さぁ、景気よく始まったお仕事の時間だ。
亡国の連中はオレ等が上げた花火に見事驚いてくれたようで、実に愉快な間抜け面を晒しに来てくれたよ。
「おいおい、鳩が豆鉄砲喰らったような面してやがんなぁ、おい」
「クソオヤジがそんなこと知ってる事が驚きだが、仕方ねぇんじゃねぇか? 何せこいつは豆鉄砲って言うにはあまりにも凶悪すぎだろ。寧ろ鳩が目の前に戦車砲突きつけられてるようなもんさ。ぶっ放したら驚く間もなく跡形もなくなるんだからよぉ」
連中の笑える面をクソオヤジと二人で笑う。
こういうことを言うのは実に癪なんだが…………やっぱり………。
「いいねぇ、この空気。火薬と血肉の香りに、お馬鹿な連中の愉快なアホ面と畏れの感情がミックスされたこの感じ。まさに『仕事』してるって感じがして……実にイイ」
お嬢様との幸せライフだって悪かねぇ。でもやっぱり周りがどう言おうとオレは『こういう生き物』なんだよ。そいつをやっぱり実感させられる。
怖くて恐ろしくて、どうしようもなく『楽しい』。
だから顔に出ちまうんだよなぁ…………。
実に嬉々とした笑いが。
「ひ、ひぃぃいいぃいぃいいいいいいいいいいいいッッ!?」
そんなオレの面を見ちまったのか、連中からビビった声が上がる。
おいおい、そんなんでいいのかよ。仮にもお前らはオレ等を殺りに来たんだろ。だったら怖がってちゃぁいけねぇなぁ。
そんな間抜けな声を上げるもんだから、御同輩が怒りで顔を真っ赤にしてるようだぜ。
「チッ、これだから男は役立たずなのよ! 早くそこをどきなさい、役立たず!」
ビビって腰が抜けてる御同輩を蹴り飛ばしつつ前に出たのは、実に『調子こいていそうな女』だった。よくある今の世の体現者って奴だ。
それがざっと4人。全員オレ等を見て実にいけすかねぇって面をしてる。
「アンタ達が噂の傭兵の………」
「でもやっぱり馬鹿な男達なのね」
「いくら腕に覚えがあろうが、ISを持つ私達の前では」
「ただの木偶の坊でしかないわ!」
何と言うか、日本でやってる五色のヒーロー物みてぇな感じに啖呵を切ると、ご自慢とやらのISを展開し始めた。
奴さん達はあっという間にモスグリーンカラーのISに包まれた。ありゃぁ確か『ラファール・リヴァイブ』だったなぁ。IS学園でもよく見かける奴で、世間様で言うと『よく犯罪組織にかっぱらわれてるオモチャ』。そう言っちまうとデュノアになんか悪い気がしてくるなぁ。まぁ、アイツやそのオヤジの所為じゃないがね。
現代において『最強』と言われてるISだ。それを装着した奴さん達はそれはもう優越感に満たされた面でこっちを見てきた。
普通ならビビるのが普通なんだが、そんな『ゆるい』もんを見させられたってなぁ。
オレは連中に呆れながらクソオヤジに問いかける。
「オヤジ、どうする?」
その問いかけの意味を理解してクソオヤジは笑いながら答えた。
「2ずつでいいんじゃねぇか。別に全部持って行ってもいいが、そうしたら手前の出番がなくなっちまうからなぁ。拗ねられても困る」
「抜かせよ、この。分かった、んじゃオレは左の二人を殺るわ」
「あいよ。だがまぁ、手こずってるようだったら容赦なく持ってくからなぁ」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
クソオヤジとそんな会話をすると、その意味を理解したのか奴さん達はそれはもう見事に顔を真っ赤にしてガキみてぇに切れ始めた。
「クソッ、馬鹿にして!!」
「男のくせに生意気!」
「その嘗め切った顔、絶望で真っ青に変えてやるわ!」
「絶対に殺してやる~~~~~~~~~!」
