恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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次回からやっと一番書きたかったワールドパージ編に行けそうです。


百三十一話 被害報告

 お人形5体と遊んできたわけだが、相手が皆『おねんね』しちまったんで学園に戻ることに。

あの程度のオモチャ程度やられる程ウチの学園の連中は柔じゃねぇと思いたいところだが、どうにも不安が拭えねぇもんだ。何せあのオモチャは対IS用のもんだよ。今までISが最強! とか思い込んでた奴等だから、その前提が覆されかけねぇ事態に陥れば戸惑ってミスをしかねねぇ。

まぁ、これも一つの勉強だと思えばいいさ。戦場に絶対なんてもんは殆どありえねぇ。ISが最強の兵器だと言われちゃいるが、そんなもんは実戦を経験してる奴なら皆が皆鼻で笑い飛ばすレベルだ。

確かに機動性と防御力、そして数多くの武装を使い熟すと見れば強く見えるだろうさ。だが、殺り方次第でいくらでもどうにでもなる。

シールドが無限じゃねぇんだ。飽和砲撃でも喰らえば瞬く間にエネルギー切れを起こすし、無力化が目的なら壊す必要もない。捕獲用の装備で身動きを取れなくすればそれだけで単なる役立たずの完成だ。ジールドバリアは『攻撃性のある物』にのみ展開されるもんでね、とりもちやら特殊なネットやらで固定しちまえば発生しねぇのさ。何せそんなんで発生してたら『他の物に触れられない』んだからよ。

それに、ISが強くても中身が弱いんじゃ話にならねぇ。操縦者は鍛えようが人間だ。体力や集中力には限りがあるし、乗ってなきゃ暗殺毒殺やりたい放題だ。何もISを狙う必要なんてねぇんだからなぁ。

まぁ、細かい蘊蓄は聞いて誰も得しねぇ。今回言いたいことってのは、ISの優位姓が覆された場合どうするかってのを、ここの連中は勉強させられたってことだ。

きっとこのオモチャを送ってきた奴は大層『お優しい』奴なんだろうさ。

そのあまりの優しさに感動のあまり笑いがとまらねぇよ。

まぁ、そんなわけで、その愛情溢れる優しさを受けた連中がどうなってるのか見に行くことにするかねぇ。

あぁ、そうそう。さっき戦場に絶対はねぇって言ったが、二つだけ絶対のモンがある。

 

一つ、お脳を使わない奴は絶対に死ぬ。

 

何をして何をしないのか、自分がどう踊るのか、自分の役をちゃんと演じれねぇ奴はあっという間に御陀仏だ。ちゃんと『考え』ねぇとなぁ。

そしてもう一つ。

これは絶対とは言いたくねぇんだが、結果として言われちまってることだ。

 

オレ等『巨人の大剣』が暴れた跡は凄惨の一言に尽きる。

 

こいつは酷い心外だ。オレ等は会社の社員として実に真面目にお勤めを果たしてるだけなのに、その結果が相手の殆どが死亡で施設の大体が修復不能な程大破。

だから周りの奴等から良く言われるんだよ。人でなし、化け物、お前の血は何色だってなぁ。

この二つだけは知ってる限りの絶対だよ。よく死は平等だなんて言うが、あれこそ不平等ってことはきっと赤子でも知ってるだろうよ。人間、いつ死ぬかなんてわからねぇんだからよぉ。

いけねぇなぁ、どうにも細かい蘊蓄ばかり口にしちまう。

きっとさっきのダンスがあまりにも退屈だったからに違いねぇ。早くお嬢様にこの退屈な気分を慰めてもらわねぇとなぁ。

 

 

 

 学園に戻りアリーナに向かってみれば、まぁ中々に愉快そうな感じになってるじゃねぇか。

彼方此方で黒煙が上がり、見知った奴等が身体を引き摺りながら歩いてる。

この様子じゃもうあのオモチャは全部ないらしい。

そんな様子の中、周りの連中に手を貸してるお嬢様を見つけて声をかけた。

 

「よぉ、お嬢様。あのオモチャとのダンスはどうだったんだい?」

「レオスさん!?」

 

いきなり話しかけられたもんだから、肩をビクッと震わせて驚いたお嬢様。

こんなんで驚く辺り、可愛げがあるもんだ。クロードの野郎なら、オレがこのアリーナに踏み込む前に気付いて普通に笑ってきそうだからなぁ。よかったよ、お嬢様がその領域までいってなくてよ。でねぇと弄り概がなくなっちまうからな。

お嬢様はオレの姿を見るなり驚きはしたが、すぐに顔を少し拗ねたような怒り顔に変えた。

 

「一体何処に行っていたんですの? 此方は無人機の襲撃を受けていたというのに、レオスさんは助けてくれないですし」

 

