恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回はセシリアとレオス、別々に動きます。


第四十六話 女の子は恋バナ、男は……

 夕食になり、セシリアは本格的な和食を楽しみにしながら大広間へと来ていた。

全一学年分の食事が置かれている大広間の光景は圧巻であり、その光景を見た生徒達は更に夕食への期待を高めていく。

そんな中、セシリアはレオスの姿を探すもその姿は見えず。

同じ男子である一夏へとレオスを知らないか聞いてみる。

 

「すみません、織斑さん。レオスさんを見ませんでしたか?」

「え、レオスか? いや、俺は知らないかな。アイツの部屋も知らないし。千冬姉なら何か知ってるかもしれない」

「そうですの…」

 

期待していた答えを聞けなかったことにセシリアは少しがっかりしつつも、今度は千冬の元へと向かう。

 

(レオスさんと御夕飯を一緒に……そして……うふふふふ)

 

夕食をレオスと一緒に取っている光景を妄想し笑うセシリア。

恋心を胸に秘めた乙女故の行動。傍から見ればニヤニヤと笑い出した不審者にしか見えない。

しかし、セシリアはそれを気にするような事は無く千冬に話しかけた。

 

「織斑先生、レオスさんが来ていないようなのですが、何か御存知ありませんか?」

「ハーケンか? いや、私も詳しくは知らされていない。ただ旅館側は奴の分の夕飯は用意しなくて良いと言われているらしくてな。なので奴の分の食事はない」

「な、何でっ!? レオスさんは体調がよろしくないのでしょうか?」

 

レオスの夕食がないということにレオスの体調を心配するセシリア。

その様子に千冬は申し訳無いといった感じに答えることしか出来ない。

 

「すまないな。奴に関しては私よりも学園長側の方がよく知っていて、私では判断し辛いんだ。だから何でアイツが夕飯を断ったのかわからないんだ。部屋に行ってもいなかったしな」

「そ、そうですの………」

 

今度こそ本当にがっかりと肩を落とすセシリア。

しかし、いつまでもそうしていられないと気を取り直しレオスが食べれない分、楽しもうと決めた。

そう思いながら席に付き、皆が揃うまで夕食に胸をときめかせていた。

 

 

 

「あぁ~、今頃夕飯ってところだな」

 

そんな事を呟きながら辺りを見回せば、辺りは真っ暗な森ん中。

現在オレがいる所は旅館から少し離れた森だ。これが普通の学生ってんなら、今頃みんなと一緒に御夕飯って感じになるんだろうけどねぇ。残念ながらこっちはサラリーマンだ。お仕事開始の時間ってもんが迫ってるんでこうしてスタンばってなきゃならねぇ。

そんなわけでオレは持ってきておいた非常食のブロックを囓る。

 

「この粘土みてぇな食感と妙に甘い感じは相変わらずだなぁ。まぁ、しかたねぇか」

 

相も変わらず不味い味だが、慣れれば中々にイケるもんさ。

そいつを囓りながら辺りに気を配るが、まだお客さんが来る気配はねぇ。

出来ればすぐにでも満員御礼でおもてなしさせて貰いてぇところだが、上手くいかねぇのが世の中ってもんで連中は中々に尻尾をださねぇ。

まぁ、いい。ゆっくりと待たせてもらうさ。

 

 何せ時間は腐るほどあるんだからよぉ。

 

 

 

 夕食が終わったセシリアはその美味しさに上機嫌になりつつもレオスの姿を探し旅館を探索し続ける。

しかし、レオスが一向に見つからない。

昼間会って以来全然会っていない。その姿が見えないことにセシリアは不安に襲われる。

レオスがどこかに消えてしまったのではないか、と。

あのふてぶてしくも過激的で優しい、妙な男は気がついた時にはいなくなってしまっていてもおかしくない。

その妙な恐怖がセシリアを突き動かしていた。

そして探し続けていると、奇妙な物を見つけた。

 

「あれは……何なのでしょうか?」

 

セシリアの視線の先にあったのは、旅館の一室の襖にへばり付いている同級生、箒、鈴、シャルロット、ラウラの四人の姿であった。

皆何かに集中しているのか、息を呑んで襖に聞き耳を立てている。

 

「あなた達、一体何をしていますの?」

 

不審者にしか見えない四人に白い目を向けるセシリア。

普段はそんなことをする彼女ではないが、今の四人の行動を見れば誰でもそんな目を向けたくなる。

 

「あっ、セシリア!?」

「ちょっ、ちょっとあんた、黙ってなさい!」

 

見つかったことに焦り顔を真っ赤にする四人。

だが、その赤さはただ驚いただけではないようだ。その証拠に襖の奥から、何やら妙に艶めいた声が聞こえてきた。

 

「んっ……あ、あんっ……んくっ……ん~~~……」

 

そしてセシリアは何故四人がこんな所にいてこんなことをしているのかを理解した。

つまりこの部屋の中にいるのは、彼女達の想い人である『織斑 一夏』であるということ。そしてこんな聞いてて恥ずかしくなる程の艶めいた声を出しているのが誰であるのかということを。