最近の若者ってのは短気でいけねぇ。もう少し忍耐って言葉をしらねぇと、今後の人生において取り返しのつかない失敗をしでかすぜ。
それを言ったらオレはどうなんだって? おいおい、オレは基本クソオヤジ以外には寛容だぜ。大人の余裕を持って優雅に帰してやるよ。
まぁオレのことはいい。奴さん達は見事にカンカンになってオレとオヤジに向かって突っ込んできた。
まぁ、これで少しは歯ごたえもあるもんだろうさ。
「女だからって甘くすんなよ!」
「そっちこそ、ちゃんと原型が残る程度には手加減してやれよ!」
クソオヤジにそう言い捨てるとオレも向かってきた2体に向かって仕掛けた。
向こうさんはこっちがISを持っていないってことで見下しているわけだが、こちらからすれば間抜けと言う以外の何者でもねぇ。
だから教えてやることにする…………本当の怖さって奴をよぉ。
「あはははは、死ね死ね死ね~!」
「とっとと死になさい!」
奴さん達二人組がオレ目掛けてアサルトライフルを掃射してくる。
オレは愉快そうに笑いながらその弾丸の雨に向かって飛び込んだ。
「今まで見たことのないもんを見せてやるよ」
口元の笑みが深まる。目の前にあるのは当たった瞬間に血煙りに変わる絶対不可避の死そのもの。そんなものを目の前に、オレはそれが楽しくて仕方ない。
引き抜いたオルトロスを両手に構え、手前に当たるであろう弾を感と予測の二つで割り出して当たる前に叩き斬っていく。
弾かれた弾丸があらぬ方向へとはじけ飛び、目の前で火花がいくつも飛び散る。
それを何度か行い、死の弾雨を搔い潜ったオレを見て2人組が目を見開いた。
きっと目の前で起こったことが信じられなかったんだろうぜ。何せ奴さん方、口をパクパクとして驚きのあまりアホ面を晒していやがったからなぁ。実に笑えるそいつにオレは腹を抱えて笑いたくなったが我慢する。別にしても良かったんだが、両手がふさがっているからなぁ。
そんな実に笑える連中の面は、この後更に真っ青に変わることになる。
忘れちゃいないだろうか? オレが相手をしてるのは二人。ならもう後二人を相手しているのは? 勿論アレだ。
オレが知る限り、一番の化け物で一番の規格外。この世の理不尽ってものをもっとも表した存在。タバネが『天災』って言われてるらしいが、オレからすれば、アレこそ本当の『天災』だ。字のごとく、人じゃ出来ねぇような災害を引き起こすんだからよぉ。
そんな人外が本気で力を容赦なく叩きつけるんだ。どうなるかなんて…………分かるだろ。
「オオオオオオオラァァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!」
クソオヤジの怒号が響くとともに、まるで近距離で戦車砲の砲弾が着弾したかのような轟音が轟いた。
その音の発信源に皆が目を向けてしまう。それほどにこれは強力な代物だ。
その結果が………………。
『絶対防御』が作動しようとも耐えきれないような程の衝撃で操縦者が『弾け飛んだ』
目の前で起こった光景はある種のホラーだ。
人が一気にミンチになって飛び散る。それをISなんてオモチャを使ってる連中が見たことなんて絶対にないだろうよ。だからこそ衝撃的な光景だった。
別にオレ等からすれば普通の光景だよ。戦場ならよくあるもんだ。戦車砲に留まらず、地雷に空爆、狙撃に手榴弾となんでもござれだ。人がミンチになるのに理由なんて必要ねぇってくらい、そいつはいつものことだ。
だが、それが『いつものこと』じゃない連中には実に刺激的だっただろうよ。
「な、何でッ………絶対防御があるはずなのに………」
「ウッ、うえぇぇぇ………」
顔を真っ青にする二人。確かにそれがISの売り文句だが、『絶対』なんて言葉は殆んどねぇのが世の中だ。
