結構グロいので注意。
世の中若輩者って奴は常に侮られるのが常てもんらしい。
それはこの『実力主義』であるアメリカでも例外じゃねぇんだとさ。
クロードの野郎は話をつけてあるなんてほざきやがったが、この有様を見れば答えは明らかにNOだろうよ。
正確に言やぁ、『巨人の大剣』が交渉役を買って出るとは言ったが、オレが出るとは一言も言われてねぇて感じだろうよ。
アイツのことだ。どうせこいつも『交渉の勉強ですよ』とか言うんだろ。
全くもって教育熱心な上司様には苦労するよ、本当に。
これがアイツなら、爽やかな笑みを浮かべてハリウッド俳優よろしくな立ち振る舞いで周りの奴等を黙らせてから話に入るんだろうが、生憎オレはそんな『格好いい』真似は出来そうにねぇ。
生憎オレは不器用なんでなぁ。世の中で一番単純な『暴力』で解決させてもらうよ。
なぁに、ぶち込まなくても見せつけるだけで大人しく黙ってくれるのが善良な市民って奴だ。一々静かにするよう言う必要がねぇのはありがてぇもんさ。
そんなわけで、ピーチクパーチクとひよこよろしくに鳴いている奴にオレは拳銃というもっとも目に見えてわかりやすい暴力で黙らせることにした。
「さぁ、やっと場も静かになったところで改めてお話って奴を窺おうか、依頼人」
ニヤリと笑いながらそう聞くと、さっきまで喚いていた奴が顔を青くしたまま話し始める。おいおい、そこまで怖がらないでくれよ。目の前にいるのはお前さん等曰く、『子供』なんだからよぉ。
「あ、あぁ! げ、現在、連中は広場の見通しの良い所で人質を盾にして声明を公表している。周りに高層物がなく、見通しが良いため狙撃手をおけず、人質がいることで下手に部隊を動かせないのが現状だ」
何とも心苦しく忌々しいって感じに話すおっさん。
オレからしたら気にせずに突っ込めばいい気がしてくるもんだが、裏で押さえてる人質もあって『世界の警察』を自認するアメリカさんは下手には動けねぇんだとさ。
表は明らかにやりづらく、裏ではかなり押さえられているってことが厄介なんだろうよ。表だけを解決した瞬間に裏がBON。裏は察せられた瞬間には何人か死ぬのは目に見えてる。ここで人質が男だけならいいが、見た名簿の中には女も混じってた。
そこで女が死ぬような事態になれば、それを好機に連中は更にこっちを批難してくるわけだ。そして今の世の中でそんなことが公表されれば、アメリカは人質を無視して軍による鎮圧を強行した最悪な国ってレッテルが貼られることになる。
それは流石に勘弁してくれって感じに困り果ててるようだ。世の中、体面ってのは大きくなれば成る程気にしなきゃならねぇもんだからなぁ。
ここで大切になってくるのが、自国の軍って所だろう。
オレ等は所詮雇われ。仮にミスったとしても、雇った傭兵が勝手に暴走したとでも言えば最悪の事態は避けられるって寸法だ。
スケープゴートにしやすく、それでいて解決できれば頭痛のタネが消える。
自分の手を汚さなくて済むってのはさぞ良い気分だろうさ。
まぁ、そんなことで金を貰ってるんだから文句を言うのは筋違いってもんか。
オレは取りあえず真面目な顔で話を聞き、軽く話す。
「大体わかったよ。連中は調子扱いて声高らかにオペラを歌ってやがるってことがなぁ」
それに対し、周りの奴等はオレを睨みつつも何も言えねぇって面をする。大体はあってんだろ。
連中は未だに声高らかに歌ってるようだが、同じ曲ってのは何度も聞くと飽きてきちまうもんさ。
観客は常に新しいもんを求めてるってことが連中は分かってねぇ。
