恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回はまだ救出はしません。


第七十五話 子供と侮るなかれ

 さて、そんな訳でみんなピクニックの準備をして各自で車に乗車だ。

みんな仕事ってんで張り切っているわけだが、そん中でもとびきり張り切ってないのは勿論オレだ。

みんな戦闘服に着ている中、オレは一人だけお堅いスーツなんだぜ。

そりゃあやる気もなくなるってもんだろ。オレ一人だけ暴れることも出来ねぇで、犯人達と仲良くトークショーをしなきゃならねぇんだからよぉ。

まったくもって損な役割だぜ。

お嬢様はどうするかって?

残念ながらお留守番だ。クロードが見てもらいたかったのは真面目に会議してる様子って奴で、危険なトークショーじゃない。

まぁ、そう考えりゃあある意味スリル満点なお仕事なわけだが。

何せ少しでもミスれば人質を、さらに下手すりゃあオレの頭の風通しが良くなるってんだからなぁ。

 

「レオスさん……お気をつけて下さいね。絶対に戻ってきて下さい……」

 

車に乗り込む前にお嬢様からそんな声をかけられた。

その顔ときたらアレだな。まさに乙女っつった感じだ。帰りを待つ人間特有の心配した顔って奴か? よく映画やドラマなんかで見るような面って奴だ。

まったく、こんな表情を向けてもらえるとは光栄の限りだねぇ。

 

「お嬢様、そんな心配すんなよ。オレはただ、お喋りしに行くだけなんだからなぁ」

 

そう答えながらお嬢様の頭を撫でてやる。

 

「ふぁ………」

 

お嬢様は最初こそ驚いたが、すぐに顔を真っ赤にしたまま為すがままにされていた。

お嬢様を安心させるにはこれが一番だねぇ。

た・だ、あんましやってるとさっきからニタニタ笑ってる周りの連中をぶっ飛ばしたくなるからコレまでだけどなぁ。

手を離すとお嬢様は残念そうな顔をしたが、生憎これまでなんでなぁ。

 

「残りは帰ってきてからしてやるよ、お嬢様」

 

笑いながらそう答えたら、お嬢様ったら顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてたよ。

そうそう、それぐらいが丁度良いんだよ、見送りってのはなぁ。

そんなお嬢様を笑いつつオレは車に乗り込んだ。

 そして揺られること十数時間後、オレは現場であるサンフランシスコの大広場に着いた。

まったく、それまでの間は苦痛の時間だったぜ。

何せ車内で恰好を思いっきりからかわれたからなぁ。

普段は着てねぇんで似合わねぇだの何なのと言われまくり、挙げ句は馬子にも衣装だの七五三だのと言われる始末。

いくらそこまで日本に詳しくねぇからって、そいつが人を馬鹿にしてる俗語だってことは話してる奴のニヤついた面を見れば分かる。

御蔭で車内にゃあオレにシバかれた奴等が転がっていたよ。

 

「あまりやり過ぎないで下さいよ。これから作戦前に負傷で使い物になりませんでした、では洒落になりませんから」

「そう思うんならもうちょっとは行儀良く静かにすることを強く言っておくようにしておけよ」

 

苦笑するクロードにそう言うと、仕方ないですね、とクロードは更に苦笑する。

こういう所は融通が利くから助かるよ。流石に喋るなとは言えねぇからぁ。

クロードは大広間から通信でこれからの作戦について話し始める。

 

「では、改めて作戦内容を伝えます。今回の作戦は二面作戦、大体の人質が捕らわれている本丸の救出と表で交渉と称した時間稼ぎを行う二つです。本丸救出には前に伝えた通り、既に捕らわれている場所は特定済みです。人質以外は極力殺さないように無力化して下さい。あくまでも『極力』ですので、仕方ない場合もありますから。次にもう一方の交渉ですが、それはレオスが行います。彼自身も初めての事なのでいつ何が起こるかはわかりません。出来る限りのバックアップはしますが、最悪すぐ交渉が終わった場合は私が狙撃で人質を取っている犯人を沈黙させます。その場合、本丸は強襲を仕掛けて下さい」

