恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回はセシリアとのデートです。



第三十九話 お嬢様とのデート

 そろそろ臨海学校が近いってんでクラスの奴等はその話題で持ちきりだ。

浮かれた空気が教室内を満たしてるんだが、オレとしても何とも言えねぇなぁ。何せもう一回行ってるんでね。まぁ、遊びに行くのにはしゃぐような歳でもねぇが。

そんな空気はお嬢様も同じらしい。

お嬢様はクラスの奴等と話していて嬉しそうにしていたよ。聞いた限りじゃ、今まで大人数で泊まり込んだりしたことがないんだとさ。

初めての事に興奮するお嬢様ってのもいいもんだ。前も言ったが、人間、新鮮な刺激を受けねぇと腐っちまうからねぇ。

大人数で泊まったことはないのかだって? おいおい、そいつはオレにとっては毎度の話だぜ。

戦場じゃぁ個人で動くことが多いが、基本は団体行動なんでなぁ。いつも泊まる先じゃ大体一緒だったよ。

違いがあることを言りゃあ同年代の女の子なのかムサい野郎どもなのかの違いだろうさ。

そんな風にお嬢様も楽しみにしている日が近づいて行く中、最後の休日の前日にそいつは突然来た。

 

 

 

 

「あ、あの、レオスさん! お願いがあるのですが…」

 

自室でいつもと同じように『オルトロス』の整備をしていたら、帰ってきたお嬢様がいきなりそんなことを言ってきた。

 

「おいおい、お嬢様。帰ってきて早々どうした? 何かあったのか?」

 

いつもみてぇに軽い感じで聞いてみたんだが、どうもお嬢様にとってはいつもじゃねぇらしい。顔を真っ赤にして必死な感じになってた。

どうやらお嬢様にとって真面目で大変なことらしい。こいつはちゃんと聞かねぇとなぁ。

 

「は、はい! あ、あのっ……明日のお休みは空いていますか?」

「明日? 別にいつも空いてるよ。特に何もねぇしなぁ」

「そ、そうですの! よ、良かったです…」

 

お嬢様は安心したようで、心底ほっとしたって面になった。

こう表情がコロコロ変わる所ってのは見てて面白れぇもんだ。

 

「それで? お嬢様はこんな暇人に何用だい?」

「あ、はい。あの、あ、明日っ…一緒にお出かけしませんか!」

 

顔がそれこそ熟したトマト並に真っ赤にしてお嬢様がお願いしてきた。

そこまで必死にお願いされたんなら、断るわけにはいかねぇなぁ。

 

「ああ、別にいいぜ」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

答えるとお嬢様は満面の笑顔って奴を浮かべた。

まぁ、オレもたまには出かけねぇとなぁ。お嬢様と出かけたこともネェし、たまにはいいだろ。

そう思いながら、オレは止めていた手を動かして再びオルトロスの整備を始めた。

オレの後ろからは、明日出かけることにご機嫌満々なお嬢様の鼻歌が聞こえ始めていた。

 

 

 

 それで翌日。

オレは待ち合わせの時間に合わせて駅前に向かっていた。

別に同じ部屋に住んでんだから一緒に向かえばいいと思うところだが、そこはお嬢様の乙女心が許さねぇんだとさ。

結構な剣幕で待ち合わせの時間と場所を指定されたよ。

あん時のお嬢様ときたら、チフユ並に凄かったぜぇ。正直感心したよ、本当。

どうせ周りの奴等にはオレが今出かけている事なんてバレてるだろうが、流石に表立ってくる馬鹿はそうはいねぇからなぁ。変な所さえ通んなきゃ、仕掛けてはこねぇだろ。

もしオレがマフィアだったんなら、そりゃぁ国際警察機構にでも追っかけられてるんだろうが、お生憎様オレはこれでもちゃんとした会社員だ。追っかけられる理由はねぇ。

つまり今日は一応『安全』ってわけだ。大手を振って歩けるってのはやっぱりいいねぇ。

それで待ち合わせ場所に近づいてみたら、何やら騒がしいじゃねぇか。

野次馬ってのは嫌いじゃないんでね。覗いてみるとしますか。

 

「ねぇねぇ、そんな奴より俺達と遊んだほうが絶対に楽しいって」

「そうそう。俺、おしゃれなバーとか知ってるからさぁ」

「しつこいですわよ! 私は行かないと言っているじゃないですか!」

 

あれま。どうにも聞き覚えのある声だと思ったら、ウチのお嬢様じゃねぇか。

それで周りにいるのは、如何にもチャラけたお馬鹿が二人ねぇ。

 