その途端にセシリアの顔も真っ赤になった。

彼女の周りにいる少女達同様色恋に興味が大いにある十五歳の少女。

『そういうこと』にだって当然興味はある。

そして襖の先にあるであろう『そういう光景』にドキドキし始めてしまった。

それを見破られたのか、鈴から悪い笑顔で誘われた。

 

「ねぇ、セシリア……このまま黙っててくれるなら……一緒に聞かない?」

「そ、それは……」

 

どう考えても悪いお誘い。

だが、多感で興味が大いにあるセシリアにはその誘惑に抗い辛い。

別にこの四人の想い人に想う所があるわけではない。彼は友人であり、そういう対象ではない。

だが、生の『そういったこと』をしているというのは、想い人でなくても興味が出てしまう。

しかもその相手が相手なら尚更のこと。

その禁断の関係というのは年頃の少女にとっては甘美な猛毒にしか感じられない。

だから……

 

「……はい………」

 

セシリアは自分の選択に恥じらいながらもこくんと頷いた。

それを見た鈴もニヤリと笑う。

 

「御主も悪よの~」

「そ、そんなことは…………」

 

そう返しつつもセシリアも四人に習って襖にくっつき聞き耳を立てる。

 

(あぁ、いけませんわ! で、でも、やっぱりこういうのは気になってしまいます……)

 

イケナイことをしているという意識が更にセシリアの意識を集中させる。

そしてその声を聞いていて熱くなってきた身体の火照りを感じつつ、頭の中でレオスとの『そういう』ことを妄想してしまう。

顔は真っ赤になっていき、目は潤んでいく。

その姿は周りにいる四人が見ても艶っぽかった。

そしてより聞こうと五人は襖に密着しようとした途端……

 

襖が突然開いた。

 

結果五人は雪崩のように部屋に崩れ込む。

その姿を見て千冬は呆れたような顔をし、一夏は驚いていた。

 

「何をしているんだ、お前等は? それにオルコットまで一緒になって」

「す、すみません……」

 

イケナイことをしていた罪悪感と恥ずかしさから素直に謝るセシリア。

四人は即座に逃げようと動いたが、千冬の神業的な速さで取り押さえられていた。

そして五人は部屋に入れられ、一夏と千冬が何をやっていたのかを聞かされる。

自分達の誤解に恥ずかしくなり真っ赤になる五人。

そんな五人を見て千冬は一夏に風呂を勧め部屋から追い出すと、備え付けの冷蔵庫から五本の飲み物、そして缶ビールを取り出して配っていく。

それが皆に廻るのを見た後、手に持った缶ビールのプルタブを開けて一気に煽った。

その普段から考えられない姿に唖然とする五人を見て、千冬は面白そうに笑う。

そしてニヤリと笑いながら五人に話しかけた。

 

「さて、前からお前達には聞きたいことがあったんでな。この際聞いておこうと思う。そのためにアイツには席を外させたし、奴はいないしな。女だけなら気兼ねなくいえるだろう、さぁ、聞かせろ……」

 

そうして千冬と五人による、一方的に赤裸々は『恋バナ』が始まった。

 

 

 

 夕食を食い終えて待つこと一時間弱。

何をするまでもなく、電子タバコを吹かせながら自分の装備を確認したり周りの環境や地形を確認したりで暇を潰す。

オレの恰好は制服ではなく、完璧な『仕事着』だ。

サラリーマンにとってスーツってのは大切なもんだからなぁ。オレにとってもこの『仕事着』は大切なのさ。

防弾と防塵、防火性に優れた一級品だ。まぁ、重いのが唯一の欠点だが、ずっと着ていりゃぁ馴染むもんだ。逆に馴染みすぎてしばらくは普通の服が着れなくなるくらいにはなぁ。

 

「そろそろかねぇ~」

 

そう思っていると笑みが深まっちまう。

自分の中にある血が滾っていくのがわかる。まさに歯車がかっちりと合わさった感じってやつだ。一番自分に合っている居場所。IS学園のようなお遊びではない『本物』があるここがオレの一番過ごしやすい環境ってやつだ。

水が綺麗すぎると魚は生きられネェように、オレはこっちの方が生きてるって実感が湧く。

そして待ちに待った時がやっときやがった。

ここから見てかなり西よりの森が一気に真っ赤に燃え上がり、爆発の轟音が鼓膜を叩き付けた。

そこから聞こえる阿鼻叫喚の声に本心からの笑みが自然と出ちまう。

あぁ、やっと来た! この世界で一番不毛で下らなく、それでいて一番『楽しい』時間が。自分が自分らしくいられる、懐かしくも真新しい環境が。生きている実感が一番湧く、一番大好きな瞬間が!

 

「さぁ、待ちに待ったパーティーの始まりだぁっ!! ようこそ、この糞ったれたパーティーへ! 主催者として精一杯もてなさせてもらうぜぇっ、このロクでなしどもがぁっ!!!!」

 

そう叫ぶと共に、遠くで揺れた草に向かって引き抜いた『オルトロス』が火を噴いた。

 

 

 

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