恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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第八十一話 お嬢様と狙撃訓練 その3

 クロードの野郎の所為で面倒臭せぇ実演も終わり、オレは再びお嬢様にライフルをパスした。

 

「まぁ、こんな感じだよ。なぁに、こんなんのは慣れだ慣れ。お嬢様もやってればすぐにこんなもん出来るようになるさ。だからまぁ……頑張りな」

「はい、頑張りますわ!」

 

お嬢様は顔を真っ赤にしたまま元気良くそう言うと、何やら浮かれた感じでターゲットの前に向かって歩き出していった。

その後ろ姿から妙に張り切ってるってことが窺えるよ。

褒めたら素直に喜べるってのは美徳だねぇ。こっちじゃ知ってる奴等は全員ひねくれ者しかいねぇから、素直な奴がいねぇんでなぁ。

 

「では、今度はさっきのターゲットと一緒に遠近法による誤差狙いのターゲットも一緒に狙いましょうか」

「はいですわ!」

 

クロードから指示され、お嬢様は返事を返すと再び起き出すターゲット。

そいつを狙ってお嬢様は再び引き金を引き始める。

その光景を見ながら、クロードは指示を出していた。

 

「サークルで見ないで下さい。人型なのですから、人体その物と一緒です。なら、狙う急所も変わりません。急所を狙えば確実に相手を処理できます」

「は、はいですわ!」

 

クロードの指示を聞いてお嬢様は狙うが、どうにもお嬢様にはえぐい指示な所為か、狙ってから引き金を引くまでの間が掛かりすぎるようになって来ちまってるなぁ。

 

「クロード、もうちょっとオブラートに包んでやれよ。お嬢様には刺激が強すぎるってもんだ。まだ『処女』なんだからよ」

 

ここに来てからやっと吸えるようになった本物のタバコを吹かしながらクロードに向かってそう言う。

やっぱり本物はいいもんだ。安モンのアメリカンスピリッツだが、この胸に満ちる煙の感覚は偽物にはねぇからなぁ。いつもならお嬢様に止められちまって吸えねぇんだが、流石に訓練中には言えねぇからなぁ。こんな時じゃねぇと吸えねぇのさ。

この場での『処女』ってのは勿論、あの会長さんに言ったのと同じやつだ。

それが普通なんだから、クロードの指示だとちっとばかしきついもんがある。

それにオレとしては、お嬢様みたいな奴はずっと『処女』でいて貰いたいもんさ。綺麗なモンは綺麗なままってね。

するとクロードはオレに苦笑を向けて来やがった。

 

「レオス、女性を前にその発言は止めて下さい。下品ですよ」

「そう言うなって。分かってるんだったらもうちょっとはお優しく言ったらどうなんだ。お前さんにしちゃワイルドだろうが、もう少し紳士らしさを出した方がいいと思うがね。何で急所を狙うのかってことはわかりきってるんだからよ。その有用性について、もうちょっと語ったらどうだい」

 

そう言ってお嬢様の方を見ると、お嬢様はライフルの引き金を引くのを止めて顔を真っ赤してたよ。

 

「ぁ、ぁぅ……処女だなんて……は、恥ずかしいですわ………」

 

どうも恥ずかしがってるらしい。

その初々しい反応が実にいいもんだ。見ていて面白いねぇ。

だが、そんな事で集中乱してると、『先生』に怒られちゃうぜぇ。

 

「セシリアさん、集中して下さい。銃器を取り扱ってる時は、ほんの僅かな気の緩みが命取りになることもあるのですから」

「す、すみません!」

 

お嬢様はさっそく注意を受けちまった。

恥じらうのも結構だが、授業中は静かにしねぇとなぁ。(笑)

するとクロードがオレに妙な笑顔を向けて来やがった。

 

「でしたら、その有用性を貴方の口から教えてあげて下さい。たぶん、貴方の方がよく説明出来ると思いますから」

 

なんとまぁ面倒臭ぇことだ。

この野郎、オレに丸投げしやがったよ。しかもその面は知ってるけどオレにやらせた方が面白そうって面だ。

そいつは実に不愉快だが、ここで断ろうもんなら手痛いしっぺ返しを喰らいそうだ。そいつはおっかねぇ。

オレはそいつにうんざりしながら後頭部を軽く掻いて肺に満ちた煙を吐き出す。

 

「はぁ、仕方ねぇなぁ。んじゃお嬢様、ちっとばかし先生交代だ。オレのレクチャーはあまり面白くねぇから覚悟しておけよ」

「は、はい………」

 

未だに赤い顔をしたお嬢様からライフルを借りると、そのまま力なく構える。

元々狙撃なんて得意じゃねぇんだから、オレにやらせるなってんだ。

クロードがむかつく笑みをオレに向けたまま、オレはお嬢様に簡単な説明をし始める。

 

「クロードが言ってること自体は間違ってねぇ。一々撃つモンにサークルなんて書かれてねぇからなぁ。サークルを見てから撃ってたんじゃぁ遅ぇ。人を見た途端に心臓や頭を速攻で狙えるようにならねぇとなぁ」

「そ、それはそうですけど……」

 

お嬢様は気まずい顔をしてきた。まぁ、仕方ねぇ話だ。

お嬢様は代表候補生として色々やってきたんだろうが、オレ等からすれば『ただの的当て』。『人を撃つ』訓練はしてねぇんだからなぁ。

いきなり『人殺し』の練習をさせられりゃ戸惑うってもんだ。

そのことはクロードも分かってるはずだろうよ。それを知っていてあんな教え方をしたんだ。つまり初めからオレにやらせる気だったんだろ。

面倒臭ぇ手回しをするもんだねぇ。

まぁ、もうやらされちまってるんだから今更何も言えねぇんだし、任された分ちゃんと教えてやるかなぁ。

 

