恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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珍しく青春な彼です。


百五十四話 旅行後のオレを取り巻く環境

 お嬢様が帰ってきたことで日常らしい日常ってのが戻って来たって感じかねぇ。

修学旅行の感想を聞けば、それはもう楽しそうに語ってくれたよ。皆で温泉に入ってはしゃいだとか、チフユ達が来るまでの間まで起きて女子特有のガールズトークに華を咲かせたりとか、やってきたチフユにさりげなく酒を飲ませてその後も騒ぐのを黙認して貰ったとか。最後の辺りは少しばかり信じられねぇと思ったが、どうにもまたお嬢様がやらかしたようで。何でもチフユに飲み物を勧めた際に酒をこっそり混ぜ込み、そいつを飲んだ後に飲酒をしたって教えて軽くお話したらしい。おいおい、あのおっかない担任様になんて交渉をするのやら。当然チフユはお怒りになったそうだが、それはそれで周りの奴等が震え上がる中、お嬢様は口企みにチフユを説得して更に飲ませたんだとか。あのおっかない担任様も酒が入ると大体は大雑把になるらしい。

いつの間にお嬢様がそんな鋼のメンタルでネゴシエイターになったのか心配になっちまうよ。どう考えたって鬼畜上司の影響だろ、そいつは。将来尻に敷かれちまうか心配だ。

え? それはつまり結婚確定だって? まぁ、いずれはそうなるだろ。結婚しなくても一緒にいるだろうしなぁ。

それと京都でやっぱりあの女装野郎と会ったらしい。

奴さん、オレがいないことでどうしたのかと聞いたらしいが、お嬢様が休んでいねぇってことを伝えたら相当悔しがってたらしい。そいつは中々に愉快な情報だ。野郎のそういう面はそうそう拝めねぇからなぁ。

まぁ、歳相応の学生らしい旅行話を聞けて結構結構。

ただ、二つ困ったことがあるんだよ。

一つ、お嬢様はオレに怨み事を言ってくるのさ。あぁ、勿論そんな聞き心地の良い呪怨呪詛や中々に効いたジョークなんかじゃねぇよ。

寧ろもっと可愛らしいもんだった。

 

「せっかくの旅行ですし、もっと一緒にレオスさんと行きたかったですわ」

 

とか、

 

「あそこのお店で一緒にレオスさんとランチをしたかったのに、残念ですわ………怪我で仕方ないとは言え……」

 

とか、

 

「こ、恋人なのですから、その………もっと一緒にいたかったですのに~~~~」

 

と、上目使いでしきりにそんな可愛らしい怨み事を言ってくるんだよ。

そりゃわからなくはねぇが、こっちだって色々とあるんだ。勘弁してもらいてぇ。その代わりに今度どこかで飯でも食いに行くかって誘ったら、それはもう瞳を輝かせてオレに飛びついてきた。

 

「本当ですの! つまりそれは恋人同士のデートということですの………うふふふふふ」

 

って滅茶苦茶にお喜びだ。

その様子はまさに子犬って感じでついつい頭を撫でちまったんだが、その後の反応も少し違ってた。

いつもなら驚くんだが、今回はひと味違い驚きこそすれど、真っ赤になった顔で俺を見つめつつ気持ちよさそうに目を細める。そんでもって手を止めたら、何やらおねだりするような目で上目使いに見つめてきた。

 

「も、もう終わりですの……その、もっとして欲しいですわ………」

 

その威力は凄まじく、その辺の男なら即座に心臓を撃ち抜かれてた程さ。

オレはそんなお嬢様を上機嫌に撫でてやるわけで、しばらくお嬢様は気持ちよさそうにしてたよ。

こいつが困った一つ目だ。え? ただの惚気だって? そういうなよ、今まで女とラブストーリーを語り合ったことなんてないんだからよぉ。まぁ、悪くはない気持ちだがね。どうにもらしくなくて落ち着かないさ。

んで、もう一つなんだが、これもお嬢様絡み。

どうにもクラスの連中からの視線が可笑しいのさ。何というか、意外なもんを見たって感じだ。中には暖かな視線を向けてくる奴もいた。

今まで怖がってたってのにこの変わり様はどうなんだろうねぇ。そうなったのは修学旅行の後。そして周りはお話が大好きな女共だ。だからこそ、オレはお嬢様に軽く問い詰めたのさ。別に怒っちゃいねぇよ。ただ、お嬢様が何をやらかしたのか聞きたいってだけだよ。

