恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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同時に書いてる作品が甘甘だからこっちは丁度良い感じに感じれます。


第六話 裏の学園長

さて、あのアホを花火にした朝。

俺は電話を終えると食堂に向かおうとした。

ここの飯は結構うまいからなぁ、楽しみの一つだ。

そう思って部屋を出たら、朝から鬼神(オーガ)ど出くわしちまった。まったく、ついてねぇなぁ。

朝っぱらからこの面を拝むってのは、目覚ましに最適だな。眠気なんざ一瞬で吹っ飛んじまった。

 

「ハーケン、学園長がお呼びだ。付いてこい」

 

オーガことチフユに言われて俺は学園長室に向かうことになった。

チフユの奴は俺の事を大層睨んでいた。おいおい、朝っぱらからそんなに睨まれるとストレスで胃に穴が空いちまいそうになっちまうよ。

まぁ、何でチフユがこっちを睨んでんのかなんてのは予想付くけどな。

どうせ昨日の事だろうよ。

そんなわけで朝っぱらからイエス様ですら怖くて逃げ出すほど不機嫌なチフユに連れられて俺は学園長室に行った。

扉の前に行くとチフユはそこで止まる。どうやらチフユは入らねぇらしい。

俺は一応ノックをする。

一応言っとくけどよぉ、俺はマナーはしっかりしてる方だぜ。こういうのはキチンとしてねぇと入った瞬間に蜂の巣なんてのもありうるからなぁ、しっかりしねぇといけねぇ。

 

「入って下さい」

 

そう声が聞こえたのでさっそく入らせてもらうぜ。

目の前の席で老人が座っていた。

格好はいかにも用務員の格好をしていて穏やかな笑顔をしている。いかにも人が良さそうな爺さんだ。

この学園の学園長は女のはずだが、それは表の話ってやつだ。

実質はこの爺さんが取り仕切ってる。

 

「そろそろ呼ばれると思っちゃいたが、せめて朝飯くらい食わせてもらったほうが嬉しかったがねぇ・・・・・・轡木 十蔵(くつわぎ じゅうぞう)さんよぉ」

「それはすみませんでした。お茶菓子ならありますけど、食べますか?」

 

向こうは柔和な笑みで此方に茶菓子を差し出す。

この学園に来るにあたってある程度は調べさせてもらった。

当然向こうも俺の事は調査済みってわけだ。

双方とも分かってるのが前提になってるわけさ。

 

「そいつは有り難てぇが、わざわざ朝っぱらから呼び出して茶飲み話をしようってわけじゃねぇだろ。さっそく本題といこうぜ、勿体ぶらずによぉ」

「おやおや、そう急かさなくても話しますよ。取りあえずはお茶でも」

 

そうして差し出されたお茶に口を付ける。

まったく・・・・・・朝から本当についてねぇ。

こういった笑みを浮かべる奴ぁ大体腹に一物どころじゃ済まねぇもんばかり持ってる。

正直苦手な手合いだ。

もらった茶を飲み干して出された茶菓子を朝食代わりに食べると、さっそくこの爺さんの話を聞かせてもらう。まぁ、予想なんざ付くけどなぁ。

 

「それで話ってのは昨日の奴のことだろ」

「そうですね。あまり派手なことはされると困るんですけどねぇ」

「そいつは無理ってもんだろ。そもそもあんなアホを入れちまったあんたらがいけねぇんだからよ」

「そう言われると痛いですねぇ」

 

そう爺さんは答えるが、笑顔で全く困った感じがしねぇ。

 

「この際聞き出した方法に関しては目をつむりますけど、その後はどうかと思いますよ」

「そう俺が全部悪いって感じには言わないでくれよ、朝から泣きたくなっちまう。まぁ、あれも仕方ねぇことだろ、あんたなら分かってると思うけどよぉ」

「・・・・・・一応聞かせてもらえますか?」

 

それでも笑顔なんだから、この爺さんは気が置けねぇ。どうせ言わなくたって分かってんだろうによぉ。

 

「仮に俺があのアホをそのままチフユに引き渡したとしたら、どうなると思う?」

「普通に警察に引き渡されておしまいですね」

「そうだよ、その通りだ。しっかしなぁ、そうなるとこうなるわけだ。俺がこの学園いるってことはあんなアホでさえ突き止められるってことは、すでにあっちの連中にはモロバレだ。そこで俺に仕掛けた奴が警察に捕まったなんてことがばれたら連中、どう考えると思うよ」

「どう思うんですか?」

 

分かっててやってんだから趣味わりぃな、この爺さん。まぁ、俺も人のことは言えねぇけどよ。

 

