恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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今回一番可哀想なのは、やっぱり受付の人ですね。


第九十一話 歓迎しよう、珍客を。

 人間ってのは、常に平和に静かに毎日を暮らしたいもんさ。

まぁ、若い奴ってのはその有り難みってもんがわからねぇから刺激を求めてヤンチャするんだが。

オレとしてもその意見には賛同だ。

やっぱり平和ってのは尊いもんだからよ。

だが、それを望むにはまず、この職業を辞めることから始めねぇとなぁ。

まだまだ辞める気はサラサラねぇけどよぉ。

そんなわけで、絶賛労働意欲が漲ってるオレにはどうも、厄介事がついて回るらしい。

ただ出向先で変態とトークしてそいつ等の性玩具の試しを行うはずだってのに、どういう訳か珍客の接待まで任されちまった。

これも出向のお仕事の一つなんだとよ。

それじゃあ仕方ねぇなぁ。お仕事ってのはやらなきゃならねぇことだからよ。まぁ、手当てくらいは期待してもいいよなぁ。

サラリーマンたる者、仕事は大事だからこそ、オレはその珍客の相手をするために試射室から飛び出して爆破されたであろう一階エントランスへと向かう。

ここで馬鹿正直にエレベータを使うアホはいねぇ。

通路のある窓をぶち抜いて外へ踊り出すと、そのまま直ぐ隣のビルへと飛び乗る。

何で直に行かねぇのかだって? そのまま行くのも悪かねぇが、ここは寧ろ連中が何をのたまわってるのか興味があるじゃねぇか。

そいつを聞くために少し離れて覗こうって話しさ。

仮にもISだからなぁ。これぐらい余裕で出来る。

オレは一応しゃがみながらエントランスあたりに索敵をかける。

センサーが表示したのはISが3機と、生体反応が10人くらいだ。

配置からしてISが出入り口付近で警戒と威圧を兼ねて立っていて、その次に8人くらいが周りの連中が逃げださねぇように張ってるって感じだ。硝煙反応がある辺り、多分全員武装してやがるなぁ。

それで最後の一人が音声を聞く限り、人質を取って何か喚いてやがる。

 

「イヤァアアァアアァアアアアアアアアア、止めて、離してっ!!」

「五月蠅い、黙っていろ! 貴様もこの肌に傷を付けられたくはないだろう?」

「ひっ!?」

 

どうやら若い女が捕まってるらしい。

他の奴等はビクビク震えてエントランスの奥に押し込まれてるって所か。生体反応が30人くらい奥の方に固まってる。

さて、連中のお題目はっと。

 

『ここにある兵器のデータや実物を全て寄越して貰おうか! それは我々が有効に使わせてもらう。渡さねば人質がどうなるかわからないぞ!』

 

どうやらテロ屋のようだが、その割りには荒々しさが感じられねぇなぁ。

奴さん達だったら更に数は連れてくるだろうし、人質をひん剝いてその場で痛めつけて嬲るくらいするもんだ。

それをせずにご丁寧に脅す程度ってのは………実に紳士的だ。

それを考えてたらよりにもよってウェイブの変態野郎から通信が入って来た。

 

『やぁ、ハーケン君。ライブ会場の盛り上がりはどうだい?』

「中々に盛り上がってるんじゃねぇか。だが、解せねぇこともある」

『何かあったのかい?』

 

ウィンドウに映る変態はニタニタろ笑いながら聞いてきやがった。

その様子から見りゃ、大体この連中が何なのか知ってるんだろうよ。

 

「連中、ぱっと見はテロ屋にしか見えねぇが、それにしては紳士的だ。今のご時世綺麗なテロ屋なんてのもいねぇわけじゃねぇが、それにしたって『お綺麗過ぎる』。それにテメェの面を見るに、何か知ってるって感じだろ。何掴んでやがる」

『流石は名高い傭兵だ。その通り、彼等はテロリストではないよ。彼女達はね……所謂産業スパイってやつさ。それも雇われのね。雇い主は間違いなくボルッグス社だね』

 

ボルッグス社……確かIS用の武器を開発している企業で、元はこのPursue the fantasy those whoと同じような会社だが、何故かこっちの変態企業にISコアが政府から貸し出されたことで差を付けられた企業だったか。

成る程ねぇ~……大体読めてきた。

 

「つまり連中が何かしらけしかけてきたってことか。んでそいつはここ最近お前さんに来た妙におっかないお客さんってのと関係してるんだろう?」

『よく分かったね。その通りだ、彼等は私と業務提携がしたいと言ってきてね。その実、実際はウチの技術を盗む気でいたのが丸わかりだった。彼の会社は堅実な武器を作るけど、その分面白みがないから売れ行きが良くないらしくてね。売れ行きに関してはウチも同じだけど。私としも、そんなつまらない、娘達に愛情を注げない連中と連む気はないから丁重にお断りしていたんだが……少しは情熱的な所があるじゃないか。少しは見直したよ。ちなみにその話は誰から聞いたのかい?』

