皆さんには本当に感謝です。
これからも頑張っていこうと思います。
イチカの野郎に残りの後始末を全部任せてお嬢様先に旅館に帰る。
ただ情けねぇことにお嬢様に手を繋いでもらってだ。
何せ今の所から旅館までの距離は遠いからよぉ、普通に帰るんじゃあ時間が掛かるんだよ。いや、勿論通常のIS並の速度で走るくらい容易だよ。でもなぁ、流石にこうも連続で仕事をすると腹も減ってやる気が出ねぇのさ。
お嬢様も満更じゃねぇようだし、細かいことは言うなよ。
「それにしても……」
「ん?」
お嬢様は何やら不思議そうな顔でこっちを見てきた。
「一体レオスさんは今まで何処におりましたの? 昨日の夜から姿が見えませんでしたし」
「ああ、そのことか。なぁに、ちっとじいさんから用事を頼まれてよ。そいつをやってたら時間が経っちまったんだよ」
「用事ですの?」
その用事とやらが気になるのかお嬢様が食い付いてきた。
流石にここで旅館の外でドンパチをやらかしてきたとは言えねぇなぁ。
なら、もっと単純な言葉でわかりやすく説明するしかねぇ。
「ああ、まったくあの爺さんは人使いが荒いとしか言い様ねぇよ。旅館に害獣が増えてきたってんで『害獣駆除』を頼まれたんだよ。泊まる旅館にお礼も兼ねてな」
「が、害獣駆除……ですの? 何でレオスさんが……」
「オレがそういうのに覚えがあるってのと、流石に女子にそんな事はさせられネェからだろ」
「た、確かにそうですけど……」
何とも気まずそうな顔をするお嬢様。
自分も手伝えればって考えてるってところか。まったくっもって優しいねぇ。
残念ながら手伝わすことなんざ出来ないがね。
「でも、ちょっと可哀想ですわね。動物は好きで害を成している訳でもないのに」
「お優しいねぇ、お嬢様は」
「そ、そんな……」
顔を赤くして照れてるお嬢様、せっかくだから少しは朗報を教えてやろうかねぇ。
「そんなお優しいお嬢様には朗報を教えてやる。害獣にも色々あってなぁ、大型の害獣は近づかねぇように追いだしただけだから駆除はしてねぇよ。タヌキとかイノシシとかな」
「そ、そうですの……よかったですわ………」
安心したようでホッと胸を撫で降ろすお嬢様。
そう大型の害獣『各国の特殊部隊』は大体お帰り願って退散してもらったからなぁ。まぁ、手痛い代償は支払ってもらったけどねぇ。そして言わなかったが小型の害獣、ここでは鼠とでも言おうか。鼠『人の首目がけて集まったクソ共』は悪いが全員駆除だ。
あぁ、あのクソ真面目な神父は鼠みてぇな可愛いもんじゃねぇから別な。あれは寧ろ猛獣の部類だろ。簡単にゃぁ駆除できねぇ。
「それで来るのが遅れちまった。悪かったな、お嬢様」
カラカラと笑いながら謝ると、お嬢様は更に顔を真っ赤にして慌てる。
「そ、そんなことありませんわ! レオスさんが来なかったら、わたくしは今頃…………助けて下さって、本当にありがとうございますわ」
慌てたと思ったら真剣な面で礼を言ってきた。
何だかムズ痒くて仕方ねぇなぁ。
仕方ねぇから茶化すとするか。
「おいおい、そんな面してたんじゃあ可愛いお顔が台無しだぜ、お嬢様。そこは笑顔で軽く言うくらいが丁度いいんだよ」
これでお嬢様は反発して強気に跳ねっ返るだろうさ。そう思ったんだけどねぇ……
「そ、そうですの……では……ありがとうございました」
顔を赤らめながら柔らかい聖母みてぇな面でお礼を言い直してきたよ。
その面が余りにも綺麗なもんだから、ちっとばかし見入っちまった。
どうにも調子が狂うねぇ。
「こほん。まぁ、そう言われた方が言われる側も嬉しいもんさ。それより少し急ごうぜ。ずっと飯食ってなかったから腹減ってなぁ」
「まぁ、そうですの! でしたらわたくしが…」
「悪いがそいつはもうちょっと腕を上げたらだな」
流石に今の状態でお嬢様の作った食いモンを食ったら流石にきつすぎるからな。
「もう、レオスさん~~~~~~!」
そのまま旅館までむくれるお嬢様をあやすのに苦労させられたのは言うまでもねぇよなぁ。
まぁ、これぐらいがオレ達らしい。
旅館に戻ったらチフユ達が旅館前でスタンバってやがった。
「よぉ、チフユ。帰ってきたぜ」
軽く声をかけるが、全く返ってこねぇと寂しいじゃねぇか。
お嬢様さっきまでの面から一転してすげぇ怯えてるよ。まぁ、チフユのこの面を見りゃあ大体の奴は怯えるだろうけどよ。オレだってぶるっちまうよ。(笑)
「ご苦労だった、ハーケン。首尾はどうだった」
「どうもこうも知ってて聞くんじゃねぇよ。イチカ達は全員無事、福音とやらは海面に向かっておねんねだ。今頃イチカに回収されてこっちに向かってんだろ」
「そうか」
オレはそんなやり取りをすると、旅館の中までISで入って行く。
このままオレがISを解除するとお嬢様が悲鳴を上げるくらい汚ねぇ身体が見られちまうからなぁ。
お嬢様が取り残された子犬みてぇな目を向けてきたが悪いね。
誰も好きこのんで逆鱗に触れる奴はいねぇのさ。大人しく……
「さて、ハーケンは良いとしてオルコット。お前はまだ旅館で休ませるわけにはいかんな」
「は、はい………」
チフユにこってりと絞られてくれや。
世の中勢いってのは大切だが、ある程度は話を通さねぇとなぁ。
てなわけで早く乾いてガビガビになり始めた血糊を落としに行こうと思ったんだが、その前にあることを思い出した。
ついでにチフユに釘でも刺しておくかねぇ。
そんなわけで旅館からそのままチフユの所までUターンした。
「む、何だハーケン」
雄々しい仁王立ちでイチカ達を待ってるチフユ。
その前には怯えた子犬みてぇにぷるぷると震えてるお嬢様が見事な正座させられていた。
「そうそう、チフユ。そう言えば伝えとくことがあったんだった」
「何だ?」
機嫌が悪ぃせいで目つきが鋭い。
そんな目で睨まれたら逃げ出したくなっちまうだろ(笑)。
オレはニヤリと笑みを深め……まぁ、チフユからは面が見えねぇからたいした意味はねぇんだけどな。
「お前さんの『お友達』に伝えて置けよ。遊ぶのは勝手だが、もうちょっと上等な玩具を用意しろって。あんな玩具じゃ欲求不満だってな。満足させたきゃ……自分の手で殺しにきな………人を殺したことのねぇチキンが作ったモンじゃつまらなさ過ぎるんだよ」
「っ!? 貴様、それは」
「おいおい、あまり侮るなよ。お前さんから聞いた話で大体は分かんだろ。そんな問題、ジュニアハイスクールのガキにだって分かる問題だろ。あからさま過ぎだ」
忌々しい面でオレを睨むチフユにオレは今度こそ旅館に戻って風呂に入りに行った。
ISを解除すると共に、身体中から粘り着いた音が聞こえてくる。
「まったく、鉄臭くてたまらねぇなぁ。だが……それがいい……」
久々の殺し合いの余韻を楽しみながら、オレは廊下を歩いて行った。