恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回は新キャラ『顎』ちゃんがやらかします。


百四十一話 共通の目的があれば敵とでも共闘する場合がある。

 オレの中で会いたくない奴のブラックリストに載るような奴が目の前に現れたわけで、オレの気分は駄々下がりだ。出来れば今すぐにでもこの場から尻撒くって逃げ出したいくらいになぁ。

だが、それももう無理だろうさ。何せコイツに捕まって逃げられる気がしねぇんだから。殺り合うんだったらまだ何とか出来そうなもんだが。

そんな実に面倒臭さに顔を顰めるオレだが、胸にしがみついてる奴さんは寧ろ上機嫌だ。

 

「久々ですね、レオスさん! 確か前会ったのが三年前くらいですから13歳の頃……こんなに格好良くなって驚いてしまいました」

「そういうお前さんはまったく変わってねぇなぁ。特にそのお脳の狂いっぷりは健在みてぇだな。このまま行ったら大文字焼きで山にLOVEとか書き出しそうだ」

「レオスさんがお望みなら………ポ…」

「褒めてもねぇししてもらいたくもねぇよ」

 

奴さんのハシャぐ姿に辟易しつつ答えを返すが、奴さんにはこの手の皮肉はまったく通用しないらしい。お嬢様でもここまで御間抜けじゃねぇのによぉ。

そんな俺達を見て、お嬢様はフリーズしてたのがやっと復帰した。

 

「れ、レオスさん、どういうことですの!? どうみたって女性じゃありませんの! 嘘仰らないで下さい!」

 

顔を真っ赤にして若干ヒステリー気味に叫ぶお嬢様。ここ最近じゃ見なかったもんだから懐かしさを覚えるね。あぁ、別にオレはそういうのも嫌いじゃねぇよ。イチカの周りにいる奴等のヒスってる所にくらべればお嬢様のは安全で安心だからよ。それこそ空砲しか入ってない拳銃でロシアンルーレットをするくらいにだ。因みに言やぁ、イチカの方は一発を除いて全弾入ってる44マグナムでするようなもんだ。ほぼ助かる見込みはねぇな。

さて、そんなお嬢様のために、胸にくっついてるこの野郎を引っぺがして説明といくかねぇ。

 

「あ、そんな……レオスさんのイケズ」

「うるせぇ、お前さんのせいで絶賛混乱中のお嬢様に説明しないといけないからな。お嬢様、こいつの名は『青龍院 顎』。この京都の町……正確に言えば高貴なる帝が生活してる後宮とその本人達を守護する日本古来の暗部だ」

 

その説明を受けてお嬢様はむくれる。別に可笑しいことなんて言ってねぇんだけどなぁ。

この女装野郎の正体、それはさっきお嬢様に言った通り日本に古来から続く伝統ある暗部の家系のもんだ。その使命はさっき言った通り、天皇とその御所の警護だ。あぁ、勿論それだけなら暗部になんてならねぇよなぁ。こいつらが暗部たる由縁は、その異常な能力だ。可笑しいと思わねぇか? 何で京都ほど昔の町並みが残ってるのか? そりゃあ勿論文化遺産だからってのがあるが、それは表の言い分だ。戦争に負けた日本が占領されずに今に至ってるのは、こいつ等の活躍が大きいのさ。こいつ等は謂わばオレ等と一緒、曰く世界の嫌われ者なのさ。その理由までは言わなくても分かるだろ。つまり下手にこの国の高貴な御方や京都の町に手を出そうもんなら、そん時は真面目に手痛いじゃすまねぇ目に遭うって事だ。特に星条旗の連中はそのことを骨の髄まで分かってる。

その力と来たら、正直真っ向から戦うのは避けたいくらいヤバイ。

その説明を聞いてもお嬢様は納得しねぇようで、ジト目でオレを睨んできた。

そんなお嬢様を見て調子に乗ったらしく、奴さんはお嬢様の前で実に『女らしい』笑みを浮かべてきた。

 

「どうも初めまして。青龍院 顎と申します。レオスさんはそう言ってますけど、本当は……」

 

この野郎、お嬢様が信じてねぇことを思いっきりからかいたいらしい。

だから先んじて行動に移す。

 

「お嬢様、コイツが証拠だ」

 

お嬢様にそう言うなり、オレはお嬢様の手を掴んでさっと奴さんの胸元に突っ込んだ。

 

「やぁん、レオスさんのエッチ♪」

「なっ、ななな、何させてるんですの、レオスさん!?」

 

奴さんはしなを作り顔を赤らめ、お嬢様は急にさせられたことに驚く。

 

「お嬢様、女であるお嬢様なら分かるだろ。そいつの胸の感触はどうだい?」

 

そう言われお嬢様は顔を真っ赤にしつつも少し触り、やっと気付いたようだ。

 

「確かに……女性の胸では……ありませんわ」

「あ、あんまり触られると……んぅ……んぁ……」

 

