恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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やっとこのワールドパージも終わりそうです。


百三十六話 王子様には王子様の役割がある

 今更ながらあることに気付いた。

そう言えばオレは今返り血まみれだったんだよなぁ。流石にこんな恰好でレディの前に出るのは失礼ってもんだよなぁ。

そう思ったら、流石にこの恰好でお嬢様の前に出るのは憚られるってもんさ。

仕方なく近くの通路の影で着てる仕事着を脱ぐことに。と言っても、替えの服なんてもんは持ち合わせてねぇから、脱ぐのは上だけだけどな。

身体中返り血でべったりだが、それが集中してんのは上半身だけだから、これで多少はマシになるだろ。つっても血の臭いってのは拭えそうにねぇけどな。

それで取りあえず身なりをそれなりにして、改めてオレはお嬢様がいるであろう特別区画へと入った。

 

「よぉ、お嬢様に妹さん。景気はどうだい?」

「っ!? れ、レオスさん!」

「び、びっくりした…」

 

入って早々に二人が目に入ったので声をかけると、お嬢様は驚いた後に嬉しそうに微笑み、妹さんは普通に驚いたって面をしてる。そこまで驚かなくてもいいんじゃねぇかねぇ。

お嬢様はオレの姿を見るなり嬉しそうに近づいて来たが、そいつは嬉しいが今はちっとばかし来ないで欲しいからなぁ。待ったをかけさせてもらう。

 

「ストップだ、お嬢様。生憎今は汗まみれなんでね。あまり近づかれるのは少しばかりお勧め出来ないぜ」

 

お嬢様でも近づけば気付いちまうからなぁ。

あまりそういった刺激は与えない方が良い。そう思ったんだが……。

 

「え、えいですわ!」

「っと……まったく、人の言うことをまったく聞かないお嬢様だなぁ」

 

お嬢様ったら大胆にオレに向かって飛び込んできやがった。

そのままオレが逃げられないように両手をオレの背中に回すお嬢様。あまりくっつかれると汚れちまうってのになぁ。

 

「お嬢様にしては随分と大胆じゃねぇか。そんなに情熱的だと思わなかったぜ」

 

こう言えば恥ずかしがって離れるだろ。そう思ったんだが、寧ろお嬢様は更に身体を寄せてきやがった。随分と柔らかく艶めかしい感触にクラクラしちまいそうだ。

そう思って更にからかおうとしたんだが、その前にお嬢様がオレの胸に顔を埋めて顔を見られないようにしながらオレに向かって話しかけてきた。

 

「御仕事、お疲れ様でしたわ。その……私はレオスさんがどのようなことをしてきたのかは分かっています。だってレオスさんとは長く一緒に過ごしてきたのですから。その両手が血で汚れていることも、その手が数多くの人の命を奪ってきたことも……」

 

顔は見えねぇが身体に回してる手がかなり震えてる。

そこから感じ取れるのは怖がってるってことだ。だってのにお嬢様は離さねぇ。それどころか更に力を入れてきた。

 

「お嬢様、オレはあんまりお嬢様にそういうことを知っては貰いたくねぇんだがなぁ。身体が震えてるぜ。無理はしない方がいい。せっかくの綺麗な身体が汚れちまうよ」

 

そう言うと、お嬢様はやっと顔を上げた。

その顔は真っ赤だったが、瞳は今にも泣き出しそうなくらい潤んでいた。

お嬢様はそんな顔で真剣な感じにオレに話しかける。

 

「そんなことはありません! 確かにそれは凄く恐ろしいことですわ。今でも恐くて、身体の震えは止まりません。でも、それでも……それは私達のことを思ってのことだってわかっていますもの! 侵入口は3つ。そこからどれくらいの戦力が送り込まれたのかは分かりませんが、血を見るのは避けられません。分かっています、それがあまりにも悲惨だとあまりにもおぞましいということが! でも、誰かがやらなければならなかった。そうしないと、この学園は同じような襲撃にまたあう可能性があるから。そしてその汚れ役が出来るのはこの学園で貴方だけだということも。この学園で唯一、実戦を知り人の命の重さを知っている貴方だけが、それを出来るということも。だからこそ、私は、貴方を……」

 

そこでお嬢様は言葉を一端止めると、オレの目を真っ直ぐ見つめてきた。

その瞳があまりにも綺麗なもんだから、オレも見入っちまう。

 

「否定しません。人をたくさん殺して血でまみれても、それが凄く恐くても、それでも……私は貴方を絶対に離しませんわ!」

 

