兵器を使うプロが兵士だ。
だが、そいつは使うってだけであって、兵器の修理や調整といった細部まで全て把握してるわけじゃねぇ。精々出来て簡易整備くらいなもんさ。
その点で言えばプロとは言えねぇ。さっきも言っただろ……オレ達兵隊は『使う』プロだってなぁ。
つまり『兵器』のプロってのは、そいつを作り、そいつの細部まで把握し治すことが出来る奴の事を言うわけさ。
オレ等は使い手、向こうは制作者。
精通してても分野は違う。だから、いくら凄腕の兵隊でも、武器の調子を見て貰うためには、こうして出向かなきゃならねぇ。例えそれが機械にしか欲情しない頭のイカれた変態のところでもなぁ。
そんな訳で、オレは嫌々ながらもこうして『スカイウォーカー』の産みの親にして、オレが知る限りトップ5に入る変態に会いに来た。
「それでどうだい、娘の調子は? 是非ともデータを見せてくれたまえ!」
ウェイブの野郎はテメェの研究室に案内してる間にテンション高めにオレに聞いてくる。ここで見て思うのは聞いてる感じが可笑しいってことだ。
普通の研究者ならデーターやら使用者の実感について堅実に聞いてくるもんなんだが、こいつの口調はまるで娘の学園生活がどうなのかを気にしてる親父のそれだ。
入れ込み具合が断然に違う。一流の職人って奴はそんな人種が多いらしいが、オレから言わせて貰ったら、物にそんな入れ込んでるってのは一種の変態としか言いようがねぇ。特に目の前の奴なら尚更なぁ。
「そうテンション上げてガキみたいにはしゃぐな。大人らしくクールにいこうじゃないか、ウェイブ。なぁに、急がなくてもテメェの愛しい愛しい『娘』達は逃げねぇよ。これが普通の人間だったら即座に逃げ出してるだろうけどよ」
「何を言うかね! 自分の子供を愛するのは当然のことだろう! 娘達も父親に会えることを喜んでくれるに違いない」
自信満々に答えるウェイブに辟易しちまうよ。
何せ野郎はこう言っちゃあいるが、だったらテメェは自分の娘に欲情するのはどうなのかってなぁ。普通の人間だったら即豚箱入りだ。聞かないのは野郎のことだから、どうせ『勿論、娘を愛することの何が悪い!』って主張するに違いねぇからだよ。本当、何で天才ってのはこんな奴ばかりなんだろうねぇ。オレは理解に苦しむよ。
そんなことを思いながらオレは奴さんに連れられてエレベータに乗ってから歩くこと十ッ分弱。オレ達はとある部屋の前に来た。
部屋に掲げられてる名前は『特殊兵器開発局』。
ここがオレ達の目的地さ。
入った途端に耳に入ったのは、甲高い何かの金属音と、PCの作動音。
辺りを見回せば広い部屋に犇めくPCに訳の分からない装置、そして大量の研究員がせかせかと動き廻っていた。
「あ、部長、お帰りなさい!」
「お帰り、部長!」
ウェイブの姿を見て、普通に話しかける研究員共。
この変態と普通に話せるあたり、余程慣れてるのかと思えばそうじゃねぇ。
見てわかっちまうもんさ。そいつ等の目がウェイブの野郎と同じ、イカれてるってことがなぁ。つまりこの場にいる奴等は全員ウェイブの御同類だ。
そう、このウェイブの野郎の根城こそ、この会社一の変態が集まった部署なのさ。
ここでオレのオルトロスやゲイボルグ、ミストレインは作られた。
ここに集められた奴らは皆、そんな頭のイカれた兵器を作るのが大好きな変態共なんだよ。
「ただいまだ、諸君。いや何、娘のボーイフレンドを連れてきた所なのでね」
「誰がボーイフレンドだ、誰が。頭の悪いジョークはテメェの頭だけにしてくれ。オレはサラリーマンとしてお仕事しに来ただけだよ。ほらよ、ウェイブ。とっととそいつの整備をしてくれ」
オレは突っ込みを入れつつ待機状態のスカイウォーカー……ドッグタグをウェイブに投げつける。
それを難なくキャッチしたウェイブは若干キレつつオレに返事を返して来やがった。
「何を手荒に扱っているんだ、ハーケン君! 娘が傷物になったらどうするつもりだ!」
