恋する乙女と最凶の大剣   作:nasigorenn

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これで夏休みも終わりです。
強制的にでも終わらせます。
次回からは二学期です!


第九十三話 安全性は保証されない

 サプライズパーティーも無事に終わって、オレは再びウェイブの野郎の研究室にいた。

あの後もトラブルなく事は進み、特に騒ぎになるようなこともなく平穏その物だったさ。ISを持っている企業ってのは何かにつけて狙われるらしい。だからその分、多少のヤンチャは黙認されるんだと。

御蔭で警察が来ても普通に対応していったよ。流石に床にぶちまけられたのを見て何人か吐いたようだがなぁ。オレとしても不本意ではあったが、これも必要な犠牲って奴だ。人質を取ってる奴等からイニシアチブを取るには、でかく出れる理由である人質を取り戻さなきゃならねぇからなぁ。それさえ奪い取っちまえば奴さん達の主張はただのジョークに早変わりする。

そういったヤンチャも黙認されるってんだから、IS企業の優遇度合いってのは凄まじいねぇ。

可哀想に思うことがあるんだとしたら、ここの連中はしばらくイタリアンが食いに行けなくなったことくらいだろうよ。特にミートソースとかは絶対に無理じゃねぇかな。

まぁ、人間慣れってもんさ。放っときゃ治んだろ。

そんな訳で今日は業務をやるのは無理って訳で休社だ。

あのパーティーの参加者も大事を取って早々に自宅に帰っていったよ。

オレも出来れば一緒に帰りたかったんだが、パーティーでダンスを踊った奴は休みじゃないらしい。

 

「なかなかの活躍振りだったね、ハーケン君」

「別にあの程度ではしゃぐなよ。少し盛り上げに行っただけなんだからよ」

 

研究室じゃさっきまでのパーティーの余韻も冷めぬままに、オレに野郎共が群がって来やがった。

まったく、女にモテるってのは嬉しいもんだが、野郎に群がられるってのは途轍もなく気持ち悪ぃこった。出来れば直ぐにでも帰りたいよ、本当になぁ。

 

「それでどうだったね、私達の娘は?」

 

実戦でのテストを終えて使い勝手を聞きたいらしい。

全員目ぇ輝かせて聞いてきやがった。こいつ等の鋼の精神なら、目の前で人が弾けようと余裕でハンバーガーを囓っていそうだ。

 

「悪くはねぇんじゃねぇか? デルフィングは癖があるが、中々に使い勝手が良いしよぉ。レーバテインはちっとばかしデケェから取り回しは悪いが、あの威力を手持ちでなら寧ろ評価は良い方だ」

「褒めて貰えて光栄だよ。うんうん、娘は役に立ったか~」

 

最愛の娘の活躍を聞いて、実に上機嫌に喜ぶウェイブ達。

まぁ、所謂開発者冥利に尽きるんだろう。

 

「良かったですね、部長。このまま行けば商品化も上手く行きますよ」

「そうですよ。問題点だったデルフィングのジャム癖もレーバテインの砲身限界も今の所目立っていませんし」

 

おや、可笑しいねぇ。何やら聞き捨てならなぇことが聞こえたようだ。

こいつは是非とも問い詰めねぇとなぁ。

オレは未だに上機嫌に喜んでいるウェイブの襟首を引っ張り上げて聞くことにした。

 

「おい、ウェイブ。どうにも愉快なことが聞こえたんだが、いいかい?」

「おや、何かね。私はこの後、娘を可愛がることで頭が一杯なのだが」

「別にテメェのプレイ内容を聞く気はねぇよ。オレが聞きてぇのはテメェの変態な部下共がさっきまで口にしていたことだよ」

 

そう聞くと、ウェイブは何の事かな? って感じに首を傾げた。

これは知っていてしらばっくれてる面だなぁ。ますます聞いてみたくなるじゃねぇか。

 

「さっき聞こえたぜぇ。デルフィングの癖とレーバテインの砲身限界がどうのこうのってなぁ」

「あぁ、そのことか!」

 

ウェイブはわざとらしく手を合わせると、その口から実に愉快なことを言い始めた。

 

「デルフィング、あの娘はね~……複雑な機巧だから良く弾詰まりを起こすことが多かったんだよ。二つの銃器を根本から合体させているから、その分複雑さを増してね。だからその分、穴の調子が本当……」

「テメェの変態プレイはどうでもいい。すると何か? 下手をすればジャムるだけじゃなくて暴発してたってことかい?」

「まぁ、そうだね。彼女の機嫌が悪くなればそうなっていたかも知れない。一応それなりの火薬は積んでいるからね。暴発したら君の腕が肩ごと吹っ飛んでいたかも……」

「………よくもまぁ酷いモンを使わされたもんだ。そいつの便秘を早く治してやれよ。あまりに酷いならかなり効く下剤を提供してやるよ」

 