だからそいつを分からせてやらねぇとなぁ。
「んじゃオレの方から簡単にウチの作戦を説明するぜ」
苦々しい顔をしてる周り奴等にオレは改めて話し始める。
辛気臭い空気を切り替えるには新しい風ってもんが必要になってくる。そいつを持ってきたんだから感謝して貰いたいもんだ。
「まず裏の方は既にウチのモンが向かってるよ。たぶん連中がこっちに連絡を寄越す前に静かになるだろうさ」
「なっ!? いつの間に……それに何故そのことを……」
驚いている奴がいるようだが、何てことはねぇだろうさ。
「おいおい、よく考えれば子供でも分かるだろうが。人質二人にこんな騒ぎ立てる程アメリカって国は暇じゃねぇだろ。騒ぎ立てる理由なんざぁ調べれば直ぐに出る。ウチの上司は有能なんでなぁ。大体はお見通しだとよ」
それを聞いた奴等はオレを信じられねぇって面で見てきたけど、そんな事で驚いてたら政治ってのは廻せねぇんじゃのかい? これで驚いてたんじゃあホワイトハウスの一番お偉い御人はあっという間に過労死してるだろうよ。
「それで完璧に連中のかくれんぼが終わるまでオレはオペラ鑑賞を引き受けるわけだ。連中が気持ち良く歌えるようになぁ。まぁ、それもかくれんぼ終了までだけどなぁ。その知らせが来たら即座にウチの上司がお代を支払うって寸法だ。その額に連中は驚き過ぎて人質のことも気にならなくなるだろうさ」
「そ、それはどういう……」
あれ? 少しばかり分からなかったか?
まぁ、そこは知らなくてもいいだろ。知ってたら知ってたで五月蠅そうだしなぁ。
「オレがお前さん等にお願いすることは二つだけだ。邪魔が入らないようにしてもらうことと、報道規制をしてもらうことだけだ。これから先は刺激が強すぎてお子様には耐えられねぇからなぁ」
面白そうに笑いながらそう言うオレに周りの奴等は絶句する。
きっと頭の中じゃ『それらしい』光景が広がってるんだろ。この後それは駄目だ何だと言いそうなもんだが、手がねぇ連中は黙るしかねぇ。
その様子に更に笑いながらオレはオペラを自由に歌ってる奴等の元へと歩いて行った。
「誰だ、貴様は!!」
マイク片手に近づいてきたオレに向かって歌ってた奴が叫んできた。
その姿はスカーフなどで顔を覆って顔を分からないようにしてあるが、声からして若い女だってことが分かる。
そんな女に警戒させないよう、オレはクロード直伝の爽やかな笑みってもんを浮かべて話しかけた。
「オレは政府からの交渉人だよ。前の交渉人じゃ埒が空かないってんでオレが代わりにきたのさ」
「なっ!? 舐めているのか! こんな重大な事に子供を寄越すだと!」
オレを見て更に起こる女。
そいつはさっきも見たっての。まったく、どうして大人って奴は自分より下だと見下すんだろうかねぇ。
「くそ、舐めた真似をして! おい、人質を」
「少し待てって。別に巫山戯ちゃいねぇよ。この御国が『実力主義』って奴なのは知ってんだろ。これは順当な判断って奴だよ。だから人質に向けてる銃を下げてくれないか」
どうも若い奴らってのは短気でいけねぇなぁ。
もう少し余裕ってもんがねぇと……焦ってるのが丸わかりだぜ。
笑いたいところだが、そいつを内心で我慢して更に相手に話しかける。
「これでもそれなりに能力は高いんだ。だから最初からアンタ達の声明を聞かせてくれないか。ちゃんとしっかり言ってくれた方が嬉しいからさ」
話しやすいように優しく話しかけると、連中は少しだけ間を開けた後にオレに向かって声明を話し始めた。