クソオヤジがやったのは、ただ単純に殴っただけ。ただ、その威力にISが耐えられる前に操縦者が耐えられなかっただけだ。
ここで復習だが、ISの絶対防御ってのは操縦者の生命の危機に対して発動する。
それだけならまさに万能な機能だが、実際にそうでもない『粗』があったりするもんだ。
これはイチカの野郎が言われていた注意だが、瞬間加速の際に無理に方向転換を行うと操縦者の身体が耐えきれずに骨折するということがあるらしい。
つまり機械と人間の限界点の違いって奴だな。機械が耐えられても中身が耐えられないからそうなる。
クソオヤジがやったのはまさにそれだ。
ISの防御を超えた威力の拳を叩きこみ、その威力に奴さん達の身体の方が先に音を上げてイッちまったってわけだ。普通じゃありえねぇが、そもそもそんなことになるって想定すらされてなかっただろうよ。
要はそれだけあのクソオヤジが化け物だってことだ。
そして可愛そうなのが、目の前で御仲間をミンチにされてそれを顔からかぶっちまった奴だ。
そんな光景を目の辺りにして、体中に生温かいナニカをぶっかけられたんだ。もうそのナニカが分かってるだけに、そいつの精神はぶっ壊れちまっただろう。
声も出せない、真っ青になった顔を血まみれにして目を見開く可愛そうな女。
だが、こっちはお仕事だから同情することはしねぇし、何より………。
クソオヤジは女子供だろうと仕事なら手加減は一切しねぇ。
「手前ぇ等こそ、世の中舐め腐ってるんじゃねぇえぇえぇえぇええぇえぇええええええええええええええええええええええええええ!!」
そして憐れなもう片方は、クソオヤジの咆哮と共に、今度は『IS』ごとこっぱ微塵となったとさ。
以上、最強であるISを装着した連中の末路を見た御二人さん。その結果が原型すら残らないナニカになったことに、奴さん達は恐怖のどん底に突き落とされたようだぜ。
だがまだ甘い。何せオレはまだ、何もしてねぇんだからよぉ。
あのクソオヤジに難癖付けられる前に、こっちも終わらせるとしますかねぇ。
丁度アホ面を晒してる二人はオレに気付けないようだしなぁ。
一気に距離を詰めるとオレは一人の眼前に飛び出し、その眉間にオルトロスを近距離で添える。なぁに、以前タバネにやった奴と一緒さ。そのまま一気に両方から連射。脳を揺さぶられまくった奴さんはそのまま目や鼻や耳やらと顔中の穴から血を噴きだした。
声らしい声も出せずに一気に倒れこみ、ISが解除される。
さっきの衝撃で幾ら頑丈なISでも、頭の中身をシェイクされたのならどうしようもないってことはわかっただろ。この女は良くて死に、悪けりゃ一生ベットの上が確定したわけだ。
その事実に目を向けた最後の一人が体中をガタガタとふるわせて股間からナニカを漏らしながら急いで逃げようとし始める。
「いや、イヤァアァァアァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!?!?」
実に滑稽な姿に笑いたくなる。
その震えようときたら、チワワのそれだ。あまりの愛くるしさに抱きしめたくなっちまうよ。
だが残念なことに、オレの胸はもう完売でね。残念ながら抱きしめることは出来ねぇンだよ。
だから代わりに終わらせてやる。
逃げようとする奴さんの腕を掴むと、そのまま一気に身体を近づけて間接を決める。
「ッ――――――――――――――――――――――――――――!?」
身体に走った激痛に声にならない声を上げる女。
