恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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気がつけばお気に入りも500を突破していました。
感謝しても仕切れないですよ。


第三十三話 大人らしい後始末の仕方。

 爺さんに頼まれた仕事も終わってお嬢様の所に戻ると、お嬢様は興奮した様子で迎えてくれたよ。

 

「よぉ、終わったぜ。まったく、爺さんはいきなりなんだから聞くこっちとしてはたまったもんじゃねぇなぁ」

「お疲れ様でした、レオスさん! 格好良かったですわ!」

 

お嬢様は興奮で顔を真っ赤にしながら俺を見つめてきた。

いや、そう見つめられちまうと照れるねぇ。

 

「そう褒められるとこそばゆくて仕方ねぇなぁ」

「そうですの。レオスさんは褒められるのが苦手ですのね。うふふふふふ」

 

お嬢様はそう言うと、何やら楽しそうにオレを見て笑う。

何だか弱みを握られたような気がしなくもねぇなぁ、こいつは。でも、悪い気はしねぇよ。

そのままオレはお嬢様と一緒にイチカのところに行くと、イチカは子ウサギを抱えて様子を見てるようだ。

子ウサギはどうやら気絶してるらしい。こうして寝てるところを見れば、人形みてぇに可愛いもんだがねぇ。起きたら起きたでどうせオレ等のことを睨んで来るんだから、しばらくは寝ていてもらいたいもんだ。

 

「イチカ、その子ウサギをどうするんだ?」

 

そうイチカに聞くと、イチカは子ウサギをお姫様抱っこしながらオレに答えた。

その面は何やら優しいって感じの笑みを浮かべている。オレには絶対に出来ねぇ面だな。

 

「ああ、保健室まで運ぶよ。このままにはしておけないからな」

「流石はクラス一の色男だ、お優しいことだねぇ。オレには絶対に真似出来ねぇよ」

「またそういうことを言う。それよりも悪かったな。まさかまだ動くとは思わなかったんだ」

 

さっきの事について謝ってきたが、別に謝られるような事でもねぇしな。

 

「別に謝るようなことじゃねぇよ。これも『お仕事』ってもんだからな。謝るくらいなら、もうちっとは詰めねぇとなぁ。そんなんじゃいくら命があっても足りねぇよ」

「わかったよ。だからそこまで言わないでくれ」

 

そう言ってイチカは子ウサギを保健室へと運ぼうと歩き始めた。

だが、イチカ。お前さんはやっぱりわかってねぇなぁ~………

お前さんにすっげぇ怒りの視線を向けている二人が後ろにいるってことをよぉ。

どうせこの後また騒ぎになるんだろ。出来ればそいつを眺めてぇところだが、まだ残業ってやつが残ってるらしい。

つくづくサラリーマンってのは大変だ。

 

「レオスさん、この後はどうしますの?」

 

そんな風にイチカを見送っていたら、お嬢様が聞いてきた。

どうせこんな騒ぎの後だ。タッグマッチは中止だろうよ。

どうせ今日はその後の事後処理で手一杯だろうから、データ取りも兼ねて一回戦だけ後日執り行うってところじゃねぇか。

となれば時間が空いているので、是非ともお嬢様と夕飯を食いたいことだが、そう言うわけにもいかねぇんだよなぁ。

お嬢様は顔を赤くて聞いてきたが、その期待に応えるのは難しいぜ。

いつもならそのまま誤魔化してたんだが、せっかく今日はお嬢様が頑張ったんだ。

今日くらい応えてもいいだろ。それに毎回あの爺さんと面突き合わせるのは精神衛生上よくねぇからなぁ。たまには癒しが必要だ。

 

「どうせこの後は試合もねぇんだし、そのまま帰って夕飯と行きてぇところだが……悪いな、お嬢様」

「そ、そうですの……」

 

先に言おうとしていたこと断られたんで、お嬢様の顔が暗くしょぼくれる。

とは言え、今回はそれだけじゃないぜ。

そのまましょぼくれるお嬢様の頭に手を置くと、くしゃくしゃと撫でることにした。

 

「キャッ!? いきなり撫でないで下さいな!」

「だから……少し夕飯は待っていてくれよ。少し用事を済ませたら行ってやるからよ」

 

そう言ってやった途端に、お嬢様の顔がぱぁっと明るくなって嬉しそうな笑みに変わった。

 

「は、はい! 私、レオスさんが来るまでずっと待っていますわ!」

 

お嬢様は嬉しさを顔を紅潮させて元気よく返事を返してきた。

やっぱりこういう笑顔は心が和むねぇ。

 

「ってなわけだ。お嬢様はもうちょっと待っててくれよ。んじゃな」

 

そう言ってお嬢様と別れたオレは、チフユ達に騒がれる前に爺さんの所へと向かった。

 

 

 

 そんな訳で理事長室の扉をオレは遠慮無くノックする。

 

「爺さん、いるんだろ?」

「ええ、入って下さい」

 

爺さんがそう返事を返すと共に、オレは扉を開けて部屋へと入った。

爺さんはいつもと変わらねぇ笑顔で手前の席に座っていたよ。

 

「やっぱり来たのね」

 

