恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回は新武装の登場です。


第九十話 理想主義と現実主義は相反する

 さて、変態共の実に性癖丸出しなトークに付き合う気はサラサラねぇんでなぁ。オレはそうそう退避させて貰ったよ。あれに付き合えるのは同類の変態くらいなもんさ。

エレベーターで一旦下に降りて、エントランスにある応接スペースに向かう。

そこで自販機で買ったコーヒー片手に座ってゆっくり寛ぐ。

まったくもってあの連中は変わらねぇなぁ。御蔭でもうお腹いっぱいだよ。

連中との付き合いも考えれば、あの仕事でISなんてモンを動かしちまったのが始まりだったなぁ。もしあの時動かさなかったら今頃何やってたんやら。

いや、IFなんてファンシーなモンを考えるような歳でもねぇ。感慨に耽るにはまだ歳はいってねぇもんだ。

気を取り直してコーヒーを啜り始めると、隣から声がかけられた。

 

「あの、同席よろしいでしょうか?」

「あぁ、別にいいよ……あれ、さっきの受付の人か」

 

声の方を向けば、そこに居たのはさっきまで受付にいた女だった。

その手にはオレと同じような紙コップが持たれてる。多分休憩にでも入ったんだろうよ。

そのままその女はオレの向かい側の席にゆっくりと座り、持っていたコップの中身に口を付けて疲れが分かるような溜息を吐いた。

 

「随分とお疲れみてぇだなぁ。やっぱり接客ってのは色々と大変みてぇだなぁ」

「ええ、そうなんですよ。中にはいきなり怒鳴りつけてくる人もいて……」

 

世間話に華を咲かせることで時間を潰すことにする。

些細な会話でも、そこから何かしらのネタってモンは手に入るもんさ。

そこから聞いたのは会社の愚痴や私生活での愚痴なんてモンばかりだ。

 

「本当に聞いていただいてありがとうございます。こんな愚痴ばかり……」

「別にいいさ。働いてりゃ誰だってストレスは溜まるだろ。特にこんなところで働いてりゃ尚更なぁ」

「えぇ、本当に。それにしても随分とお客様は凄いですね。あのウェイブ部長を相手によく平然としていられて」

 

そうそう、会社の愚痴の半分近くはウェイブの野郎と愉快な仲間達御一行の事だったよ。連中に世間のルールってモンは無いらしい。

人間誰しも不気味な野郎は敬遠するもんさ。実害があるのなら尚更なぁ。

曰く、研究室前から奇声や嬌声、異臭がするとか、変な予算案で事務を困らせているとか、そのド変態な発言で皆をカオスのどん底に落とすとかなぁ。

 

「アレの相手はまともにしたら終わりだよ。受け流すくらいが丁度良い。出ないとこっちの精神がイカれそうだ」

 

そう答え呆れたような手を上げると、受付のお嬢さんはオレの様子を見てクスクスと笑い出した。それほど可笑しいもんかねぇ。

その後も話は続き、色々と聞かせてもらったよ。

そこで一つ面白い話があった。

何でもここ最近、やけにあの野郎への客が多いらしい。

それも妙におっかない奴等だそうで、彼女はおっかねぇと怖がりながらも通したらしい。それで帰る頃はご機嫌斜めで悪態を撒き散らしながら帰るんだってよ。

妙に臭ぇなぁ……こいつはよ。

それで愚痴を聞いてもらったんで感謝しながら受付のお嬢様は去っていったよ。

その顔は聞いて貰えてスッキリしたって感じだ。その際に連絡先を教えてくれないかって頬を赤らめながらお願いされたが、そいつはやんわりと断らせてもらった。結構な美人だが、下手にそういうのを持つとややこしいんでなぁ。女の連絡先はお嬢様だけで十分だ。

