今現在、オレが何処にいるのかと言われれば答えは簡単だ。会社に決まってる。
オレがお嬢様と素敵な一夜を過ごした後、まずは一旦会社に行きクソオヤジと鬼畜な兄貴分から『ピクニックの予定』について聞かないとならないんでね。だからこうして会社に来てるわけだ。
つっても特別な事なんざぁ何もない。いつもとかわらねぇよ、ここは。陽気で馬鹿ばっかりやってるクソな奴らが和気藹々としてやがる。
今まで何度だって仕事はしてきたが、そいつはまったくかわらねぇ。今更キョドったり不安にかられて羽のむしられたチキンよろしくに震え上がるお間抜けは誰もいない。どいつもこいつも慣れ過ぎてそんな初々しいもんなんて殺した奴等と一緒に捨てちまったさ。
だからこそ、緊張感なんてもんがまるっきり抜けた会議室でオレ等は待ってる。これから始まるであろう退屈なピクニックの予定を聞くために。
そんなわけで待つこと数分。馬鹿共が騒いでいるこの室内に我らが上司達がやってきた。
「お前ら、仕事の話をすんぞぉ~~~~~~~~~!」
「お静かにお願いしますね」
まぁ、いつも通りのやり取りだな。話をするから静かにしろってのは人として当たり前って奴だ。ここは学校と違ってそれでも騒ぐ馬鹿はいねぇからすぐに静かになったよ。何せそんな『若い』奴なんていねぇからなぁ。仮にそれでも騒げる奴がいるんだったら、そいつはこの場でオヤジにミンチにされてるか、戦場で間抜け面を晒したままこの世とおさらばしてるだろうよ。慣れ切ってるから今更なんだが、仮にも殺し合いをしに行くんだから少しでも真面目に聞かねぇとなぁ。情報の有無はそれだけで手前の生存率を引き上げるもんだよ。
だから黙ったオレ等を見て、クロードがまず口を開く。
「今回もお仕事のお話です。と言っても既に皆も知っていることですから、当日の作戦についての打ち合わせだけなんですけどね」
「遠足の日程確認ってやつだ。大したことはねぇが、遅刻するような間抜けはバスから置いていくからなぁ」
オヤジの笑えもしないジョークに皆苦笑する。笑ってもらえるだけましだと本当に思えるよ。
そんな軽いやり取りをして場の空気を寒くしたクソオヤジはさておき、クロードからもう少し具体的なお話が始まる。
「今回の依頼人は国際連合、依頼内容は世間を騒がせている『亡国機業』の殲滅です」
そこで普通なら大なり小なり漏れ出すもんだが、オレは勿論周りの連中もだんまりを決める。寧ろ笑いたくなってくるくらいだ。
確かにクロードの言う通り、彼の組織とやらは最近騒がしくしてはいるが、オレ等からすればそんな奴等よりももっと賑やかで派手にやってる連中だって多くいるんだ。今更その程度で騒いでたら飽きちまうっての。
だから周りから失笑が漏れだす。普通なら怒られるもんなんだが、クロードはそいつを見て軽く微笑んだ。
「皆さん、笑っては失礼ですよ。私たちにとっては『その程度』でも、向こうからすれば一生懸命なのですから」
明らかに小馬鹿にした台詞を聞いて、耐えきれなくなったのか皆で爆笑し始めちまう。だってそうだろ。いつもはそんな冗談言わない野郎がそんなことを言うんだ。笑わずにはいられねぇよ。
そんなクロードに続いてオヤジが改めて事に関して説明し始めた。
「なぁに、今回も特にはかわらねぇ仕事だよ。国連からの依頼ってのは要は他の国の尻拭いってことだ。どうにも御国ってのはプライドと欲が強すぎていけねぇ。その所為で話がまとまらず、ぶち切れた国連の奴らが出したのがオレ等への依頼ってわけだ。ウチは結構知名度高いからなぁ。他の奴らがケチをつけてこようと、オレ等なら黙らせられるからっていう公平で殊勝な理由さ。だから依頼主がアレでもやることは変わらねぇ」
実にクソ親父らしい適当な説明だが、オレ等にゃぁこんなもんでいい。これだけで大体のことは分かるからなぁ。
そんな『ご挨拶』を済ませると、クロードから具体的な話が持ち上がる。
