恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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第五十二話 残業? 追加依頼?

 やっと仕事が終わったよ。

久々の本格的なお仕事だったんで随分とはしゃいじまった。まったく年甲斐も何もねぇと思うと恥ずかしくなっちまうところだが、そこは見逃してくれよ。

何せ久々の『殺し合い』だったんだからよ。ここ最近の平和な学園生活ってのも悪くはねぇんだが、やっぱりオレとしてはこっちの方が性に合ってる。

この後酒を呷るのがいつもなんだが、生憎今は手元にねぇ。仕事後の酒ほど最高なもんはそうはねぇのになぁ。残念でしかたねぇよ。

まぁ、今は早くシャワーを浴びたいところだけどな。全身血まみれなんではやく洗い落としてぇんだよ。誰だってべたつくもんは落としてぇだろ。

それで旅館に戻ってきた訳なんだが、随分と様変わりしてやがった。

いや、見た目は一緒なんだけどなぁ。何やらいつも騒がしい連中の声が聞こえてこねぇってのは、可笑しいだろ。祭り好きな奴等が騒がねぇってのは相当なもんだよ。

てなると……また厄介ごとかねぇ。

取りあえずチフユ達を見つければ、何かしら聞けんだろ。

そんな訳で旅館の中を歩いて十分。一つだけ妙に騒がしい部屋を見つけた。

中から聞こえるのはけたたましく動く機械の音、それと騒がしく慌てるマヤの声。あとチフユの妙に気合いの入った指示を出す声だ。

その部屋に遠慮無く入る。こんな状態じゃあ声をかけたところで聞こえるとは思えネェからなぁ。

 

「お邪魔するぜ」

「なっ!? 今は作戦中だぞ! 無断で入って来るな!」

「え? ってハーケン君!? だ、だだ、大丈夫ですか!!」

 

中に入った途端にチフユからはおっかねぇ目で睨み付けられ、マヤからはまるでお化けでも見たような目で見られちまった。周りの他の教員もぎょっとした目で見てるし。

そんなに見られたら照れちまうじゃねぇか。オレはシャイなんでなぁ。

 

「んで、これはどういうことになってるんだ? 疲れてるんで早く飯を食いたいところなんだがねぇ」

「それどころじゃないですよ! ハーケン君、大丈夫なんですか!! そんな血まみれで! 急いで病院に連絡しないと!」

 

チフユに聞こうとしたんだが、その前にすげぇ焦った面のマヤに止められちまった。

マヤの奴、相当テンパってたようで、オレの身体を触った途端に付いた血で悲鳴を上げてやがった。

 

「ただの返り血だよ。一々はしゃぐようなことでもねぇだろ」

「ハーケン、貴様………」

 

オレを見てさっきとは違う視線で睨み付けるチフユ。

まったくもっておっかねぇ。

 

「爺さんからの注文だよ。文句と苦情は爺さんに言うんだな」

「くっ…また轡木さんか! あの人は人に内緒で」

 

爺さんも本当にイイ性格してるぜ。

オレだったらこんなおっかねぇ奴を怒らせて遊ぼうなんて気にはならねぇよ。

内緒にされてることが気に喰わねぇチフユはイライラしながらオレを見る。

 

「それで貴様は今まで何をしていた。場合によっては、ただではすまさんぞ」

 

まさに鬼神の一睨みってやつか。

おっかなすぎてぶるっちまったよ(笑)。

オレはその問いに笑いながら答える。

 

「オレが爺さんに頼まれたのは、ただの防衛だよ。今回の臨海学校はいつもより危険になるんで、爺さんがオレの会社に依頼した正式な仕事さ。それで来たお客様におもてなししてたらこんな風になってたってわけだ。そいつについてオレに怒るなよ? そもそも、防備が甘いこの学園が原因なんだからなぁ」

「ぐぅっ……」

 

痛いところを突かれて黙るチフユ。

とばっちりで怒られるのは勘弁願いたいからなぁ。

 

