はぁ、まったく……やれやれだ。
久しぶりの本格的な依頼かと思えば、交渉をやれなんて面倒臭ぇことを命じられるなんてなぁ。二日酔いで最悪な気分にこの上ねぇってのに、我等が上司は厳しすぎるねぇ。
それでやってみりゃお馬鹿の愚痴に付き合わされる始末。
オレは相談所の人間じゃねぇってのによぉ。奴さん、相当溜まってたらしい。
大義なんてモンを掲げてるもんだが、蓋を開けてみりゃ出てきたのはただの高慢ちきな文句ばかりだ。
聞いてる方が滅入ってくるぜ。しかも二日酔いによく響く甲高い声の御蔭で頭の痛みが増して来やがる。
顔には出さなかったが、あまりの苛つきに直ぐにでも月までぶっ飛ばしたくなったのを我慢するのは苦労したよ。
それでやっとダニガン達の方が終わったってクロードから知らせが来たと同時に奴さんはブチ切れ。
人質を殺そうとした所で頭を吹き飛ばされちまった。
流石はクロード、千里眼の二つ名は伊達じゃねぇなぁ。紳士なあいつにしちゃあ、むごいことをするがねぇ。
そのままもう一人も頭を吹っ飛ばされて、主犯の奴が顔を真っ青にしてたよ。
実に笑える面だったんで笑いたかったところだが、笑おうもんなら頭に響いて痛みそうなんでやめた。
それで奴さん、お仲間が黒髭みてぇに吹っ飛んだもんだから、キレてオレに銃を向けようとしやがった。
何でオレがしたわけでもねぇのに向けられなきゃならねぇのか。理不尽ってもんをかんじるよ。
まぁ、その後は十八番の早撃ちで奴さんの方が先に額でタバコを吸えるようにしてやったわけだが。
それでお仕事も終わりってんでダニガン達と合流したら上司からのお説教だ。
真面目なことは結構だが、御蔭でこっちはまったく仕事をしたって感じがしねぇ。
元からつまんねぇ仕事だった所為で、仕事をしたって言うよりも遊んで馬鹿やったせいで叱られるガキみてぇな気分だ。
後はこれで終わりなんで帰ればいいんだが、やっぱり全員つまんなかったらしくて不満たらたらだ。労働意欲ってのは大切なもんだねぇ。
そいつはあのクロードも同じだったらしく、アイツにしては珍しく悪い笑顔で仕事を更に受けて来やがった。
内容は今回の馬鹿げたカラオケ大会を主催したお馬鹿にお仕置きをすることだってよ。
そいつを聞いた途端に目をガキみてぇに輝かせた全員。
まったく、どいつもこいつも厳禁な奴等だねぇ。オレも人の事は言えねぇけど。
こんな退屈な仕事をやらされたってのもあるが、何よりも二日酔いで参ってる時にこんなお馬鹿なカラオケ大会に巻き込まれたんだ。
文句をぶちまけたくなるのは当然だろ。
それでみんなピクニックよろしくにウキウキ気分で主催者のいるオクラホマまで出向いて、そこでキャンプファイヤーとしゃれ込んだ。
主催者も大層楽しんでなぁ、あまりの楽しさに床にお脳をぶちまけたよ。
盛大に盛り上がったら、後は警察が来る前にずらかる。
本来なら火の後始末もマナーなんだが、そいつは出来そうにねぇ。消防にでも頼んでもらうことにしたよ。
溜まった鬱憤もすっきりと晴らせたことで、俺達は行くときよか幾分マシな面でこうして本部へと帰っていったってわけさ。
本部に着くと、入り口辺りにお嬢様とカイルの二人が立っていた。
どうやらお出迎えらしい。まったくもって微笑ましい感じだよ。
「レオスさん、お仕事お疲れ様でした」
お嬢様はオレを見るなり、安堵したらしく顔を赤くして微笑んできた。
いやぁ、流石はお嬢様だ。見てて心が安らぐねぇ。
行きの時からずっと野郎だらけのの車内に積み込まれていたんだ。久々のお嬢様の笑顔は心に染みるよ。
「あぁ、ありがとよ、お嬢様」
「お仕事の経緯、テレビで見させて貰いましたわ。流石はレオスさんです! 人質は皆無事だそうで」
お嬢様は我が事のように喜んでオレを褒める。その様子は微笑ましいもんだが、実際の内約を知ったら沈むんだろうなぁ。
そう思うと詳しくは話さねぇほうが良さそうだ。
