恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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結構長くなりましたね。


百三十話 数ってのは揃えれば良いってことじゃねぇ

 本当にこの学園は人を退屈させねぇ。その御蔭で実に楽しい『学園生活』が送れてるわけだが、その分後始末がオレの方に回ってくるのは如何なもんだと思うがね。

暇で仕方ねぇとは言え、こういうサプライズは悪くねぇよ。

ただ、それがお嬢様の邪魔になるのは流石によろしくない。そう、せっかくの晴れ舞台を邪魔したんだ。そいつは一等よろしくない事だ。

え? 過保護だって? そんなこと言うなよ。『お気に入り』のお嬢様の晴れ舞台だぜ。暖かくエールを送りたいのが『学生らしい』だろ。

それを邪魔されたんだから、そりゃぁ気分も良くはねぇだろ。例えそれが酒片手でもなぁ。

だったらどうするか? 決まってるだろ。

そのストレスをぶつけさせて貰うだけさ。

オレは久々にそいつをぶつけられることに胸を躍らせながら、こうして爺さんに言われた通りアリーナとは反対側に来たってわけだ。

 

「さぁ、どうしてやろうかねぇ」

 

もう向かって来てるのは分かってるが、その前に一服だ。

久々に爺さんの所からくすねてきた本物を咥えると、軽く吸う。

 

「やっぱりこういうときは紛いモンじゃなくて本物じゃねぇと雰囲気がでねぇよ。なぁ。やっぱりモクは本物が一番だ」

 

独特の風味が肺に満ち、そいつで精神をノリ気にするとオレは早速スカイウォーカーを展開した。

第一次展開を終えて第二形態へと移り、いつもと同じ姿になったところで早速武器を展開する。

すでにこっちのレーダーに奴さん達の反応はある。だったら最初にすべきは、歓迎の花火だ。

 

「まずはコイツで歓迎だ。こっちの誠意を見て涙を流して貰うぜ」

 

そして思いっきりそれを………グレネード弾をマシンガンと同じ要領で連続発射する巫山戯たオモチャ『レーバティン』ををぶっ放した。

発射された弾丸はこっちに気付いてレーザーをぶっ放そうとしてる奴さん達に向かって降りかかり……。

 

とても盛大な音を立てながら大爆発で空を明るく染め上げた。

 

「まずは花火とファンファーレで歓迎だ。ただ、オレの演奏はお行儀良くはねぇんでな。多少乱暴だが味わってくれよ」

 

爆炎で燃え上がる空にそう言いながら展開していたレーバテインを引っ込め、かわりにオルトロスを出す。

 

「さぁ、パーティーの始まりだ。オレのタンゴの情熱っぷりに惚れるなよ」

 

爆炎をかき分けまがらこっちに向かって突っ込んで来た無人機5機。多少の煤汚れはありそうだが、何とも健全そうで何よりだ。

まぁ、あの程度でやられる程世の中甘くはねぇってのは、誰だってわかるもんだ。最初の一撃で怪物が殺られるようなら、その物語は成り立たねぇってな。

そしてこっちに突っ込んで来る奴さん達にオレも突っ込む。

相手は前回のお客さんの後継機なんだとか。そのためか、変わらずにデケェ左腕の砲門をこっちに向けてくるが、それをこの距離でぶっ放すのは如何なもんかと思うがね。違う点は左腕が細くなってブレードが付いてる所とより形が女性らしいことだが、このオモチャを作った奴は芸術家でも目指してたんだかねぇ。機械の硬そうな胸なんて誰が喜ぶのやら。きっと作った本人はミロのヴィーナスでも目指してたんだろさ。残念ながら、オレはそういう美術品を愛でる趣味はねぇし、お人形遊びをする歳でもねぇ。その良さはわかってやれそうにねぇなぁ。まぁ、分かりたくもないがね。

まずは一機目。そのまま一気に飛び出して距離を詰めると、オルトロスで斬り掛かった。

それに反応して斬り掛かってくるわけだが、それをオルトロスをクロスさせて受け止める。火花を散らしながら刃が激突し合う。

 

「へぇ~、こいつは中々だ」

 