だから可笑しいと思ったんだよなぁ。

オルトロスは銃剣と銃身で合わせられちゃあいるが、連動はしてねぇ。だが、このデルフィングはサブマシンガンとショットガンを合わせてある分、中の構造が複雑になってるんだろうよ。可変機巧での切り替えを行う分、弾の装填に何かしらあると思ったが……危うく片腕を吹っ飛ばされかけたってわけだ。

 

「ちなみにレーバテインの方は?」

「あの娘は敏感な娘でね~。あまり我慢が出来る娘じゃないんだ、すぐにイッてしまう。グレネードをマシンガンと同じように発射するせいで、砲身や各所が高熱を発してね。そこが可愛いところでもあるし、躾け概があって興奮するんだけどね」

「別にそこはいいんだよ。もしその砲身が限界まで高熱を帯びたら?」

「その時は文字通り『イッちゃうよ』。中のグレネードに引火して大爆発さ!」

「はぁ………なんてモン作ってんだよ、お前さん達。花火作ってるわけじゃねぇだろうに……もうちょっと使用者に優しいもんを作って貰いたいもんだぜ」

 

危うくオレの方が月まで吹っ飛ばされかけたとは……笑えねぇ冗談だ。

それすらも楽しんでるのか、ウェイブは上機嫌に笑う。

 

「今まで試運転はしてきたけど、実戦訓練は出来なかったからね。君以外にこんな仕事は任せられないから、本当に今回のハプニングは有り難いよ。これでより娘達を育てることが出来る」

「何が君以外には出来ないだ。オレみてぇな奴じゃねぇと使えねぇようなもんしか作ってねぇだけだろ」

「万人に使えるなんて言うのは、単なる尻軽でしかない。日本には良くいうじゃないか『操を立てる』とかね。私は娘をそんなビッチに育てる気はないんだよ」

 

相変わらずの変態トークに頭が痛くなってきそうだ。

これ以上はここに居てもいいことなんざ何もねぇ。

オレはある程度話を纏めると、出る準備を始めることにした。

 

「あれ? もう行くのかい」

「あぁ、もうすることもねぇだろ。報告書もそれなりに纏めたし、報告も終えた。お前さん等の変態トークにも付き合った。これ以上のお仕事は勘弁だよ」

 

そう答えながら立ち上がると、ウェイブは思い出したかのように俺に話しかけてきた。

 

「あぁ、そう言えば、そろそろ学校の夏休みも終わる頃合いだね。どうだい、学園生活は?」

 

その質問を聞いて、オレは軽く頬を掻きながら答えることにした。

 

「まぁ、悪くねぇんじゃねぇか。確かに退屈にはなるが、その分弄り概のあるお嬢様がいるんでなぁ。そいつと一緒にいると何かにつけてトラブルが来るんだ。中々に面白いから悪くはねぇよ」

「そうかい。それはよかった」

 

オレはそうウェイブに言うと、背を向けて歩き始めた。

そのまま後は扉を潜ってエレベーターに乗って帰るだけなんだが、その前に言うことを忘れてた。

オレは振り返ってウェイブに話しかける。

 

「そうそう、はやくあの二つを完成させろよ。多分この先、もっと活躍する時がぜってぇくるからよぉ」

 

ニヤリと笑ってそう言ったオレに、ウェイブもにこやかに笑いかけた。

 

「それは嬉しいお話だ。是非ともその時のために、娘達をより調教しておくことにしよう」

 

それを聞いて今度こそ、オレは部屋から出て行った。

 

 

 

 「あ、あの…………」

 

そのまま帰ろうと見るも無惨なエントランスを通り抜ける途中で声をかけられた。

その方に顔を向けたら、そこには今日一番の不幸に見舞われたあの受付のお嬢さんが立っていたよ。

 

「どうしたんだい、声かけて?」

「は、はい! その、助けてもらったのにお礼も言えずに……それで、あの……」

 

顔を赤くしながらしどろもどろに何かを言おうとするお嬢さん。

そんなお嬢さんにオレはにっかりと笑いかけた。

 

「だったら……そこでお茶でもしながら聞こうか。今日はお互いに疲れたからなぁ」

「は、はい!」

 

オレの誘いを受けてお嬢さんは嬉しそうに頷いて、自販機の所へと向かって行く。

今日は色々とあってちっとばかし疲れたからなぁ。これぐらいの癒しはいいだろ。

浮気? いやいや、そんなんじゃねぇだろ。女性へのケアは紳士のたしなみってやつだよ。文句なら仕込んだクロードに言いな。

 

 

 

 その後、帰ったオレに降りかかったのはやっぱりと言うべきか、クロードのお説教と始末書の山。それとあのクソオヤジの爆笑だった。

勿論、その後暴れたのは言うまでもねぇ。

日本に戻るまでの間、ずっと仕事で埋まっていたよ。

退屈はしねぇが、やっぱりたまには休みたいもんだ。

 そうして、この夏休みは終わりを告げた。

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