恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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リアルの忙しさにめまいがしそうですよ。


百六十五話 事の顛末と天災の行方

 今現在、オレは爺さんの所でソファに身をまかせながらくつろいでいる。

何でこんなところにいるのかについてだが、要は今回の騒動の顛末を物語の語りべよろしくに聞かせてもらおうってことだ。

え? あれだけ好き勝手に暴れたのに分かってないのかだって? 

そう言うなよ。確かにタバネの件に関しては不完全燃焼も良いところで終っちまったのは分かってるし、お嬢様の方に遊びに行ったチフユ似のお譲ちゃんも遊び疲れてぶっ倒されたってことは知ってるよ。だがなぁ、お祭りが賑やかに終わりました、はい終わりでハッピーエンド、って感じになるのは絵本の中のお脳が幸せな奴等だけさ。実際にゃぁ楽しい祭りが終わった後は、実に面倒くせぇお片付けが待っていやがる。

それだけじゃねぇ。その後は祭りで生じた利益の計算だの何だのとと、実にオレが嫌いな書類仕事がやってくるのさ。

詰まる所、楽しいお祭りは参加者は遊んで帰るだけだから幸せなもんだが、実行者はそれ以上に大変な思いをするってことだ。だからこそ、事の流れや顛末を全部聞かせてもらわねぇとなぁ。それを聞くのも、このお祭りに関わったもんとしての義務ってもんさ。

そんなわけで、お嬢様と一緒にここに来てるわけさ。

 

「レオスさん、ちゃんと座りませんと」

「セシリアちゃんの言う通りよ……って言っても無駄よね。何せ今更だもの」

 

お嬢様と会長の二人から注意を受けちまったが、そんな事を言われてもねぇ。今更だろうよ、オレがソファにどっかりと足を崩しながら座りこむのはよ。

 

「そう言うなよ、お二人さん。とりあえずコイツでも飲んで、それからゆっくりと爺さんのトークを聞こうじゃないか」

「レオスさん、それってさっきとりだしたお酒じゃぁ……」

「嫌よ、どうせアルコールが強くて飲めるような物じゃないでしょ。って言うかまた勝手に引っ張り出して」

 

二人からのジト目を貰いつつオレは爺さんの方に目を向ける。

 

「どうも二人ともお疲れでカリカリしてていけねぇなぁ。まぁ、そんなわけで爺さん、早く話してもらおうか」

「そうですね。確かに疲れているのに無理は体に良くないですし」

 

爺さんはそう笑いながら手前の定位置である席に座ると、オレ達を見回しながら口を開いた。

 

「まずは皆さま、御苦労さまでした」

 

お行儀よく最初の挨拶を聞き、お嬢様と会長は軽く頷く。

そして爺さんから今回の事の顛末についてのお話が始まった。

 

「今回の襲撃事件も無事に納めることに成功しました。すべては皆様が奮闘して下さったお陰です」

「爺さん、そういう定番のお世辞はいいよ。それよりもその後の話をオレ等は聞きたいんだからなぁ」

「そうせかさなくてもお話しますから」

「しねぇとアンタはずっとのんびりしてそうだったからよ。ついな」

 

毎度のことながら、爺さんの世間話に付き合う気はねぇんだよ。

早く話を聞かせてもらった後に、今度はお嬢様との甘い一夜が待ってるんだからなぁ。

それすら知ってるのか、爺さんは苦笑しながら改めて話し始める。

 

「今回の襲撃者である篠ノ之とMと名乗る少女について、ですね」

「あぁ、そうだよ。それとその背後に付いてのお話とかだな」

「えぇ、それが重要ですからね」

 

爺さんはニコニコと笑いながらそう話す。

この辺り、まだお嬢様達がいるからまだ明るめだ。

 

「篠ノ之博士に関してですが、このまま特に何もせずに釈放でMはこのまま拘束。叱る処分が決まり次第日本政府に引き渡します」

 

「「なっ!?」」

 

その言葉にお嬢様と会長の顔が驚愕に染まる。

そりゃそうだろ。まだあのお譲ちゃんの対応は良い。それ自体は今まで他の奴らも同じようにしてきたからなぁ。だが、タバネに関しちゃどう考えたって異議しかでねぇ。

何せ学園に襲撃を仕掛けてきたのに何のお咎めなしの釈放ってのはあり得ねぇだろ。だと言うのにこの決定。当然何かしらキナ臭さが匂ってくる。

 

「一体どういうことですか、それは!」

「いくらなんでもその対応は如何なものかと思いますよ!」

 

驚きから一転して喰いつくお嬢様と会長。

まぁ、一生懸命やって捕まえた相手を逃がす(タバネを相手にしたのはオレ一人だけ)ってのは我慢できねぇんだろ。

さて、その所はどうなってるんだ、爺さんよぉ。

 