 

それを聞いて返事を返す面々。

オレも仕方なく頷き、各自仕事のために移動し始める。

残されたのはオレとオヤジとクロードの3人。

 

「政府には既に話を通してありますので、レオスはそのまま政府の方に行って下さい。すぐに交渉をすることになるでしょうから。団長はここら一帯の警戒を。私は離れて狙撃準備を行います」

 

そう言いながらギターケースを持ち上げるクロードは、その中に入っているであろうスナイパーライフルを揺する。

そいつこそが、クロードの名を轟かせた相棒。

オレのIS用スナイパーライフル『ゲイボルグ』、その原型がクロードの持ってるそいつだよ。

内容もまったく同じで勿論常人が使えるようなものじゃねぇ。

オレでもそのまま撃てば肩の間接が外れるんじゃねぇかな。

そんな化け物を軽々と使いこなし、2キロ先の標的の豆粒みてぇな頭を吹き飛ばすんだからクロードも人のことを言えねぇ化け物だよなぁ。

クロードはそいつを抱えたままどこかに歩いて行く。

きっと大広間が余裕で見渡せる所にでも行くんだろうさ。

アイツに狙われたらどこに居ようが問題無く殺されるだろうからなぁ。

 

「んじゃ、餓鬼はとっとと話でもしてこい。俺は辺りを警戒してるからよぉ」

 

オヤジもそう言うなり離れていくが、その手にはきっちりと出店で売られていたクレープが握られてやがった。

ありゃあ明らかに遊びに行く気満々だ。

警戒っていってもやることもねぇからなぁ。きっとクロードがいねぇことをいいことにハメを外してるにちがいねぇ。

後でチクってやる。それで説教でもうされてればいいぜ、あんなオヤジは。

こっちはそれどころじゃねぇんだからなぁ。

二人が行ったところで政府の奴等が必死そうな顔でばたついている所へと入るオレ。

 

「ちょ、いきなり何勝手に入ってるんだ! ここは政府のっ」

 

入って早々オレの前に人が来て止めに入って来やがった。

おいおいクロード、話は通してあるんじゃなかったのかよ。

オレは何とも面倒臭いやり取りに飽き飽きしながら答える。

 

「聞いてないのかよ? オレは『巨人の大剣』のもんだ。お前さん等が依頼したんじゃねぇか、救出をよ」

「なっ!? こんな子供とは聞いていないぞ!」

 

オレの話を聞いて他の奴等も立ち上がる。

こりゃ随分とした歓迎じゃねぇか。

 

「おいおい、この仕事に歳は関係ねぇだろ。あまり野暮なこと言うんじゃねぇよ」

「そういうことではない! この大切な救出にこんな子供を送ってくるとは、一体何を考えているんだ!」

「だからあれほど傭兵になど依頼するべきではないと!」

 

こんなに子供扱いされるのは久々だが、ここまで苛つかされるのも久々だ。

あまりうだうだ言ってるようなら……黙ってもらうしかねぇなぁ。

オレはニヤりと笑いなが凄い剣幕で騒ぎ立てる偉そうな奴に近づくと……。

 

「これでちっとはやれるってことだよ。わかるかい、リーダー?」

「あがっ!?」

 

捲し立ててる奴の口にM92の銃口をぶち込んでやった。

それに気付いた周りの奴と本人は顔を真っ青にして酸欠を起こしたように口をパクパクしてやがった。中々にシュールで笑える光景だ。

オレはそんな奴等にさらに深みを増した笑みを向けながらこう言う。

 

「さぁ、『お仕事』の話をしようじゃないか」

 

こうしてやっと、オレは仕事の話を始める事が出来た。

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