらしく頷いてる。

 

「私は良いと思いますよ。皆の技量が上がることは喜ばしいですから」

「わたくしも賛成ですわ。確かに楯無さんの言う通りですもの。今年はトラブルが多く、その殆どにわたくし達が関わっています。今後もそのようになるのなら、その方が安全で確実に事態を収拾出来ますもの」

「賛成して貰えて嬉しいわ」

 

会長はそう言いながらご自慢の扇子を広げてきた。書いてある字は『感謝感激』だ。白々しいねぇ~。

オレはその話を聞きながら更に呷る。

その様子に会長はジト目で睨みながら聞いてきた。

 

「それで、君はどうなのよ」

「どうも何も、いいんじゃねぇか。会長が言ってることはあってるとは思うぜ。特にイチカの野郎辺りは危なっかしい。誰か他の奴が子守してるくらいが丁度良いだろ」

 

特に文句もねぇんで同意だ。

ギャラはでねぇが学園行事。参加はしなきゃいけねぇ。下手にサボればそのことがあのおっかない副隊長に伝わっちまう。少し前に絞られたのにまた絞られるどMな性癖は持ち合わせてねぇんでな。

するとお嬢様は顔を赤くしながらオレに微笑んできた。

 

「で、でしたら、レオスさんとのタッグは是非わたくしと……」

 

どうやらタッグを組みたいらしい。

その様子と来たら子犬が尻尾をぶんぶんと振り回して甘えてくるみてぇで微笑ましいねぇ。

お嬢様とは前回組んだし、今回もそれが妥当だろうさ。そう思って返事を返そうと思ったんだが、そいつのはストップが掛かった。

 

「あ、そうそう、君は参加しなくていいわよ」

「え、何でですの!?」

 

そこはオレが言うべきはずなんだが、先にお嬢様が反応した。

まぁ、その理由について聞かせてもらおうかねぇ。

 

「そう怒らないで、セシリアちゃん。って言うよりも、彼の場合は強すぎるのよ。単体で多数を相手取っても問題無く戦えるし、その場でトラップを仕掛けたりゲリラ戦法を平然とやるし、彼の場合は組む必要が無いの。寧ろ単体戦が強すぎるから、下手に組ませても寧ろ彼の足を引っ張りかねない。正直に言えば、組んで戦わせる必要が全くないのよ」

「そ、それでも、連携は必要ですわ! もしレオスさんに何かあれば、それこそ守る必要が……」

 

お嬢様が必死にそう言う。その心遣いが嬉しくて涙が出てきそうだ。うん、これが心配される気持ちって奴か。オレが周りに心配されるのは、俺自身じゃなくてオレが出した被害の量だからなぁ。本当、ウチの連中は優しさの欠片もねぇなぁ。

そんなお嬢様に対し、会長さんは何とも言い辛そうな面をしてきた。

 

「う~~~ん、たぶんそれは絶対にないわね。何せ下手に彼に仕掛けることは、彼が属している組織に敵対していることに等しいから。国は腰が重いから中々動けないけど、彼の場合はPMCだから早く動ける。あんな猛威を振るわれることに世界の各組織は皆恐怖を抱いてるわ。つまり下手に仕掛けようものなら、それこそ組織が壊滅しかけない。だから彼の場合はある意味安全なのよ」

「そ、それはそうですけど~~~~~~」

 

お嬢様と会長の頭の中にゃぁウチのクソオヤジが暴れ回ってるシーンが思い浮かんでるんだろうさ。まぁ、初めて見るにはショックが大きすぎる。

最初は少しずつ慣らして、後から大きく出るのが世の中の常識だ。そいつをせずに一気に動く奴はレイプ野郎と罵られてもしょうがねぇってこった。

お嬢様には刺激が強すぎたんだろうよ。説得力がありすぎるってなぁ。

まぁ、これでオレはサボり決定だ。

そうと決まったら未だにごねてるお嬢様の頭を軽くポンポンと叩いてやる。

 

「まぁ、そういうこった。そう言われちゃぁしかたねぇ。今回は残念だが他の奴と組んでくれよ、お嬢様。その代わり、訓練とかは付き合ってやるからよ」

「むぅ~~~~、仕方ないですわね……クスン………」

 

見るからにがっかりしてるお嬢様。さっきまで見えてた尻尾が今じゃしゅんと垂れ下がってる。

コレばかりはどうにもねぇ。まぁ、そんな会長にゃぁ少しばかりイタズラして帰ることにするか。

 

「あぁ、そうそう。確か一年の専用機持ちは全員で8人だったよな。オレと除いて残り7人。そう考えと一人余るよなぁ……あれ、少し可笑しくないか? イチカの野郎やホウキ・ファン、お嬢様、デュノアに子ウサギ……後の一人はどうしたんだ? 確か四組に一人いるて話だったか。名前は……更識 簪だったか。それで、その今まで出てない妹さんについて何かご意見は……会長さん?」

 

そう聞いた途端、会長さんの顔が凍り付いた。

 

「な、何で貴方がそのことを……」

「おいおい、自分が連む奴のことくらい調べるだろ、普通。詮索屋は嫌われるが、それを知られなきゃ嫌われもしねぇよ」

「っ!?」

「アンタの意見はよく分かってる。だが、あんましお嬢様を弄らないでくれ。そいつはオレだけの権利なんでな」

 

そう言うとお嬢様の手を引いて立ち上がる。

 

「んじゃオレ等はそろそろお暇するぜ。お嬢様、さっそく誰と組むか考えねぇとなぁ」

「は、はぃ……(そ、そんな、レオスさんったら……わたくしを可愛がるのはオレだけの特権だなんて………はぅ~~~~~~~)」

 

 何やらお嬢様の顔が真っ赤だが、気にせずにオレ達は理事長室を出た。

今回の出番はないようだし、観客として楽しませてもらおうかねぇ。

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