「お二人が言う事もごもっともです。ですが、これにはちゃんとした理由があります」

 

爺さんは苦笑しながらそう答えると、その理由とやらを話し始めた。

 

「Mは亡国企業の実行部隊の生き残りとして捕縛。今後は組織の事をより調べるために尋問し情報が入り次第日本政府に引き渡します。これ自体は他の人でも同じようにしてきたので問題はありません。ですが、篠ノ之博士に関して何故何もないのか? それに対しての答えは、下手に彼女の居場所を定めると危ないからですよ」

「危ない?」

「何故?」

 

成程ねぇ。つまりはそういうことか。

お嬢様達は分かってねぇようだが、なんてことはねぇ話だ。

だからお嬢様達に分かるようにオレが爺さんの話の答えを話す。

 

「なぁに簡単なお話だよ、お二人さん。タバネは唯一ISのコアを作れる存在で、ポーカーで言えばどんな札にだって合わせられる最強のジョーカー(切り札)だ。そんな最強の札を誰が持っているのかが分かれば、当然他の奴らはそれを妬むだろうよ。出来ることならそいつを奪いたいってな。お遊びならそこまでいかないが、何せこのゲームをやってる連中は世界の覇権を手に入れたい奴等ばかりだ。『世界を賭けたゲーム』に勝つのに皆躍起になってる。強奪脅迫闇打ち暗殺何でもござれだ。だからこそ、タバネを持っている国ってのは危ないんだよ」

 

そう、奴さんの居場所がはっきりとしていて、尚且つ国が捉えているとすりゃあ周りの他の国が黙ってねぇってことだ。何をしてくるのか分かったもんじゃねぇ。

 

「だからこそ、奴さんには今まで通りに『どこにいるのか分からない』ようにしてもらおうってことだ。『世界の安寧』のために、奴さんは行方不明のままの方が都合がいいんだよ」

 

だからこその釈放ってわけだ。

下手にタバネをその場所に留まらせておくと、それを知った連中が何をしでかすのかなんてのは容易に想像がつくだろ。だから奴さんは今まで通りが丁度いいんだよ。

と言ってもだ。その説明を理解はできても納得はできねぇってのがお若いお二人なわけだ。

 

「だからといってそれは!」

「手緩るすぎるんじゃないかしら?」

 

その答えに爺さんは何か面白かったのか笑いながら答えた。

 

「えぇ、ですからそこのところは篠ノ之博士と色々と契約するという方向になっています。釈放する代わりにこちらにとって都合が良い契約と二度と襲撃をしないという契約を。まぁ、彼女の場合は普通の法律で考えても『初犯』だからそこまで罪には問えませんしね」

 

そういうこった。

納得はいかねぇだろうが、世の中ってのは案外そんなもんなんだよ。所謂司法取引って奴かもなァ。

爺さんはそう答えた後にオレを見て笑みを浮かべてきた。

 

「それに彼女自身、寧ろ進んで契約をしてきましたよ。その条件の一つに、『彼の組織の重役の連絡先』を欲しいという要望がありましたしね」

「見事に撃墜されたからだろ。あの野郎は善意だけで女を落としまくるからなぁ」

 

呆れた様子で返すと、爺さんは爺さんで愉快そうに笑う。

そんな様子にお嬢様と会長は妙に納得がいかないがどうしようもないって面をしてたよ。

 

「まぁ、そんなわけでタバネには引き続き行方不明になってもらおうってわけさ。下手に殺したらそれこそ世界中から睨まれちまう。いくらなんでもオレはそんなおっかない真似はごめんだね。下の方が壊れた蛇口みたいになっちまうよ」

「レオスさん、お下品ですわ」

「最低~」

 

お嬢様が顔を赤くしながら非難し、会長がジト目で睨んできた。

そう言うなよなぁ、実際に本当に怖いんだからよぉ。

 そして爺さんは以上の事をまとめとして話すと解散を言い渡してきた。

確かに行方も糞もなにもねぇからなぁ。

そのまま後は帰ってお嬢様と甘い一時と行きたいが、その前に爺さんに言わねぇとなぁ。

オレはお嬢様達が部屋を出た後に爺さんに問いかける。

 

「爺さん、タバネを釈放した本当の理由は『厄介事に巻き込まれたくない』からだろ。何せ奴さんは災いの種だ。持ってるだけで厄介事が寄ってくるからなぁ。だからとっとと手放した。違うかい?」

 

その答えに爺さんは深い笑みを浮かべながら答えた。

 

「私は結構面倒臭がりなんですよ。この老骨にこれ以上無理はさせたくはありませんから」

 

だとさ。

本当、喰えない爺様だよ。

オレはその答えを聞いて笑いながら理事長室を出て行った。

 

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