今回あの実に鬼畜な上司が持ってきた話について話そうか。
そもそもの話だ。何でオレ等のような『雇われ風情』が『亡国機業の本部襲撃』なんて御大層な依頼をされたのか。
そいつに関して何だが、事はそう単純な話じゃねぇ。何せこの手の話ってのは、本来御国がご自慢の軍隊を動かしてやることだ。オレ等にゃぁ振られるような話ではないことは確実なんだよ。これがまだ、どこぞの反政府組織を裏から潰せってんだったらわかる。だが、今回の相手はそれとは少し毛色がちげぇんだよ。だからこそ、不思議に思うのも無理はねぇのさ。
勿論そのことをクロードの野郎に突っ込んだよ。
それに関して奴さんは実に呆れ返ったような面で応えてくれた。
「えぇ、あなたの疑問はごもっともです。今回の依頼、私達がするには些か規模が大きすぎる。だからこそ、その事について遠回しながら探りを入れさせてもらったのですが………どうにも世界というのは意地の張り合いばかりで……」
つまりだ。
この亡国機業って連中は昔から色々とヤンチャをしていたこともあって、世界各国の御国の世間様に見られたくない色々を掴んでる。それを他の国に見られたくない連中は是が非でも手前ん所の軍隊で奴さん達を締め上げてそいつを吐かせて死守したいと。んであわよくば手前の国以外の恥部をかっさらってそいつを餌に世界で優位に立ちたい。そんな欲の皮が突っ張った連中は皆挙って我こそがと名乗りを上げるわけさ。だからまったく足並みが揃わねぇ。
最近だとISを盗まれたってことが良い例だな。皆そのことがばれたくねぇってよ。だから我先にと自分こそがって名乗るんだが、そう上手くいくわけがない。連中はどこぞの九官鳥よろしくに同じ事を連呼するわけだが、それで事が収まりを見せるわけがねぇのさ。
そこで周りの意見をまとめる議長役に引っ張り出された国際連合こと国連の連中が出したのが、第三者による敵組織の殲滅。
詰まる所は丸投げってことさ。勿論そいつに周りは反対したらしい。そりゃそうだ。どこの馬の骨ともわからねぇ奴らに自分達の弱みを握られるのかもしれねぇんだから、溜まったもんじゃねぇ。その反対に対し、それまで実にイライラさせられていた国連の連中はそいつでぶち切れたわけだ。このまま行っても話は平行線のままで自体が進まないんだから、いい加減にしろよって各国首脳のおバカなドタマに拳銃を突きつけた。そんでもって、半ば脅迫まがいに周りの連中を国連様は納得させたわけさ。延々と続く足の引っ張り合いにうんざりしてたんだろうよ、きっと。
そこで決まった第三者ってのが『オレ等』ってわけさ。
世界規模である意味有名で、その上組織の理念上『弱みに付け込む』ことをせず、何より他の国でも容易に手が出せない程の『戦力』を誇る。それがウチだからなぁ。
事実、何度も周りの連中はウチにちょっかいをかけて痛い目を見てきた。陰で隠れて目ざわりの虫を叩き潰そうとしたんだが、逆に相手は虫じゃなくて猛獣の類でしたってなぁ。
まぁ、そんなわけで周りの連中が歯噛みしながら恨めしそうな目で睨んでいく中、国連様はこの依頼をオレ達にしてきたってわけだ。あぁ、ここで言っておくが、この国連ってのは勿論IS委員会のことも含まれるからなぁ。念の為捕捉って奴だよ。
以上、今回の話のあらましは終わりだ。
結局のところは世界各国のお偉いさんの尻拭いってわけさ。これはついてねぇと言うべきか、久々のデカイお仕事にやる気を見せるべきか、悩み所だね。
そんなわけでクロードがその依頼を話して、オレ等はやる気に満ちてるわけさ。
さて、そんな風にお仕事が決まったわけでコンディションは良いわけなんだが、少しばかり気がかりなんてものがあったりするわけだ。
え? 何が気がかりだって? あぁ、まぁなんだ……その…………。
お嬢様の事だよ。
いや何、そんな気は毛頭ないんだがね。この後のお仕事ってのは久々の命の奪い合いだ。幾ら気をつけようと、ふとした瞬間にゃぁ手前の命が消し飛ぶようなことだって十分にあり得る。今までは無かったが、今後も無いとは言い切れないのが世の常って奴だ。
今まではそんなことなんざぁ気にしたことも無かったんだが、人間ってのはどうにも大事なもんを抱えると気にしなきゃならなくなるらしい。
だからさ……………オレもそろそろ本気で腹を括らなきゃならないみたいだ。
