恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回でそろそろこの乱痴気騒ぎも終わりへと近づいていきます。


第五十話 宴もたけなわ

 パーティーもそろそろ終盤って感じだぁ。

すっかり朝日も昇り始めて、辺りが明るくなってきてやがる。

いやぁ、実に良い天気だそうで、辺りの新緑が目に……眩しくはねぇなぁ。

オレの辺りに無事な木なんて一本もねぇからなぁ。辺り一面台風が通ったみてぇに荒れ果てちまってるよ。御蔭で夏のクソ暑い朝日が直に当たってる。

ここで小鳥の囀りなんてモンが入れば、夏らしい清々しい朝の光景ってもんを感じられるんだが、基本この辺の動物は血の臭いの所為で近づかないらしい。

足下を見れば真っ赤な水たまりや小川ばかりだからなぁ。唯一来る動物と言えば真っ黒な鴉ばかりだ。そいつ等は顔を血で赤く染めながら死体に群がっていた。

こりゃあ一種の地獄ってやつなんだろうねぇ。馴染み深い俺に取っては懐かしい気持ちで一杯だ。

どうやら仕掛けたトラップも大半が作動したらしく、迫撃砲も無力化されたようで砲撃音は止んでいる。まぁ、充分その役割は果たしたからいいけどよ。

パーティーに来て下さったお客様も三分の二以上はお帰りになったようだ。

各国の特殊部隊の皆様は俺が喰い散らかした御蔭で全部撤退だ。何せその部隊の七割以上殺されたんだから、これ以上恥の上塗りはしねぇだろう。

んで、個人で参加したクソ共は大体が死んだよ。

勿論、多少は逃げたんだろうが舐められるのも癪なんでね。

御蔭で今じゃ鴉の餌になってる以外にもあっちこっちで川の源泉になってるよ。

普通なら森の中でそんなモンは見えねぇもんなんだが、流石にこうも綺麗に禿げちまうとなぁ。軽く見渡すだけでどうなってるのか見えちまう。

しっかし、本当に……

 

「オレとしたことが、随分と散らかしちまったなぁ。これじゃどの面下げて『植物の研究』に来たんやら(笑)」

 

建前から外れちまってることに笑っちまう。

それにどうも久々だったもんだからついつい興奮しちまったようだ。

御蔭で周りの死体を見ると、人として完璧に形を残してるもんが少ねぇ。

殆ど腕や足や首がなかったり、はじけ飛んだりしたモンしかねぇや。

あまり綺麗とは言えねぇなぁ、これじゃあ。クロードに見られたら怒られちまう。

このままお片付けといきゃあ行儀が良いんだが、まだまだ『残ってる』からなぁ。

その残りを片すために、オレは悲鳴が聞こえている場所へと歩いて行く。

悲鳴ってのは万国共通ってもんだが、イントネーションによって微妙に違いってモンがある。

具体的に言うのなら、叫びに普段使ってる言語の癖ってもんが混じるんだとさ。

そんな訳で少し遠くから聞こえてくる悲鳴ってのは、どうも中国語が混じってるような感じがすんのさ。つまり今ハッスルされている側は中国人ってことさ。

中国の特殊部隊もお帰り願った後に聞こえるってことはそれ以外なんだが、そうなるとオレが知ってんのは一つだけだ。

『曹魏』のクソ共だが、だとしてもこの悲鳴はちと可笑しい。

何せトラップでやられたり、オレと遊んでいる訳でもねぇのに出てるんだからなぁ。

て、なると……誰かに襲われているとしか考えられねぇ。

だが、ここであのクソ共を襲う理由があるとは思えねぇんだよなぁ。小競り合いって線もあるが、その割には一方的な感じだ。

狙って殺ってるのか、それとも別か…。

どちらにしても、このパーティーに来て下さったお客様ならもてなさねぇとなぁ。

そんな訳で歩きながら悲鳴が聞こえている場所へと向かって行った。

 

 

 さて、さっそく現場に着いたんだが、これまた結構な光景が広がってたよ。

 

「おいおい、これまた随分と凄いアートだな」

 

オレの目の前にあったのは、地面に刺さった十字架の数々だ。

そこら辺の木をロープかなんかで縛って作ったもんらしい。大きさもでかく、人よりもでけぇ。そして一番目を引くのは、そのでかい十字架どもに縛り付けられてる奴等だ。

 

「何だ、お前さんはこうなってたのか……『曹 劉偉』」

 