「もう一度言ってやる! 我々はより女性の政治的立場の向上を………」
まぁ、聞いた通りの演説に内容だった。
内心じゃあ呆れ返って爆笑したくなっちまうが、何とか堪えて真剣そうな顔を作る。
「いいだろうか?」
「何だ!」
「仮にそれが通ったところで世界各国が認めるとは思えねぇんだが、そこのところはどうなんだい?」
その質問に対し、女は顔こそ見えねぇがニヤリと笑ったようだぜ。
「別に我々の行為が認められる必要は無い。これはあくまでも種火に過ぎないのだから。我等の行動を見て、他の女性達が行動を起こすためのきっかけになればいい」
どうやら後者だったらしい。
もう考えは決まってますって感じだねぇ。こういう奴等は絶対に説得に応じねぇってのは、アフガンの宗教紛争で仕事をした時に良く見てる。
だからこの交渉ってのが無駄だってことが良く分かるもんさ。ゆらがねぇ妄執ってやつかねぇ。
その後も話を引き延ばすが、奴さんは段々焦れったくなってきたのか声が高くなっていく。そろそろ限界かねぇ。
「貴様、いい加減にしろ! もうこれ以上の時間稼ぎを聞く気はない! 応じないのなら、もう人質を殺す!」
オレとのお喋りに遂に堪忍袋の尾が切れたらしい。
女は仲間に銃の引き金を引くよう指示を出そうと腕を上げる。
クロード、もうそろそろ限界みたいだぜ。どうしようかねぇ……。
そんなことを考えてた所で、耳元のインカムから通信が入って来た。
『レオス、ご苦労様です。向こうは問題無く終わったと今し方連絡が入りました』
「わかった。んじゃ、ヨロシク頼むぜ」
『はい』
クロードからの通信が終わると共に、人質に銃を向けていた奴の頭が……。
吹っ飛んだ。
一瞬にして頭は脳漿と血肉を撒き散らし、首から上を綺麗に消失させていた。
「なっ!? 狙撃……だと!」
さっきまで話していた女は目の前で起こったお仲間の頭部消失ショーを見て驚愕してるようだ。顔が見られねぇのが残念だが、きっと笑える面をしてるだろうよ。
更に続けてもう一人のお仲間の頭も綺麗に吹っ飛ぶ。
その光景に周りは阿鼻叫喚の悲鳴って奴が聞こえてくる。何ともまぁ大いに騒いでいるわけで。だから言っただろ……刺激が強いって。
「馬鹿な! ここら辺に狙撃出来るポイントはないはずっ!」
「残念だったな。ウチの上司が狙撃が得意でなぁ、2000メートル先のリンゴでも綺麗に撃ち抜くんだよ」
「に、2000……だと。それに上司? 貴様は一体……」
この事態に思いっきり笑うオレを見て怖じ気づく女。
そんな女にオレは愉快そう笑いながら答えてやる。
「オレは交渉人じゃねぇよ。ただの………傭兵だ」
「なっ!? 政府め! こうなったら」
「おっとそいつは無駄だから止めておけ。お前さん等が押さえてた大勢の人質はもうとっくに救出済みだ。お仲間は仲良くあの世でピクニックしてるよ」
「っ!? きっさまぁあああぁああああぁああああああああああああ!!」
逆上して女は懐の拳銃を引き抜く。
もう後がねぇんでそうするしかできなかったんだろうよ。
だが、生憎そいつを喰らう気はねぇなぁ。
そう思うと共に、オレは腰のモンに手をかけた。
次に鳴ったのは、轟音に近い銃声。
そして………額に穴を開けて倒れ込む女の姿だった。
オレの手にはいつも使ってる相棒『オルトロス』(IS用ではない)が一丁握られていた。
「オレの一番得意なのは早撃ちなんだよ。残念だったな」
そう女に向かって言うが、女からの返答はなかった。
こうして、この人質立て籠もり事件は幕を閉じたって訳だ。