だってあの人たち商談とかしないじゃないですか(笑)
さて、あの最悪の商談の後がどうなったかを簡潔に語ろうじゃないか。
いやなに、当人じゃねぇから詳しくはしらねぇよ。だが、聞きかじった情報でどうなったかくらいは想像できる。
だからこれからオレが話すのは想像上での話だ。事実がどうだったのかは細かくはわからねぇが、大方合ってはいると思う。だからそいつを皆には腹を抱えて笑いながら聞いてもらおうか。
何せこれから語るのは、間抜けと馬鹿が踊る喜劇なんだからよぉ。
その日、デュノア社はいつも通りに動いていた。
何、いつ何が起こるなんてそうそうわかるもんじゃねぇんでな。何か起こる前なんてそんなもんだろ。寧ろ予兆があるだけありがたいもんだろ、そういうのはさ。
社長はその日もいつもと変わらずに仕事をしていた。
偉い奴がすることなんて書類にハンコを押すか豪華な部屋で遊んでるかのニ択になりそうなもんだが、こいつはそれなりに真面目らしい。あんな間抜けな芝居を打つ割には仕事熱心なようで、今回も会社役員達と揃って何やら会議中のようだ。
そんな会議の中、一人の社員が何やら隠したいことがあるような、そんな雰囲気を醸し出しながら会議室に入ってきた。
当然会議中に何事かと突っ込まれそうなもんだが、それなりの地位の奴なんだろう。そいつが血相変えてきたもんだから、周りも何事かと思って黙り込んだ。
んでそいつの直の上司らしい役員の近くにそいつは寄ると、周りに聞こえないように小声でその情報を報告する。
そこからが面白いもんだが、今度はその役員の面が報告してきた部下と同じ青色になっちまった。二人揃ってブルーマンでも目指しているんかねぇ。
さて、そうなっちまった二人を見たら流石に他の連中だって気になるよな。
だから当然のように聞きたがりたくなるわけで、その役員は真っ青のまま社長に報告するわけだ。
「も、申し訳ありません、その……取り乱してしまい。急遽報告させていただきたいことが」
その内容が何なのか気になるのか連中は皆耳に意識を集中する。
「じ、実はIS学園に送った我が社のテストパイロットの事なのですが……」
ここでその話が出て話してる奴の顔は真っ青とくれば、もう大体分かってんだろ。
周りの連中は皆してバレたのかやら急いで身を隠そうかやらと相談し始めるわけだ。当然社長もそいつを聞いて気が気じゃないが部下の手前落ちつき払った演技をしねぇと余計な混乱を招くだけだからなぁ。ここはバレた場合も考えて、『送った書類に間違いがあったようだ。それは女性だ』とでも言って煙に巻けば良い。絶対に不審に思われるが、この間抜けな劇はフランス政府も一枚噛んでる。政府も一枚岩じゃねぇからなぁ。
だが、ここでその役員はさらなる爆弾を披露するのさ。
「その事について、『ブーゲンビリア貿易』を名乗る商社から『商談』があると」
その名を聞いて最初は何だって面をする周り。
まぁ、この会社の名前自体ただのカモフラージュでそこまで目立った業績もあげてないからなぁ。表の企業の人間にゃぁわからねぇ。
だが、少し調べればすぐに分かることだ。きっとガキだってネットを使えば分かるくらいそいつは簡単だろう。
その答えを吐けば、周りの連中の面がどうなるのかもだ。
「何者だね、その会社は?」
社長からの問いかけにそいつは震えながら答える。
「………ろ、ロシアンマフィアです。東南アジアから中国マフィアを追い出し、裏社会のトップに躍り出ようとしているその世間向きの顔がそれだそうで………」
その答えを聞けばもう大変だ。
連中はこれでも一応は大企業の人間だ。そんな人間なら、『マフィア』というものが如何にヤバいものなのかは良く知っている。裏の権力ってのは表にすら容易に関与するからなぁ。
その答えに流石の社長も顔を青くしたらしい。
何せごまかしが効く相手じゃねぇからなぁ。こういった連中はすみませんでしたじゃすまされないってのは当たり前だ。
そして同時に何でそんなヤバいもんにバレたのかを考えるが、その答えは社長じゃ考えつかねぇ。悪いね、社長。ちくったのはオレだよ。
そして社長は震える手でどうにか内線に手を伸ばし、世界一おっかない女の電話にでるわけだ。
『初めまして、デュノア社社長。こちらはブーゲンビリア貿易の代表、ヴラディレーナと申します。この度は御社のしている事に関して少々お話がありまして連絡させていただきました』
丁寧なキャリアウーマン口調ってのはあの御人の仕事時の喋り方だが、それでも怖いもんは怖いもんだ。
何せ素人でも身体が震え上がるくらいだからなぁ。
そして始まるのはどこにでもある商談って名の脅迫だ。
『いけませんね、IS学園にスパイを送り込むのにそんな間抜けな演技をさせては。お陰でこうして私たちは良いネタを手に入れたわけですが。こちらには全世界にその真実を打ち上げる準備ができていますわ』
「そ、そのような事実はない! 何を根拠に」
『こちらにはIS学園に知り合いがいるので、その伝手で。なんでしたら本人の告白映像を送りましょうか。証拠として撮ってあるので』
「ぐぅっ!」
電話を出てる社長がそりゃぁもう見事なまでに取り乱してるんだから周りも困惑するさ。挙句は社長の奥さんまできち待って一緒にお怒りのご様子で電話に出た。
「こんなことして良いと思ってるの! こっちには」
そこから始まるのは女尊男卑が一杯詰まった自慢話。社長も奥さんの前には強く出られないようで引っこんでる。
だがねぇ………本当に怖いのはどっちなのか、この後奥さんははっきり理解することになるよ。
『あまり小煩く囀るのもいい加減にしろ。こちらは貴様等を好きなように出来る。その気になれば会社をすべて潰して貴様を場末の娼館に叩きこむことだって簡単だ。なんなら此方で経営しているアングラポルノに出演させてもいい。高慢ちきな女がピーでピーにピーしてる変態に貪られているのを好む変態もこの手の業界には多くいるのでな。その代わり生きたまま壊れて廃人決定だが。それが出来ると言うことがどういうことかを理解したまえ。今のご時世とやらに胡坐をかき持ってもいない権威に意を借る豚め。醜いのは見た目だけにしてもらいたいものだな。こちらは貴様等を好きにできる。生かすも殺すも自由にだ。その上で考えてもらいたい。我々の商談に応じるか、会社の命運をすべて落とすかを』
流石はおっかない女の世界ランカーだ。こうまで言われて黙らない人はいないだろうねぇ。オレなら真っ先に逃げ出してるよ。
そして最後の決め台詞。
『では、より詳しい話をしたいので後日フランスの○○に来ていただきましょうか。十分なおもてなしをさせていただきますので。では』
その言葉は丁寧だが、裏を返せば『逃げることは許さない。逃がすことは絶対にない』ってことだ。
もうギロチンの刃は振りあげられちまった。
斬首の刑に処されるであろう社長と夫人はそりゃもう真っ青な顔から真っ白になって崩れ落ちたってわけだ。
これはあくまでも予想だ。
だがはっきり分かることは、きっとこれ以上酷いことになったのは確実ってことだ。
何せ……………テレビでそれが事実だってことを報道してるからなぁ。
『デュノア社大暴落! 判明した巨額な負債! 会社は倒産し職を失った人たちが!』
そんな報道を朝飯を食いつつ見てると、デュノアはそれを見て持ってた飯を床に落としてたよ。
いや、まさに………愉快爽快ってやつだな。