「国連から提供された情報とこちらで独自に調べた情報をすり合わせた結果、情報に偽りなし。彼の組織の本拠地がはっきりとしました。その場所はここからそこまで遠くはないのですが、どうにも厄介のようです」
クロードからの話を端的に言うと、どうやら奴さん達の秘密基地とやらは建物自体はデカイが目立たなく普段は偽装されて見つかりづらいんだと。そこだけならまだいいんだが、今回厄介なのがその立地。なんでも険悪な御国同士の国境にあるんだとか。それもあって更に他の国も手が出しづらいと。そりゃ確かに厄介なことだ。何せ下手に手を出せば国際問題になりかねぇんだからなぁ。その点オレ等は企業だから問題無しってわけだ。本当なら手前等で潰したいところをオレ等に頼んだってのは、結構苦渋の選択って奴だったのかもしれねぇなぁ。
まぁ、だから何だって話なんだがね。別に恨みもねぇ連中の渋った面を直に見たわけでもねぇから笑う気も起きねぇし。
そんなわけで話の続きだ。クロードはそれを踏まえた上で『ピクニックの係』を決め始めた。
「作戦決行時刻○○において、私たちは二か所からこの施設に襲撃をかけます。一つは陸路、もう一つは空路から。陸上では皆ジープに乗って施設へ突撃を仕掛け、敵の地上戦力の無力化及び敵施設へ強制侵入。その後殲滅戦に以降。そして………」
クロードはそこで切ると、オレを見てさわやかに微笑んだ。
そいつがオレには凄く嫌な予感を感じさせる。
その予感通り、この鬼畜な上司様は爆弾を落としやがった。
「空路に関しては、飛行機の操縦主以外は私と団長、そしてレオスの3人だけで行います」
「はぁ?」
名指しな上にオレとオヤジとクロードの3人だけ? そいつはあまりにも突拍子もねぇことで。
そんなもんだからついつい間抜けな声を上げちまった。勿論オレの面に気付かないクロードのわけがねぇ。
「レオス、私はこういう時に冗談は言いませんよ。あなたがそう言いたい気持ちもわかりますが、今回はこの作戦で行きます。何せあなたと団長の二人がいるのですから、それだけで過剰戦力ですよ」
持ち上げられて嬉しいって普通は喜ぶもんだが、生憎喜べねぇなぁ。クソオヤジとクロードの二人だけで十分じゃねのか?
そう考えていたら、クロードはさらに笑えることを吐きだしやがった。
「尚、この作戦は強襲作戦です。なので………………団長とレオスの二人は降下がばれないように『パラシュート無し』で降りてもらいます」
「ってちょっと待て! そいつはいくらなんでもあんまりじゃねぇのか?」
いくらオレ等でも流石にそれは無理じゃ………。
そう言おうとしたら、クソオヤジが人を馬鹿にしたような面で笑ってきやがった。
「おいおい、そんなことも出来ねぇのか? だったらこの仕事辞めて日本で学生楽しんでたらどうなんだ、クソガキィ?」
さて、出来る出来ないは別にしても、クソオヤジにここまでコケにされたんだ。
だったらどうする? 決まってるよなぁ。
「はぁ? 何言ってるんだ、クソオヤジ? そんぐらい余裕だろ。寧ろオレはアンタの方が心配だね。そのでけぇ図体じゃぁ降りてる最中に気付かれるんじゃねぇのか? それに着地したらそのまま床ぶち抜いて落ちるんじゃねぇの?」
「そんな間抜けなわけねぇだろ。手前ぇこそちびるんじゃねぇぞ」
「ぬかせよ、この化け物」
「はいはい結構。二人なら間違いなく降下できますからね。私は飛行機からサポートしますので、二人は施設の屋上から中へと侵入してください。勿論、最初にすべきは敵の航空設備や迎撃兵器やISの排除ですから」
無茶振りもここに来回れりだが、ここまで言われて引くわけにもいかねぇ。
だから…………。
「行くぜ、クソガキィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!!」
「あぁ、派手に行くぜ! ロックンローーーーーーーーーーーーーールッ!!」
作戦当日、オレは上空からパラシュート無しで降下させられた。