まぁ、けっこうなパワーだ。他の奴等ならそれなりに押せただろうよ。

だが、残念なことに、オレには生優しい。

だってなぁ……あのクソオヤジと比べたら、実に温いんだからよ。

 

「そんな程度じゃたかが知れてるぜ。下手なステップは減点だ」

 

そのまま空いている足で思いっきり腹の部分を蹴っ飛ばしてやり、離れた所でオルトロスの銃弾を浴びせる。

飛んで行った弾丸は奴さんのバリアーによって防がれていくが、確実にそのシールドを削っていく。

周りの奴等もそれに触発されてか、こっちに向かってレーザーの雨を降らせて来やがった。そいつをその場から飛び退くことで避けると、それまで調べていた情報がオレの頭に届いた。

あの時マヤも言ってたが、どうやらISのシールドバリアーを阻害する能力があるらしい。確かにそいつはISには相性が悪い。

ISの防御を担ってるもんだから、それされなければISってのは動くお荷物にすぎねぇ。詰まるところ、奴さん達はISとの戦闘を前提にしたISだってことだ。

しかし、それもオレには関係がねぇ。何せこのスカイウォーカーは装甲の下に当たったときだけ発生するようになってるからなぁ。オレにはまず直撃させて装甲を砕かなきゃ意味がねぇ能力だ。

 

「お得意の手品も意味がなけりゃあオマケ以下だ。もっと観客を驚かしてぇんだったら、多芸にならねぇとなぁ。踊れる曲種は多い方が良いんだぜ」

 

こっちに向かってレーザーをぶっ放そうとしてる奴に牽制射撃を加えながらもう片方のオルトロスで近くに居る奴さんに斬り掛かる。それで奴さんのブレードの着いた右腕を斬り飛ばすと、奴さんは怒ったらしい。あのデケェ左腕のレーザーは今回、短く照射することでマシンガンみてぇにぶっ放すことができるようで、そいつをオレにお見舞いしてきた。

少しは進歩があるようだが、弾幕を張るってのは『当たり前』のことだ。今更ヤル程度の間抜けにやられる程暇でもねぇ。

そいつを軽く避けながら更にオルトロスをぶっ放す。

それでしばらく奴さん達と踊っていたんだが、あまりにもお粗末なことに気が付いちまった。

せっかく遊びにきてくれたんだから精一杯もてなすのが礼儀ってもんだ。

だが、どうにもこの連中を作った芸術家ってのはダンスの仕方ってもんを分かってねぇらしい。

確かに単体の強さは中々だろうさ。相手のシールドを無効化する能力や遠距離や中距離で連射可能な大出力の砲撃。そして接近戦用のブレードを使ったパワーの籠もった接近戦は中々だ。

だが、それでもこの場面に於いて、その芸術家はまったくわかってねぇ。

そんな可愛らしい疑問に答えてやるのが大人ってもんだ。だから教えてやるよ、その正解って奴をよぉ。

 

「どうせ見てんだろ。だったらちゃんと聞いて学んで次のチャンスに活かせるようにしておけよ。ベットで同じ事しかできねぇ奴はその内愛想を尽かされちまうってことをよ」

 

そう言って早速見せる。

オレはオルトロスを2丁とも突き出しながら一気に間合いを詰めると、その一機の胸に思いっきり突き刺した。

勿論シールドは作動して火花をちらつかせるが関係ねぇ。周りの奴さんにとっては思いっきりチャンスだぜ。何せこっちは両手が塞がって身動きが出来ねぇんだから。

だ・が……オレの狙い通り、奴さん達はオレに撃ってこねぇ。

何故か? 答えなんて単純だろ。何せこのまま撃てばオレは勿論、お仲間まで巻き込まれるからなぁ。

当然組み付かれた奴は抵抗しようとするが、そうはさせねぇと身体を押しつけながら押しやって防ぐ。そのまま更に引き金を引いて、奴さんの胸に零距離から弾丸をたんまりとプレゼントだ。