何やら顔を赤くして艶っぽい吐息を漏らす奴さん。知らない奴にはご褒美なんだろうが、知ってる方からすればただ気色悪いだけだ。野郎の喘ぎ声なんて誰も得しねぇよ。

そんな声にお嬢様は顔を更に赤くしつつも、何故か手を放さない。

 

「お嬢様、興味津々なのは分かるしたまには主導権を握りてぇのはわかるけどよ、そいつは放してやんな。あまり年頃の女がそんな遊びに夢中になるのは感心しねぇなぁ」

「す、すみませんですわ!?」

 

お嬢様はオレに指摘されてバッと凄い勢いで奴さんから離れた。

奴さんは妙なしなを作りつつ、物静かに着物を整え直す。

 

「結構上手で感じちゃいました……」

 

あぁ、無視だ無視。構うだけ馬鹿を見る。

取りあえずこれでお嬢様も納得してくれただろ。

 

「胸まさぐって分かっただろ。これでコイツが正真正銘『男』だってことがな。つまりコイツは女装が好きな変態だ」

「こんなに肌がきめ細かくて美しいのに男の方だなんて…………」

 

お嬢様は地味にショックを受けているようだ。

そんなお嬢様にそれまで実に気持ち悪いことをしていた奴さんはオレの袖を引っ張りつつ問いかけてきた。

 

「レオスさん、この人とは一体どんな関係なんですか? もしかして愛人!?」

「何お脳が腐ったようなこと言ってるんだ。次にそんなことを言ったらそのブツを二度と使い物にならないようにするぞ」

「え、それってつまり………傷物にされてしまうってことですか? そんな、レオスさんったら……責任とって下さいね」

「絶対にお断りだね。寧ろそんなこと言ったオレが馬鹿だった」

 

何でコイツはこうも頭の中に蛆が湧いてるのかねぇ。周りの奴等はコイツにどんな教育をしたのやら。

オレは正直疲れてきたわけだが、それでもその問いに答えてやる。

 

「このお嬢様はオレが学園で世話になってるパートナーだ。セシリア・オルコットって名前で、イギリスの大貴族の御当主様だよ。あぁ、勿論……オレが今一番気に入ってる女だよ」

 

それを聞いてお嬢様は耳まで真っ赤にしながら目を潤ませた。

こういう所はまだ初心なもんだ。そのままそういう部分は残って欲しいねぇ。

 

「レオスさん…………(そんな告白されたら……うぅ、胸がドキドキして仕方ありませんわぁ!)」

 

そんなお嬢様の熱い眼差しを受け、奴さんはお嬢様と向き合う。

その面は少し真面目だが、それでも充分親しみってもんを感じさせる。

 

「あなたがレオスさんの恋人……候補ですか。確かにレオスさんが凄く気に掛けてるのがわかります。でも……僕も負けませんよ」

 

野郎から好かれたって嬉かねぇっての。

そんな告白を受けてお嬢様も不敵な笑みを浮かべつつ答える。

 

「私も負けませんわ! いくら美しい人でも男の人に負ける気はありません!」

 

互いに火花を散らせるわけだが、女同士や男同士ならまだ絵になるんだろうがなぁ。男女で恋愛に張り合ってもシュールとしか言いようがねぇ。特に顎の野郎は尚更にな。

そこから二人の間で始まる舌戦。

 

「わたくし、レオスさんとは何度も危ない所に行きましたわ。その度に一緒に困難や苦難を乗り越えてきましたの。いくら知り合いでも、一緒にいた時間はわたくしの方が長いですわ」

「僕はレオスさんのためなら『入れるのも入れられる』のも両方とも出来ます。前も後ろも捧げられますし、それで気持ち良くなってくれるんだったら……」

「ちょっ、何を言ってしますの!? はしたないですわ!」

「お慕いする男性に捧げることがはしたないなんてことありません。寧ろそんな気概もない人にレオスさんは渡しませんよ」

「むぅ~~~~~~」

「ん~~~~~~~」

 

互いに睨み合う二人。

オレを巡って行われるそれは、イチカの周りに比べれば慎ましやかだが、生憎片方が男のせいで色々と残念だ。オレにその気はねぇし、もしそれで迫ってきたらそんときは後ろの方にダイナマイトをぶち込んでやるよ。

そして二人はしばらく言い合っていたわけだが、次第に何故か仲良くなり始めた。何で仲良くなってんのかオレにはわからねぇよ。

そして二人は頷くと、オレに向かって飛び込んできた。

 

「レオスさん、今修学旅行の下見だって聞きましたよ。僕が隠れた名所とか色々と案内してあげます」

「レオスさん、一緒に行きましょう」

 

そして片腕ずつに抱きつく二人。

世間から見れば両手に花なんだろうが如何せんなぁ………。

 

「はぁ………」

 

仕方ないく連れられて歩くオレだが、その溜息はかなり重かった。

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