俺、織斑 一夏は疲れ切っていた。
何が何やらでIS学園に入学させられた俺だったが、女子達の視線に辟易していた。
幼馴染みの箒がいることが唯一の救いだったが、それでもこの空気はきつい。
そんな風にへばっている俺の目の前にそいつは現れたんだ。
栗色の短髪に翡翠色の瞳、歳と身長は俺と同じくらいだが纏っている雰囲気は今までにあったことの無いものを放つ男に・・・・・・
自己紹介を終えてさっそく今時の人で有名な織斑 一夏に話かけてみた。
「お前さんが今一番話題の織斑 一夏か、よろしく頼むぜ」
友好の証ってことで握手を出すが、目の前の奴はその前の紹介のせいで戸惑ってやがる。
「そう警戒すんな。自己紹介のときにも言ったが、俺ほど無害な人間はそうはいないぜ・・・・・・手ぇ出されなきゃ何もしねぇよ」
「そ、そうなのか・・・・・・それじゃよろしく、織斑 一夏だ」
やっと握手に応じてくれた。
「おう、レオス・ハーケンだ。まぁよろしく頼むぜ」
見ててさぶいぼが立つくらいにさわやかな笑顔を浮かべやがる。見てて内心引いちまったよ、まったくまぶしいね~、これが若さかってか?
その後普通に話してみるが、なんとまぁ良い好青年ってやつか。周りの女共が熱い視線をこいつに向けてくるのが嫌ってほどわかる。
俺はこいつのことを勝手にイチカと呼ぶことにさせてもらった。
「んで、イチカよぉ、何でお前さんはこんな学校に来たんだ?」
「それがさぁ、受験の時に受ける学校の名前を間違えたらしくて会場を間違えてさぁ。そこにあったISを触ったら動いちまったんだよ。そこを人に見られたんだ」
「ちなみに聞くがよぉ、IS学園と似た名前なんてあったのか?」
「藍越学園と間違えた」
そう言うイチカをさっそく笑ってやった。
「どう聞き間違えたらそんな間違えすんだよ、バッカじゃねえのか。そんなもんはよぉ、ラーメンを中華料理だと勘違いしてるくらいアホなことだぜ」
「え、ラーメンって中華じゃないの!?」
この答えで俺の評価の中にイチカはアホだと記入された。
「つーかそっちはどうしてこんなとこ来たんだよ。俺と大差ないんじゃないのか?」
「お前みたなアホな理由じゃねぇのはたしかだな」
随分と聞きたそうにしているこいつのために話してやるとするか。
「俺の時はなぁ、依頼で判明したんだよ」
「依頼?」
「ああ、どこぞの会社が新しくISの開発をするってんで国からISを預かったんだけどなぁ、ところがこいつらは大層な間抜けでISを盗まれやがったんだ。それを取り返すのに俺達に依頼が来てさっそく仕事に取りかかってよぉ。その間抜けからぶんどったISを大事に大事運んでるところを狙って全員殺して盗んだもん取り返したってわけだ。それでそのぶつを渡す際に興味から触ったら動いちまってなぁ、それで今こうなったわけだ」
「そうなのか・・・・・・それじゃ俺みたいにあっちこっちから勧誘を受けて大変だったんじゃないか?」
「い~や、俺にはそんなもんまったくこなかった。俺はお前さんと違って働いてるからなぁ、社会人は学生より忙しいんだよ」
実際には俺にへたに近づこうとした奴を片っ端から見せしめ代わりにさせてもらっただけなんだけどな。滅茶苦茶になったオブジェをみたら連中はビビって近づかなくなったってわけだ。俺はさっきから言ってるが、『手を出されなきゃ無害だってな』
「んじゃなんでこの学園に来たんだよ?」
「そりゃ愚問って奴だぜイチカ。傭兵が使えるものがあるのに使わないなんて選択肢はねぇよ」
戦場じゃあ使えるものは何だって使わねぇと生きていけぇよ。
ISは軍事に使っちゃいけないなんて言っちゃいるが、そんな建前を守ってる国なんてそうそうねぇ。それこそ世界から戦争が無くなるってくらいねぇことだ。まぁ、無くなったら困んのは俺達傭兵だけどな。
「俺は自分から学びにきたってわけさ。ただ、そのことにIS委員会やら各国のお偉いさんが嫌な顔したってわけ」
「まぁ、危険だと思われてるわけだしな」
「まったく失礼だぜ、俺はただ仕事を確実にこなしてるだけの依頼成功率百%の傭兵ってだけなのによぉ」
そうふざけるとイチカの野郎は苦笑していやがった。
依頼成功率百%なのは本当のことだ。ただその依頼の殆どが戦争をしろってのが多かっただけだけどな。
「ちょっといいか」
そう俺達は声をかけられて振り向くと、そこには身長が高めの女が立っていた。
「ああ、箒。どうしたんだ」
「い、いや、その・・・・・・屋上までちょっとこい」
そう女は言うとイチカを連れて行きやがった。しっかし見るからにアレは『恋する乙女』な顔してやがんな、見てて丸わかりだ。お相手はイチカか、あいつはモテそうだからなぁ。
そうしてイチカは教室からいなくなったが・・・・・・
あいつと違って俺に話かけてこようとする奴はいねぇみたいだ。
あいつにも話かけては来なかったが、あいつとはまったく雰囲気が違うねぇ~。
こっちを見てはひそひそ話しちゃいるが、そのどれにも恐怖で満たされた感情が感じられるぜ。
目が合ったやつから顔を青ざめさせるしよぉ、まったく悲しいったらありゃしないぜ。
そう思いながら俺はチャイムが鳴るまで席で一人座っていた。
あぁ、たばこが欲しいぜ、まったく。
この学園に来るに当たって酒もたばこも没収されちまったし・・・・・・
暇だな、マジで。