そのプレゼントに奴さんはオレに惚れちまったのか、鋼鉄のブラを外して中身を見せてくれたよ。

そこにあるのは真っ白い肌に薄ピンク色のサクランボ……だったら実に興奮するもんだが、残念ながら白っぽい色をした球体だ。その正体がナニカってのは、言わなくてもわかるよなぁ。

 

「さぁ、お前さんのハートはいただきだ。ときめいてもらおうかねぇ」

 

その球体をに向かって更にオルトロスの銃身を叩き込み、全弾発射してやる。

これでも拳銃としちゃぁ破綻してるくらいの威力の代物だ。全弾零距離で見舞ってやれば、如何にISでも絶対防御は貫ける。

まさにハートを貫いたオレは、そのままメロメロになったそいつを近くにいる奴に向かって投げつける。

 

「ほら、オレの魅力で参っちまったらしい。介抱してやれよ」

 

急に投げつけられたせいで身体に絡みつく機体。そのせいで投げつけられた奴は動きが鈍った。

それを狙ってオルトロスをしまうと共に、デルフィングと他に二つほどオモチャを取り出す。

そしてそれを組み合わせると、チークダンスを踊ってる一機と抜け殻一機に向かって投げつけた。

そいつはそのまま見事に二機の方まで飛ぶと、慣性に従って機体に回り込み、その身体を拘束した。

そして抜け殻の空いた胸の部分にべちゃっとくっつく四角い粘土みねぇな物。

それを見ながらオレは笑いかける。

 

「一度は『お代官ごっこ』ってのをしてみたかったんだ。だが、生憎この巻いた帯は引っ張らねぇけどなぁ」

 

それと共に合図を送った。

その途端、二機の愛が最高潮に達したんだろうさ。実に見事な大爆発を引き起こした。

何せコアはなくてもエネルギーの詰まった代物だ。それに刺激を思いっきり与えてやれば、そいつの愛は燃え上がるんだよ。

まさに愛の炎って奴だ。身を灼かれた奴はもうボロボロだよ。

そう、C4って刺激を与えられた恋する乙女は恋の炎を燃え上がらせたってなぁ。実に上手いことを言ったかもなぁ。

さて、そんな幸せ者にはお祝いのクラッカーを鳴らしてやらねぇと。

オレは二機が愛し合った後のお祝いに、近づいて変形させたデルフィングの銃口を残った一機に突き付ける。もう一機は愛の炎が強すぎて燃え尽きちまったらしい。まさに身を焦がす恋心ってやつだ。

 

「彼女の愛の告白は凄かったぜ、おめでとうだ。お祝いにクラッカーを鳴らしてやるよ」

 

そのままクラッカーの紐を引く。

ほぼ零距離から鳴らされた散弾のクラッカーは実にパンチが効いてるだろ。さっきのオルトロスよりも早くその胸が砕け散った。

そのまま力なく落下して海に沈むのを見ながら笑う。

 

「これで2機。後3機だが、もう少しはまともに踊って見せろよ。でないと退屈で寝ちまいそうだ」

 

デルフィングをしまうと、今度は両手で持つ大型のガトリング『霧雨(ミストレイン)』を展開して残りの三機に向けた。

 

「さぁ、ここからは曲を変えるぜ。ブレイクダンスは踊れるかい?」

 

そして引き金を引けば、そこからはとんでもない程に刺激的な爆音のダンスの始まりだ。

散弾をガトリングで連射するコイツはまず避けられねぇ。広範囲に回避不能な程の重圧な弾幕を張り、その細かい弾が3機に襲い掛かる。

シールドを一気に削られて当然3機は逃げようとするが、逃がす気はねぇ。

集中砲火を狙って一機に集中させると、シールドも切れてズタズタになった。

もう普通ならこれで終わりだが、まだまだオレは浴びせてやる。

そしてコアも何もかもがぶっ壊れたのを見届けたらガトリングを捨てた。

 

「残りは2機。おいおい、随分とスタミナがねぇ奴等だ。ダンスだって立派な運動なんだぜ。もっと気張れよ」

 

残った2機は躍起になってレーザーをぶっ放してくるが、数が減った分その弾幕は薄い。そう『数が減った』分なぁ。ここが重要だ。

オレはそのまま一気に間合いを詰めると、当然それに反応して斬り掛かってくる。

だが、そいつはちょっと安直すぎだ。

 