「こんなんで傷物になったらそいつはISとして終わってるよ。どうせたいしたこともねぇのに一々騒ぐんじゃねぇっての」
変態の相手は疲れるねぇ。オレはもう帰りたくなってきたよ。
「あ、そうそう。もしスカイウォーカーにテメェの汚ねぇブツを擦りつけようモンなら、オレは即座にテメェのブツを斬り飛ばしてテメェの口にぶち込んでソロプレイ出来る様にしてやるからな。くれぐれもするんじゃねぇぞ」
これだけは絶対に言っておかねぇとなぁ。帰ってきてそんなもんが着いてた日にゃあ、オレはスカイウォーカーを全身洗車にかけた後、殺菌線消毒を丹念に行わなきゃ絶対に使わねぇことをここに誓ってもいい。
誰だって野郎の事後の後が着いたモン使いたがる奴なんていねぇだろ。
見てねぇとこの変態は、そのままここで研究員が見てる中で平然とプレイしそうなんでなぁ。
オレにそう言われたウェイブは、呆れたような目をオレに向けて来た。
「何を馬鹿な事をいっているのかね? 私は人前でひけらかすような悪趣味は持ち合わせていないよ。ただ……そうだね……交換したパーツの香りや感触を楽しみながら今夜にでも……ごくり……」
言ったオレが馬鹿だったよ。
こいつはオレの予想の斜め上を行きやがった。
どうやら奴さんにとって、交換用のパーツってのは女性の下着を同意義なんだとさ。だったら生身の方にもその情熱を向けて貰いたいねぇ。
「そうだね……20分ほど待っていたまえ。それで整備、調整は終わる。その後は君に試して貰いたい新しい娘達がいるんだ。皆実に良く出来た子でね。きっと君も気に入ると思う」
「その言い分からしてうんざりしてきたよ。そりゃあどう聞いても、また頭のイカれた武器を作ったとしか言いようがねぇじゃねぇか。いい加減普通のモンも作ったらどうだ?」
この会社の売りは頭のイカれた兵装ばかりだが、もう少しは普通のモンを作れば売れるんじゃねぇかなぁ。人格と精神は兎も角、腕は一流なんだからよぉ。
するとウェイブは人を馬鹿にするような目を向けて来やがった。
「君は何を馬鹿なことを言っているのかね? 個性の無い娘なんて可愛くないだろう。個性というのは、強ければ強い程に魅力的だ。無個性などと、夢もロマンもない娘に私は勃起しない!」
「「「「「そうだ、そうだ!!」」」」」
ウェイブに呼応してまわりの奴等も声を上げる。
こいつ等のチームワークと来たら、そりゃあもうワールドカップのサッカーチームも脱帽の良さだ。
呆れ返りすぎて笑えてくるよ。
「私は、TWOのあの形状がたまらない! その破壊力もさながら、使い捨てというところが特にだ! まるで一発やった後の女を………」
「私はスコーピオンの手軽さが実に好みだ。サブマシンガンの中でも特に良い! 片手で扱いながらもあの弾幕! まるで一人でしてる時………」
「待て待て。そこはベネリM3だろう! あのショットガンは最高だ! 散弾を放つときの開放感と来たら、もう……」
あぁ、始まっちまったよ。連中の変態トークが。連中、恍惚とした顔でテメェの好きなモンを語り出しやがった。
一般人が見たら即座に回れ右して帰るくらいヤバイねぇ、これは。
普通の武器を賞賛するんだったら兎も角、こいつ等のコレはもう変態の域に達して矢がル。
ウェイブ曰く、まだテメェの域にまで達してねぇそうだが、どう見たって時間の問題だろ。
特にショットガン持ち出してる奴、銃を上に掲げると共に自分のモンも上げてるんじゃねぇよ。あぁ、汚ねぇもん見ちまったぜ。
あの変態野郎の所為で改めて辺り全体が染まっていきやがる。
これ以上ここに居るのは、オレの精神に猛毒だね。
あぁ、お嬢様が懐かしく思っちまう。最後にした冒険も悪く無かったしなぁ。
「どうやらまだ時間掛かりそうだ。オレはエントランスでモクやってることにするよ。終わったら連絡くれ。んじゃな」
未だに変態話に華を咲かせるウェイブ達にそう言って、オレは研究室を出た。