恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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バラライカさんってこんな感じでしたっけ?


if もしもシャルロットを助けるなら その4

 世の中怖いもんはいくつもあるが、その中でもとびきり怖いもんと言えば、それはやはり女だろうよ。何せそいつは有史以来常に決まってる。

歴史の偉大な偉人には必ず何かしら女が付き添い、そういった女は得てしてロクな奴がいねぇ。妲己しかりマリーアントワネットしかり、女ってのは男以上におっかない存在なのさ。

そんなわけで、オレは知る限り一番おっかない女に今商談を持ちかけてる。

上手くいけばオレもデュノアも皆ハッピー。失敗したらデュノアは逆恨みでどんな目に遭うかわからず、オレはこのおっかない女の所と戦争ってわけだ。

だから冷や汗がさっきからとまらねぇ。出来れば顔を付き合わせたくないってのが本音だが、この手に関して奴さんほど向いてる組織もそうはないんでね。オレが知る限り、最強のジョーカーだよ、この女帝様はさ。

震えそうになる声を何とか抑えつつ、オレはさっそく今回の案件を世界一怖い女選手権トップに入る『バラライカ』ことホテルモスクワの大幹部に話を振り始めた。

 

「今オレがIS学園にいるってことは知ってるかい?」

『えぇ、こちらでは一時期その話題で持ち切りだったもの。どう、楽しい学園生活は?』

「悪くはないが退屈だよ。ここには血と硝煙の香りがしねぇ。まぁ体の良いバカンスだと思ってるよ。つっても、ハプニングが多いから度々仕事が来るがね」

『よかったじゃない、暇すぎなくて』

「そいつはどうも」

 

ただの世間話だが、それだけでもびくびくしてる手前がいる。

いや、無理だろ。ISの女尊男卑なんか目じゃないくらいおっかないんだぜ、この御人。少しでもそのお怒りに触れれば、その途端にそいつはハチの巣か数十キロの爆薬を抱えさせられて愉快痛快に爆破されちまう。そこに女も男も関係ない。この人はそれをまるで飯を食うみたいに平然と普通にするってんだから分かるだろ。如何にこの女がおっかないのかがなぁ。下手すれば第三次世界大戦すら起きるかもしれねぇ。そしたら嬉々とした面でこの女は戦争を堪能するだろうよ。

そんなおっかない女相手に話してるんだ。ビビるのは仕方ないだろ。

 

「それでだ。IS学園で学生らしく過ごしてるわけなんだが、そこにちょっとしたハプニングがあったんだ。世界で三人目のIS操縦者ってのは知ってるかい」

『一応はね。確かフランスのIS企業の跡取り息子だったわよね』

「そいつを聞いてアンタはどう思う?」

 

この問いかけに意味はないんだが念の為。これが世間の普通の女だったら凄いだの何だのとハシャぐところだが、この女ならそんなことには絶対にならない。

 

『下らないヤラセね。どんなにオツムがおバカな子供でも分かるくらいの出来レースよ。第一第二の発見から時間が経ち過ぎている上にそれがISの有名企業の跡取りでしかも代表候補生だったかしら。そんなあからさまに盛り過ぎな設定に疑わない方がおかしい。大方縁者か何かを男装でもしてIS学園に送ったって所じゃないかしら。目的はスパイ、対象は他の男性操縦者』

「流石は世界でも有数のマフィアの大幹部。あまりの正確さにちびりそうになっちまったよ」

『茶化すんじゃないわよ。しかもその出来レースにフランスも噛んでるって辺りがミソね。国ぐるみで間抜けな喜劇を踊るのは実に馬鹿らしいわね。それに振り回されてる人もきっと頭が湧いてるんじゃないかしら』

「違いねぇ。おかげで学園じゃ女子がキャーキャー騒いでるよ」

 

本当に何もかもお見通しなようで。でなけりゃホテルモスクワの大幹部は務まらないってね。

んで、ここからが本題だ。

 

「そこでだ。そのスパイをしている奴が実は不本意でやらされてるとしたらどうだ?」

『強制的にやらされていると?』

「シングルマザーだった母親は病気で先に逝き、実の父親に引き取られたがそこに親子の愛はなく、自分が愛人の子供だと教えられた上で正妻から泥棒猫の娘呼ばわり。そして運よくISの適性値が高いことから会社の非正規操縦者として雇われ、そして今回の茶番劇をやらされてる可愛そうな娘ってのがそのスパイの実態だよ」

『そうなの。でも、だから何だと言うの? そんな流されてきたような小娘をどうこうするような貴方じゃないでしょ』

「そう話をせかさないでくれよ。そんな悲劇のヒロインを助けようって王子様が現れたんだよ。そいつからの助けてくれっていう応援を受けて、こうしてアンタに連絡を入れたんだからよぉ」

 