ISってのはパワーアシストの機能があるが、それ自体はそこまで強くはねぇんだよ。実際に重いものを持ち上げる際、装甲に覆われている手なんかは確かにISの力が働くが、露出してる関節部はそうじゃねぇ。なのにどうして重いものが持ち上げられるのかと言えば、ずばりPICのお陰だ。重い物の重量を軽減することで持ち上げられるようにしてるってわけさ。つまりパワーアシスト自体は強くねぇ。
だからこそ、装甲のない露出した関節部にはこうして関節技を決めることが出来るってわけだ。
そのまま奴さんの足と腕の関節をぶっ壊し、そして地面に叩きつける。
その後はさっきと一緒さ。同じようにオルトロスを添えて、とびっきりの笑顔を向けてやる。
「Good night(永遠に眠りな)」
そして思いっきり引き金を引いた。
結果は見ての通りってやつだ。さっきも見ただろ。
結果だけで言えば、これでIS4体は無力化したわけだ。
そこにあるのは二人の瀕死体と、原型も残らないミンチが二つ。
これを見ちまったらもう、他の奴らは駄目だったようだ。尻まくってトンズラしたようだよ、まったく。まぁ、賢い選択ではあるがね。
こっちが派手にやったんだ。真下の連中はどうなってるのやら。
そう思って下を見てみると、どうやらオレ達よりも酷ぇことになってるようだ。
声までは聞こえないんだが、IS操縦者らしき女が二人ほど前に出てきた。そしてISを使おうとしたんだが、使う瞬間に見事に頭が吹っ飛んで奇怪なオブジェに早変わりしたよ。
奇怪なオブジェを作り出した犯人は、勿論今の上空を飛んでいる飛行機にいる我らが副長のようだ。あの野郎、上空の飛行機格納庫内から地上の豆粒以下の人間の頭だけを正確に狙撃したようだ。
流石は千里眼の化け物ってところか。いくらISが強かろうが、そもそも使わせなけりゃ意味がない。ある意味一番スマートな仕事だ。
そう思ってたら通信機に通信が入ってきた。
『いくら私でもそこまで仕事をしないわけにはいきませんからね。この程度はさせてもらいますよ』
流石は千里眼、考えてることも筒抜けらしい。
オレの周りはこんな人外しかいないのかねぇ。早くお嬢様の元に帰りたくなっちまったよ(笑)
そう思いながらクソオヤジと一緒に建物内に入っていく。侵入というよりは突撃のように大胆に堂々と入る。
そして分かれ道に付きあたり、オレはクソオヤジと別れた。別に一緒に行く理由はねぇし、何よりこっちの方が効率が良いからなぁ。
そのまま歩けば、この騒ぎに慌てまくる敵兵が集まりつつあった。
どいつもこいつも怯えた面で必死に暴れてるようだが、ISをぶっ潰したことは知ってるようだからそれだけで及び腰だ。
つまらねぇなぁ。
もっと殺し合って楽しめると思ったんだが、亡国機業ってのはどうにも腰ぬけ連中が多いらしい。
仕方ねぇ、個人的なハンデをくれてやるとするか。
オレは怯え上がる連中に向かって聞こえるような声で話しかけた。
「お前らの為に少しばかりハンデをくれてやるよ。オレなぁ、恋人が出来たんだよ。金髪でスタイル抜群の美少女さ。その娘となぁ、結婚しようと思ってる。真っ白いウエディングドレスを着た彼女はさぞ美しいだろうさ。そんで結婚したら、海辺の町で真っ白い一軒家を建てて、そこで大きな犬を飼いながら一緒に暮らすんだ。子供は男の子と女の子の一人ずつで、家族4人で仲睦まじく暮らそうと思ってる。どうだ、羨ましいだろ」
言っていて実に爆笑しそうになっちまう。一体どの口がそんな戯言を言うんだってなぁ。
だから爆笑の代わりににやりと口元を笑う。それが凄い面になってるってことを分かった上でだ。
「どうだ?確か日本じゃこういうのを『フラグ』って言うんだろ。思いっきり何本も建ててやったんだ。これで少しは死にやすくなったんじゃねぇかな。ほら、マシになったんだからやろうぜ………殺し合いをよぉ」
さぁ、オレをもっともっと楽しませてくれよ。