そしてお嬢様が答えたのは、何てこと無い普通の、それでいてあまりにオレらしくないことだった。

 

「れ、レオスさんのことを、皆さんにもっと知って貰いたかったんですの。だって皆さん、レオスさんのことを上辺だけで怖がっているんですから。如何にレオスさんが優しくて格好いいのかを知って貰いたくて……で、でも、レオスさんに言い寄るのは駄目って言いましたわ。レオスさんは格好いいですから、きっと皆さん慕ってしまうと思います。でも、それはそれで、その………私の恋人なのですから、駄目ということで……」

 

どうやらオレ以上にお嬢様は惚気まくったらしい。

それも聞けば聞くほどに胸焼けを起こすかもしれないくらい、そいつは甘い話だった。

お嬢様はオレと出掛けたあれこれをある程度隠しつつクラスの奴等に教えたらしい。

それでこうなったと。

どうやら連中の中で今のオレの扱いは、『危険な傭兵』から『お嬢様のヒーロー』に格上げされたようだ。

御蔭で周りからは微笑ましい目を向けられるってわけだ。何というか、こいつは結構気まずいモンがある。何度も言うが、オレのキャラにはあわねぇしな。

以上が困った問題だよ。どちらも可愛らしいもんだが、御蔭でオレは妙に気疲れしちまう。

しかもそれは女子だけの話じゃねぇんだぜ。

例えばだ。このクラスの色男である一夏の野郎が旅行から帰ってくるなり、

 

「オルコットさんと付き合うんだって聞いたぜ。お前、凄いな!」

 

だとさ。

おいおい、そいつをお前さんが言うのかよ。オレよりも先にお前さんがこうなってるのが普通なんだぜ。それにそう言うお前さんだが、その後ろでホウキ達がすげぇ目で睨んでるよ。あんまり女心を燻らせるのも考えようだ。その内全員から刺されるか襲われないか心配した方が良いとお勧めしとこうか。

それはまだいい。チフユから釘を刺されたがそいつも気にするようなもんでもねぇ。

だが、まぁ……………。

 

「おめでとうございます、レオスくん。まさか君が女性とお付き合いとはいやはや……この人生でもまだまだ楽しめるものがありそうですよ」

 

爺さんにからかわれたのは少しばかりむかついたよ。

あのジジイ、いつもよりも愉快そうな面で笑って来やがった。筒抜けなのは分かってだが、それからかわれるのはむかつくもんさ。

だからオレはニヤリと笑って爺さんにこう返した。

 

「だったら祝いに祝杯を挙げてくれよ、爺さん。この部屋に隠してあるとびっきりの奴をよぉ」

 

それでその日は思いっきり飲んでやったさ。爺さんの部屋にある酒の半分以上をな。

こいつには流石の爺さんも少しばかり顔を引き付かせていたようだ。痛快だなぁ、あの爺さんのそういう面を眺めながら飲む酒は。

以上、ここ最近にあったことを言うんだったらこんな感じだ。

そして今、お嬢様はすっかり甘えん坊な感じにオレの膝の上に座っていた。

何でこうなったのか、オレも良くわからねぇ。

例の訓練を終えて更衣室で座ってたらお嬢様がドリンクとタオルを持ってやってきた。その差し入れはいいんだが、その後こうなった理由に関してオレは良くしらねぇ。

膝の上に座るお嬢様は顔を真っ赤にしながも嬉しそうにオレを見つめてきた。

 

「何だかレオスさん、前と少し違いますわ」

「何が違うんだい、お嬢様?」

 

急にそう言われても何の事やらわからねぇオレは、取りあえずお嬢様の頭を撫でる。

お嬢様は撫でられて気持ちよさそうにしつつ。オレの身体に身を預けてきた。

 

「前以上にキリッとしてて………格好いいですわ」

「そいつは嬉しいことを聞いたよ」

 

そう答えると、お嬢様はオレの首に手を回し始めた。

細く白い腕が首を撫でるのは、何というか官能的な感じがする。

そしてオレの耳元でそっと囁くお嬢様。その顔はまさに『女』だったよ。

 

「………だぁいすきですわ、レオスさん………ちゅ」

 

あぁ、何だ。オレは今、柄にもなく青春ってのしてるらしい。

悪くはないが、こいつは………精神的に良いのか悪いのか、オレには判断が出来ネェよ。

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