「それで質問は終わりかい? なら、今度はオレの方に答えて貰いたいねぇ。この状況はなんなんだ?」

 

その質問にチフユは仕方なく答えてくれたよ。

 

「現在、アメリカとイスラエルが共同開発した軍用IS『シルバリオ・ゴスペル』、通称『福音』が暴走中、それをIS委員会から暴走を止めるよう言われての作戦中だ。それに織斑と篠ノ之による作戦が展開されたのだが……失敗した」

「あれ? たしかホウキは専用機を持ってなかったよな。良く参加させようなんて思ったな」

 

疑問に感じたんで聞いてみたら、何でもあの篠ノ之博士が持ってきたんだと。あの自称天才がねぇ。

何でも、最新鋭の『第四世代機』なんだとか。随分とはりきったようで。

それでその後にこの騒ぎが起こったんだと。

その作戦には高速で動ける必要があるって話になったらしんだが、それをあの博士が妹をごり押ししたんだと。

どう考えたって犯人丸わかりじゃねぇか。最新鋭の機体を渡すと同時にその騒動。

それで軍じゃなくてこの学園に頼んできたこと。

全部考えりゃあお馬鹿なガキでも分かる話さ。

 

「それで失敗した後は?」

「福音は健在でその海域からあまり離れていない所で停止している。織斑は負傷で意識不明。篠ノ之は無事ではあったが、精神的に多大なショックを受けていた」

 

それはそれは。イチカの野郎はとんだとばっちりを受けたって訳だ。

でも、負傷した理由を聞いたら呆れ返っちまったけどな。まさか閉鎖しているはずの海にいた国籍不明の密漁船を庇ってなったんだと。

仕事の途中に他の事に色気だしちまうのは駄目なもんさ。しかもそいつ等は閉鎖されてることを知っていて入っていたんだろ。だったら自業自得ってもんだろうさ。何されても仕方ねぇよ。大人は自己責任ってもんをちゃんととらねぇとなぁ。

 

「んじゃ何で今はこんな騒がしいんだ?」

「残り残り四人の専用機持ちと篠ノ之が勝手に出撃した。それで福音に戦闘を挑み、一時期は押していたんだが、福音は二次形態に移行。その力を使って五人に猛威を振るい、戦局は再び不利になった。そこに負傷していた織斑がどういうわけか白式を二次形態に移行させて参戦し、再び互角になったのだが……やはり軍用というだけあって福音のエネルギー量は凄まじい。白式はかなり強力な機体になったが、それでもエネルギーの問題は変わっておらず、このまま長引けば不利な状況になる。それが現在の状況だ。撤退するよう通信したんだが、切られてしまった」

 

成る程ねぇ。

それでこの騒ぎか。まぁ、随分とみんなハッスルしているらしい。

このまま放置してもいいんだが、そんなことを目の前の担任様が許すとは思えねぇし、お嬢様も参加してるって聞かされてるんじゃあなぁ。気に入ってる奴に死なれるのは寝覚めが悪くなるってもんだ。

なら……仕方ねぇか。

 

「チフユ、爺さんに後でお前さんから追加の報酬を払うよう言っておいてくれ」

 

その言葉にチフユはギロっと睨み付けてきた。

せっかくやろうってのに怖がらせないでくれよ。

 

「貴様、それは……」

「まぁ、そういうこった。せっかく良い感じに疲れてるのに、残業とはついてねぇなぁ。まぁ、仕方ねぇか。そんな訳でマヤ」

「は、ハイ!」

「オレの所に届いてる玩具のインストール手伝ってくれよ。聞いた話で考えりゃあ、『アレ』が最適だろうよ」

「わ、分かりました!」

 

そんなわけでマヤを連れてオレは届いた新しい玩具をインストールするために部屋を出た。

その玩具を見たマヤの面が面白い感じに凍り付いたのは見物だったよ。

 さて、せっかく試射に丁度良いのが来てるんだ。思いっきり…………

 

ぶっ放すとするか。

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