恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回はセシリアが頑張ります。


百五十一話 そろそろいい加減にしろってことかねぇ。

 世の中ハプニングってのは重要だ。

そいつが良い事なのか悪いことなのかは関わらず、思いがけないことに人ってのは刺激を覚える。

色々やってるオレにだってそいつはあるもんさ。仕事中に別の連中からの襲撃やら、街中で急に狙撃されたりとかな。まぁ、そういうのだったら問題ねぇ。慣れてるだけに多少驚くがその後は難なく片付けられる。

だが、今目の前で起こったそいつに関しては、流石に驚きを隠せねぇよ。

露天風呂に突如として現れたのは我等が戦乙女のお嬢様だ。その姿はバスタオル一枚を身体に巻いただけの実に軽装なもんで、世の男なら皆が目を離せないくらいの絶景がそこにはあった。

元からスタイルが良いだけにタオルでも隠しきれないはち切れそうな胸、下の方は短いこともあって御御足は勿論、その先も見えそうで見えないと言ったまさに鼻血必須な光景だ。

そんな魅惑的な恰好のお嬢様は、オレに向かって妖しく微笑むと背中を流すと言ってきたわけさ。

 

「お嬢様、いきなりそいつはどういうことだい。いや、それは実に喜ばしいもんだが、ここは男湯のハズだぜ」

 

まさかお嬢様がこんなにアグレッシブだと思わなかったもんだから、少しばかり声の調子がおかしくなっちまってる。そう考えるとオレもまだ甘いもんだ。

確かにお嬢様は昔と比べれば凄く成長したと思う。それは技術は勿論だが、その精神もだ。以前は初々しい感じだったが、今では淑女としてのしたたかさってもんをしっかり身に付けてる。それはそれで良いんだが、まさかこんな大胆な行動に移るとは思わなかった。以前のお嬢様ならからかえば、その途端に顔を真っ赤にしてオレに怒ってきそうなもんだったがねぇ。

さて、そんなわけで驚いているオレに向かってお嬢様は少し可笑しかったのかクスッと笑う。その様子が恰好と相まって妖しい魅力を放ってきた。

 

「レオスさん、知りませんの? ここの露天風呂は『混浴』ですわよ」

 

恥ずかしさはあるんだろうが、それすらもその魅力を引き立てる。

どうにもいつもと違う感じに少し調子が狂っちまうねぇ。

しかし、混浴だったとは。日本にそういう文化があることは知ってたが、ここ最近の世情もあってすっかり廃れたと思ったんだが、まだ残っていたらしい。

しかしだ、そうなるとまた別の問題が浮上してくる。

 

「お嬢様、そいつはわかった。だがなぁ、いくら何でも歳若い女が誘いをかけるにしたってコイツは少しばかり冒険し過ぎだろう。流石にお嬢様のこんな艶姿を他の奴には見せたくねぇ」

 

そう、まだこの時間なら他の客だって風呂に入りに来る。いくら合法とは言え、お嬢様のこの姿を他の野郎に見せたくねぇ。え、嫉妬かだって? そりゃそうだろ。何せお嬢様はオレの一番のお気に入りだぜ。そんな女の肌を他の野郎に見せたくねぇってのは当然だろ。

まぁ、これはあくまでも考えてるだけで、実際に口にする気はなかったんだが、そこはあの鬼畜上司を先生と慕うお嬢様だ。オレの言葉を聞いて少し嬉しそうに微笑んだ。

 

「ご心配なさらないで下さい、大丈夫ですわ。お風呂場の入り口には清掃中の札を掛けましたし、旅館の方にも話は通してあります。だからここには、私とレオスさんの、その……二人っきりだけですわ」

 

そいつを聞いた途端にオレは白旗を振ったね。

さっきもそうだったが、すっかりお嬢様はしたたかな強さを身に付けたよ。その逃げ場を無くし、尚且つ周りからも疑われないその手腕はまさにあのクロードの野郎の十八番だ。教え子もすっかりそいつを学んでやがった。

こうなったら逃げ場はねぇなぁ。

オレはお嬢様の成長に感激しつつ観念した。

え、普通そこはもっと粘るところじゃないのかだって? おいおい、あんなイイ女が背中を流してくれるって言ってるんだぜ。そいつは寧ろ断る方が無粋だろ。

だからオレはお嬢様に向かって少し呆れたような面をした。

 

「そこまでされたんじゃ仕方ねぇ。分かったよ、お嬢様。悪いがオレの背中を頼むよ」

「はいですわ!」

 

オレに認められてお嬢様と来たら、それはもう嬉しそうだ。

そんなわけで、オレは改めて身体を洗うべく風呂を出た。え? 風呂に入る前に身体を洗わなかったのかだって? 確かその前に自分で言ってただろって? まぁそう言うなよ。一応は洗ったさ。だがなぁ、こんな右手で満足に洗えるわけないだろ。だから取りあえずってのが正解さ。なぁに、いくらちゃんと洗えてなかったからって激怒するような奴はいねぇだろ。

そしてオレはお嬢様に背中を見せながら座ってるわけさ。

背後が見えねぇ分、お嬢様がどんな面をしてるのかわからねぇ。分かるのはお嬢様がオレの背中を洗うべく、スポンジを泡立ててることだけ。

 

「………やっぱりレオスさんの背中は大きいですわね。これが男の人の背中……」

 