「お嬢様、そんな難しく考えんなよ」

「そ、そうですけど、その……あまり生々しいのはちょっと。確かにライフルでの訓練はしたことがありますけど、そこまで意識したことはありませんので……」

「別にお嬢様にそうなれって言ってるわけじゃねぇんだ。ここで重要なのは、狙った場所に確実に当てられるようにしろってことなんだからよ」

 

お嬢様にそう言うと、今度はクロードに目を向ける。

 

「クロード、どうせ『そういった訓練用』のモンもあんだろ。出してくれ」

「お察しの通りです。わかりました」

 

クロードがオレの反応に笑みを浮かべながら端末を操作すると、700メートル先にあるターゲットが出てきた。

それは今までのターゲットとは違う、本当にそのままのマネキン人形だった。

そいつに狙いを定めると、お嬢様に見えるようニヤリと笑みを浮かべる。

 

「今から行った場所を吹っ飛ばしていくから良く見ておきな」

 

ライフルをそれらしく構える銃身をマネキンに向ける。

 

「右手」

 

引き金を引くと、発射された弾丸が吸い込まれるようにマネキンの右手の甲を貫き吹き飛ばした。

 

「あっ………」

 

その光景を見てお嬢様から可愛らしい驚きの声が漏れる。

ギャラリーが盛り上がってくれるとエンターテイナーは嬉しいもんだ。

そのままさらに狙いを付けていく。

 

「左肩、喉仏、肝臓、右股関節、左脛、右肘、左膝………」

 

言った所から順にライフルの引き金を引いて撃ち貫いていく。

狙い通り飛んで行った弾丸は見事にターゲットのマネキンへと向かい、その箇所を的確に吹っ飛してものの見事にマネキンをズタボロのオブジへと変えていったよ。

そしてもう胴体以外殆ど残らないほどにしこたまぶち込んだ後、ライフルを降ろしてお嬢様に向き合う。

 

「と、まぁこんな感じだ。狙った場所に確実に当てられるようになれば、被害を出さずに相手を無力化することも出来るってモンさ。ISのバトルでも相手の苦手な部分にピンポイントで攻撃できるとかなぁ。クロードが言いたいことってのはそういうことなのさ。ガイドに従ってるんじゃなくて、自分で狙うんだよ」

 

するとお嬢様は顔をさっきとは別の意味で顔を真っ赤にしてはしゃぎ始めた。

 

「凄いですわ! レオスさん、わたくしよりもお上手ではないですの! それで苦手だなんて、謙遜ですわ!」

「おいおい、そんなに褒められても何もでねぇぜ、お嬢様」

 

そのまま興奮したままにお嬢様はオレの手を握って騒ぐ。

その様子は年相応って感じだから見てて微笑ましいもんだ。

まぁ、悪くはないがね。

そんな俺達を暖かい眼差し、何て言う気持ち悪ぃ目で見ていたクロードは此方に向かってきた。

 

「まぁ、大体レオスの言っている通りです。確実に狙った場所を攻撃出来る様なるのは、それだけで有利な状況を作り出せるんですよ。別に急所しか狙ってはいけないというわけではないのですから。用途によって狙う場所は変わりますので、それを確実に狙えるようになればより貴方の戦力向上の助けになることでしょう」

「は、はい!」

 

それまで騒いではしゃいでたお嬢様はクロードに言われて背筋をぴしっと伸ばした。どうやら驚いたらしい。先生の前にではしゃぐのは程々にってなぁ。

落ち着いてきたお嬢様にクロードは改めて説明をし始め、お嬢様はそれを真面目に聞き始めた。

まぁ、後は普通にやってくだけだろうよ。オレの出番はなさそうだ。

そして説明を聞き終えたお嬢様は意気込み新たにオレに顔を向けてきた。

 

「レオスさん、見ていて下さい! 少しでもあなたに追いつけるよう、頑張りますわ!」

 

その眩しい笑顔にオレは目を細めながらあることを思いついた。

せっかくやる気になってるお嬢様に発破をかけるってのは、何だか面白そうだ。

 

「おう、頑張りな、お嬢様。そうだな……んじゃ頑張ったら後でご褒美でもやるよ」

「ご褒美ですの!?(な、何をお願いしましょうか………キスとか?……キャーーーーー!!)」

 

見事に食い付いたお嬢様はコレまで以上張り切ってターゲットを狙いに撃ちに向かっていった。

 

 

 

 この後もクロードの野郎の悪知恵で出来た最悪な狙撃演習が続き、お嬢様はぶっ倒れるまで頑張ったよ。

御蔭でもうへろへろだ。

髪が地面に着くのも気にせずに倒れて伸びてるよ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

汗を掻いて赤くなった肌がなんとまぁ艶っぽいこって。

そんなお嬢様に満足したのか、クロードはライフルをケースにしまうと、オレに向かって微笑んできた。

 

「今日はとても楽しかったですよ。やはり若い人は活気があっていい。レオス、セシリアさんを医務室まで運んであげて下さい。私はライフルをしまってきますから」

 

そう言うなり勝手に行っちまうクロード。

まぁ、文句を言った所で始まらないからなぁ。

オレは疲労困憊のお嬢様を前で抱えていくことにした。

 

(ま、まさか……お姫様抱っこだなんて……嬉しいですわぁ~………)

 

お嬢様は変わらず顔が赤かったが、どこか嬉しそうだった。

 こうしてお嬢様の狙撃訓練は終わったってわけさ。

 

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