どうにもお嬢様はご立腹らしい。

だが、起こってるって割には随分と可愛らしいじゃねぇか。怒りがまったく伝わってこねぇよ。

お嬢様的には、この場面で白馬の王子様のご登場を期待したいらしい。

悪いねぇ、お嬢様。オレはそんな柄じゃねぇんだ。そいつはお嬢様が一番知ってることだと思うけどよぉ。

白馬の王子よりもジープの上でRPG片手に笑ってる無法者ってところだろうさ、オレは。

そんなお嬢様のお怒りを静めるべく、オレは笑いかけることにする。

 

「悪かったって、こっちもこっちで色々とあったんだよ。お嬢様の危機に駆けつけられねぇんじゃ騎士失格ってか?」

「むぅ~、そういうことっを言っているわけでありませんわ。それにレオスさんは騎士って感じではありませんの」

 

頬を膨らませるお嬢様に悪いと謝りつつ、オレはこのダンスの結果を聞くことにする。

 

「それで? お嬢様達のダンスの結果はどうだったんだい。審査員からの評価点は?」

「それですが……あまりよろしくはありませんわ。襲撃を受けたのはわたくし達専用機持ち。そして襲撃してきたのは前回学園に来た無人機の発展機と思われる機体が5機。ツーマンセルでの戦闘になったのですが、敵ISの特殊な能力と高性能に押されて………。結果、殆どの方のISがダメージCクラス。修理しなければならない状況ですわ」

 

どうやら予想が当たったらしい。

連中はどうにも苦戦を強いられ、苦闘の上に熱血かまして大逆転だとさ。

狙い通りに学んだらしいが、その結果がこれではおざなりもいいところってやつだろ。しかもお嬢様から更に話を聞くと、あの会長も今じゃ治療室で寝てるらしい。何でも、例の妹とやらを助けるために生身で庇った結果なんだとさ。中々にガッツがあるじゃねぇか。見直したぜ、会長さん。

その際にちょっとした感動ドラマを展開したらしいが、それを見た奴はいねぇんだとさ。ちっとばかし残念だ。

 

「それでお嬢様は大丈夫だったのか?」

「心配してくれるのですか?」

 

お嬢様はオレの言葉を聞いて瞳を輝かせつつも問いかける。

そんな期待を込められたんじゃぁ答えねぇわけにはいかねぇじゃねぇか。いいぜ、お嬢様が満足するくらいの答えを聞かせてやるよ。

 

「当たり前だろ。愛しいお嬢様が怪我をしたんじゃないかと思うと、オレの心は引き裂かれそうなばかりに痛んで仕方ないんだ! あぁ、お嬢様が無事で本当によかった。本当なら今この場で思いっきり抱きしめてキスをいっぱいしたいくらいだ!」

 

明らかにわざとらしく大仰に言ってみると、お嬢様は途端に顔を真っ赤にした。

 

「そ、そんな………ぁぅぁぅ………っ~~~~~~~~~!」

 

どうやら色々と夢が膨らんでるらしい。

なんとまぁ面白……可愛いもんだよ。

そんなお嬢様を見てニヤニヤしてるわけだが、チフユからお呼び出しが来ちまった。

 

『ハーケン、少し話がある。急いで管制室に来い』

 

まぁ、どうせあのオモチャとやり合った後の報告に来いって所だろうさ。

そんなわけで、未だに夢の世界で旅を満喫してるお嬢様に声をかける。

 

「んじゃお嬢様。オレはおっかない担任様んところに行ってくるよ」

「はぃ~」

 

どうにもはっきりしない返事。

そんな幸せなお嬢様にオレは更に幸せをプレゼントだ。

 

「あ、そうそう。今日は爺さんと夜遅くまで飲む予定なんだが、帰ってきてまだお嬢様が起きてたんなら、お嬢様に思いっきりご褒美やるよ。しっかり気を持っとかないと持ってかれるから覚悟はしときな」

「えっ、それって? っ~~~~~~~~~~!?」

 

更に深みにはまるお嬢様。顔から蒸気を出して自慢にへたり込み始めるところを見るに、更に乙女な夢に思いを馳せているらしい。

まったくもって、可愛いお嬢様だ。

そんなお嬢様に軽く手を振りながらオレは管制室へと歩いて行った。

 

 

 

 こうしてこのタッグマッチは特に収穫も何もなく誰かが得したわけもなく終わった。あの後チフユに出掛けてた理由を話して納得させて、その後は爺さん所で報告と共に酒を味わう。

それでこの日は終わりだ。

 

 あ、そうそう……一つだけ。

 

「あぁ、レオスさ、そんな、あんっ、駄目、駄目ですわ、やぁ、んぁ、ちゅっ、あは……んっ~~~~~………」

 

お嬢様はご褒美に満足だったよ。

その後恥ずかしさのあまり悶えまくってたけどな。

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