そう、この不細工な十字架に括られてたのは曹魏の首領である曹 劉偉だった。

見てて噴き出すくらい見事な恐怖に固まった面をしていて、既に息がねぇ。

他の十字架も皆同じような面で括られてて、既に死んでいるようだ。

どうやら曹 劉偉率いる『鬼子衆』は全滅したらしい。

となると、誰がこんなことをしたのやら。

そいつに思い当たる犯人は一人しか思いつかねぇ

だからこそ、そいつにこのアート制作の意図を聞かねぇとなぁ。

 

「それで……この見事なアートの題名は何て言うんだ……ダニエル・フットマン」

 

振り向いた先には、泣き顔を浮かべる白髪の男が立っていた、

歳は三十くらいで、如何にも人が良さそうな感じだ。

 

「……本当に残念で仕方ありません。私はただ、彼等を教え導きたかっただけなのに……」

 

鳴き真似じゃなく、本当に後悔して泣いているこいつこそ、この業界でも有数のイカレ神父、ダニエル・フットマンだ。

 

「おまえさんのことだからオレに説法でもしに来たもんだと思ってたんだがねぇ。何でこのクソ共はお前さんのお眼鏡に適ったんだい?」

「……私は彼等のことを知っていました。故に彼等に愛を説いたのです。『汝、姦淫することなかれ』と。そしてまた、『隣人を愛せよ』とも。だけど彼等は受け入れてくれませんでした。きっと魂が汚れてしまっているからでしょう。故に、彼等の魂を浄化すべく、主の元へと送り届けました」

「おいおい、そいつはまたお仕事ご苦労さんだねぇ。」

 

このクソどもに1ドル以下の価値にもならない説法を説いてもねぇ。

聞くわけねぇと普通は思うんだが、この奴さんはクソ真面目だからねぇ。疑うってことをしねぇよ。

 

「彼等に受け入れてもらえなかったのは私の不徳です。主のお手を煩わせてしまった………あぁ、神よ! どうかこの者達の魂に安らぎを……」

 

奴さんはその胡散臭い神様とやらに祈りを捧げてるらしい。

相も変わらず狂ってるねぇ。

そして祈りを終えた奴さんはオレを見て笑った。

 

「それでは……改めてレオスさん。お久しぶりですね」

「オレは会いたくなかったんだがなぁ」

 

さっきまでの泣き顔が嘘みてぇになくなって、今じゃ晴れ晴れしい笑顔になってる。

切り替えが早いこって。奴さんの中じゃさっきまでのことは懺悔し終わったらしい。

 

「どうですか? あなたも主の御心に共にあろうとは思いませんか。人は主の元でこそ、幸せになれます。我等は皆兄弟にして愛すべき隣人。主の愛を皆にも教えませんか」

「前にも言ったはずだぜ、オレは。そんなクソの役にも立たねぇ神様に仕えるなんざぁゴメン被るってな。そいつは他の奴にでもしろっての」

「私はあなたにこそ、主の愛はふさわしいと思っているのです。だからこそ、一緒に主の意を皆様に教えませんか」

「はぁ~……思い出した。あん時余りのしつこさに切れて思いっきり暴れたんだったか。それで聖書燃やしたんだっけ。それでも許しちまうあたり、お前さんは本当に凄いよ」

 

本当に凄いとしか言いようがねぇし、当時の若さってもんを思い出して恥ずかしくなって来ちまった。あんときのオレは思慮が浅かったなぁ。恥ずかしいったらありゃしねぇ。

 

「ではっ!」

「だけど断らせてもらうぜ。なんせなぁ……その神様が嫌いなことが、オレは大好きだからな。人間ってのは腐ってて丁度いいのさ」

 

その返答を受けてがっかりするフットマン。

 

「そうですか。なら……その汚れた魂を主の元に誘い、清めて貰いましょう!」

 

そう言うとどこから取り出したんやら、奴さん以上にでかい大きな十字架を出して来やがった。しかもただの十字架じゃねぇ。下の方は大剣の刃になってて、しかも刀身が根元の部分で二分けられてる。その二つの刃を挟んだ真ん中には、黒い砲身がそびえ立っている。

この大剣とグレネードランチャーを複合したおっかない十字架がフットマンの相棒だ。

いつ見ても変わらねぇなぁ、このイカレた十字架は。

 

 

 

 こうして最後のお客さんとのダンスが始まったわけさ。

気が付きゃ、もうすっかり日は昇ってる。早く帰って真っ赤に染まった身体を洗いたいもんだ。まぁ、まだ無理そうだけどな。

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