お嬢様はオレの背中を見てそんな感想を洩らす。

 

「別にそこまで大層なもんじゃねぇだろ。でかいだけならあのクソオヤジの方が断然でかいし、傷だらけのもん見てても面白くもねぇだろ」

「いいえ、そんなことありませんわ。この背中は、この傷跡だらけの背中は、レオスさんのそれまでの過酷な人生を物語っています。私はこの背中を誇らしいと思いますわ」

 

お嬢様はそう言ってくれた。

こんなもんにそこまで感激してくれるってんなら悪くはねぇなぁ。

そしてお嬢様は見えないのに分かるくらい恥ずかしそうな声でこう言ってきた。

 

「そ、それに………私には、その………凄く愛おしく感じますわ………」

 

こいつは危なかった。

もしお嬢様の顔を見ていたら、きっと抱きしめてキスしていたに違いねぇ。オレはそんなキャラじゃなかったんだが、この魔性の女はオレの調子を狂わせるらしい。

恥ずかしい話だが、心臓の鼓動が五月蠅い。

そいつがばれないように心がけながらオレは軽い調子で話しかけた。

 

「そいつは嬉しいことを言ってくれるねぇ。お嬢様から愛の言葉を囁かれてお兄さんはドキドキしちまってるよ」

「もう、冷やかさないで下さい。でも…………本当のことですわ」

 

お嬢様はそう言ってオレの背中にスポンジを当てて擦り始めた。

野郎が乱雑にするのとは全く違う、丁寧なそれは正直こそばゆい。だが、悪くはない。

 

「レオスさんの背中、逞しいですわ」

「そいつはどうも。これでもそれなりに生きてきてるからな」

「男の人って感じで……凄くドキドキしますわ」

 

その上お嬢様からこんなお言葉だ。

女のこんな声を風呂場で聞くってのは、結構理性が刺激されて仕方ねぇ。

そいつを堪えていると、お嬢様は更に大胆に行動してきた。

 

「んぁ……………」

 

背中に触れる柔らかくも張りのある感触。そいつはオレの背中をなだらかに滑っていく。

その答えはもうわかってんだろ。その証拠に少し硬くなり始めたしこりみたいなモンを感じる。

 

「お嬢様、いつからこんなもんを覚えたんだ? 流石にこいつは洒落にならねぇだろ」

「んっ………はぁ、はぁ、その、自分でそれなりに調べましたの。殿方はこうされるのが気持ち良いと」

 

どうも悪い影響も受けたらしい。

だが、そいつを指摘しただけでお嬢様が止まるとは思えねぇなぁ。

 

「そいつは少し悪いもんを覚えたなぁ、お嬢様。悪い子だぜ」

 

背中を撫で回すその感触にらしくもなくドキドキしつつそう言うと、お嬢様は動きを止めずに答えた。

 

「悪くて結構ですわ。だって……殿方を癒やせるのなら、このぐらい………頑張れますわ」

 

だとさ。

もう止められそうに無いし、前を見られたらこの後の展開が凄い事になりそうだ。

だからオレは大人しく背中を洗い終わるのを待つことにした。

 そして背中を流し終わると、オレとお嬢様は背中合わせで一緒に風呂に浸かる。

 

「ふぅ~………いいお湯ですわ」

「あぁ、流石は日本ってか」

 

背中越しに聞こえるお嬢様の声はリラックスしてる感じが良く伝わってくる。

二人だけで夜空を見上げながら浸かる露天風呂、中々にロマンチックじゃねぇか。とてもオレのキャラに合いそうにねぇ。きっと会社の連中が聞いたら。オレには血風呂がお似合いだと言いそうだ。オレ自身そう思ってる。

そんなわけで、このオレらしからぬシュチュエーションを前にオレは少し困るわけだ。

するとお嬢様はそれまで無言だったわけだが、夜空を見て少し感激した声を出した。

 

「月が綺麗ですわね」

 

言われた通りに見上げれば、確かに綺麗な満月が出ていた。まぁ、オレ等からすれば月なんてのは綺麗だろうが何だろうが関係無いんだがね。

そこでオレはこの慣れない奇妙な雰囲気を和らげるべく、お嬢様をからかう。

 

「そいつはオレへの告白かい、お嬢様?」

 

いつもなら顔を真っ赤にして慌てるお嬢様だが、今回は少し違ったようだ。

 

「私、そんな周りくどい言葉は使いたくありませんわ。だから………」

 

そこで言葉が切れると、背中に触れていたお嬢様の感触が離れた。

そしてオレの肩にお嬢様の手が触れた。

 

「どうした、お嬢さっ……」

 

振り返った先にあったのはお嬢様の顔。それも目の前だ。

そしてオレの口はお嬢様の唇で塞がれてた。

そのことに少し驚いたが、何、以前から何度もキスはしてる。今更驚くことじゃねぇ。お嬢様からしたのは今回が初めてだが。

そして少ししてお嬢様は唇を離すと、真っ赤な顔で艶やかに見つめてきた。

 

「私なら、こうしてはっきりと伝えますもの。レオスさん………大好きですわ」

 

その言葉を聞いて、流石にこれ以上誤魔化すのは無理だと悟らされたよ。

だからオレは観念する。

その答えの代わりに、オレはお嬢様の唇にキスで返した。

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