お仕事の日取りが決まったわけなんだが、それが約一週間後。それだけならのんびりって所なんだろうが、ブリーフィングやら準備やらで明日の朝には出発しなきゃならねぇことに。ちなみに学校はそれまでの間公休扱いだよ。元から気にしちゃいねぇんだから問題はないんだがね。
それでも問題があるとするんなら、それはやっぱりお嬢様のことだ。
クロードの野郎がオレに説明したんだから、当然お嬢様もこのことは知ってる。
だからなのか、それからずっとお嬢様は毎日不安そうだったよ。オレを見ては寂しそうに笑い、ちょっとした時に不安で瞳が揺れる。
見ててこっちが辛くなるくらい、お嬢様は不安定になってた。まさかオレがそんなことを気にするなんて思わなかったがね。昔のオレが今のオレを知ったら驚きそうだ。
そんなわけで学校にいられる最後の日。お嬢様と一緒に出来る限り過ごしていたが、それでもお嬢様の顔は曇ったままだ。普通に授業受けて、普通に飯食って、普通に寮に帰る。
あっという間に放課後も過ぎて辺りはすっかりと夜になった。月が良く見える良い夜空だよ。
そんな夜空が辺りを照らす中。寮の自室でオレとお嬢様は向き合っていた。
「明日にはもう…………」
既に泣きそうになってるお嬢様の涙声。何を考えてるのかなんて丸わかりすぎて逆に笑えねぇ。ここでイチカの野郎だったら何で泣いてるんだって慌てそうだが、残念なことにオレはそこまで鈍くもねぇ。
お嬢様の体をそっと抱きしめながらオレも返す。
「あぁ、そうだな。明日の朝にはもうでねぇといけねぇ」
そう答えるとお嬢様は胸の中で震えながら静かに泣き始めた。
手前にしたら随分とアレな空気なんだが、どうにも誤魔化し方が分からなくて困っちまう。
「そう泣くなよ、お嬢様。なぁに、別に大した事じゃねぇ。いつもとかわらねぇお仕事だよ。オモチャ片手に鼻歌歌いながら皆で一緒に鉛玉のダンスを踊りに行く。そういうことだ。今更だよ、今更。手前の命なんざぁいつもと変わらねぇ。ただ、暴れに行くだけさ」
そう答えて少しでも安心させようと思うんだが、これが中々に難しくて泣きやむ気配がねぇ。
「でも、でも…………」
お嬢様はそう言うと、やっと顔を上げてくれた。
物の見事に立派な泣き顔だ。美人が台無しになっちまうぜ、お嬢様。
そんな御茶らけたことも言えねぇことが妙にじれったい。
「でも……不安なんですの。確かにレオスさんにとってはいつものことなのでしょう。でも、それでも、私は…………」
涙で濡れた瞳がオレを捕える。
「怖いんです! レオスさんがいなくなってしまうかと思うと、怖くて怖くて仕方ないんです! だから……でも………」
お嬢様だって分かってはいる。だけど、それでもやっぱり不安なんだろう。
だからオレはさ………約束することにした。
胸の中にいるお嬢様に、実に手前らしくない優しい声で囁く。
「だったら………約束してやるよ、お嬢様。絶対に帰ってくる。そんでもって…………お嬢様と………セシリアと結婚する。まぁ、今はまだ歳じゃねぇから婚約がせいぜいだが、それでもだ。だから今、オレはお前に契約する。絶対に帰ってきて添い遂げる。そのために…………証明をこれから見せてやるよ」
そしてそのままお嬢様をベットへと優しく押し倒す。
「今回は最後まで行かせてもらう。悪いがオレも初めてなんでね。痛くても文句は言わないでくれ」
二つの条件でこれから何が起こるのかは容易に想像できる。だからお嬢様は真っ赤になった顔でうつむきながらも返事を返した。
「そ、その…………出来れば優しく………お願いしますわ………」
そしてオレはお嬢様の唇を奪うとともに、その体を貪り始めた。
「あ、あん! そんな、恥ずかしいところを!」
「あ、熱くて硬い………これが……レオスさんの………」
「っ~~~~~~~~~~! はぁはぁ………い、痛いけど、それ以上に……嬉しいですわ………」
「あ、あ、あ、あ、レオスさん、は、激しいです! 壊れて、壊れてしまいます!」
「だ、だめ、もう駄目ですわ、気持良くて、真っ白になっちゃってどうにかなってしまいそう! あぁ~~~~~~ん!」
翌日、オレの隣には深い眠りに付くお嬢様がいた。その体は魅惑的なまでに美しく、昨日の残滓がより興奮を掻き立てる。
そんなお嬢様の頭を優しく撫でて、オレは起き上がると準備を整え扉に手をかける。
「んじゃお嬢様………行ってくるよ」
返事は返ってこないことはしってるが、それでも言ってみた。
「はい、行ってらっしゃいませ」
扉が閉まる前に、お嬢様の声が聞こえた気がした。