オレはそこで少し咳払いをすると、真面目な感じで話すことに。

 

「別にオレは可愛そうなヒロインを助けようとは思っちゃいない。別にそこまで仲が良いわけでも恩義があるわけでもねぇからなぁ。だが…………こいつはかなりの金づるになると思ったからこそこうして一枚噛んでるってわけだ」

『そういうことね』

 

出来る女ってのは少し話しただけで10を察する。だから一々細かく説明する必要がないから楽なんだが、その分こっちの考えを何処まで読まれてるのかが怖いもんだ。

 

「だからこその商談だ。こっちの手札は『シャルロット・デュノア』っていうジョーカーが一枚。そしてこれが一番効果があるのはデュノア社だ。強請って搾り取れば連中はバレたくないって思いで金を吐きだすだろうさ。そこで強請るのをアンタ達に頼みたいと思ってる。オレはそういうのは得意じゃねぇのはアンタ等も知ってるだろ。こっちは傭兵、そっちはマフィアだ。この手の強請りは手慣れてるだろうからなぁ。こうして頼みに来たってわけだよ」

『やはりそうなの。確かにそれは良い金づるになりそう良い儲け話だけど、少し腑に落ちないわね?』

「どこがだい?」

『私の所に持ってくること自体がよ。別に私の所じゃなくても良いはずよね、それ。確か貴方には仲の良い中国マフィアの大幹部がいたはず。そちらに話を振ってもよかったんじゃないかしら?』

「あぁ、確かに若頭と仲が良いけど、今回の問題にゃぁ向かねぇから駄目だ。あいつは任侠だぜ。義理人情に厚いから、そんな可愛そうなヒロインの事を言ったら何も無しに助けそうだ。それじゃいけねぇ、この件に関し、こっちはヒロインの名前以外全部捨てるって決めてるんだ。ヒロインには新しい戸籍やら何やらとまっさらな状態で新しい生活を満喫してもらうつもりだ。だからそれに見合った代価を連中にゃぁ払ってもらわないとなぁ。そのために世界で有数のおっかないアンタにこうしてお願いしたってわけだ」

『あら、心外だわ。私はKGBやらじゃない限りは普通に相手をするわよ』

「遊撃隊を傍に控えさせて何言ってるのやら。普通に話しながらオレ等の眉間に銃突き付けるような奴が良く言うよ。まぁともかくだ。そんなわけで脅すのに最適なのがアンタ達ってわけだ」

『ふ~ん、そうなの。別にその話を乗っても良いけど、まずは報酬を聞いとこうかしら。場合によっては商談の決裂、なんてことにもなるかしらね」

 

その話にオレはにやりと笑っちまう。何せここまでくれば話はもう成功してるからだ。

 

「報酬だが、8-2でそっちが持ってっていい。2はそのヒロインの今後の生活の資金やら何やらに回すからよ。偽装屋や逃がし屋の依頼料も込みにしてくれるとありがたい。あぁ、あくまでもそれが最高ラインだから、絞りまくって出まくってもその程度だけで十分だからそっちが余った分も持ってっていい」

『あら、随分と大胆ね。そんな美味しそうな話に乗るのはやぶさかじゃないけど、一つだけ聞いてよいかしら?』

「何がだい?」

『随分とそのヒロインとやらに肩入れしてるようだけど、惚れでもしたの?』

「いいや、まったく。だが強いてあげるんなら、その王子様はオレのお気に入りなんだよ。馬鹿で一途で世間知らずだが、その分熱い男だ。しかもトラブル体質で毎回女関係でトラブルを引き起こす天才だ。見ていて爆笑できるくらい面白いのさ。そんな奴の頼みだ。ちょっとばかし良い子ちゃんになってもいいだろ」

 

その答えを言うと、向こうは何やら愉快そうに笑いだしてきた。

そして受話器越し立ってのにゾクっとくるような声で答えが返ってきたよ。

 

『まったく、以前ロックが日本で似たようなことがあった時に同じような事を言ったが、貴様はそれを人に任せて言う。自分では手を下さずに商談という手段で此方に手を汚させるか………ロックは悪党だが貴様のそれは偽善で偽悪で最低だ』

「結構だよ。そいつをオレは気に入ってるんだからよ。正義の味方にもなれないし悪人になり切るつもりもねぇ。小悪党ってくらいがオレには丁度良いのさ」

 

その答えに満足したのか、受話器から次の言葉が出てきた。

 

『いいだろう、貴様の茶番とやらに付き合おうじゃないか』

「よろしく頼むよ、バラライカさん」

 

 

 

 こうして商談が成立したわけだが、同時にこれから酷い目に遭うデュノア社には両手を合わせてやろうかねぇ。

まぁ…………。

 

「自業自得だろ。もう少しお脳を使って踊ること考えな、クソ会社」

 

そう言って手を合わせた。

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