その近くのソファには会長さんが座って茶飲んでいるみてぇだぜ。

オレはそのまま会長さんの向かいのソファにどかりと座って爺さんの方を見る。

 

「んで爺さん。何でオレが来たのか……わかってんだろ」

「ええ、分かってますよ。何から聞きますか?」

 

爺さんはニコニコと笑いながら話す。

そいつを聞いてから、会長さんが早速爺さんに聞いてきた。

 

「現在の状況を教えて下さい。どうなってるんですか?」

 

それはこのタッグマッチトーナメントの状況を聞いてるんだろうな。

まぁ、どうせオレの予想通りだろうし、会長さん自身も分かってるんだろよ。これは単なる確認だな。

それともう一つ。

やはり子ウサギのISから出てきた『黒いやつ』のことだろうよ。

あれが何なのか? 流石にこいつは見当がつかねぇなぁ。

聞かれた爺さんはそのまま笑いながら答えた。

 

「そうですね。取りあえずトーナメントは中止です。ですが、ちゃんとしたデータも取らなければならないので、全生徒の一回戦は行いますよ。それとあの騒動の大本は彼にお願いして鎮圧してもらいましたから。まぁ、ちょっとやり過ぎだったので機体は殆ど壊れてしまいましたが。コアは辛うじで大丈夫だったので何とか分かりましたが」

「そうですか」

 

会長さんはそれを聞いて大体分かったらしい。

さすがは対暗部用暗部の面目躍如っつったことか。

んじゃ、次はオレの番だねぇ。

 

「んじゃ今度は爺さん、オレの番だな。オレが聞くことと言やぁ一つしかねぇ。爺さん……あの子ウサギのISから出てきた『黒いやつ』は何なんだ。何か日本のISみてぇな形になってたみてぇだったけどよぉ」

「はい。それについてなんですが……どうもあのISには『ヴァルキリー・トレース・システム』が詰まれていたことが分かりました」

「ヴァルキリー・トレース・システム? 何だ、そりゃ?」

 

その疑問に爺さんが笑いながら説明を始めた。

要約すりゃぁ、つまり初代『ブリュンヒルデ』の……チフユが現役だったときの動きを再現する物らしい。世界大会の優勝者の強さをまんま発揮できるってのは心強ぇだろうよ。勿論、そんなチートが認められるわけもねぇってんで違法らしいが。

成る程ねぇ。あの子ウサギはチフユに心酔してるからなぁ。システムにも発現させ易いってわけだ。

その説明を終えた後、爺さんは困ったような笑みを浮かべた。

 

「それで困ったことがあるんですよ」

「困ったことですか?」

 

会長さんが気にして聞き返すと、爺さんは苦笑しながら答えた。

 

「いくらIS学園が基本他の勢力からの影響を受けない場だとは言え、それでも完璧ではないですからねぇ。いくら騒動を治めるためとは言え、その原因のISをコア以外全損させてしまったのはまずいですね。この事はすぐにでもドイツに知られてしまいますから」

「確かに……まずいですね」

 

会長さんはそれを聞いて深刻そうな顔になった。

 

「いくら何でも原因を攻められて、下手すればISを寄越せとも言い出しかねないですから」

 

まぁ、確かにお宅の家に預けたら死にかけになりました、何てことになったらそりゃあ責められるだろうよ。

だ・が・生憎ジョーカーはこっちにあるんだよなぁ、これが。

 

「爺さん、そいつについては安心しな」

 

オレの言葉を聞いて爺さんは不思議そうにしてきた。

それに会長さんも何か案があるの、て感じに顔を向ける。

 

「何か良い案でもあるんですか?」

「ああ、ドイツ軍とは少し付き合いってモンがあるからな。無茶な要求をしてきたらこう言えばいいのさ『レオスが言っていたんだが、お宅のデーゲンハルト・ブランク中佐の『秘密のお花畑』のことを世界各国にちくります』てよ。こう言えば奴さん、黙り決め込むだろうさ。何せバレりゃあ世界中から叩かれるネタだからな」

 

それを聞いた爺さんは愉快そうに笑ったよ。

あぁ、これで『善良』な軍人が可哀想な目にあうんだろうと思うと、涙が出てくるねぇ。

 

「君は本当に怖いですねぇ。あまりそうやっていじめちゃ駄目ですよ」

「そう言う爺さんだって、あまり絞ったら中佐が可哀想になるから手加減してやるんだぜ」

 

そう言って二人で笑い合ってると、会長さんはまるで怖い悪魔を見るような目で見てきやがった。全くもって傷つくねぇ。

これもまぁ、自業自得が原因ってことだ。中佐はよく学んで貰いたいもんだ。

 その後は細かい話をした後、オレはソファかた立ち上がった。

 

「あれ? 今日は飲んでいかないんですか?」

 

爺さんの問いにオレはニヤリと笑って答えた。

 

「今日は頑張ったお嬢様と一緒に夕飯の約束してるんでな、酒くせぇと白い目で見られちまうから、悪いな」

 

そう答えると、オレは理事長室から出た。

その後ろから爺さんが笑っていた気がしたが、気にしないことにする。

さて、これからお嬢様と夕飯だ。

腹黒い話をした後は、さっぱりとした清涼剤が必要だぜ。

オレはそう思いながら、歩く速度を速めた。

 

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