残念そうに去って行くその背中を見ながらオレも立ち上がり、エレベーターに向かって歩き始めた。

そろそろ20分経つからよ。

またあのドがつく変態共と顔を合わせなきゃならないのはヘコみそうだが、コレもお仕事なんでね。行くとしますか。

 

 

 

「やぁ、帰ってきたかい、我が義息子よ」

「誰が義理の息子だよ。いくらテメェのご自慢の娘を使ってるからといって随分と気が早すぎやしねぇか? オレはテメェと違って兵器とファックした覚えはねぇ」

 

入ってそうそうかけられた実に不満で一杯になる台詞に対して、此方は此方で馬鹿にしつつ答える。するとウェイブは恥ずかしがり屋め、なんて身の毛もよだつような事を言って来やがった。

悪いがオレはお前さんと違って兵器に発情したり入れ込んだりはしねぇんでなぁ。使えなくなったら即座にポイ捨てするよ。

まったく、こんな変態と話してると言葉が低俗になって仕方ねぇ。

これじゃせっかくの紳士が台無しだ。

呆れ返りながら部屋に入ると、ウェイブが持っていたドッグタグをオレに渡す。

 

「調整、整備は終わったよ。いやぁ~、娘の成長が見れて、父親としてこんなに嬉しいことはないよ」

 

受け取ったドッグタグのセンサーを開き、奴さんが何かしでかしていないかを確認する。どうやら何もされてねぇみたいだ。腰に入れられてるオルトロスの出番はなさそうだな。

 

「そいつは結構で。仕事もちゃんと熟しているようでオレは安心だ。さて、んじゃ次の話をしようじゃないか」

「そうだね。新しい娘の事について話すとしよう」

 

安心した所で次の仕事の話をすることにする。

ここに来たのは調整や整備だけじゃねぇ。ここの会社の新しい商品になるプロトタイプの試射なんかも行うのさ。一応はテスターってわけだよ。

まぁ、今の所成功した商品の試しはねぇがなぁ。ここの武器は全部癖が強すぎて使い勝手が悪ぃ。それでも注文が来るのは、オレが使って暴れてることが知らされているからだと。

あまり嬉しくない報告だよなぁ。オレが強いのは使ってる武器が凄いからだと思われてんのかねぇ。

だったら心外って奴だ。実際、勝手も使いこなせねぇってんで何人も再起不能にした後に返品で帰ってきたモンもあるくらいだからなぁ。

それでもまったく懲りずにそんなもんを作ってるこいつ等もこいつ等だが、その変態武器を懲りずに買おうとする奴も奴だろうよ。世の中物好きはいるもんだ。

 

「それで? 今回はどんなぶっ飛んだ代物なんだ?」

「失敬な! とてもユニークで可愛らしい個性的な娘だよ」

 

胸を張ってそう言うウェイブに周りの奴等が頷く。

息の合ったことで何よりだ。

 

「既に娘は君のスカイウォーカーの中に収納してある。そのまま試射場に向かい試してくれ。勿論、私も一緒に同席するよ、娘の晴れ姿が見たいからね」

「マジで大丈夫かよ、そいつはよぉ。嫌だぜ、オレは……ぶっ放したら腕まで一緒にぶっ飛びました、なんてよぉ」

「まぁ、大丈夫だろう。君なら千切れ飛ぶとも思えないしね」

 

まったく安心させてくれねぇなぁ、こいつは。

それでウェイブの野郎を引き連れてその試射室へと向かうことに。

そいつはいいんだが、何で他の奴等も着いてくるかねぇ。

 

「そんなことは当たり前ですよ。何せ今回の子は私が基礎設計に携わらせていただきましたし」

「私も実際に動いている所をみたいです」

「はぁ、はぁ……俺のガンブレードちゃん……思い出しただけで勃ってくる」

 

どうやら連中も自分が関わったもんが動いている所を見たいらしい。

何やらヤバイ奴も混じってるみてぇだが。

そして試射室に案内された。部屋の中は結構大きく、天井も高くて普通にISを展開出来そうだ。

入ると連中は挙って管制室の方へと向かい、ウェイブの野郎から通信が入った。

 