「もう少しは手数を増やせよ。毎回同じだと直ぐに飽きちまう」

 

向かってくるブレードを受け流して逸らすと、その刃を調整してもう一気に当てる。いきなり攻撃を当てられたもう一機はいきなりのことに行動が鈍ったようだ。

そう、コレがこの5機を相手に遊んでられる理由だ。

こいつ等は実にアホらしいことに、同士討ちを避けるようにプログラミングされてるのさ。

それ自体は普通に誰だってする。だが、あまりにもそれが露骨すぎなんだよ。

分かりすぎるから逆手に取りやすい。同士討ちをさせるように射線をずらすだけで、奴さんはそのご自慢の砲撃が出来ねぇんだからなぁ。

そしてもう一つ、このお人形を作った芸術家の現状が分かる部分がある。

それはよぉ………まぁ、見せた方が速いな。

奴さんはオレに向かって『バラバラ』に向かっては攻撃を仕掛ける。

それを避けながらオレは『ゲイボルグ』を展開すると、御間抜けな一機に向かって思いっきり跳び蹴りを嚙ました。

蹴られた奴は思いっきり地面に叩き着けられ、動く前に更にオレが地面に踏みつけて縫い付ける。

 

「さぁ、これで残り一機だ」

 

そして銃口を突き付けながら一発。

ゲイボルグの名にふさわしく、一撃必殺を見事に成して相手の心臓を貫いた。

これで残るは一機だが、これで問題が分かっただろ。

 

「そう、こいつ等はせっかく5機もいるのに『連携』が丸っきり取れてねぇ。個は優れていても、集団で戦うんなら一番大切なそれがまったく出来てねぇのさ。きっとこいつ等の親ってのは実にボッチなんだろうよ。駄目だぜ、人と人の交流は大切にしねぇとなぁ。チームプレイが出来ねぇ奴は、如何に優れていようと役立たずだ」

 

まぁ、それも程度があるってのは言わないのが花だがね。クソオヤジとかクロードとかって化け物連中は、たった一人で全部をひっくり返しちまうからよ。

あれはもう人とは呼べねぇだろ。え? お前もそうだって? おいおい、まだオレはか弱い16歳の青少年だぜ。あんな化け物と一緒にするなよ。悲しくて泣きそうだぜ。

残り一機になったんで、奴さんは懸命になったのか実に頑張ってる様子だ。

だが、生憎一機じゃもう役不足なんでなぁ。

オレは奴さんの攻撃を避けつつ、在ることを思い出してニヤリと笑う。

 

「あぁ、そうだ。あのクソオヤジがやってたんだ。オレも挑戦してみるのも悪くはねぇよなぁ。アレに出来てオレに出来ねぇってのは、何だか馬鹿にされたようで癪だしなぁ」

 

 

 

 

「まぁ、こんなもんか。出来なくはなかったが、あのクソオヤジよりも時間が掛かっちまった。まったく、簡単にぶっ壊すあのクソオヤジは本当に人間止めてるよ」

 

そう思いながらオレはISを解除する。

そしてタバコに火を付け一服し始めた。

 

「やっぱり労働の後の一服ってのは良いモンだ」

 

足下に転がってる『ISだった物』を見ながらそう呟く。

それは彼方此方が変形し砕け散り、原型を一切残していない鉄の塊だ。コアも見事に粉砕され、もう動くことは一生ないだろうさ。

最後のダンスは奴さんには過激すぎだったらしい。

そんな鉄クズを見ながら爺さんに連絡を入れる。

 

「爺さん、こっちは終わったぜ。そっちも終わったんなら、この後一杯やろうじゃねぇか。そういう気分なんだよ」

 

そう言い終わると、オレはIS学園に向かって歩き始めた。

お嬢様がどうなってるのかも気になるしなぁ。まぁ、『この程度』のお人形相手にやられる程柔じゃねぇってのは分かってるから心配はしてないがね。

 

 

 

 

 

 因みに、この戦いの会話を聞いていた兎はボッチだと言われまくったことに少しヘコんでいた。

 

 

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