「エントランスの綺麗な受付嬢さ。彼女、お前さんの所為で心労が絶えないんだと。今回の件もお前さんが原因だって知ったらぶっ倒れるんじゃねぇか」

『それはいけないなぁ。ウチの会社の労働基準法が疑われてしまう』

 

お互いに軽口を叩いてると、連中は痺れてきたのか天井に向かって持っていた銃器をぶっ放す。

 

「早くしろ! 此方には人質がいるのだぞ!」

 

銃声を聞いて再び騒ぎ出す中の社員達。

勿論人質も騒ぐわけだが、聞いた声がしたような気がした。

そしてどうやら、オレの予想は当たったらしい。

 

『ちなみに人質にされてる娘ってのはコレらしいよ。見覚えは?』

 

ウェイブが社内に仕掛けたらしい隠しカメラからの映像が送られ、映し出されたのは丁度人質を取ってる野郎だった。サングラスとマスクで顔を隠しているが、その体格と声から男なのは丸わかりだ。

そして人質を見りゃ、そこで捕まってるのは受付でオレと話していたあのお嬢さんじゃねぇか。

 

「あぁ、見事に見覚えがあるよ。ついさっき一緒にお茶した仲だ。彼女、もしかして不幸の神様に愛されてるんじゃねぇか? こうもトラブルに見舞われるなんてなぁ」

『そうだったのか。このまま止められては我が社の沽券に関わりそうだね。私はどうでも良いが、この件を上にぐちぐち言われるのは五月蠅そうだ。早く終わらせるために………そうだね。ハーケン君、彼等に歓迎のクラッカーを鳴らしてあげてはどうだね?』

 

その提案を聞いてオレは口元をつり上げる。

流石は頭のイカれた変態だ。オレも同じ事を考えてたから言えねぇけどよ。

どうにせよ、せっかくコンサートを開いてくれたんだ。喜んで参加しねぇとなぁ。

ビルの外じゃパトカーが止まっているようだが、ISを警戒して近づけねぇようだし。

観客として、是非とも歓迎の挨拶はしておきたいもんさ。

 

「そいつは結構だな。是非とも歓迎してやろうじゃないか。特大のクラッカーを鳴らしてやるぜ」

 

オレはそう答えるなり、再び会社のビルに突入。

そのままエレベーターの扉をこじ開けると、中のワイヤーを伝ってエントランスの上の階である2階でまで降りる。

そしてそこからウェイブのガイドに従いう、センサーを全開に作動させて人質が立っているであろう真上へと向かった。

そこで対IS用スナイパーライフル『ゲイボルグ』を展開し、銃口を立っている所の真下へと向ける。

そしてニヤリと口元に笑みを浮かべながらこう言ってやるのさ。

 

「ようこそ、この変態共の巣窟へ。今回はコンサートを開いていただいて感動のあまり涙がちょちょ切れちまうよ。だからコレはささやかながら、歓迎の挨拶だ。受け取ってくれよ」

 

そして引き金を引いた瞬間、轟音が部屋になり響いた。

発射された弾丸は見事に床を貫通。

後はウェイブの隠しカメラが教えてくれる。

貫通した弾丸は人質を取っている奴さんの脳天に見事にぶち当たり、そしてトマトケチャップをぶちまけるかのようにそいつは弾けたよ。

残ったのは人質の背中や顔が真っ赤に染まって血肉漬けになった姿だけさ。

奴さんのほうは腕や足以外は何も残ってねぇ。綺麗に辺りにぶちまけられたらしい。

それに気付いた受付のお嬢さんやビクビクと押し込まれて弾けたところを見た奴等は………。

 

まるで狂ったオルゴールみてぇな声を叫び上げやがった。

 

どうやら会場もヒートアップしてきたらしい。

他の奴等もいきなり一人が床にぶちまけられたことで及び腰になったようだ。

そこで空かさずスターの登場だ。

オレは床の薄い部分を探し当てると共に、そこを手榴弾で爆破。

空いた穴から華麗に飛び降り、奴さん達の視線が集まる中着地する。そして喜びを込めた声で叫んだ。

 

「ようこそ、このアメリカ一の変態企業へ! 歓迎するよ、スパイの皆さんよう!!」

 

その叫びを聞いて、周りの奴等が全員顔が引きつったのは傑作だった。

 

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