『では、早速スカイウォーカーを展開し、まずはこう叫んでくれ。(デルフィング)と』

 

その言葉通りにスカイウォーカーを展開し、言われた通りにその名前を呼んだ。

 

「『デルフィング』」

 

その声と共に俺の手に展開されたのは、何やら奇妙な大剣だった。

片刃の刃をUZIから生やしたような感じで、その刀身の上に何やら銃身のような物が着けられポンプアクションのレバーが見える。

 

「おいおい、何だよこのキワモノはよぉ。随分とごちゃごちゃしてるじゃねぇか」

『そんなことを言うな! 彼女は君のオルトロスの妹にあたるのだからね』

 

そいつはマジかと疑いたくなっちまうよ。

見た目は全然似てねぇってのになぁ。

するとそんな声を出していたせいか、他の奴から説明が来た。

 

『この子の名はデルフィング、北欧神話の魔剣から名を取りました。その最大の特徴は複合兵装! UZIを改良し、弾丸数と精度をアップしし集団戦をより円滑に。そのまま斬り掛かることで打撃力の高い接近戦での斬撃を相手に与える事も出来ます。さらに一番凄いのは可変機巧! 持ち手の部分を手前に引くように動かして下さい』

 

言われた通りにすると、本当に持ち手が動いた、

それと共に中でガチリと何かが切り替わる感触がし、まるで銃剣が着いたショットガンに早変わりする。

 

『そのように近接戦でパンチの効いたショットガンを撃つことが出来る様になっています。コレにより、より戦術の幅を広げることを可能としました。今までに無い、画期的な娘ですよ!』

 

ま~た頭が可笑しいとしか言いようがねぇもん作りやがって。

見た目は凄いわなんわって、本当に使えるのかねぇ。

 

『あ、疑っているな。その子は優秀なんだよ。まぁ、まずは試してみるといい』

 

ウェイブがそう言うなり、部屋にターゲットが現れた。

 

「んじゃ、試してみるかねぇ。取りあえず」

 

さっそくそのデルフィングの構えてUZIをばらまく。

軽快な炸裂音と共に吐き出される弾丸がターゲットをズタボロにしてゴミへと変貌させていく。

 

「悪くねぇ感じだな。んじゃ次だ」

 

そのまま今度はターゲットに接近して斬り掛かる。

少し重いが、その分確かに威力はあるだろうよ。一刀両断で太いターゲットが斬り飛ばされた。

 

「こいつは結構難いな。んじゃこれは」

 

そこから変形させてショットガンへ。

近くにいたターゲットに向かって発砲。

一瞬で原型が無くなるくらいボロボロになった。

 

「確かにパンチが効いてるな、こいつは」

 

そのまま繰り返し似たようなことを何度もやっていき、そして満足して止める。

 

「悪くはねぇが、やっぱり重い所為で振り回されそうだ。使い所が結構シビアな接近戦仕様って感じだな」

『君にそう言わせるとは、流石は我等が娘だな! もう少し改善出来る様にしよう。では次の……』

 

ウェイブが次の兵装のテストをするよう言おうとしたら、直後に建物に衝撃が走った。

こいつは………爆破されたみてぇだな。

そのことを聞こうと思いウェイブに顔を向けると、野郎は実にイイ笑顔を浮かべやがった。

 

『せっかくだから、もう一人の娘は実戦での晴れ舞台にしよう。彼女を祝いに来てくれた客人も来たようだしね』

 

さすが狂人、この事態に戸惑う所か喜んでやがった。

まぁ、コレもお仕事だ。

 

「あいよ。んじゃさっそく……お披露目と行こうじゃないか」

 

オレはそうウェイブ達に言いながら、外へと飛び出して行った。

 

 

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