「お疲れ様でした、レオスの兄貴! 後で話を聞かせてもらってもいいですか」
お嬢様に続いてカイルの野郎もオレに話しかける。
その様子から今回の仕事について聞きたそうだ。こいつは今回お留守番だったからなぁ。そいつは後で話してやるとするかぁ。
こいつのはもうちょっと使いもんになってもらわねぇと困るからなぁ。
取りあえず全員車から降りたところでクソオヤジが号令をかけてきた。
相変わらずの大音量に二日酔いの身としては、直ぐにでも300キロの爆薬と共にミサイルにくくりつけて発射したい気分で一杯になるよ。
何でしちゃいけねぇのか世の中不思議で仕方ねぇ。
「皆、仕事ご苦労だった! 確かに最初の仕事は地味でみみっちい暇な仕事だったが、全員ちゃんとやることはやったようで何よりだ! 特にオイタをした奴もいないんで安心した。その後のキャンプファイヤーも悪くなかったぜぇ! 御蔭でアメリカ政府は大喜びだ! あそこはウチのお得意さんの一つだからなぁ、これで俺等の株も更に上がったってもんだ! これからも頑張っていくように。後、この後暇な奴は飲みに行くぞ!」
「「「「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
そこでテンションをさらに上げて盛り上がる全員。
仕事の後の一杯ってのは人生の楽しみってやつだからなぁ。
盛り上がったテンションを下げるように今度はクロードから声がかかった。
「皆、盛り上がっているところで申し訳無いですが飲みに行く前に反省会です」
それを聞いた皆はぶうぶうと文句を洩らすが、それでも聞く体勢を取る。
その様子は流石クロードとしか言いようがねぇ。ウチで一番偉いのは絶対にクロードだろうよ。
「今回、交渉役のレオスはもう少し交渉術がなんなのかについて今後話して教えるようにしますので覚悟するように」
それを聞いてげんなりしちまうのは仕方ねぇよなぁ。
お嬢様はオレがどんな交渉をしていたのか気になって仕方ねぇって面でオレを見てきた。その面ときたら好奇心旺盛な子犬のそれだ。こりゃはぐらかせそうにねぇなぁ。
「また、これは私にも言える事ですが、アメリカ政府から少々『苦情』が来ました。あまり派手にやられると処理が大変だと」
それを聞いて全員爆笑する。
そいつをクロードが言っちゃあ終わりだな。
まぁ、片付けをする側からしたら最悪だろうよ。首から上がねぇ死体を処理させられるんだから。オレが少し見てた限り、5人中3人は吐いてたからなぁ。
どうもダニガン達もやらかしたらしい。
人質の何人かはトラウマが出来たってよ。命あっての物種なんでそこは我慢してもらいてぇなぁ。
「以上で反省会を終わります。皆、飲みに行くのはいいですがその前に報告書の提出を忘れないで下さい。特にレオスと団長、忘れないで下さいね」
ちゃっかり釘を刺していくクロードに笑う周りの奴等。
そう笑うお前等もあまり人のことが言えねぇだろうによぉ。後で覚えてろよ。
そして解散になった所で各自残りの仕事に取りかかりる。
オレもやることはやらねぇとなぁ。でないとまたクロードにお説教されちまう。
だから自分のデスクに向かおうとしたんだが………。
「あ、あの、レオスさん……お仕事の時のお話、もっと教えて下さいませんか」
お嬢様が顔を赤くしながら恥ずかしそうにそう聞いてきたよ。あぁ、こりゃもう聞かなきゃ動かねぇって感じだなぁ。随分とオレも甘くなったもんだ。
「はぁ、仕方ねぇなぁ……オレの部屋で話してやるよ、お嬢様。だからその代わり、美味い紅茶でも淹れてくれよ」
「はい!」
お嬢様は滅茶苦茶嬉しそうに頷くと、心弾むって感じで昨日寝たオレの部屋に向かって急かすように歩いて行く。
クロード、どうやら報告書は遅れちまいそうだ。悪いが、文句は言わねぇでくれよ。
こうして、オレは二日酔いに痛む頭を押さえながらお嬢様と共に自室へと向かった。