「俺に仕掛けて死んでねぇってことは、少なくとも危険が少ないと考えんのさ。IS学園に侵入することもそんなに難しくねぇし、俺一人に一人で仕掛けて生還できるってことは数を連れて行けば俺をミンチにできるって連中は考えるわけだ。詰まるところ嘗められるってわけさ。そんなことになってみろ、あいつ等この学園にワンサカくるぜ。そうしたら困るのは俺だけじゃ無くあんたもってわけだ。そいつはよくねぇだろ」

「確かにそうなられると困りますねぇ」

「そんなわけで俺があのアホを仲間の所に花火土産に持たせて帰らせたんだよ。少なくてもこれで連中は下手にこの学園には手ぇださねぇよ。ちょっかい出そうもんなら火傷じゃすまねぇってな。どうせ俺が花火持たせて帰したことも、もうばれてんだろ。この業界は嫌な意味で面子が重要になってくるからなぁ」

「成程。だからああしたのですか」

「そういうこと、だからあんまり言わないでくれよ」

 

そう言うと爺さんは笑顔を変えずにうんうんとうなずく。

手の打ち所なんて分かってるんだから、一々する必要もねぇてのによぉ。

 

「まぁ、今回のことは不問にしましょう。ただ次回からはちゃんと相談してもらいたいですねぇ。あまりやんちゃされても困りますし」

「悪かったよ、爺さん。今度からそうさせてもらうよ」

 

その後は又茶をもらって啜りながら話す。

 

「こっちも聞きてぇことがあるんだけどよぉ、いいかい?」

「答えられることならいいですよ」

「何で俺をお嬢様と同室になんてしたんだ? こんな空間で男と女が一緒ってのは教育者としてはおかしいしよぉ、普通ならイチカと同室ってのがくるもんだろ。そりゃあいつの立場が普通じゃねぇってことは分かってる。そんな人間を俺みたいな奴と一緒にするなんて考える馬鹿はいねぇなぁ。だとしたら俺を一人部屋にするか、この学園の外に監視付きで生活させるかってところだろ。そこんところはどうよ」

 

そう聞くと爺さんは相変わらず笑っていやがった。

 

「そうですねぇ~。私には君は只の学生にしか見えませんし、この学園にいる限り普通の学生として扱うつもりですよ。だから普通に寮で生活してもらい普通に学園生活を送ってもらおうと思ってます」

「そいつは結構なことだが、周りはそう思わねぇだろ。それに俺が暴れないとでも思ってんのかい?」

「ええ、思ってますよ」

 

笑顔で爺さんは断言しやがった。

 

「どうして断言できる?」

「君が私のことを調べたように、私も君のことを調べました。君は確かに凄腕の傭兵で凄まじい。しかし君は言動の荒さと違って依頼には忠実だ。君は確かに凶悪と言われてはいるが、君がその暴力を振るうのは敵対するものと自分に害があるものだけだ。だからこそ、断言できるんですよ。君はこの学園で暴れないと」

「・・・・・・く、く、く、く、く・・・・・・あっはっはっはっはっはっっ!!」

 

あぁ~、腹痛てぇ~。あまりのことに笑っちまったよ。

 

「まったくその通りだ、爺さん。この学園で俺は暴れねぇよ、確かにそうだ。この中にゃぁ『殺意』と『殺意並の害意』を持った奴がいねぇ。そんな奴らに敵対されたからって気にする理由ってやつが俺にはねぇ。まったくその通りだよ。俺が殺る相手ってやつは依頼されたやつか俺と遊ぼうってやつだけだ、自分からは振らねぇよ。振っちまったら只の無法者(アウトロー)になっちまうからな」

 

まさかここまで調べられてるとはなぁ、まったく。本当に抜け目ねぇえ爺さんだぜ。

 

「だから俺を学園に入れて普通に取り扱ったってわけだ。まったく・・・・・・完敗だよ、爺さんにはな」

「そう言われると嬉しいですよ。そうそう、昨日の様子見で決めましたが、君の荷物は正式に返しますよ。手錠は後一週間もすれば外せます」

 

本当にこの爺さんは怖えぇなぁ。敵には絶対に回したくねぇえタイプだ。

 

「あとこれは昨日イギリス代表候補生を守ってくれたお礼です」

 

そう言って爺さんは俺の前にある物を出して来た。

 

「こいつは・・・・・・電子たばこかよ」

「ええ、学生がたばこを吸うのは良くないですけど、君はそろそろ何かしないとストレスを溜め始める頃合いですからね。電子たばこならそこまで害にはならないですし。ただこれを吸うのは生徒には見つからないようにして下さいね。バレると大変ですから」

「そうかい。んじゃ有り難く頂くぜ」

 

爺さんから電子たばこを受け取り席を立つ。

 

「そうそう、たまには遊びに来て下さいよ。話し相手が中々いなくてつまらないですから」

「気が向いたらな」

 

できる限り関わりたくねぇ。

そう思いながら俺は学園長室を出た。

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