なんとまぁ情熱的な事か。

思わず驚きが顔に出ちまったよ。お嬢様は随分と成長したもんだ。精神がそこいたの小娘の砂糖みてぇなもんじゃねぇ。こりゃぁ鋼の精神って奴だ。芯が通ってるだけに揺るがねぇ。

いや、本当に驚かされたもんだ。

だからこそ、オレはお嬢様に笑いかける。それも自分でも驚くくらい優しい微笑みって奴を自然に浮かべてだ。

 

「まったく……お嬢様には敵わねぇなぁ。本当にイケナイふうに育ちやがって」

 

そんな風に感想を洩らしたら、お嬢様はまるで華が咲いたって表現するような笑顔でオレを見つめてきた。正直その美しさにドキっとしちまった。

 

「うふふふ、だって、私はレオスさんと一緒にいたいのですから」

 

全くもって降参だ。このお嬢様はオレが知らないうちに完全に覚悟を決めてるとはねぇ。こりゃそろそろオレもはっきりさせないと駄目かもしれねぇなぁ、本当に。

って思ってたら、流石にこんなオレ達を見かねてなのか第三者からのお声がかかった。

 

「あ、あの、そういうのは、せめて事態が収拾してからで………」

 

その声の方を向くオレとお嬢様。その視線の先には、顔を真っ赤にして目を逸らす妹さんがいた。

そしてお嬢様は自分が如何に大胆な真似をしているかを気付かされ、急いでオレから飛び退いた。

 

「す、すみませんですわ!」

 

顔を真っ赤にしながら妹さんに謝るお嬢様。どうやら今まで気付いてなかったらしい。うん、やっぱりこれぐらいがお嬢様らしくもあるねぇ。見ててホッとするよ。

 

「悪かったなぁ妹さん。ちょっとばかしお嬢様が感極まっちまったみてぇなんでなぁ」

「べ、別にいい。その……参考になったかも……」

 

妹さんは下を俯きつつもそう答える。いったいナニの参考にすることやらなぁ。

まぁ、そんなわけでお嬢様と通常運航に戻ったところで改めて事態の状況について聞くことにした。

 

「それで、現在どうなってるんだ?」

 

その問いに関し、先に答えたのはお嬢様だ。

 

「現在、専用機持ちの4人は未だに意識が戻っていませんわ。先程織斑さんが来て、急遽織斑さんに4人の救出をお願いしたのですが、未だに戻ってはいません」

 

だそうだ。

何でも、ホウキ達が閉じ込められた世界ってのは、どうにも本人達にとって都合が良い世界なんだと。具体的に言えば、イチカの野郎とよろしくやってるご機嫌な世界だとさ。そんなわけだから、奴さん達はそんな幸せに浸かって抜け出せねぇんだと。それから脱出するためには、イチカの野郎が直々に『現実』ってもんを教えればいいらしい。

お嬢様がそう答えると、PCの席に座ってイチカをサポートしてる妹さんが頷いた。

アイツもまさか『間男』の真似をするハメに遭うとは思わなかっただろうに……愉快すぎて笑いがとまらねぇよ。

だが、そんなオレと違い、お嬢様は心配らしい。

 

「まだ織斑さんも戻っていませんし、やはり私も手伝いに行った方が良いのではないでしょうか。今ならレオスさんもいますから、更識さんの護衛も任せられますし」

 

そんなお嬢様に対し、オレは指を口元に翳してこう言ってやった。

 

「お嬢様、あまり無粋な真似はしちゃいけねぇよ。何せ悪夢に惑わされているお姫様方が王子様の手によって救い出されてるんだからよ」

 

その言葉にお嬢様は少し頬を赤らめつつも「そうですわね」と言って行くのを止めた。

 まぁ、その後はイチカの野郎が何をしたのかはわからねぇが、4人とも起きた。

ただし、その際の顔は全員トマトみてぇに真っ赤になってたが、見てて面白かったんで笑うことにした。

その後に更に珍しく妹さんが寝てるイチカにしでかして騒ぎになったわけだ。

こうして見ると、結局こいつらはいつもとかわらねぇってこったなぁ。

そんな周りを見ているオレにお嬢様は微笑みかける。

 

「レオスさん……本当にお疲れ様でした」

「あぁ、ありがとよ。お嬢様のそんな笑顔が見られただけで疲れが吹っ飛ぶようだ」

「まぁ、お上手なんですから」

 

オレ達もいつも通りって感じだろうさ。

あぁ、でも………この一件が歓迎した連中が仕組んだものじゃねぇんなら、今度はその黒幕とやらに挨拶に向かわねぇとなぁ。

何せ………。

 

『そいつはきっと近くにいるはずだからよぉ』

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