さて、クラス代表がイチカの野郎に決まった翌日の早朝。
俺はノートPCの前でかなり苦い顔になっていた。何でかって? それはなぁ・・・・・・
『お久しぶりですね、レオス。元気そうで・・・と、元気なのは当たり前でしたか。貴方が体調に不調を訴えた事なんてありませんでしたからね』
この通信してる相手が原因だ。
俺が通信している相手は『巨人の大剣』の副隊長、クロード・シルファー。つまり俺の上司だ。
『巨人の大剣』の事務関係をすべて仕切ってる敏腕で、年齢は三十前半位なのだが、見た目は二十大前半でも通りそうな外見をしている。しかも誰が見ても振り返る美形ってやつだ。色白い肌に濁りの無い金髪。しかも物腰丁寧で紳士的。いつも眼鏡を拭いている姿を見ている気がするが、そいつも絵になる光景ってやつだ。何でこんな仕事なんかに就いてるのかは、部隊内一番の謎で、誰も知ってるやつはいねぇ。ハリウッドで俳優でもやってる方が余程様になってるだろうにぁ。しかもこんな形で部隊一のスナイパーで、それ以外も平均以上にこなすんだぜ。神は二物を与えねぇ、何てこの国じゃ言うらしいが、そいつは絶対嘘だってのは、その言葉を聞かされた瞬間に思ったぜ。こいつをみたらなぁ。
んで、何で俺がこんな苦り切った顔をしてるかと言うとなぁ・・・・・・俺はこいつに頭が上がらねぇんだよ。誰にだっているだろ? 頭の上がらねぇ上司ってやつはよぉ。
それに只の上司と部下ってだけならここまでにはならねぇ。所謂兄貴分ってやつなんだよ、こいつは。
俺が今の部隊にスカウトされたのは六年くらい前だったか。そんときからこいつは副隊長をしていて世話になってるってわけだ。ガキの時から世話になってるんじゃ頭も上がらねぇだろ、いろいろ知られてるんだしよぉ。
そんなお偉い上司様が朝一に連絡・・・向こうは夜だったか。してきたもんだから、俺の顔は苦り切ってるってわけさ。向こうに何か言われること何ざぁ特に無・・・・・・ありすぎだな。
今回もお説教かと思うと辟易するぜ。
「んで、何の用だい。お説教ならまた今度にしてくれよな。これから『学校』なんでなぁ」
『どうせ真面目に受ける気なんて無いでしょう。確かにお説教もありますが、今回は別のお話ですよ』
そうクロードは言うと、さっそく真面目な顔をしやがった。いつも真面目なこいつだが、この顔は仕事をする時の顔だな。てぇことはつまり・・・・・・
「仕事の話ってことかい?」
『理解が早くて助かります。そう、お仕事のお話ですよ』
やっぱりか。でも何の仕事だ? 俺は今ここから動くことは出来ねぇぞ。
『お仕事というのは、貴方にその学園からですよ』
「はぁ?」
つい間抜けな声を出しちまった。
何で俺に直接仕事を依頼しねぇんだよ。一々回りくどいねぇ。
『依頼人はIS学園の用務員にして裏で実権を握っている轡木 十蔵氏。依頼内容はIS学園生徒、織斑 一夏の護衛です。期間は学園卒業まで』
「なんだよ、あの爺さんかよ。何で一々こんな回りくどい真似をするかねぇ。しかも学園在学中ずっとかよ」
『と言っても常に貼り着いていろと言うわけでは無いようです。可能な限りは守ってくれればいいらしく、他にも仕事を頼むそうです。まぁ、体の良いアルバイトとでも思って下さい。意外と報酬も良いですよ』
「そうじゃなきゃ受けてねぇだろ。しっかしイマイチ解せねぇな。なんたってそんな中途半端で回りくどい。一々そっちに回さずに俺に直に言えばいいだろうによぉ」
『その理由は二つあります。一つはこの依頼が轡木 十蔵氏個人と『巨人の大剣』との正式な契約だということ。IS学園には知られたくないのでしょう。そしてもう一つも理由は・・・・・・貴方に任せると適当にするからですよ。こういう話は正確にしなけれがなりませんからね』
「ちっ! またけったいなことを」
あの爺さんはま~た何かやりやがった。
面倒臭せぇ真似しやがって。しっかし気になるのはその内容だな。何でイチカの護衛なんだ?
そりゃあいつは俺と違って色々とあるから狙われるのは分かるが、そんなもんは入学初日からすでに何かしらの対処はしているだろ。今更俺に依頼するようなことか?
『あなたが疑問に思っていることは分かりますが、私達は依頼されそれを受けた以上、それを達成するだけです。なので余計な詮索は控えて下さいね』
「先を読むんじゃねぇよ」
だから頭が上がらねぇんだよ。
考えてることの殆どを読まれちまう。こいつに読み合いで勝てた試しが一度も俺はねぇよ。
ま、こいつが言うことももっともなわけだ。俺達は仕事を受けた以上、そいつをこなすだけだ。
話に関しては爺さんに詳しく聞くとするかぁ。でねぇと分からねぇことが多すぎる。
「OK、OK、分かったよ。受けちまった以上はしろってんだろ。そいつはしねぇなんて駄々は捏ねねぇよ」
『ええ、結構です。ではこれで失礼しますね・・・・・・そうそう、学園生活は楽しめてますか』
「そいつを俺に聞くかい」
『ええ、どうですか。学生というのも悪くないでしょう』
「悪くはねぇが、暇で仕方ねぇよ。早くそっちに戻って仕事してぇ」
『そうですか・・・・・・わかりました。では学業、頑張って下さいね』
「うっせぇ」
そう言って通信を切った。
まったく、なんたってこんな朝一からこんな話をさせられるかねぇ。
しかもあの爺さんからの依頼となると、きな臭さがぷんぷん匂ってくるぜ。ただ依頼するだけなら俺じゃ無くてもいい。普通はシークレットサービスなりガードマンと言った守り専門に頼むもんなんだぜ。そいつを殺しが本領である俺に頼むってことは、どうにも只事じゃすまなそうだぜ。
俺はそのやっかい事になりそうなことに呆れ返りながら顔を洗うことにした。
もう片方のベット・・・・・・天蓋付きの高級ベットのほうを見ると、セシリアがスヤスヤとまだ眠っていやがった。
まったく・・・・・・良い寝顔しやがって。
こっちは朝から面倒な目に合ってるってのによぉ・・・・・・
まぁ、そんなことを愚痴ったりしても仕方ねぇか。
そう考えながら洗面台へと向かった。