「くぅ~、まさにお嬢様って感じがそそるねぇ~」

「ほら、せっかく可愛い顔が台無しになっちまうよ。俺達はただ君と一緒に遊びたいだけなんだからさ」

「さ、触らないで下さい!!」

 

さてと。そろそろお嬢様を助けねぇとな。このままズルズルいったら警察沙汰かお嬢様の貞操がピンチになっちまうからな。

そいつは……気にくわねぇ。

オレはそのまま野次馬をかき分けると、お嬢様の前まで来た。

 

「あ、レオスさん!?」

 

お嬢様はオレの姿を見て目を見開く。

まさかこんな状態の時に来るとは思ってなかった面だ。

 

「あ、何だ手前!」

「この子の知り合いか?」

 

どうやらナンパを邪魔されたってんで噛み付いてきた。

元気が良いのは良いことだが、吠える相手ってのは見極めねぇといけねぇなぁ。

 

「ウチの身内に何用だ? お生憎、もう待ち合わせの相手も来たんでな。来るまでの暇つぶしをしてくれた礼にコーヒーくらいは奢ってやるからとっとと帰りな、モンキー」

「「なっ!?」」

 

ちょっかいかけてた二人の顔が一気に真っ赤になっていく様子は、リトマス紙の色が変わるみてぇな感じだ。中々に見物だよ。

日本人を挑発するんなら、やっぱりこの常套句は効くねぇ~。とくに頭の中が春まっさかりの発情期な雄にはなおさらなぁ。

 

「ふっざけんなじぇねぇよ、この外人がぁっ!!」

「この糞がっ! 死ねよ、手前ぇ!」

 

おうおう、さっそく入れ食い状態だ。

IS学園じゃ感じられない怒気ってもんが肌を刺激するねぇ。

 

「レオスさん!!」

 

お馬鹿二人が飛びかかってくるのを見て、お嬢様がオレに声をかけてきた。

やっぱり美少女に心配してもらえるってのは嬉しいもんだ。

だが、お生憎様。心配には及ばないのが、悲しい所だ。

そのまま懐から電子タバコを取り出して咥えると、一吸いする。

 

「少しは落ち着いた方がいいんじゃねぇか。速い奴は嫌われるぜ」

「うっせんだよ! オラァッ!!」

「死ねやぁあああああああああああ!!」

 

襲いかかって来たアホの一人の拳を身を逸らして躱し、その伸びきった腕を引っ張ってたぐり寄せると、アホの後頭部に手を回して足払いをかける。そのまま体勢を崩したアホの頭を地面のアスファルトに叩き付けた、

その瞬間、何かが潰れる音が聞こえたが、俺に取っては聞き覚えのある音だ。今更何も感じはしねぇ。

そして蹴りを出して来たアホにはそのまま右手でキャッチすると共に開いた左腕を使って肘を関節狙って放つ。

結果アホの膝が砕ける感触を感じながらオレは右手を離すと、一気にアホの眼前まで間合いを詰めてそこからアッパーを放った。

拳から顎が砕ける感触が伝わり、ついつい笑みを浮かべそうになるのを堪えながら振り抜きゃぁ、残ったアホはそのまま身体を宙に浮かせて近くの街路灯のポールに激突して落っこちてきた。

 

「だから言ったのになぁ……速いと嫌われるってなぁ」

 

アホ二人の意識はねぇようだ。

そいつを見終わった後、オレはそのままお嬢様の元には向かわず、野次馬をしてた奴の一人に話しかける。

 

「あ、そうそう、そこのお兄さん」

「え、俺!?」

 

目の前で起こったことに理解がおいつかねぇようで、惚けてた奴に俺は笑いかける。

結構手加減しつつもバレねぇようにしたからなぁ。

ぱっと見じゃこけて顔面打ち付けたアホと間合いを詰めたオレにビビって後ろに飛び退いたときに街路灯のポールにぶつかって気絶したアホにしか見えないだろうよ。

 

「悪いけど救急車呼んどいてくれよ。このアホども、『勝手にこけた』から怪我しちまったようなんでなぁ」

「あ、ああ……」

 

そのままオレはお嬢様の方へと向かうと、驚いているお嬢様の手を繋ぐ。

 

「キャッ!? レオスさん!」

「待たせたな、セシリア。それじゃぁ、デートに行こうぜ」

 

そう言ってお嬢様の手を引っ張りこの野次馬から抜ける。

このまま留まれば碌なことにならねぇからなぁ。

 こうして、オレとお嬢様のお出かけは始まった。

手を繋がれたお嬢様は顔が真っ赤になっていたような気がするな。

 

(れ、レオスさん……格好良かったですわぁ。まるでカウボーイみたいでした…キャッ)

 

 

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